そろそろリミットも0に成りますし。
皆さんには最後までお付き合いいただけたら幸いです。
Time limit 03:26:19
ひしひしと伝わってくる嫌な予感を振り払うため、藍雨の無事を確かめるため天峰は昨日登録したばかりの藍雨のアドレスに電話を掛ける。
小学生の藍雨が学校に携帯を持って来ているか解らないし、天峰の思いすごしの可能性も十分ある。
結局天峰の思い過ごしで無用な心配だった。
と二人で笑えればいい、そんな日常こそ天峰の求め結果だ。
しかし天峰の望むようにはならなかった。
数度のコールの後相手に電話が繋がる。
『はい!!もしもし?もしもし!!』
必死な様子の女性の声が聞こえる。
電話相手は藍雨ではなかった、詳しくは解らないが声の質からかなりの年上であることがわかる。
じくじくと天峰の心の中の嫌な予感が現実味を帯びていく。
「あの……藍雨ちゃんの……」
藍雨の名を出した瞬間、相手の女性が息を飲むのが電話越しでもはっきりわかった。
「お願いです!!藍雨を!!私の娘を返してください!!」
悲痛な声は悲しみの色が濃くなり、もう殆ど聞き取り不能なレベルでの泣き声に変わっていった。
「落ち着いて、落ち着いてください!!藍雨ちゃんがどうかしたんですか!!」
天峰は必死で電話越しで相手の女性(本人の話を信じるなら藍雨の母親)を落ち着かせようとする。
しかし電話から聞こえてくるのは壊れたレコードの様な「藍雨を返して」の繰り返しで要領を得ない。
「クソ!!」
天峰は悪態を付き、電話を切るお同時に学校の駐輪場に向かう。
詳しい事は解らないが話に依ると藍雨が行方不明らしい。
(行ってみるしかないよな……コレが藍雨ちゃんからのメッセージなら……藍雨ちゃんは俺に助けを求めてる……それなら、俺が行かなくちゃいけない!!)
差出人不明のメールが着信した携帯をポケットにねじ込み、自身の愛車に跨る。
「最初に状況を確認しなきゃな!!」
ペダルに足を掛け、がむしゃらに藍雨の家に向かって行く!!
Time limit 02:57:22
「はぁはぁ……着いたぞ……」
がむしゃらに自転車を漕ぎ、昨日きた藍雨の家の前に天峰は居た。
昨日とは全く違う嫌な気分で門をくぐる。
見た目は昨日と全く変わりはしない。
しく……しく……
唯一つ違う点は、縁側で女性が呆然としながら泣き崩れている事だった。
天峰に気が付いた女性が天峰に飛びついてくる!!
「お、お願いです!!お願いですから藍雨を返してください!!」
電話の向こうと同じ声。間違いないこの女性が藍雨の母親だ。
「落ち着いてください!藍雨ちゃんに何が有ったんですか?」
「あの子が居ないの!!帰ってきたら家が滅茶苦茶で、藍雨が居なくて……どうして?私があの子を一人にしたから?私があの子のイイコな所に甘えていたから!?どうしてこんな事に成ったの!!」
そう言って泣き崩れる。
自分よりも大人の女性が泣くのを天峰は初めて見た。
そんな天峰に起こる感情は困惑でも同情でも共感でもなかった。
「……いい加減にしろよ……」
「何?何か知って――」
「いい加減にしろって言ってんだよ!!」
天峰に縋り付こうとした母親を天峰は、手荒く振り払った。
突如自身に向けられる怒りに、唖然とする藍雨の母親。
「何混乱してるんだよ!!娘が居ない!?そりゃ誰でも不安だろうさ!!けどな、親の、保護者のアンタがそんなんでどうすんだよ!!やることが有るだろ!?警察は?学校への連絡は?……アンタの言うとおりだよ、アンタは藍雨ちゃんの優しさに甘え過ぎた!!今藍雨ちゃんはすっごく不安なんだよ!!なら、助けに行かなくちゃいけないだろ!!なんでアンタは動かない!!親子なんだろ?親子なら正面から向き合ってやれよ!!親子なら自身の娘の為に何かできるだろ!!」
天峰の言葉に、藍雨の母親がハッとする。
今の今までずっと泣いてばかりだった様だった。
「昨日何時ごろ帰りました?車……特にハイエースやバンなんかの荷物がたくさん運べるヤツ見ませんでした?」
天峰は藍雨の母親の言葉から、推理を組み立てていた。
(部屋が荒らされていたんなら、普通は物盗みだよな。けど藍雨ちゃんが居ない……攫うだけなら部屋は荒らさないハズだし、物を盗むなら攫う必要もない……って事は突発的に攫った?藍雨ちゃんが小学生とはいえ人ひとり簡単に攫えるもんじゃない……暴れない様に拘束する道具が居るし……攫った後監禁する為の人に見つからない場所もだ……)
天峰が脳内で可能性を考えていると隣から声がかかった。
「見ました……昨日……4丁目……駅の西を行った所でハイエース見ました……深夜の1時位です……この辺には珍しいから覚えていました」
「たぶんソレです!!お母さんは警察に電話お願いします!!俺はこっちで探しますから!!」
それだけ言うと天峰は門の外に出た。
自身のポケットから携帯電話を取り出す。
数回のコール音の後、目当ての相手につながる。
「よう、どうした天峰?授業ほっぽり出してよ?」
「そんな事より、ちょっと時間いいか?今どこいる?」
「トイレだよ、授業中に急に便意が……」
「なぁヤケ、お前昨日ハイエース見たって言ったよな?どこ等辺で見たか教えてくれるか?あと見た時間帯」
「ハイエース?ああ、昨日のな?確か時間は一時半位か?コンビニに本を買いに行ってたから……グレゴリ屋って分かるか?弁当屋なんだけ――天峰?天峰?」
必要な情報を聞き終った、天峰はヤケの言葉に有った店に向かって走っていた。
時間帯、車種からおそらくこの話はつながっている。
目印は藍雨の家と駅前とヤケの目撃情報、そして車種のみと言う絶望的な物。
犯人と決定したワケではないが、可能性が有るなら向かって行くしかなかった!!
がむしゃらに天峰は自転車を漕ぎ始める。
「なんだったんだ?天峰のヤツ……」
トイレで用を済ませた八家が、授業中の廊下を歩く。
「天峰がどうかしたの?」
その声に振り返ると、学年いや学校の中でもかなりの美少女と噂の卯月 茉莉が立っていた。
内心ラッキーと叫びながらペラペラと話を始める。
「いやですね?僕の友達の天峰君が、僕の昨日見たハイエースの見た場所とその時間を教えてって言いましてね?意味が解んないなーって考えていたところなんですよ」
その言葉に対して卯月が目を細める。
さっき急に走ってい天峰の姿が卯月の頭の中で、チラつく。
「ふぅん……多分それ結構重要な事ね……ちょーっとだけ私も動こうかしら?」
そう言って卯月は美少女に有るまじきイタズラ少年の様な顔をした。
「この辺のハズだ……ここが最後に見つかった場所だ……!!」
イライラしながら天峰が八家の情報を貰った場所をぐるぐる走り回る。
この辺からはシラミ潰しで探していくしかない。
ハイエースの停められそうな場所を探す。
オニイチャンワタシヲカワイガッテニャー オニイチャンワタシヲカワイガッテニャー
掛かってきた電話を苛立たしげに取る。
相手は今しがた八家と話していた卯月だった。
「ハイもしもし!」
「天峰授業サボって何してるの!!」
通話早々卯月のお説教が飛ぶ!!
しかし今回はゆっくり聞いている暇はない。
「人助け中だよ!!たぶんだけど俺の知り合いの子が攫われたっぽい!」
「はぁ!?攫われたって……手がかりも無しに探す気!?それどころかそれは警察の管轄でしょ!?」
至極まっとうな事を話す。
しかし今の天峰にそんな事は意味など無かった。
一度決めた事を天峰はやり遂げるまで止まりはしない!!
「手がかりならある!!たぶんだけど車種はハイエース!!あと駅の東側に犯人は居るっぽいんだ!!やる事有るからじゃあな!!」
それだけ話すと天峰は電話をきり、再び自転車を動かしだした。
「……天峰なんだって?」
「友達が攫われたみたいね、今救出に行ってるんですって」
八家の問いに卯月が平然と答える。
まるで、なんでもない日常の事の様だった。
「へー……って!?それ一大事じゃないですか!?ってゆうかそんなの天峰になんか出来る訳ないじゃないですか!!」
卯月の言葉に、八家が激しく反応する。
平然の卯月は言い放ったが、非日常的な単語に八家の脳内は一気にパニックになる!!
「あーむりむり!アイツの決めた事って簡単には変えれないのよ。
はぁ、これさえなければロリコンも矯正できるのに……ま、こんな時は手伝うのが私の役目よね?」
もう何年もお互いの性格を知り尽くした、卯月だからこそ言える発言だった。
卯月は天峰の他人の為に一生懸命に成れるところが昔から好きだったのだ。
相手の気持ちを捕え、補佐すると言う意味では卯月は最も天峰のパートナーにふさわしい人間だろう。
「天峰はロリコン……そうだったのか……」
卯月の目の前で八家が驚いていた。
あんぐりと口を開けていた。
「(そう言えば隠してるんだっけ……まぁいいわ)」
小さくそう呟くと八家を無視して携帯を再び取り出し2、3言葉話すと再び電源を切った。
「何処に掛けてんです?警察?」
「違うわよ、情報屋。さて、情報が来るまで暫くサボりましょう?」
そう言うと授業中だと言うのに楽しそうに笑いはじめた。
「であるからにしてここは……」
平和な午後、退屈な授業が続き教師が黒板に教科書の説明を書いて行く。
まじめに受けるメンバー達の中に夜宵はいた。
何の面白味の無い黒板をノートに写していく。
(ブルルッ!!)
そんな中携帯のバイブが鳴る!!
珍しく授業中だと言うのに着信だ。
面白そうな予感がして、夜宵はニヤリと笑い席を立つ。
「先生、お腹が痛くなったのでトイレに行ってきます」
そう言い放つと返事も碌に聴かず教室から飛び出した!!
しかし目指す場所はトイレなどではなく、学校の屋上だった。
「どうしたのお姉ちゃん?」
ワクワクが抑えられないと言った感情でうれしそうに応える。
「ああ、良かった。夜宵ちゃん、駅の近くのグレゴリ屋ってお弁当やを中心にハイエースを持ってる人を探してくれない?大至急!!マッハで!!」
「ハイエース?なんか訳ありっぽいね?いいよ、ちょっと時間掛かるけど探してあげる、何時でも電話に出られるようにしておいて」
その言葉を言い終わる前に電話を切る。
一回深呼吸する。
そしてニヤリと笑うとスカートから2台目の携帯電話を取り出す。
それだけではない!!
カバンの中から更に3、4台目の携帯電話を取り出す!!
両手で携帯を操作し始める。
一台はネットに接続、もう一台は文章を制作する。
3、4台目は基本的に自演用の道具に過ぎない。
付近一帯の車の情報。
車オタクと云うのは常に一定は居る。
その男達を上手く誘導して、
ドンドンハイエースの情報が来る。
次は本格的な捜査だ。
匿名の学校掲示板で目撃情報を募る。
それだけではつまらない、ハイエースの持ち主におかしな経歴を付ける。
今回は芸能人に似ていると言うパターンだ。
すると再びネット上で騒ぐ者たちが出てくる。
同時進行で、自身でそこに煽りを入れる!!
面白おかしく、興味を持つように……
それに気が付いた暇人たちは驚くほどのスピードで情報を集める。
人の目というのは恐ろしい、複数集つまればどんな秘密も有ってない様な物だ。
携帯という小さな端末に無数のデータが人の手を介し集まってくる。
最後は情報の取捨選択だ、使えそうな情報を集め一つの形に集める。
夜宵の手によって複数のバラバラの情報がたった一つの形に収まっていく。
取捨選択が終わり満足する形の事実が浮かんでくる。
誰も知らないであろう事を自身の手で形にする。
噂という虚実混ざった物から、生まれる確かな情報。
コレこそが夜宵の最も好きな事柄だった。
情報を見て満足気に笑う。
「ふぅ~疲れた、ゆとり世代なめんなよ?」
特定したハイエースの情報を手に、誰に言うでもなく夜宵は笑った。
「おっと!来たようね。流石夜宵ちゃん、仕事が早いわ」
嬉しそうに卯月が笑う。
情報に満足したのか、手早くお礼の返信をした。
「うんうん……ホイッと送信!!」
天峰に自身の受け取ったメールを流した。
八家はずっと卯月のうれしそうな表情を見ていた。
今回は天峰以外の活躍に焦点を当ててみました。
八家にもう少し出番を……!!
何気に良いトコはかなり持って行っていますが……