今さらですがクリスマス編です……
遅刻してすいませんでした!!
「うをぉおおお!!なぜ俺はモテないんだ!?高身長、イケメン、爽やかさ!!モテる系の男が持つ全ての要素を兼ね備えているのに……!!」
木枯の兄の新芽が鏡の前で、両手で頭を押さえる!!
その瞳には涙が浮かんでいる!!
圧倒的負のオーラ!!
この世はまさにクリスマス!!恋人達は性夜……おっと失礼。聖夜を楽しむ!!
しかしそれは恋人がいる人間のみ!!
そうでない者は
彼の姿は正にモテない男の僻みが形になった存在と言える!!
その様子を見ていた木枯に新芽が気が付く。
「木枯ぇ!!なぜ俺はモテないんだ!?見た目はこんなに麗しいと言うのにぃ!!」
木枯に近寄り肩を掴みガクガクと揺さぶる!!
「おにいちゃんがモテない理由は一つ!!……キモいからだよ。鏡よく見て見ろ、お前は不細工だ」
「おぉおぉ!!!」
クリティカルヒット!!
自身の妹から受けた容赦ない口撃!!
言の葉のナイフはキモナルシストの心を容赦なくえぐった!!
「うーん……今日はどうしようかな?」
そんな言葉をつぶやきながら街中を歩く。
残念ながらまどかは今日はパーティが有るとかで、昨日から居ない。
遊んでほしかったので、今朝がた天峰の携帯電話に連絡したのだが天峰の代わりに何故か夕日が出て。
『……ごめん……二人とも……寝不足……少し……寝てる……』
と言っていたため今日は遊べない様だ。
とりあえず『昨晩はお楽しみでしたね!!』と言っておいた。
何故かそう言わなくてはいけない気がした。
「うーん……みんな忙しいねー」
そう言って近所のぼろい漫画喫茶で適当に漫画を読み始める。
色々読みたいのが有ったし、何より家に居るとうるさいの(兄)が居る。
暫く読んでいたが、本から目を上げる。
大体読みたいモノや新刊は見終わった。
ドリンクバーに行き、昔の様に錬金術師の才能を見せようと思ったが、自身の携帯電話にいつも間にか膨大な着信が入っていたのに気が付いた。
全てまどかからだった。
慌ててその場でかけ直す。
「どーしたのー?」
「どーしたじゃありませんわ!!アナタが一人さみしくしてる様なのでワタシがひと肌脱いで上げたんですわ!!」
どうやらまどかはかなりご機嫌ナナメの様だ。
「良いですか!?今すぐ駅の近くのロータリーに来なさい!!……急用ですが、パーティしますわよ?」
その言葉にパッと木枯の表情が明るくなる!!
自分の事を思ってくれた居るのがうれしくなり、すぐに片付けを始めた。
「あーあ、せっかく作ったのに……」
木枯の手にはさっきドリンクバーで精製したドリンクが握られている。
流石に自信作のこれを捨てるのは忍びない。
仕方ないので、店の店員に上げた。
困惑した様子だが木枯は気にせず店の外に出て、駅のロータリーに向かった。
自身の親友の誘いだ、ためらう理由は無かった。
因みに……
「うまい!!なんてうまさなんだ!?的確な配合!!甘味と香料の絶妙なマッチング!!素晴らしい!!こんな物がウチのドリンクバーで作れるのか!?……いや、作るぞ……!!作って見せる!!これさえあればウチは繁盛間違いなしだ!!」
後日この店員が木枯のドリンクを完成させ、『エリクシール』と名付けぼろもうけしたのは別の話。
まどかサイド
「まどか様、こんな物しかご用意できず申し訳ありません」
佐々木が申し訳なさそうにテーブルに料理を並べる。
世間一般からすれば十分豪華と呼べる内容だが、クリスマスと言う特別な日に富裕層の人間がとる食事としてはやはり数段階ランクが落ちている。
「構いませんわ。ワタシ貴方の料理好きですもの、それにあの庶民がいつか言ってましたわ『中のいいみんなと食べれる食事が一番だ』と、此処には木枯も貴方も居ますわ特別な日と言ってもワタシにはこれで十分なのですわ」
そう言って佐々木に柔和に笑いかける。
感極まった佐々木がそれに対して涙を見せる。
「お、お嬢様……!! 何ともったいないお言葉」
「佐々木さーん!!このスープおいしい!!オカワリ有るー?」
「ただいま持ってまいります」
横からきた、木枯の言葉に反応し皿を受け取り厨房へ入っていく。
「えへへ……なんだか楽しーね!!」
「そうですわね……」
何時のも様に何も考えてない様な木枯の言葉に、まどかが笑いかける。
「あー!!雪だー!!」
食事の終了と同時に木枯が外を指さす。
その言葉の様に外にはチラホラと雪が降っていた。
「この様子ではあまり積りそうに有りませんわね、イザと言う時の為にアレをレンタルしたのですが、無駄に成りそうですわ」
「ねぇねぇ!!アレってなぁに?」
外の様子を見てつぶやいた、まどかの言葉に木枯が反応する。
その瞳にはキラキラと期待に満ちた様子がありありと読み取れる。
「人工降雪機ですわ!!」
「ナニソレ?ぢん……こう?」
「人工降雪機ですわ!!このおバカ!!」
自信ありげに話したまどかだが、木枯は良く知らないらしい。
言葉を所在な下げに繰り返すだけだ。
「良いですか?人口降雪機っていうのはスキー場などが雪が降らなかった時などの非常時に人工的に雪を降らせる機械ですわ。やはりクリスマスはホワイトクリスマスではないといけませんからね」
すらすらと説明をする。
今更だがなぜ個人がこんな物を所持しているかは、ご想像にお任せします。
「すっごーい!!これが有るなら夏でも雪山だね!!」
ようやく理解したのか、木枯がテンションを大幅に上げる!!
「ま、まぁ。ワタシほどの人間はみんな持ってますわよ?今回は自然に降ったのでその必要は……」
「ねね!!雪遊びしよ!!」
「は?」
一時間後まどかの家の庭にはそこそこの量の雪が積もっていた。
人工的な雪も混ざっている為、他の場所より明らかに量が多い。
そんな足跡一つない処女雪に、木枯が思いきり飛び込む!!
「あははっは!!さむーい!!あははは!!」
まるで何かに憑りつかれたように笑続ける木枯。
尚も雪の積もる地面に頭から突っ込んで、体を滅茶苦茶に動かしながら転げまわる!!
その姿はすっかり真っ白。
まるで雪だるまだ。
「笑事ではありませんわ!!……まったく……」
コートにマフラー、さらには手袋と寒さ対策をばっちりしたまどかに対し、木枯は自宅から着てきたカーディガンのみと言う軽装ではしゃいでいる。
「また風邪をひいても知りませんわよー!!」
マフラーを直しながら、木枯に叫ぶ。
しかしそんな事は気にせずただひたすら笑いいつ続ける木枯。
「冷た!!」
突如としてまどかの頭に雪の塊がぶつかる!!
何事かと思い、木枯を見るとせっせと雪玉を作っていた。
「ア・ナ・タ・ね!!ワタシに雪をぶつけるなんてどんな了見です――」
「必殺!!デストロイ雪ボール!!」
まどかの声を無視してさらに雪玉を投げつける!!
「冷たいって言ってるでしょ!?いい加減にしなさい!!」
遂に怒ったまどかが足元の雪をかき集め、木枯に投げる!!
その玉は容赦なく木枯に当たる、しかし当人は楽しそうに笑い転げるだけ。
「わ~い。雪合戦だ!!よろしい!!ならば戦争だ~」
「良いでしょう!!圧倒的な実力の差と言うのを身を以て教えて差し上げますわ!!」
お互いにせっせと雪玉を作りぶつけ合う。
そんな微笑まし様子を佐々木は屋敷の窓から、ジッと見ていた。
しかししばらくして……
「そろそろ、紅茶の準備をしましょうかね?」
ケーキが有るのを思い出し、紅茶の準備を始めた。
ああ、寒いだろうから暖房の温度も上げなくては……
楽しそうな二人を見て佐々木はそう考えていた。
暫くして二人は雪だらけで屋敷に帰って来た。
お互い、夢中で遊んだのだろう両手の指先がすっかり真っ赤になっている。
「おー?まどか指先真っ赤ー」
「アナタもですわ!!全くバカみたいハシャグから……」
そう言った瞬間木枯がまどかの手を握る。
「ちょ!?一体何を……」
「手をつなげば少しはあったかいでしょ?私賢ーい」
そう言って手をぶんぶんと振り回す。
「ああ、もう!!アナタの動きは全く予想できませんわ!!けど――」
「お嬢様、木枯様。紅茶の準備が出来てますよ」
横から佐々木が現れる。
その手には紅茶が乗っており、良い香りが漂ってくる。
「ケーキも有りますよ?」
「ケーキ!?わぁーい!!ケーキ!!ケーキ!!」
そう言ってピョンピョンとその場で跳ねる。
「ねね!!早く行こ!!」
そう言って木枯がまどかの手を引いて走り出す。
「ん?そう言えばさ!!さっきなんて言おうとしたの?」
「それはヒミツですわ」
思い出したように聴いてきた木枯の言葉を、イジワルな顔をして躱す。
「ぶー!!じゃあ、いいもん!!」
へそを曲げた木枯に尚も手を引かれながら、小さく口を動かす。
『アナタが手を引いてくれるのは嫌いじゃない』と
それは誰にも伝わらない言葉、しかし心はきっと木枯にも伝わっただろう。
彼女たちはそんな親友なのだから……
ふふふ……
何を隠そう私は小学生の頃ドリンクバーの錬金術師を自称した男!!
飲み物のミックスは得意なのだよ!!
父親に怒られましたけど……
更に言うとこの前、ファミレスに行ったら『ドリンクを混ぜてオリジナルフレーバーを
!!』と言うのがやってました。
時代がやっと私に追いついたのだな……