リミットラバーズ   作:ホワイト・ラム

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さて、今部もそろそろ物語が大きく動き出す時が!!
と言いたいのですが、もう少しかかりそうです。


月に3回って微妙じゃね?

「えーっと……忘れ物は無いよな?」

学校が終わり、机の中の教科書等をカバンにしまう天峰。

今日は学校の終わりに、駅の図書館で夕日と勉強をする予定である。

天峰は高校、夕日は中学。

その事から解るだろうが、夕日の方がが先に学校を終え天峰を待っている事になる。

 

「さて、夕日ちゃんの所に行こうかな!!」

忘れ物が無い事を確認した天峰が、勢いよく立ち上がる。

 

「ん?どうした天峰、ヤケに張り切ってるじゃないか?」

偶然通りかかった八家が興味深そうに話しかけた。

 

「ああ、今日夕日ちゃんと――」

 

「夕日ちゃんと図書館デートだと!?しかも勉強プレイか!?

 

『天峰……此処が……解らない……』

『ここでは先生と呼びなさい!解らない子にはオシオキだな?』二ヤァ

『先生……だめぇ……』

 

とかやるんだるぉぉぉぉぉお?」

八家がその場で叫ぶ!!

*ちなみに天峰はまだ途中までしか行ってません。

 

「ヤケ!?どうしたおまえ?まだ何も言ってないぞ!?未来予知か?G4システムとか積んでるのか!?」

 

「はぁ……はぁ……すまない天峰。

最近ゆっくり寝てないから……少し精神が不安定に成っててな……」

肩ではぁはぁと息をしながら八家がそうつぶやく。

 

「寝てない?テスト勉強か……お互い大変だな」

 

「いや?テスト勉強じゃなくて、提督とプロデューサーの仕事が――」

*どちらも2次元の出来事です。

 

「勉強してないんかい!!」

八家の言葉に天峰の魂の叫びが響いた!!

 

「いやー、ついイベントに夢中に成っちゃって……」

 

「どんなイベントだよ?」

八家の言葉に興味が沸いた天峰が尋ねた。

夕日にはもうすこし待って貰う事になるだろう。

 

「えーと……あれ?どんなイベントだっけ?」

 

「ヤケェ……お前、何だかんだいって全部ダメにしてないか?」

 

「かもしれん……今すぐ……今すぐ帰って提督とプロデューサーの仕事してくる!!」

天峰の言葉に八家が教室から走り出す!!

選んだのは勉強ではなく遊び!!この男!!人生をダメにするタイプ!!

 

「うおおおおおお!!待っていてくれぇえええええ!!今すぐ俺が会いにいくよおおおおおおおおおお!!!」

 

「アイツ何処に向かってるんだろな?」

誰に話すまでも無く、天峰が一人つぶやいた。

教室の窓から外を見ると、ハイスピードで自転車が走り去っていくのが見えた。

天峰は無意識に敬礼の体制を取っていた。

それは死にゆく友への手向けか、それとも潔さに対する敬意か……

 

 

 

「……天峰……何を……してる……の?」

 

「あ!ゆーかちゃーん!!」

おかしなものを見る様な目で夕日が、八家の走り去った廊下の方を指刺す。

天峰は八家の事など忘れ、ワンオクターブ高い声で応える。

おそらく天峰の人生を違う意味でダメにするタイプ!!

 

「……さっきの……って……」

 

「ああ、気にしないでよ。この季節、現実逃避でああなる人がいるんだよ。

迎えに来てくれたんだね、待たせてごめんね?

さぁ、図書館まで行こうか」

 

教室全体を包む『なんだアレ?』の空気を無視して二人は歩き出した。

 

 

 

 

 

駅内図書館。

天峰たちの住む町の駅は、複合施設に成っている。

程よく田舎過ぎず都会過ぎない町なのだが、電車を使えば1時間もしない内に都会まで足を進めることが出来る。

しかしこれでは、都会の植民地でしかない。

と考えた先代市長が、駅と駅周辺の施設の充実を図ったのだ。

 

結果、駅周辺に様々な施設が乱立した訳の解らない町が完成した。

それがいい意味を持てば良いのだが、種類を多くしたことで器用貧乏感が増え『痒い所に手が届かない駅前』が完成した、ちなみに近くにあった商店街が打撃を受け。

結果的に『商店街が寂れ、中途半端な施設が出来た』という最悪のパターンと化している。

 

 

 

駅の内部にある図書館で、天峰と夕日が座っている。

夕日は教科書を広げ今日の宿題をしている。

解らなければ天峰に聞き、偶に電車の出入りで館全体が揺れる以外は問題なく勉強をしていた。

 

「天峰……出来た……」

 

「ん?おお、よくできたね。なかなかの発展問題だったのに……」

夕日の言葉に、天峰が自身の見ていた教科書から視線を上げ内容を確認する。

天峰が基本を教えた所、なかなかに夕日の飲み込みは早く次々と問題を解いていく。

 

「少し休憩しよ――」

 

「はぁい!おにーさん!!奇遇だねー」

夕日と共に休もうとした時、天峰の後ろから衝撃を受ける。

何事かと思い振り返ると……

 

「クノキちゃん……居たの?」

夜に会っていた、謎の少女クノキが立っていた。

何時もは途中でかける眼鏡を今日は最初からかけていた。

 

「そりゃー、もうね?私こう見えて文学少女だしー?図書館で知的な時間とか過ごしちゃう訳よ?」

そう言って手に持つ本をバシバシと叩く。

文学少女にあるまじき行為である!!

 

「……天峰……この子……誰?」

夕日がジッとクノキを見据える。

何時もの冷ややかな視線だ。

 

「うっ……はじめまして。えーっと……小鳥遊(たかなし) 黒乃汽(くのき)でーす!!シクヨロ~」

一瞬夕日の瞳にたじろぐが、すぐに何時もの調子を取り戻しへらへらと笑い出す。

 

「あ、クノキちゃん前と苗字変わってる。前は夜城だったのに……」

前回と違うプルフィールに天峰が突っ込む。

 

「あ……!

ま、まあ。良くない?クノキの部分以外は気分次第だしぃ?

あ、あははははははは!!」

天峰の突っ込みにごまかす様に笑い出す。

 

「……ふうん……」

夕日がジッとクノキを見つめる。

 

「ど、どうしたのカナ!?私に惚れちゃった?ごめんねー?私の心にはもう決めた人が――」

 

「……無理……を……しない方が……いい」

くねくねと体をくねらすクノキを、夕日が冷ややかな視線で見つめる。

それを聞いて、気まずそうにクノキがピタリと体を止める。

 

「それにしても、偶然だね?クノキちゃんは良くこの図書館利用するの?」

空気に耐え兼ね天峰が助け舟を出す。

 

「勿論よ!必ず月3は通ってるわ!!」

 

「月に3回って微妙じゃね?」

 

「……ラノべのコーナー……行くだけだし……」

天峰の言葉に絞り出す様にクノキが答える。

手に持つ、本が僅かに揺れる。

 

「クノキちゃんってどんなラノべ読むの?少し見せ――うっ!?」

天峰がクノキの持つ本の表紙を見て固まる。

本の表紙には半裸の少年たちが、気だるげに抱き合う姿が描かれていた。

 

「お、おう……」

予想外の内容(というより図書館にこんな本が有るのを予測する方が不可能)に天峰がどうしょうもない気分で声を漏らした。

 

「何よ!?いけない訳!?恋愛はもっと自由であるべきなのよ!!むしろこれは性別を超えた愛が――」

 

「……展開が……急……突発的すぎる……」

机に置いてあったクノキの持っていた他の本を見て、夕日がダメ出しする。

 

「「何、冷静に分析してるの!?」」

クノキと天峰の突っ込みが同時に重なった!!

*図書館ではお静かに。

 

「ま、まぁ私の本は置いておいて……お二人さんは、どういう関係?恋人?それとも体だけの関係?それともスワッピング後のカップル?

あ!わかった!!

 

『天峰……此処が……解らない……』

『ここでは先生と呼びなさい!解らない子にはオシオキだな?』二ヤァ

『先生……だめぇ……』

 

的なイメージプレイをしに来たバカップルでしょ!?」

何処かでつい最近聞いたようなシチュエーションをクノキが口走る!!

 

「クノキちゃん!?そんな不健全な関係じゃないからね!?」

 

「恋人じゃない」

 

「う、うん……恋人じゃないよ……兄妹だよ」

夕日の即答に天峰がダメージを受けながら答える。

 

(一応、少しの間だけ付き合っていたのにな……)

 

「へぇ?兄妹?遺伝子仕事しないね?」

天峰の言葉にクノキが目をぱちくりする。

その指摘の今度は夕日が少し気まずそうにする。

 

「実は血のつながらない兄妹なんだよ。

いろいろあって、夕日ちゃんは今俺の家に住んでるんだ。

血のつながりは無いけど、大切な家族なんだよ」

そう言って、夕日の頭を天峰が優しく撫でる。

 

「あっそ。血のつながりね」

露骨につまらなそうな顔をクノキがする。

その表情にはむしろ苦しみすら、込められている様だった。

 

「クノキちゃん?」

クノキの様子に違和感を感じた天峰が声をかけた。

 

「ああ、ごめん。なんかぼーっとしちゃって……そろそろ閉館時間も近いし私帰るわ!

私、来週もこの時間に居るつもりだから、また会ったらジュースとかなんか奢ってよ。

じゃー、バハハーイ」

手早く本をまとめ、クノキが貸し出しを済ませ、逃げる様に図書館から出ていく。

 

「なんだったんだ?」

嵐のように去っていった、クノキを見て天峰が一人つぶやいた。

 

 

 

 

 

 




作中にある、クノキの本の下りは私が昔体験した似たような出来事から来てます。

学校の図書館で、後輩の女の子に「先輩読みます?」と言って渡された漫画。
何故その子は私にそれを貸し出したのか……
いまだにわかりませんね。

「展開が急だね?絵はうまいけど……そこに行くまでが疎かかな?」
そんなことを言った記憶があります。

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