コレは過去の物語……
もう終わってしまった、夏休みの物語……
~出会い~
「はぁ……」
リクルートスーツに身を包んだ男が、公園でブランコに座って夕焼けで伸びていく影をぼうっと見ていた。
「ん?よう、クラナシ!なーにしてんだ?」
後ろからポンと背中を叩かれる男。
なんだと思いながら後ろを向くと、真面目そうな男が同じくリクルートスーツを着て立っていた。
「ああ、ソトミチ……就活、終わりなのかい?」
ブランコの男、クラナシと呼ばれた方が作り笑顔で力なさげに笑う。
「今日の分は、な」
クラナシの隣のブランコにソトミチが座ってゆっくりとブランコを漕ぎ始める。
都内の公園だというのに、子供はもういない。
夕方と言ってもまだ、4時を回った所だし8月の熱気も弱くなる時間だ。
それなのに、全くと言っていいほど子供がいない。
最早公園で遊ぶ、という行為は時代遅れなのだろうか?
「なぁ、ソトミチ……俺の魅力ってなんだろ?」
「あ?どうした。なんか、あったのか?」
クラナシの言葉に、ソトミチが反応してブランコを止める。
「今日、企業に行ったんだけど……面接官に『君は熱意がない』って言われたんだ。
他の奴らはみんな、何かを頑張ってるってアピールしてたのに……」
「あっそ、じゃ、自分の好きな物探せよ。ほら、電車とかお前好きじゃなかったか?」
「就活に何の意味が有るんだよ、電車好きって……
むしろマナーの悪い奴のせいでマイナスイメージが多いんだよ」
はぁっと、ため息を付いて再びブランコを漕ぎ始める。
「お前にも、なんか有るハズだぜ?ほら、俺のおごり。
まぁ、面接なんて、その場でどんだけ良い子ぶれるかだろ?俺なんて、年中猫かぶってるぜ?」
ソトミチがクラナシに、缶コーヒーを差し出した。
「ソトミチ……」
礼を言って、クラナシがコーヒーを受け取って飲む。
「うっ!?」
クラナシが小さくむせる。
ブラックだ、口の中に苦みが広がる。
クラナシはブラックのコーヒーは苦手だった。
しかし、文句を言おうにももうソトミチは退散した後だった。
「ちぇ」
小さく舌打ちして、ブランコに再び身をゆだねる。
キィと鎖が軋み、手の中の9割残っているコーヒーがぽちゃんと揺れる。
「はぁ……」
もう何度目になるか分からないため息。
別にがむしゃらに努力をしてきたわけではない。かといって、過度にサボっていたつもりもない。
大学も必須科目はしっかり取ってるし、特に素行に問題は有る積りは無し。
しかし気が付けばもうすぐ21歳の誕生日が近付いてくる。
いたって『普通』の積りだ。
しかし、『普通』では足りないのだと、今改めて思っている。
「熱意……ねぇ……」
「へい!にーさん邪魔だよ!!どいたどいた!!」
ガシッ!!
「へ!?な、なんだい!?」
クラナシの背中に衝撃が走った。
慌てて後ろから聞こえた声の主を見る。
「邪魔だって言ったんだよ。そこ、私の指定席なんだから。
ほら、さっさと、どく!!」
野球帽から覗く気の強そうな瞳と、腰までのびた長い髪、スカートから伸びる足と右頬には絆創膏が張られている。
そして手には、ビニール袋が下げられている。
まるで少年の様だなと思いながら、クラナシが席を譲る。
「ああ、ごめんね。お嬢ちゃん」
クラナシが愛想笑いを浮かべ、ブランコから立ち上がった。
「なぁ、オッサン。こんな時間に何してんの?リストラ食らった?
若けーのに大変だなー」
少女が、ブランコに座ってこちらの方を見てくる。
幼さゆえか、言葉に躊躇が無い。
「ははは、違うよ。その前段階さ」
「ん?どゆこと?」
「企業に、雇ってもらえる様に頼んでる最中なんだよ」
子供、それも小学生くらいの子には難しいかな、と思いながらもクラナシが話す。
「へー、仕事ねーんだ。人不足だーって、ニュースで言ってるのに雇ってもらえねーんだな、働きすぎで過労死とかあんのによー」
興味なさげに話した後、少女がブランコを漕ぎ始める。
ブランコの方も、やっと本来狙った年齢層に使ってもらえて幸せそうだった。
「ははは、俺は熱意が足らないんだってさ」
「別にいいんじゃね?つかさ、熱意ってなんな訳よ。
ニートが『働きたくねぇ!!』って言ったら熱意が有るのか?
会社に『仕事はしたくねーが、金が欲しい!!』って言ったら雇ってくれんのか?」
尚も、ブランコを漕ぎながら少女が語る。
というか、ドンドンとブランコのスピードが上がっている気がする。
「うーん……それは違うね。けど熱意は……有るのかな?」
思わぬ返しにクラナシがうなりながら、考え始める。
「はぁ。オッサンしっかりしろよ~。
私に諭されるくらいじゃ全然ダメだろ?」
「いや、しっかり話を聞いてるからこそ……わ!?」
クラナシが驚きの声を上げる!!
さっきからブランコの風を切る音が大きいと思っていたが、今ブランコはすさまじい位置まで漕がれていた!!!
おそらく頂点では、空を見上げる形にすらなっているハズだ。
「あ、危ないよ!!すぐに降り――」
「トウ!!」
クラナシの目の前で少女が――――――――跳んだ。
夕焼けに長い髪を揺らし、帽子が落ちるのも気にせず、ブランコから解き放たれた小さな姿は……クラナシの取ってとても美しい物に見えた。
そして少女は一瞬だけ悪戯っぽく笑って、重力に捕まった。
「ホッ!」
膝を折り曲げる様に地面に着地した。
「お~」
パチパチをその姿を見て、クラナシが手を叩く。
「すごいけど、危ないから――うわぁ!?」
まわりこんで少女の顔を見たクラナシがギョッとする!!
「てへへ……
少女の顔からは、鼻血が流れ出ていた。
「え?え!?何処で、鼻をぶったんだい!?」
「慌てんなって、着地した時に自分の膝で鼻を打ったんだよ……
あー、チックしょう!」
不機嫌になった少女が、公園の水道の蛇口をひねって鼻を洗う。
「ふん!!」
血の出てない方の鼻の穴の指を詰めると、思いっきり息を吐き鼻内の血をすべて出してしまった。
「これで、良しだな」
トイレから、紙を持ってきて鼻に詰めると少女が笑った。
「ああもう、危ないじゃないか!!」
クラナシが少女の危ない遊びを窘める。
「ダイジョーブだって、ケガの仕方なら知ってるからさ」
まるでわんぱくな男の子の様に少女が笑った。
「だからって!!それに公園は危険な遊びは禁止されているんだよ?」
「あー、解った解った解った。あ、ほらコレ」
クラナシの言葉に不真面目に答えていた少女が、ブランコの下に置いて来たビニール袋を手にして、差し出す。
「?」
「冷めちまったかな?」
ごそごそと、袋を漁ると近くのスーパーで安売りされているコロッケが出てきた。
更に、賞味期限が近く同じくワゴンで安売りされている食パンも。
手早く、食パンにコロッケを挟み込む。
「一緒に食おうぜ?」
即席コロッケパンを、クラナシの差し出す少女。
「え?ええ?」
自体に追いつくことが出来ずにクラナシが困惑気に、少女とパンを交互に見る。
「おっさん、仕事ねーんだろ?可哀想だから、今日は私がおごってやる」
「あ、ありがとう……」
自分より明らかに年下、しかも見た目的の小学生位の子に心配されるとは……
そんなことを考えつつも、反射的に受け取ってしまった為返すのも悪いと口を付けた。
「ん?……むぅ」
「薄いよな?味」
一口目でコロッケまでたどり着かなかったクラナシに、少女が声を掛けて笑う。
「私が、もー少し、金持ちに成ったら間違いなく袋ソースを買うな!!」
にひひと、笑ってコロッケパンを食べきる。
「まだ、有るから食うか?」
ビニール袋から、またコロッケと食パンを取り出し二個目にかじりつく。
「いや、僕はもういいよ。ありがと、お嬢ちゃん?」
「『お嬢ちゃん』!?私がそんなタマかよ?名前で呼んでくれよ、名前で」
「いや、名前知らないよ?」
クラナシの言葉に、此処で初めて少女が気が付いた様でバツが悪そうに話し出す。
「いやー、私とした事が……しっぱいしっぱい。
私の名前は――幻原 天……『おーい!!』あ!アニキだ。
ワリィ、オッサン、また今度な!!あ!!その袋、処分しておいてくれ!!」
公園の入り口に来た、少年を見つけると少女はそのまま駆け出して行ってしまった。
手に残るのは、ソトミチのくれた飲めないブラックコーヒーと味の薄いコロッケサンド、心に残るのは嵐が過ぎ去った様な、気分のいい騒乱。
「頑張るかな」
力をもらった気がしたクラナシはまた、歩き出した。
~諍い~
「ありがとうございました!!」
数日前より、リキリキした表情でクラナシが面接を終える。
正直言って、今回はなかなかの手ごたえだった。
気がするだけ、かもしれないが確かに「うまく行った」という確信があった。
だが、本命はここではない。
本命は今日の夕方から、滑り込みである面接の方だ。
ずっと憧れていた分野の仕事で、自分の第一志望でもある会社だ。
「少し何か食うか……だが、手持ちが――」
気が付けば時間は昼過ぎ、安心からかクラナシの腹の虫が空腹を訴え始めた。
しかし、ここ数日の電車代などを考えると贅沢は出来ない。
牛丼屋の値段を見て、しぶしぶあきらめる。
牛丼を高いと思った事など、初めてだった。
どうするか思案しチラリと、視線を通りに向けると小さなスパーが有った。
「また、あの、コロッケが食いたいな……」
クラナシの脳裏に浮かぶのは、数か月前に食べたあの少女の作ったコロッケサンド。
小学生でも買える値段のハズだと、足をスーパーに向ける。
がやがや……がやがや……
お昼時を少し回った位の為か、店には結構な人数の人がいた。
主婦が噂話に花を咲かせ、幼稚園帰りの子供が母親に菓子をねだる、そんな光景。
「どこだったかな?」
数かい来たことのある店だが、内装を覚えている訳ではなかった。
「うへぇ!?ブニブニ~」
小さな子供が、魚屋のコーナーでパック詰めされたイカを指でつついている。
「うえー、くっせ!!」
さらに、隣の鮮魚に鼻をくっつけている。
そう思うと、今度はどかどかと、周りに物があるのにも関わらず走り出してしまった。
(どこの子供だ?躾がなってないな……)
クラナシが、不機嫌になりながらも目的のコーナーを見つける。
「さぁ、コロッケコロッケ」
揚げ物のコーナーで今日は、特売なのか、一個23円という格安で売っていた。
プラスチックのパックを手にして、1個2個と詰めていく。
「4つもあればいいかな?」
いや、やはり5個だ、と思い直しもう一つコロッケをトングでつかもうとした所……
「かーちゃーん!!コロッケくいてーよ!!あ”」
ガシャーン!!
「なーに、やっとんじゃ!!馬鹿が!!」
さっきの子供が走って来て、コロッケの乗った棚をひっくり返すしてしまう!!
半分近くのコロッケが床に落ちてしまった。
そこにすぐさま母親の怒声が飛んでくる。
「ほら、さっさと戻す!!」
そしてあろうことか、母親が落ちたコロッケを拾い元の棚に戻し始めた!!
「ちょ、ちょっと待ってください!!それ、落ちた物でしょ!?ダメですよ!!」
クラナシが、主婦と子供を制止するが……
「あ”なに?あんた。子供のやったことやがね?おおめに見んさい!」
「だめですよ、そんな事。第一店員さんに……」
「何かありましたか?」
クラナシの言葉の途中で店員がエプロンを付けて走ってくる。
その店員にクラナシは見覚えがあった。
「ソトミチ?バイトか」
「あ、クラナシ……」
ソトミチが、落ちたコロッケを見て固まる。
「ちょっと、店員さん?この男がコロッケをぶちまけたんだけど?」
「え!?」
主婦の予想外の言葉に、クラナシが固まる。
それもそうだ、コロッケを落としたのは子供で明らかに母親の躾の不行き届きによる物だった。
「そーだ、そーだ!!かーちゃんの言う通りだ!!」
子供までもが同調して、クラナシを犯人呼ばわりする。
「まぁまぁ、お客様。落ち着いて……」
「早く対応してくださる!?私、早く買い物して帰りたいの!!」
慌てるソトミチに対して、主婦が何度も何度もまくしたてる。
「あ、あの、コロッケを落としたのは――」
「あー、忙しい!!アナタ、ちゃんと店員さんに謝っといて!!」
バッと、クラナシの持つコロッケをひったくるとさっさと帰っていってしまった。
「あ、あー……」
「落ち込むな、あのおばさん。
態度悪いってもっぱらの話題なんだ」
クラナシにソトミチが話し、塵取りで床に落ちたコロッケを拾う。
「こっちは無事か?」
棚に残ったコロッケを、見てソトミチが話す。
「いや、だめだ。落ちたコロッケを戻してた……」
「あー、それじゃ、どれがダイジョウブか分からないか……
仕方ない、全部破棄だな……」
あえて、声音を明るくしているがそれでもソトミチの表情は暗かった。
「すまない……ソトミチ……」
「気にすんな!ってか、まだ夕方から就活だろ?頑張って来いよ!!」
ソトミチが、無理して笑ってクラナシの背中を叩いた。
ひっそりと、菓子パンと甘いコーヒーを買って店を出た。
~再会~
「そろそろか……」
腕時計をみて、目当ての会社に向かって歩いてく。
少し腹が、減っている以外すべて問題なく、相手の会社理念などすべての質問パターンが脳裏にしっかりと返せるようにシュミレーションする。
「あ……」
気が付くと、いつの間にかあの少女と出会った公園に来ていた。
会社までの道だが、少しだけ遠回りしてしまった様だった。
ひょっとしたらお礼が言いたかったのかもしれない。
あの、少女のお陰で自分は少し、だけ進めたかもしれない。
只の思い込みだろうが、きっかけをくれたという意味ではあの少女は恩人と言えるだろう。
「ほら、邪魔だ!!どけどけ!!」
公園から、乱暴な男の声がする。
「やめろよ!!こんなのおかしいだろ!?」
ハッとして、その方向を見る。
いた。公園の真ん中に男に縋りつく様に、例の少女がいた。
「お前、何処の小学校だ?大人のやることに口出しするんじゃない!!教育委員会に訴えなくちゃな?」
近くにいた、太った男がラケットを持ちながら少女を払いのけようとする。
「止めろよ!!公園は、みんなで使うモンだ!!ゴミは持ち帰んねーといけねぇし!!テニスも禁止だろ!?」
公園は危険な遊びを禁止することが多く、ボールがどこに行くか分からない野球や、テニスは禁止される傾向にある。
「それに、私のトモダチに謝れよ!!」
公園の端、砂場に別の女の子が泣いている。
近くに落ちているボールからするに、何が有ったのか――想像は難しくない。
「うるさい!!大人のいう事を聞け!!今、私達はテニスをしに来たんだ!!
お前たちはいつでも、遊べるだろう?ここは譲るべきだ」
男がその少女を突き飛ばした。
受け身を取るが頭から、少女が転んだ。
「なにをしているんだ!!」
気が付くとクラナシは、走って男の目の前に立っていた。
「ただの遊びだよ。関係ない君は帰れ!!その恰好、就活生だろ?大人しく就活だけしていろ!!」
その男の言葉で、クラナシは自分が今、面接に行く途中だったのを思い出す。
「とーちゃーん。早くテニスー!!」
走って来たのは、さっきスーパーで見た子供だった。
どうやら、あの夫妻は家族ぐるみで遊びに来たらしい。
「おう、坊主。少し待ってくれ?
ほら、さっさと帰れ!!家族の時間を邪魔する権利はお前に無いハズだろ!?」
恫喝しながら、男が威嚇する様にラケットを振りあげる!!
「止めてください!!公園は、本来子供たちの為の場所です!!
あなたのやってる事は――」
ガッ!!
振りあげられたラケットが、クラナシの頭に振り下ろされる!!
「力を抜いた、痛みは無いハズだ。
だが、それ以上、わめくなら今度は力を籠めるぞ?
血だらけで、就活は難しいだろうな?」
嫌な笑みを浮かべる男。
クラナシはすぅっと息を吸った。
ベストな選択は、このまま歩いて会社に行くべきだ。
ひょっとしたら、誰かが助けてくれるかもしれない。
そんな考えが脳裏をよぎった。
波風立てず、普通でいる事。それこそが今必要な事だ。
けっして、見ず知らずの男と喧嘩する必要は無い。
だから、後ろを向いて公園の入り口に向かって歩き出した。
「おぉぉぉぉぉぉ!!!らぁ!!」
走って男の、持つラケットを思いっきり蹴り飛ばす!!
「な!?お前、何を――!!」
「熱意が足りない!!」
「は!?」
怒る男に対して、クラナシが叫んだ!!
「此処で見逃せるわけないだろ!!普通!?そんなのどーでもいい!!
いま、俺はこの子を見捨てれない!!」
「なにを――言ってるんだ!?警察!!警察呼んでくれ!!」
脅しが聞かないと解った、男が自身の妻に向かって警察を呼ぶように怒鳴り散らす!!
「わ、解ったよ!!い、今すぐ――――ぎゃ!?」
電話ボックスに向かって走るとき、何者かが女性の足を引っかける!!
「ああ、痛い……アンタ、店員じゃないのさ?何してんだい?」
女性の前に立ったのは、バイトを早退したソトミチだった。
「おばさん、聞いてください……俺、さっきの失敗のせいで店長にクビにされちゃったんですよ……正社員にならないかって言われてたのに……
この意味、解ります?」
ボーっとした暗い目でソトミチが語る。
「はぁ?アンタの実力不足でしょ?また就活生の戻っただけじゃない!!」
「半分せいか~い……けど!!」
ソトミチの瞳に光が宿る!!ランランと輝き水を得た魚の様な様子になる!!
「本当は――もう、猫かぶる必要がなくなったっていう訳ゲド!!
ゲェ~ド、ゲドゲド!!」
ケタケタと大きな声で、ソトミチが笑いだす!!
「は、はぁ!?アンタ頭、おかしく成って――」
「お前の髪形のセンスの方がよっぽどくるってるゲドよ~?
むしろ、何の罰ゲームか知りたいゲドねぇ!?
ビックリするほど、ブスゲドねぇ?」
ソトミチが、油性マジックを取り出し主婦のおでこに『世界一ブス!!』と殴り書きする!!
「おい、かーちゃんに何して――」
「おおっと!?こっちのクソジャリは全然父親に、似てないゲドね!?
何処で浮気した息子ゲド?
こー、言うのをサン・オブ・ザ・ビッチ、砕けて言うとサバノビッチと言う奴ゲド。
因みに、どっちもお下品すぎて、人前で言えないゲドー!!」
ゲラゲラと笑い出すソトミチ!!
「な、なんだコレは!?」
男が慌てるが、その時パトカーのサイレンが聞こえてくる!!
「ははぁ!!これでお前も、終わりだ!!」
勝ち誇る男に、クラナシが冷静に――
「ああ、あの女の子たちがアンタが何をしていたか、話してくれるだろうね?
指紋の付いたラケットもあるし……
お互い、覚悟がいるな?」
その言葉に、男が青ざめる!!
「か、帰るぞ!!早く!!」
放心状態の妻と息子を連れ、男はそそくさと帰っていった。
「ゲドゲド!!悪戯アイテムは常に持ってくるものゲドねぇ~」
ソトミチが、笑いながらポケットからサイレンの録音されたウォークマンを取り出す。
「ソトミチ、その語尾やめたんじゃないのか?」
「猫をかぶるのを止めただけゲド!!これからは、ボーノレで飯を食っていくゲド!!就活はやーめた、ゲド!!」
ヤケにいい顔で、ソトミチがスキップをする。
砂場でうずくまっていた子を助けていくあたり、心の底からの外道ではないらしい。
「大丈夫かい?」
クラナシが、少女を助け起こす。
途中から、呆然とこちらを見ていた様だった。
「おっちゃん、スゲーな!!根性有るんじゃね?」
「はは、女の子の前で少し恰好付けただけだよ」
「ふぅーん、って!おちゃん!!仕事いいのかよ!?」
その言葉に促されチラリと時計を見ると、面接の時間はとっくに過ぎていた。
だけど、なぜか解放された様な気がした。
「いいんだ、ゆっくりやっていくよ。慌てることは無い。
どうだい?また、今度、一緒にご飯でも如何だい?」
「お、おっさん……私小学生だぜ?流石にそのセリフはヤベーんじゃね?」
「む、まだ二十歳だぞ?おっさんって年じゃ――」
「私はまだ11歳だ!!」
遮る様に、少女が話す。
「そうか、自己紹介がまだだったよな?俺は、
「げ、幻原
二人はたどたどしく挨拶をした。
そして時は流れ――
「――という事が有って、私と蒼空は付き合う事に成ったんだ。
その後、結婚して子供が生まれた訳だな?」
幻原家の母親、幻原 天唯が夕日に自身の夫との馴れ初めを、楽し気に話す。
学校の宿題で、家族の昔の話を聞いてこい。というモノがあり、夕日は自身の義母に聞いてみたのだ。
「……11歳が……20歳と……付き合った……の?」
「あー、大した年齢差じゃ、ねーよ。
愛の力は偉大だからなー」
ケラケラと楽しそうに笑った。
「さて、夕飯の準備しなくちゃな。今日は蒼空も早く帰って来るらしいしな」
天唯は立ち上がると、楽しそうに台所に向かった。
今回はUA15000の記念の側面も大きいです。
割と序盤から、書きたかった話なので個人的には満足です。