訳あってしばらく更新がストップしていましたが、私もついに復活です。
これからまたよろしくお願いします。
「いただきます……」
「……いただきます……」
天峰と夕日が同時に手を合わせ、朝食に手を付ける。
今日のメニューは目玉焼きとソーセージ。
幻原家ではパン派とご飯派が分かれているため、主食はどちらでも好きな方をとるスタイルだった。
すでに天音は先に手を付けており、口いっぱいに白米を掻き込んでいた。
「ズズーッ……モミジか?」
味噌汁を飲みながら、ボソッと天音が天峰の顔を見てつぶやく。
「……ああ、そうかもな……」
天音の言葉を気にしながら自身の頬に手を当てる。
天峰本人からは見えはしないがくっきりと赤い紅葉のような跡がついている!!
「……自業……自得……」
食パンをちぎりながら夕日が天峰を睨む!!
その顔は不機嫌に歪んでいた。
「おい、夕日何かあったのか?ほれ、姉貴である俺が聞いてやるから話せよ」
「……私の方が……年上……妹は……ハイネの……ほう」
興味深々と言った感情を覗かせながら天音がそっと夕日に耳打ちする。
それに対して夕日はいつもの様に返した。
「なーんだよー!!気になるだろ!?話せよな!!」
早くもしびれを切らした天音が夕日に箸を突きつける!!
大きな言葉を叫んだせいで夕日の顔に米粒が飛んでくる!!
「あ”……ワリィ……」
「……ごめんで済んだら……警察は……いらない……の……!」
謝る天音に対して夕日が自身のパジャマのポケットに手を突っ込む。
キチ……キチキチ……と何かを動かすような音がする!!
「お?やる気か?いいぜ、掛かってこいよ。返り討ちにしてやるぜ!!」
「アハッ!……やる気なんだぁ?……バラバラにしちゃおっかなぁ~」
天音が椅子から立ち上がり、好戦的な表情で人差し指を動かし夕日を挑発する。
同じく夕日も椅子から立ち上がり、何処か濁ったような瞳でポケットからカッターナイフを取り出す。
余談だが、このカッターは刃の部分を取り払い代わりにホームセンターで買った同じサイズの銀色の鉄の板を仕込んでいる、模造刀ならぬ模造カッターである。
夕日はこだわりが有るのかカッターの刃にある溝まで再現している。
一触即発の空気の中、天峰はトーストの耳を味噌汁に浸し食べていた。
「はいはい、二人ともそこまで!!時間はもうないぞ!!」
その言葉で、ハッと気が付きお互いに椅子に座り食事を再開する。
「むぐ……で?結局なんでアニキの頬は腫れてんだ?まぁ、あのモミジマークを見れば大体予測は出来るんだがよ」
自身の目玉焼きの黄身を潰し、その中にソースを垂らしながら天音が誰に聞くでもなく尋ねる。
「……昨日、天峰と……一緒に寝た……」
箸で目玉焼きに白身を切り分け、醤油を垂らしながら夕日がポツリと話す。
その言葉に天峰がの顔が気まずそうな表情に変わる。
「で?」
「……朝……寝ぼけて……抱き着いて来た……」
「ああん!?そりゃ全体的にアニキが悪いな、何やってんだか」
天音が天峰を馬鹿にしたように話す。
この間にもどんどん天峰の顔は青くなっている。
「……問題は……その後……」
「後?」
「ゆ、夕日ちゃん?そ、そろそろ行かないと時間的にやばいんじゃないかな!?」
焦るように話題をそらしにかかる天峰!!
せかすように壁にかかった時計を指さす。
「……む、胸に……手を……伸ばしてきた……」
「ハイ、アウトー!!アニキ、学校から帰ったら警察に出頭な」
まるで汚物を見るかのような瞳で天峰に言葉を投げかける天音!!
この時!!すでに夕日対天音の構図ではなく二人掛かりで天峰を糾弾する体制にチェンジしている!!
「いや、だってアレは……気づかなかったって言うか……」
「私の胸をお腹と間違えたの!!」
天峰の言葉をさえぎって夕日の叫びが朝のリビングにコダマする!!
「へ?間違えた?……胸と……腹を?……ああ!!なるほどな!!」
夕日の胸に視線を送った後、自身の両手をたたき合わせ、合点が行ったと言いたげに天音が笑う。
「ち、違うんだよ!?俺は胸を撫でる気じゃなかったんだよ!!夕日ちゃんの背中を抱きしめながら撫でようとしただけで……!!」
「ぎゃははははは!!あ、アニキ背中と胸、間違えてら!!あー!!おっかし!!」
大きな声で天音が二人を指さし笑い出す!!
「……背中?……お腹……じゃなくて……背中と……間違えたの……?」
天峰がしまった。と思った時はもう遅かった!!
夕日がさっき天音に向けたの以上の視線を天峰に投げかける。
暗く暗く濁った左目の視線と、作り物であるが故の無機質な右目の眼力の違いが非常にアンバランスだった。
「しょ、しょうがないんじゃね?だってよ。夕日お前、体のサイズだけなら小学生で十分通じるし……ぷぷ、ダメだ……抑えきれねー!!あはははっははあは!!む、胸と背中!!胸と背中ぁ!!あははっはははははあは!!」
慌てる天峰、睨む夕日、爆笑する天音。
三者三様の姿を見せるなかで……
「……あるもん!!……最近……少し大きく成ったもん!!」
涙を浮かべそうな顔で夕日が、自身のパジャマの裾をつかみめくりあげ様とする!!
「夕日ちゃん!?見せなくていいから!!しまってしまって!!」
天峰が夕日の裾をつかみ下に下げようとする!!
正直言うと見たいのだが、さすがに今はその時ではない!!
「……天峰……放して……手を……どけて!!」
「絶対にNO!!」
天峰がそう叫ぶと同時に背後の扉が勢いよく開かれる!!
「うるせーぞお前らぁ!!飯位静かに食えねーのか!!」
扉を開け、幻原家の母親。幻原
低血圧で朝に弱い彼女は、毎朝旦那に食事を作ってもらっている。
同時にすごくこの時間態は不機嫌なのだ。
「天峰ぇ!!お前!!朝から何やってんだぁ!?」
すさまじい剣幕で天峰の方に向かってくる母親!!
一瞬混乱するが……
改めて自身の状況を整理すると……
①手をどけてと懇願する夕日
②そこに手を伸ばし放さない天峰
(あれ?コレ……俺が夕日ちゃん脱がそうとしている様に見えなくね!?)
その結論を決定付けるように天峰の頬に再びビンタが飛んでくる!!
「ぐす……成長……してる……もん……」
「あー、分かった、分かった。アニキの悪気があった訳じゃねーから気にすんな」
わずかに泣く夕日に対して天音が励ますように声をかける。
たまに噴き出すので説得力は皆無なのだが……
「しっかし、ドウすっかなー」
「……何の……話?」
天音の言葉に夕日が疑問を持ち問いかける。
「いや、だってよ?もうじき夏休みだぜ?プールとか海とか行きたくね?」
「……あんまり」
「なんでだよ!?夏と言ったら海だろ!?プールだろ!?」
「……傷……見られたくない……」
その言葉に天音がハッとする。
夕日の体には無数の虐待痕が刻まれている。
その傷は癒えてもその傷跡はいまだに夕日を縛り続けているのだ。
「おい、夕日。その傷はお前のだよ、気にする気持ちもわかる……
だがよ、今年の夏は一回しかねーんだぜ!?なら楽しめよ、そんなの気にすんなよ!!ここで遠慮しちまったらきっと一生そうだぜ?もし、もし誰かがお前をじろじろ見て笑うなら……そんな奴俺がぶっ飛ばしてやる!!だから、だから諦めんなよ!!」
「……何それ……むちゃくちゃ……」
「むちゃくちゃでいーんだよ!!お前は考えすぎなんだよ!!とにかく前を見ようぜ、歩いていけばゼッテーどっかにはたどり着けるからよ!!」
そういうと手早く自身の弁当を持ち、玄関から走り出した。
「……アリガト……ハイネ……」
少しだけ、心が軽くなった気がした夕日も同じく玄関から学校へと向かっていった。
「よー天峰!!……なんだその顔?ムンクか?」
「よう、ヤケ……ちょっとな……」
教室にてシャー芯を入れていた天峰の顔を見て八家が言葉を漏らす。
その言葉通り天峰の顔には両頬に赤い手形が付き、有名なムンクの叫びをイメージさせるデザインに変わっていた。
「なぁ天峰!!今年の夏はプールに行こうぜ!!水着の美女ナンパしようぜ!!」
「いいな!!親御さんとはぐれて不安げな幼女と一緒に母親探しとかしたいね!!」
微妙にかみ合わない変態とロリコンの会話!!
しかしそんな二人に試練が迫る!!
「はぁい?二人とも楽しそうね?それよりもうじきテスト期間なんだけど?」
二人の肩を抱くように現れた少女は卯月 茉莉。
成績優秀者が輝く瞬間!!それはテスト期間!!
「今年の補習は夏休み返上だって」
卯月の言葉に二人が戦慄する!!
水着美女のため!!迷える水着幼女のため!!負けられない戦いが……近づいていた!!
しばらくぶりに書いたせいか……いまいち感覚がつかめない……
うーん……ブランクですかね?
ちなみに今回で天峰の母親の本名公開。
特に意味はないのですが……
ちなみに天唯でアユと読ませます。
由来は「天上天下唯我独尊」
天峰から見て祖父の「
兄に
曾祖父の名は
「天」を名前に入れたらこうなった……
きっと天峰の名前を付けるとき、両親すごい喧嘩しただろうなー