最近筆が少しノリが悪い作者です。
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「見た事ない天井だ……」
いつぞや読んだラノベの登場キャラの様な台詞を、天峰は一人つぶやいた。
その言葉通り、目の前には木の板の天井。
何気なく木目の数でも数えようとした時、黒い影が天峰の視界を遮る。
「あ!気が付いたみたいですね。大丈夫ですか?」
その影の正体は藍雨だった。
藍雨の顔をみた瞬間、天峰の脳内にさっきあった出来事がフラッシュバックする!!
「藍雨ちゃん、ごめん。俺藍雨ちゃんを甲子園に――」
「先輩!?しっかりしてください!!甲子園行く約束なんてしてませんよ!!」
藍雨が驚いた顔をする、焦った様な困ったような表情に思わず天峰の頬がゆるむ。
「ぷぷ……はは、大丈夫、ただの冗談だから。ちゃんと覚えてるよ、道場で藍雨ちゃんに投げられたんでしょ?」
思わず噴き出した天峰が、藍雨に優しく話しかける。
「心臓に悪い冗談は止めてください!!ホントに頭がおかしく成っちゃったんじゃあ?って心配したんですよ!?……っと……半分は私の
ぷんぷん怒りながらも後半は、どんどん声が小さくなっている。
初心者の天峰を気絶させた事は、少し気にしているらしい。
「ははは、だーい丈夫だって!!藍雨ちゃんちょっと心配症過ぎだよ?」
「け、けど、一瞬本気出しちゃいましたし……!!」
笑って答える天峰に、尚も藍雨は尚も不安そうな顔をする。
(本気出せば俺一瞬でやられるのか!?)
一部聞き捨てならない、というより出来れば気が付かないでいたかった言葉が藍雨から発される!!
しかし天峰は何とか年上の、威厳を保とうと余裕の表情を作る。
最も、小学生相手に気絶させられていて威厳もクソも無いのだが……
「き、気にしないでよ、本気出して良いって言ったの俺だしさ?それにしても藍雨ちゃんすごく強いんだね、大会とか無いの?有ったら優勝とかしてそうだけど?」
藍雨の気をそらそうと、あえて別のベクトルに会話を変える。
「そんな事ありませんよ?そもそも快晴気流に大会とかは有りませんし、それに私のお父さんとお兄ちゃんの方がずっと強いんですよ!!一回お父さん達に連れられて、空手の大会に遊び行ったんですけけど、お父さんもお兄ちゃんも年上の大会優勝者とか優勝経験者とかバンバン倒しちゃうんですよ!!……私は緊張してあんまり年が変わらない子を2、3人倒しただけなんですけど……」
何処か恥ずかしそうに、しかし父親と兄の部分は誇らしげに話す。
(う、うん!?遊びに行くって……意味違くない?それ道場やぶり……ってかお兄さん達強!!)
様々な突っ込みどころが有るが天峰は藍雨の前の為、華麗にスルー!!
「ふ、ふーん。すごいね!!」
何とかその言葉だけを発する。
「そうなんです!!お兄ちゃんは凄いんですよ!!……っと、思わず熱くなっちゃいましたね……あ、大分遅れちゃいましたけど夕飯出来てますよ、食べますか?」
「モチのロン!!」
そう言って、寝たままの姿勢から素晴らしい跳躍だ立ち会がる!!
先まで様々な事を考えていたが、藍雨のその一言で全て天峰は気にしない事にした!!
幼女の手作りご飯は、地球より重い!!
byロリコン。
「はい、こんなのしかないんですけど、どうぞ」
「うほぉう!?美味そう!!」
テンション振り切れ気味で天峰がリアクションを取る。
机の上に白米、味噌汁、野菜サラダ、目玉焼きの乗ったハンバーグさらには漬物が並んでいる。
「「いただきます」」
2人がほぼ同時に箸を手にし、食事を始める。
「う~ん!!このハンバーグおいしいよ!!藍雨ちゃんは強いだけじゃなくて料理も上手なんだね!!」
もきゅもきゅとまるでハムスターの様になりながら天峰が話す。
本来は行儀の悪い行為だが、藍雨はうれしそうに応えてくれた。
「そうですか?私はただお母さんの用意したのを、適当な大きさに分けて焼いただけですよ?」
「そんな事ないって、それを加味しても十分おいしいからさ!!」
藍雨がうれしそうに受け答えする。
「うーん!このたくあん、すごく美味しいよ!!どこのメーカー?」
ハンバーグの箸休めに、テーブルの上に置かれたたくあんを口にする天峰。
今まで食べてた事のない味に絶賛する天峰。
「ほ、本当ですか!?」
何気ない一言だったが、その言葉に藍雨が目を輝かせる!!
「これ、実は私のお手製なんですよ!!自分で漬けたんですよ、まだまだありますからちょっと待っててくれますか!?」
それだけ言い放つと、藍雨はそのまま台所まで走って行ってしまった。
「ヤベ!もう九時か!?」
何気なく時間を確認した、天峰が焦って声を上げる。
現在の時刻は8時54分。
しっかりした時間は決めてないが、そろそろ卯月が電話をかけてくる時間だろう。
そんな事を考えていると……
自身の携帯電話が震えだす。
オニイチャンワタシヲカワイガッテニャー オニイチャンワタシヲカワイガッテニャー
同時に、着信を知らせる着メロが鳴り始める。
「おっと、ナイスタイミングだな」
それだけ呟くと、通話ボタンを押す。
予想通り相手は卯月だった。
「天峰今、時間大丈夫?」
「ま、まぁ。少しなら何とか成る……かな~って?」
「何よ、ヤケに歯切れが悪いわね?まぁいいわ、言うわよ?私、あなたに振られてからもやっぱり――」
「天峰せんぱーい!!用意できましたよ!!」
卯月の言葉を遮り幼い声が、天峰の耳を刺激する。
「あ、藍雨ちゃん、ありがと今いくよ!!」
ロリコンのサガか……
反射的に電話で話す卯月よりも、藍雨に応える天峰!!
そして一瞬の静寂の後響くのは……
「ねぇ、藍雨ちゃんって誰よ?」
まるで鬼のような卯月の声!!
恐怖のあまり小さく「ヒュウ」と声を漏らす天峰!!
「ぐ、偶然会った子なんだ……な、何もしてないからね?」
誤魔化すように、苦しい良い訳を続ける天峰!!
「本当に?いかがわしい事とか世間様に顔向けできなくなるような事はしてないわよね?」
訝しむように卯月が追及する!!
なぜ女性はここまで浮気などに敏感なんだろうか?
「せんぱーい!!早くこっちに来て食べてくださいよぉ、私先輩に褒められてからすっかりその気なんですよ?じらさないでくださぁい」
絶妙な言葉使いで藍雨が天峰を呼ぶ!!
その言葉はもちろん電話の相手の卯月にも聞こえており!!
「け、警察!!通報、通報しなきゃ……ロリコンは汚物、汚物は消毒!!滅菌殺菌監禁……相手は幼女相手に……はぁ、はぁ……」
何やら不穏な言葉を並べ始めた、卯月に恐怖を感じた天峰は……!!
プチッ!!
「電話もういいんですか?」
「うん、間違い電話だった!!」
藍雨に良い笑顔で応える!!
何故って決まっているじゃないか。
幼女の手作りご飯は、地球より重い!!
byロリコン。
これが真実さ。
「どうですかセンパイ!!」
藍雨が漬物を口に運ぶ天峰をキラキラした瞳で見る。
「すごく美味しいよ!!藍雨ちゃんは将来良いお嫁さんになるよ!!」
「そ、そうですか?なんだか照れくさいです」
そう言って藍雨は自身の頬を染める、一瞬あとに天峰自身も自分の言葉を思い出し同じく顔を赤く染める。
お互いに気マズイ空気が流れる。
「さ、流石にもう帰らないといけない時間だな~。ごめんな藍雨ちゃん、俺そろそろ帰るから」
そう言って荷造りを始める。
「最後に洗い物だけでも、するからさ」
そう言って自身の食べた物を片し始める。
「あ、大丈夫です。私先輩の分まで洗っておきますから」
そう言って、藍雨も汚れの付いた食器を集め始める。
「そっかじゃあ……藍雨ちゃん携帯電話って持ってる?」
「はい、有りますよ。アドレス交換ですか?私ちょっと携帯電話って苦手です……」
そう言いながら、自身の部屋から電話を持って来たのだが……
「ガラケーどころか、かなり古いタイプだね……」
藍雨の携帯電話は型が古く、赤外線送信すら出来ないタイプだった。
仕方ない。
と一言話すと、天峰は自身のノートを一部破りそこに自身の携帯の番号をかきこんだ。
「俺が、打ちこむから。貸してもらっていいかな?」
「あ、すいません、お願いします」
そう言ってオズオズと、自身の携帯電話を渡す。
「一回かけてみようか?」
天峰が藍雨の携帯に電話を掛ける。
小さく震え、かわいらしい音楽が鳴る。
「うん、ちゃんと出来たみたいだね」
そう言って改めて、藍雨に携帯を返す。
「先輩、また来てくださいね」
「うん、もちろんさ」
自転車に跨る天峰を、見ながら藍雨がうれしそうに話す。
同じく簡単なあいさつを交わし天峰は夜の街に自転車を漕ぎだした。
その心中は……
(やった、やったぜ!!遂にリアル幼女のメアドゲット!!いいねぇ!!いいねぇ!!毎日ボタン一つで藍雨ちゃんと(電話が)繋がったり出来るのか!!)
ハイテンションで夜の街を走る!!
正直言ったキモイ&怖い!!
今回の話を書いてて。
変換ミス。
藍雨のセリフで、
おとうさん→お父さん
おにいちゃん→お兄ちゃん
おかあさん→お義母さん……
なんで!?なんで義付いた!?