天峰達のほんの少し前の物語です。
私の事待ってて!!
Time limit 50:09:32
カリカリカリ……
教室内にノートを取る音と、教師が黒板に板書する音が静かに響いている。
(早く……!!早く終われよ!!)
とある少年が恨めし気に、時計を見ている。
四限目のこの授業、そろそろお腹が空いてくる生徒も多いのだが……
この少年、幻原 天峰(げんのばら たかみね)は違った。
その時不意に黒板の、板書が終了し先生がこちらを向いた。
「よーし、今回はここまでだ。書き写した者から順次終了して構わない、赤線で囲った所は今度のテストで出すぞ!!しっかり勉強して赤点などないように!!」
そう言い終わると、先生は教室から退場した。
お許しが出た生徒たちは僅かに活気付く。
(いよぅし!!終了宣言!!俺はこれを待っていた!!)
サラサラと自身のノートに板書を写しさらにポイント部分を丸で囲み、最後にオリジナルの幼女キャラを書き「ここがポイントだにゃん!!」とあざとくキャラ付けして教室の外に出る!!
多くの生徒は購買に向かうのだが、天峰は違った!!
目指すは、校舎の東側。
私立志余束高校は小中高の一貫校だ、そのためこの時間は……
(あああ~……心が癒されるんじゃ~)
まるで温泉に入った老人の様な台詞を心のなかでつぶやく!!
その視線の先に有るのは……!!
小学校のグラウンド!!生命の輝きにあふれる小学生たちが体育の授業中!!
(素晴らしぃ!!ロリコニュウムが!!ロリコニュウムが補給されていく!!)
恍惚の表情を浮かべる天峰!!
説明しよう!!この男、幻原 天峰はロリコンである!!
ロリコンとは!?小さな女の子の幼い肢体や言動等が、大好きな困った性癖である!!
一般的には病気と言われるが!!この男はレベルが違う!!まさにロリコンの末期!!
幼女無しでは生きていけないレベルである!!
「はぁい、天峰。また、過去を懐かしんでるの?」
天峰幸せな、ひと時を容赦なく邪魔する誰かの声!!
自身の最重要ライフワークの一つである、『ロリータウォッチング』を邪魔された天峰は機嫌が悪くなる!!
しかし悲しいかな……
天峰とて、無力な社会の一員に過ぎない……
平和な生活の為には、ロリコンが周囲にバレてはならない!!
その為他者には「過去を懐かしんでる」とうそをついているのだ。
その嘘の整合性を取るため、心の中で幼女たちに別れを告げ、断腸の思いで笑顔を作りその声の主に向き直る。
「……なんだ……卯月か……」
露骨にがっかりする天峰、興味なさげに再び小学生たちの居るグラウンドに向き直る。
「ちょっと!?なんだは無いでしょ!!なんだは!!せっかく私が話しかけてあげたのよ!?」
この少女の名は卯月 茉莉(うづき まつり)スタイル、性格、容姿、成績いずれも高スペックを誇るの校内の人気者!!
因みに噂では、校内女子人気ナンバー1の先輩に告白されたらしいが、フったらしい。
なんでだろう?
「あざーす、今忙しいんだよ!!あ、転んだ!!慰めに行きたい!!」
「ア・ン・タ・ね!!いい加減にしなさいよ!!いつか逮捕されて、収監先の刑務所のシャワー室で、怖いオジサンにおしりを狙われても知らないんだからね!!」
「怖!!お前の妄想変に細かくて怖!!ってかそんな事言われる筋合い無いっての、俺はただ見てるだけなんだぞ?やましい事は何もないだろ?」
尚もグラウンドに目を向けながら、天峰が卯月にそう告げる。
「はぁ、なんでこんな事に成ったのかしら……あの頃はかわいかったのに……時間って残酷よね……あなたと離された時間さえ、無ければこんな事に成らなかったのかしら……」
悲しそうに卯月がため息を漏らす。
あの頃は楽しかった……天峰もその言葉に賛成だ、しかし今は今なのだ、もう過去には戻れない。
少しだけ、昔話をしよう。
天峰と卯月の出会いは、お互いが小学1年の時に遡る。
はじめて座る教室の椅子にワクワクしながら、二人は出会った。
切っ掛けはもう覚えていない、どちらから?と問われても解らない、たぶんどちらともというのが正解だろう。
2人はお互いに惹かれあって行った。
小学生のそんな気持ちは無い、と言われてしまえばそれまでだろうがきっとお互い相手の事が好きだったのだと思う。
幼い幼い恋愛感情、だが確かに二人は相手を思いやっていたのだろう。
しかし
ある日、悲劇が訪れる。
卯月の両親の仕事の都合による引っ越しが決まってしまった……
「大人の都合」その圧倒的な壁は幼い二人にあまりに大きすぎた。
何も出来る事は無く、最後の日まで二人はいつもの様に過ごしていた。
そして、いつも遊んだ公園で二人は約束したのだった。
「私は絶対にまたここに戻ってくるから、だから、だからね?私の事待ってて!!絶対に帰ってくるから!!天峰君大好きだから!!」
「ボクも、ボクも茉莉ちゃんのこと好きだから!!好きだからずっと待ってる!!」
そう言って二人は夕焼けの照らす公園で抱きしめあった。
翌日天峰は卯月の居なくなった公園に一人たたずんでいた。
「必ず帰ってくる」その言葉を彼は信じた。
愚かとしか言えない愚直さで、彼は遠い地に居る彼女の事を思い続けた……
公園で遊ぶ子供たちの中に、自身の思い人の面影を探し続けた……
そしてそれは、毎月、毎週、毎日続いた……
さらに月日は流れ、天峰は中学2年になっていた。
ひとによっては高校受験や新しい恋など、有るかもしれないがそれでも天峰は公園に居続けた。
全ては思い人への約束の為に……!!
そしてある日遂に約束は果たされた。
何時もの様に公園で遊ぶ子供を見る天峰、そんな彼に話しかける影が一つ。
「やっと、見つけたわよ?約束守ってくれたんだ……ね、久しぶり!!天峰!!」
その声に天峰は持っていた、ジュースの缶を地面に落としてしまった。
そこに居たのは、美しく成長した卯月の姿。
幼さは消え去り、美しさが彼女を包んでいた。
そんな成長した卯月に天峰は……
「え!?卯月?…………違くね?」
「へ?」
天峰の心に飛来した感情は、卯月の思っていた物とは明らかに違う物だった!!
その感情とは!!圧倒的なコレジャナイ感!!
天峰の中の卯月はこんな姿ではない!!もっと身長も低いし、声も違う、さらに言うこんなにも胸も大きくない!!その結果がコレジャナイ感だった!!
天峰の中の卯月は幼いままの卯月!!幼女の卯月!!
長い時間公園の幼女たちを見る天峰には新たな性癖が出来ていた!!
その事を理解した天峰は、自身のもう一つの一面に気が付いたそして!!受け入れた!!
「俺は……俺は、卯月が好きなんじゃない……俺が……俺が好きなのは……!!幼女だ!!幼女なんだ!!小さな肢体!!口足らずな所!!そしてピュアな心!!俺が好きなのは幼女だああああああああああ!!!!!!!!!」
ロ リ コ ン 覚 醒 ! ! !
そして現代にいたる!!
「いや~、ホントに幼女っていいもんだな」
しみじみと天峰が小学生たちを見ながら話す。
その態度に卯月の限界が遂に訪れた。
「なに?アンタ小学生と恋愛したいとか言うんじゃないでしょうね?その小学生を覗く趣味は実害が無い内は許してあげるわ、けどもし手を出すならそれは立派な犯罪よ!!そこん所理解してるの!?」
攻め立てるような卯月の言葉に天峰がたじろぐ。
それに良い訳をする様に天峰が答えていく。
「そんな事分かってるよ……だから見てるだけで――」
「そんなやましい気持ちで小学生たちを見るな!!アンタいい加減にしないと何時か本当に逮捕されるわよ!!」
言いたい事を言い終わったのか、卯月は怒りながら何処かへ行ってしまった。
天峰とて理解しているのだ、自分が異端であると。
しかし彼はどうしても幼い女の子が好きなのだ、それはどうしょうもなかった。
「はぁ……俺は、誰が好きなんだ?卯月なのか?それとも幼女なのか?……俺は幼女が好きなつもりだ……けどそれは許されないのか……俺はどうすればいいんだ?」
自身の気持ちが理解出来ず、泣きそうな顔でグラウンドを見る。
何時の間にか、体育は終わり幼女たちは道具の片付けをしていた。
「……んん!!なんだアレ!?」
そんな中天峰がとあるモノを見つけ声を上げた。
まさかのあの人が登場。
ある意味この時代が最も輝いていたんだな……
成長って残酷ね……