リミットラバーズ   作:ホワイト・ラム

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遂に謎の幼女の正体が明らかに!!??


気を付けて帰りなよ?

Time limit 46:30:20

 

 

 

 

 

「あの……大丈夫です……か?」

日の光が殆ど遮られた暗く汚い駐輪場で、一人の幼い少女が地面にうずくまる天峰に恐る恐ると言った様子で声をかける。

 

「……うん、何とかね。そっちこそ大丈夫だった?」

一瞬遅れて天峰がそう返す。

少女が近付いたお陰か、この時天峰は始めて相手の顔をしっかりと見ることが出来た。

気の弱そうな、大人しくてかわいらしい。陳腐な言い回しだが「守ってあげたい」タイプの子だった。

しかし忘れてはいけない。彼女はつい先ほど中二男子を拒絶した、つまりはしっかりした意志を持っているという事だ。

だがもう既にその怯えがちな表情へ隠れてしまっていた。

 

「は、はい……大丈夫です……」

少女は今にも消えてしまいそうな声で何とか天峰にかえす。

しかしその言葉とは裏腹に、彼女は僅かに震え、その表情はこわばった物に成っている。

 

(この子の笑顔が見たい……微笑むとかじゃなくて心の底からの笑顔が!!)

そんな表情をする幼女を天峰が逃す訳がなかった!!

天峰はどうしてもこの子の笑顔が見たかったのだ!!

 

「悪いけど一緒に来てくれるないかな?」

 

「え?あ、はい?」

自転車の自身の愛車、サイクロンシューターを停めその子を連れ駐輪場から出ていく。

 

「ねぇ、ジュースって何が好き?」

ボソリと天峰がその子に聴く、あくまで自然に怪しまれないように……

一瞬何か会話が大きくずれた事に少女が焦るが、すぐに答えてくれた。

 

「えと?飲み物ですか?え~と、アップルティーが好きです!!」

半場慌てて、何とかそう言葉を切り出した。

 

「アップルティーね。じゃあ、プレゼントフォーユー!!」

そう言うと後ろに有った自販機に手早く硬貨を入れ、アップルティーを買って彼女に差し出す。

 

「え?ええ!?そ、そんな悪いです!!初めて会った人にいきなりそんなの貰ったり……」

小学生が慌て始める。

正直かわいい。

 

「いーって、いーって。あ、俺幻原 天峰、よろしく」

知らない人ならいいのかという天峰の考えで、その場で自身の名を名乗る天峰。

挨拶されると反射的に返してしまうのか、同じく小学生女児も自己紹介を始めた。

 

「あ、はい。私は晴塚 藍雨(はれつか あめ)っていいます」

 

「よくお返事できました!!はい、ご褒美のアップルティー!!」

そう言って再び藍雨にアップルティーを差し出す。

 

「だからダメですって!さっき会ったばっかりだし、全然知らない人だし……」

 

「何言ってんの?君、志余束の子でしょ?黄色帽子のマーク、志余束のだし。絶対とは言えないけど、きっとどこかで会ってるよ?俺も高校志余束だし……それに名前だけならお互い知らない仲でもないしね。藍雨ちゃん?」

自身の校章を見せながらそう言って藍雨の視線までしゃがむ、この話術とさりげなく相手を下の名前で呼ぶのは天峰のロリコン精神の成せる技であろう。

 

「えっと……でも……」

知らない人から物を貰うのはやはり気が引けるのか、いまだに藍雨は困惑気味である。

 

「まあ、そんな事言わないで受け取ってよ。自販機って返品できないからさ」

あくまで相手に罪悪感を持たせない物言いで、藍雨にジュースを渡す。

もし仮にの話だが、ここで藍雨が「助けて!!」と大きな声で叫んだらどうなるのだろうか?

 

「は、はい……」

藍雨がこわごわとした表情でペットボトルに口を付ける。

その瞬間藍雨が目を見開く!!

「このアップルティーおいしいですね!!」

振るえていた肩もすっかり落ち着き、2口3口と飲み進めてく。

一瞬だが、藍雨の笑顔を見ることが出来た。

 

「うん、うん、良かった、良かった」

天峰が満足気にうなずき、踵を返す。

 

「じゃ、俺もう行くから気を付けて帰りなよ?」

 

「はい!ありがとうございました!」

天峰は駐輪場へ戻ると、上機嫌で自転車のまたがった。

ゲーセンで遊ぶつもりだったが、それよりもずっと良い時間を過ごした気分だ。

速度を出しながら、天峰がおまわりさんに職質されそうな表情でニヤ付く!!

その脳内は……

 

(やばかった……!!ホントにやばかった!!藍雨ちゃんマジ俺のドストライク!!マジど真ん中!!あ~~~~今更だけど、なんか口実作って手とか握れば良かっ――ああ!?あのペットボトルも回収……いや、それよりも「一口頂戴」とか言えば良かった!!あああ~~~くそう!!……まあ、いいや……今度は堂々と会える!!)

実の事を言うと天峰と藍雨は、お互い初めて会った訳ではなかった。

昼のグラウンドで、授業を受けているのを天峰は見ていたのだ。

最も、今回あったのは完全に偶然だが……

 

「ほへ~……すんごい笑顔!!さすがの私も退いちゃうよね……これはお姉ちゃんの報告かな?」

去って行った天峰を、物陰から夜宵が覗いた居た。

 

 

 

 

 

Time limit 43:52:21

 

 

 

 

 

卯月は自分の机に向かっていた。

時間は大体夜の9時と言った所。

何時もなら勉強の為机に向かっているのだが、今日は少しばかり毛色が違う。

一応宿題は並べているが、その表情に覇気は無く机の充電器の上の携帯を睨んでばかりである。

 

「う~ん……夜宵ちゃん遅いわね……やっぱり人を一人調べるのって大変なのね。けど天峰事はは少しでも多く知りたいのよね……」

そんな事をつぶやいた時、机の携帯が鳴る。

恐るべき瞬発力で卯月はその携帯電話に出た!!

 

「はい!!もしもし!!」

電話の向こうからクスクスと笑い声が聞こえてくる。

間違いない夜宵の声だ。

 

「おねぇちゃん必死すぎ~、本当に天峰さんの事好きなのね?」

廊下で話した時の様な、人を掌で踊らせるような。

必死な相手をあざ笑う様な、卯月の苦手なしゃべりかたをする。

 

「そんな事より、天峰の事何か解ったの!?」

これ以上不愉快な笑い声を聞かない為にも、少し強い言葉で夜宵に聴き始める。

 

「ああ、まずは友人関係からね。普通の友達……少し人数が少ないいのと……変な友達が一人いるのよ」

慎重な口調で、夜宵が語りだす。

しかし、そこに卯月は僅かだが心当たりがあった。

 

「その人は 野原――」

 

「ああ、ヤケ君ね。大丈夫よ?本人はかなり変わった部類の人間だけど、いきなり襲いかかってきたりはしないから、大人しい良い子よ?」

まるで、動物に対するようなあっけらかんとした物言い。

その様子に、夜宵も間抜けな声を漏らす。

 

「いや、だって……持ち物が――」

 

「知ってるわよ?本でしょ?いつも持ち歩いているわよね、別にいいでしょ?」

その言葉に夜宵が激しく反応する!!

「ホンの1、2冊じゃないのよ!?やばい位の――」

 

「知ってるわよ!!そんなことより他の情報!!」

 

「ひぅ!!」

卯月の怒気に夜宵が怯える、せっかく手に入れた情報をもう知ってる呼ばわりされさらに、怒られたのでは恰好がつかない。

もう半場失いかけた、ミステリアスな空気を無理やり作る。

 

「あ、あと変な部活に入ったわ!!」

 

「ヘンな部活ぅ?」

またしても卯月が疑いの感情をこめて応える。

「そ、そうよ!!スピリチュアル――」

 

「ああ、スピリチュアルエネルギー部ね。城山先生の部活でしょ?あの先生変な事しかしないのよね……ああ、天峰入るんだ近いうちに廃部になりそうなのに……」

今度は気の毒そうにまたしても、卯月が答えてしまった。

先ほどと同じなのだろう。

卯月の声には最早余裕すら感じる。

 

「ねぇ、夜宵ちゃん?あなた志余束って中学からよね?」

面目丸つぶれな夜宵に卯月が優しく話しかける。

 

「うん……小学校は別だった……」

 

「じゃあ、志余束初心者ね……初めに言って置くわ。志余束はかーなーりー!!変人が多いのよ!!」

 

「ひぅ!?」

卯月の言葉に、夜宵が小さく悲鳴をあげる!!

 

「良い事?小中高大と有る志余束では……何が有っても不思議じゃないわ!!」

衝撃的な言葉が卯月の口から放たれる!!

 

「ここは日本中のおかしな人間が集まるので、一部裏サイトでは有名な学校よ!!まず理事長自体おかしいのよ!!いつも真っ赤な覆面なのよ?噂ではその下は蛇の絡み付いた目とか、秘密結社の首領だとか改造人間作ってるとか言われてるのよ!!普通な訳ないじゃない!!」

因みに卯月は現役志余束生。

言ってて悲しくならないのだろうか?

 

「生徒も教師も、癖が有るに連中ばっかりよ!!それくらいの事で泣き言言うんじゃありません!!」

 

「ひ、ひぐぅ!?ご、ごめんなさい!!ちょっと謎の女気取ろうと――」

 

「志余束にはゴマンと転がってるわよ!!むしろ謎の女だけじゃ影薄いわ!!」

圧倒的な!!言葉で中二患者にトドメ!!

 

「じゃ、じゃあ最後に……今日の……」

夜宵はやっと今日の、駅での事を話した。

すぐ後に、卯月の怒りの余波を食らったのは容易に予測できる。

 

 

 




そう、謎の幼女の正体は藍雨だった!!……え?知ってるって?

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