艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~   作:苺乙女

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29話 雄鶏の弱点(2)

「大佐は…日本、いや、世界で初めて確認された、雄型の深海棲艦なんです。それも、こちら側の…」

 

「やっぱりな…」

 

砲を下ろし、床に落とした

 

「恐らく、あの時撃墜されて深海化したのでしょう。その後、何らかの事情で逃走を図り、横須賀の基地に辿り着いた…」

 

「…」

 

「時折視界が赤くなるのは、深海化する前兆です。薬はありますが、多様するのは余り…」

 

「俺は程の良い実験体って訳か…」

 

「違います‼︎それは絶対‼︎だから私がこうしてここの基地に‼︎」

 

「深海棲艦の奴等とやたら仲良くなれたのも、そのせいか…」

 

「お願い…分かって…」

 

「横須賀」

 

「はい…」

 

「俺は…この二つの種族の架け橋になれそうか⁇」

 

「‼︎」

 

横須賀にとって、予想外の答えが返って来たのだろう

 

「なれます‼︎絶対になれます‼︎」

 

「なら、俺が深海棲艦と仲良くしている間に、治す薬でも開発してくれ」

 

「はいっ‼︎必ず‼︎」

 

「おい‼︎片付けてくれ‼︎」

 

”あいあいさ〜‼︎”

 

「今はお前を信じてやる」

 

「えぇ」

 

「皆には黙ってろ」

 

「勿論です」

 

「行こう。腹減ったろ」

 

食堂に戻ると、既にみんなカレーを口にしていた

 

まえかけをしたたいほうの横に座り、口の周りを拭く

 

「美味しいか⁇」

 

「おいしい‼︎」

 

「ぽっぽも美味しいか⁇」

 

「オイシイ‼︎カレーオイシイ‼︎」

 

れーべもまっくすも美味しそうに食べている

 

少し安心した…

 

「提督さん‼︎食べたら泳ぎましょ〜よ〜‼︎」

 

しおいの一言で、私の思考が凍り付いた

 

「え…や、やだ…」

 

「まだ、海は危ないからな」

 

武蔵の一言で救われた…ふぅ…

 

「入渠ドックの奥にプールがあるわ」

 

ローマの一言で再び凍り付く

 

「プールにしましょう‼︎先に行ってますね‼︎ごちそうさま〜‼︎」

 

「あ…あ…」

 

しおいが去った後、冷や汗を流す

 

マズい…

 

大変マズい…

 

”これ”を知られる訳にはいかない…

 

「よ…横須賀にハンバーガーでも食べに行こうか…な⁇」

 

チラッと横須賀を見ると、うっすらと笑みを浮かべている

 

「丁度いい機会ですね、た・い・さ‼︎」

 

「…‼︎」

 

こうなりゃ工廠に向かってダッシュだ‼︎

 

んで、コルセアで単冠湾まで逃げよう‼︎うん‼︎そうしよう‼︎

 

「ダッシ‼︎」

 

「捕まえました」

 

一瞬ではまかぜに捕まり、横須賀の元に戻された

 

「さ、行きましょうか‼︎」

 

「うっ…」

 

 

 

プールに着くと、しおいが潜水の練習をしていた

 

「たいほうもはいる‼︎どぼ〜ん‼︎」

 

「どぼ〜ん‼︎」

 

「どぼん」

 

「どぼんです」

 

「ドボン‼︎」

 

チビ達がいとも簡単にプールに入って行く

 

「さぁ、我々も入ろう」

 

「えぇ」

 

色気MAXの水着を来た武蔵とローマまで入る

 

「さ、大佐。行きましょう」

 

パツパツのスク水に着替えた横須賀を見た時点で無理と気付いた

 

「か、帰る…」

 

「ダメです。はい、ドボ〜ン‼︎」

 

「う、うわぁぁぁぁあ‼︎」

 

横須賀に体当たりされ、プールに突き落とされた

 

「…」

 

「…」

 

「浮いてこないぞ…」

 

「もう‼︎相変わらず治ってないっ‼︎」

 

「浮いて来たわ」

 

横須賀は背を向けて浮いて来た私を抱え、背中を叩いて水を吐かせた

 

「あ…生きてる…柔らかいな…」

 

「相変わらずカナヅチですか…」

 

「溺れる助け」

 

放って置くと、すぐに沈んで行く

 

「あぁもう‼︎」

 

またすぐに救い上げ、まずは息継ぎの練習をさせる

 

「はい、イッチニーイッチニー」

 

「あ、あばばばば…」

 

「あぁもう‼︎」

 

息継ぎも出来ないなんて‼︎

 

「大佐‼︎今まで良く生きてられましたね⁉︎」

 

「一つぐらい欠点があってもいいだろ⁉︎あ、離すな‼︎」

 

大佐が私の腕にしがみ付く

 

ま、まぁ…満更でも無いけど…

 

「はい‼︎ちゃんと掴まって‼︎武蔵とローマもいますから、大丈夫です」

 

「たいほうもいるよ‼︎」

 

「う…」

 

「チェルシーモ、ドボンスル」

 

「うわなにをするやめ‼︎」

 

私達目掛けて、チェルシーが飛び込んで来た‼︎

 

「大佐‼︎」

 

水飛沫のせいで、つい大佐の手を離してしまった

 

大佐が沈んでる‼︎

 

「大佐‼︎」

 

「ン⁇ン⁇」

 

チェルシーは訳が分からず、ボーッとしながら浮いている

 

「ぷは‼︎大佐‼︎しっかり‼︎」

 

「そろそろ人口呼吸をだな…」

 

「…バカ‼︎」

 

「パパ、ダイジョウブ⁇」

 

チェルシーが此方に泳いで来た

 

しおいは潜水は上手だが、泳ぎはチェルシーが上手そうだ


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