リミットラバーズ   作:ホワイト・ラム

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久々の投稿に成ります。
なかなか、書きたいようにかけなくて……
大筋は出来ているんですけど……ね?


なんで殴ったの!?しかも鼻!!

「うえ……」

「あー……」

夜のコンビニで少女と少年が、一本のジュースを手にしようとしてお互いの手をぶつけてしまう。

まるで恋愛小説の始まりの様な展開だが、お互いが苦々しい顔をしているためそんな甘い展開でないことは容易に想像できる。

 

「やぁ、クノキちゃん……」

 

「クノ……キ?ああ!確かそう名乗ったっけ、すっかり忘れてた……あちゃー」

天峰のぎこちない挨拶にクノキが、自身の頭の後ろを書きながら解りやすい作り笑顔を作る。

言葉の内容からやはり『クノキ』というのは偽名であるらしい。

天峰にとってそんなことは関係ないが……

 

「こんな時間にまた会ったね、夜のコンビニにはよく来るのかい?」

前会ったコンビニとは別の場所だったが……

ぎこちない空気を持たせるために、天峰がクノキに話題を振る。

 

「え、え、えっと」

天峰の言葉に、クノキが何かに気が付いたように焦りはじめ大慌てで自身の服や持ってきていたカバンをあさり始める。

 

「あった!」

その言葉と共に眼鏡を取り出しかける。

それでようやくクノキは冷静を取り戻した様だった。

 

「フフン、待たせたね。おにーさん、こんな深夜のコンビニまで私を追ってくるなんて……もしかして、私に惚れたかなぁ?」

さっきまでの慌てた態度は何処かに消え失せ、不敵な笑みを浮かべ自信ありげに眼鏡のツルをクイッと指で上げる。

 

「さて、帰るか」

天峰全身全力で無視!!買おうとしていたドリンクを諦めすたすたと、消しゴムだけもってレジの方へと歩き始めた。

 

「おにーさん!?せっかく私が一世一代の大爆笑ジョークを言ってあげたんだよ!?もう少し反応すべきなんじゃないカナ!?」

 

「うーん……25点、全米が鼻で笑うレベル。ん、じゃーねー」

必死に追いすがる天峰が辛口の採点をして、すたすたと再び歩みを再開させる。

テスト週間が近い天峰にとって、面倒事はごめんなのだ!!

 

「待ってよ、ってか待ちなさいよ!!ほら、『また会えてカンドー!!』とか、『うれぴー!!』的なリアクションは!?無いの!?無いの!?」

 

 

 

「コレください、レシートとレジ袋いりません」

 

「128円です」

 

「ハイ、130円。おつりは募金しといてください」

 

「あざーす!!」

天峰ガン無視!!圧倒的ガン無視!!

天峰のスルー力は今、53万位ある!!……気がする。

 

「おにーさん、おにーさん!!」

 

「あーもう!!なんだよ!!」

繰り返されるクノキの声に仕方なく振り返る天峰!!

幼女好きの天峰出なかったら、決して振り返らなかったであろう!!

 

「30円貸してください!!」

その言葉に本日何度目かの頭痛を天峰は感じた。

 

 

 

 

 

「いやー、焦ったよ。まさか30円足りないなんてねー」

コンビニの駐車場で、クノキが近くに備え付けられたベンチに腰を下ろしジュースに口を付ける。

 

「はあ、前にも言ったけど……あんまり遅い時間に出歩くのは――」

 

「うえー!!マッズ!!なにこれ!?史上まれに見る?味わう?不味さ!!コレ160円はアカン!!……どうしたのおにーさん?」

何とも言えない表情で、天峰がクノキを見ていたのに気が付く。

 

「いや……なんか会って10分もしてないのにすごい疲れた……帰って寝たい……」

 

「寝たいって……私と!?」

 

「違う!!」

げっそりしながら、天峰がそういって否定する。

家に帰ってから勉強して寝るつもりだったが、帰り次第寝ることに成りそうだ。

クノキからは天峰を疲れさせる特有の、電波か何が出ているのだろうか?

 

「さっきから変にテンション高くない?」

 

「いやー?家ではこんな感じよ?」

ご家族はさぞ大変だろうと、思いながら天峰がひそかに同情する。

 

「まぁまぁ、あんまりいやそうな顔しないでよー。ほら、再会を祝って一杯やらない?」

そういいながらクノキが、ペットボトルにを天峰に差し出す。

たぷんと乳白色の液体が揺れる。

 

「不味いって言ってなかったっけ?」

 

「ギクッ!?……い、いやー?コレ、チョーおいしよ?うんうん」

 

「ビックリするほど棒読みだな!!おい!!」

天峰の言葉を無視して、クノキが天峰にジュースを投げ渡した。

 

「はぁ、さて、クノキちゃん?夜遊びも良いけど……大概にしなよ?この前補導されかかったばかりじゃない?」

 

「いやだなぁ?だからこっちの方まで来たん――」

 

「あー、はいはい。言っておくけど心配してもらえる内が辞め時だよ?

ってかクノキちゃんだって、テスト近いんじゃない?俺の妹も最近がんばってるけど?」

あきれたと言いたげな視線をクノキに投げかける。

考えてみれば、クノキの部分は謎が多い、現在はテスト週間だが学校によって多少前後するだろうが、何度もこんな夜に中学生の子と出会うだろうか?

天峰は今更だが疑問に持ち始めた。

 

「おっと、今更?テストとか……あんまり気にしないのよ?数字で縛られたくないったの?」

 

「馬鹿!!今はその数字が大切な時なんだよ!いいかい?説教臭いけど、やらなくちゃいけない事ってのは誰にでもあるんだよ!!

やりたい事とやらなくちゃいけない事、そのバランスをとって生きて行くの!!わかった?」

 

「えー……詰まんないなー」

その言葉通り、クノキが唇を尖らせる。

 

「クノキちゃん?いいかい?もう少し自分を大切にしなくちゃダメ!!最後の最後に自分の味方になるのはきっと自分自身だよ?」

天峰の言葉に次ぎこそクノキが黙ってしまった。

気まずい沈黙が二人の中に流れる。

 

「おにーさん……」

 

「さて、悪いけど。俺はもう帰るよ?もう少し勉強したいからさ」

そういって天峰は思い沈黙に耐え兼ねて自身の愛自転車に乗っり、夜の闇に消えていった。

一人ポツンとクノキだけがその場に残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

「……天峰……ここが解らない……」

帰って来た天峰を待っていたのは夕日だった。

天峰が出掛けてから、待っていた様で座布団に座って自身の教科書を広げていた。

 

「ずっと待ってたの?ごめんね、夕日ちゃん。ちょっと見せてね」

その言葉と共に天峰が夕日から教科書を受け取り、ざっとその場で目を通す。

何も難しくない、簡単な問題の応用だった。

 

(ん?もしかして……)

しかしその問題の部分に天峰は小さな違和感を感じた。

 

「夕日ちゃん、この問題出来る?」

 

「……すこし待って……ん?」

少し困った顔をしながら夕日が問題を解き始める。

 

「……できた」

夕日の出した問題の答えを見て天峰がわずかに顔を曇らせる。

 

「うーん……残念だけど不正解だね、夕日ちゃんあんまり勉強得意じゃないね?」

 

「……そんな事……ない……部屋で……やってくる……」

何かを隠すように夕日がその場から立ち上がろうとする。

しかし

 

「はぁい、逃がしません。こっちにいらっしゃい」

天峰が夕日の腕を掴み自身の方へと引っ張った。

中学の少女と高校の男子の身体能力差から、夕日は天峰に引っ張られるまま天峰の膝の上に落ちる。

胡坐をしている天峰の膝の上に、夕日が座る形になる。

 

「……なに……するの……放して……」

暴れる様にして、夕日が体をひねる。

しかし天峰は夕日を放しはしない。

 

「夕日ちゃん、別にできない事は恥ずかしくないんだよ?わからなかったりしたら俺が教えてあげるから」

諭すように夕日の頭を撫でる天峰。

その言葉と態度に夕日が大人しく成っていく。

 

「……本当に?」

 

「勿論本当さ、解るまで……って言いたいけど、あんまり遅くなるのは良くない、かな?夕日ちゃん明日学校が終わったら駅前の図書館に行こうか、あそこあんまり人がいなくて勉強するにはいい場所なんだよ」

問題を片手に内容を見ながら天峰がそう話す。

夕日は中学に入学したばかりの頃は、訳あって病院にいた。

当然その分、分かりやすく言うと基礎の部分が出来ていないのだ。

 

「……迷惑……じゃない?」

 

「大丈夫!おにーさんに任せなさい」

夕日を安心させる様に、天峰は夕日を撫で続けた。

 

「夕日ちゃんはかわいいなー、よしよ……痛ぇ!?なんで殴ったの!?しかも鼻!!」

 

「触り方が……やらしいから……」

 

 

 

 

 

暗い夜道で、クノキがポケットから携帯電話を取り出す。

無言で画面をみて、不慣れな様子でボタンをプッシュしていく。

 

「もしもーし、どうしたの?こんな夜中に?しかも珍しい相手だからびっくりしちゃったよ」

ミステリアスで、こちらの事などすべて見通していると言いたげな誘う様な怪しい声が電話の向こう側から聞こえてきた。

クノキは正直言ってあまりこの電話の相手が得意ではなかった。

いや、相手の性格上苦手とする人が多いのではないだろうか?

それでも、それでも彼女が有能であるが故に頼らなければ成らないのが癪に障るところだ。

 

「久しぶり……読河さん……」

 

「もうー、苗字呼びなんてよそよそしい事、止めてよ。

前みたいに『夜宵ちゃん』でいいからさ」

電話の向こうで相手が笑う様に漏れる吐息が聞こえる。

毎度、彼女の態度は読み切れない。

信用していいのか?何か裏があるのではと疑ってしまう。

 

「え、ええ。ごめん、実はちょっと調べてほしい人がいて……」

 

「おおっと?今日は本当に珍しいね、私の情報網に御用?」

誇らしげに夜宵が話す。

その口調からは『何か楽しい事が始まった』という考えが見え隠れしている。

 

自身の頼みを言う前に、クノキが一回深呼吸する。

それだけ、これからの事は彼女にとっても、気の重い事なのだ。

 

「タカミネって名前の人を調べて欲しいの」

クノキの言葉に、電話の向こうの夜宵が息を飲むのが聞こえた。

にやにやした雰囲気が消え、一瞬にして静寂が訪れる。

 

「タカミネ……それは『幻原 天峰』の事?」

 

「知ってるんだ……夜宵ちゃん……」

お互い絞り出すように会話を続ける。

クノキにとってなぜ、夜宵がこんなにも押し黙るかは理解できないが相手を知っているという事は、クノキにとって朗報だった。

 

「うん、ちょっと昔ね……具体的に知りたい事は何?」

 

「あの人の事……どんな事でもいいから教えてほしいの」

 

「へぇ、例の癖だね……いいよ、くも――じゃなかった、今はクノキだったね。

うん、わかった。私の知ってる事なら全部教えるから、だから、さ――」

 

「ごめん、もう切るね……」

夜宵の言葉を無理やり区切る様に、クノキが言葉を漏らす。

直ぐ後に電話の通話状態は終わった、あっさりと二人をつなぐ会話は途切れてしまった。

 

 

 

「そうだ……私はクノキ……もう、玖杜(くもり)じゃない……そうだよね……帰ってゲームしよう……」

ふらふらとした足取りで、クノキは自宅への道を歩き出した。

 

 

 

「はぁ、クモちゃん……まさか、あの子まで『幻原 天峰』か……

何なのかな?この『天峰』の集客率……にしても、『天峰』かー。

あーあ、勝手な事したらおねーちゃん怒るかな?

まぁ、いっか!面白そうだし!!」

さっきまでの悩んだ様子は何処へやら。

夜宵は面白い事が始まった!!と言いたげな顔をして一人その場で小躍りを始めた。

彼女の心中は誰も知らない、ひょっとしたら彼女自身も知らないこかもしれない……




まさかの人員、読河 夜宵!!
そしてクノキの本名が判明!!

さて、次回はどうなるのか!?

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