リミットラバーズ   作:ホワイト・ラム

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今回でラストです。
お付き合いありがとうございました。


夢の追い人

遂に最終競技。

今回の競技は『スク乱舞る・奪取』

簡単に言えば、スタンプラリーだ。

大会側が用意した、4つのスタンプを紙に押し会場の審査員(今回は外道)に渡す事で勝利となる。

ルールとしては、スタンプを隠さない事、紙を他人から奪わない事の二つである。

 

『ゲェ~ドゲドゲド!!長らく続いた競技もこれで最後ゲド!!現状はほぼ横並びゲド!!この競技の勝利者が逆転で優勝。という事も十分あるゲド!!皆の衆頑張るゲド!!』

『素晴らしいですね!!私楽しみでなりません!!』

 

 

 

そう言っている間にも、会場の端に自転車やスケートボードなどが置かれていく。

 

「どうやら、この競技乗り物の使用が認められているみたいだな」

天峰が、こっそりと八家に耳打ちする。

最終競技は第一回戦と同じく体力勝負、ここで天峰率いる『天気屋』の戦力は天峰と八家の二人に限られた事になる。

 

「分かってる、全員が狙ってるんだ嫌でも気が付くさ……」

 

そうしているウチに、チームの全員にスタンプカードが配られる。

特に押す順番は決まっておらず、有る程度コースは自由に選べるようだ。

 

「やるぞ、ヤケ。この勝負絶対に勝ぞ!!」

「わ~かってる!!任せとけ!!」

 

全員がスタートラインに付く。

 

『それでは……スタートゲド!!』

パァン!!と運動会などで使われる、銃の様な物の音が響く!!

 

「行く……ぐはぁ!?」

「ヤケぇ!?」

スタートと同時に、様々なところから悲鳴が上がる。

何事かと、混乱した天峰が目撃したのはライバルを攻撃する、選手達。

ここでの妨害は禁止されていない。

自身のチームを半分に分け、妨害要員に割いたところが多い様だ。

 

「はぁい、会いたかったよ!!この変質者!!」

『H&S連合』の八咲 鈴菜がいつの間にか八家の腹に拳を叩きこんでいた!!

 

「……誰だっけ?キミ?」

「コイツッ!!まだ私を馬鹿にするなんていい度胸!!」

個人戦一回戦目と同じ様に、八家が二ヘラと笑い挑発する。

 

「天峰ぇ!!お前先に行け!!まどかちゃんに笑顔届けるんだろぉ!?ロリコン根性見せろよ!!」

「おうよ!!俺の実力見せてやるぜぇ!!」

パチンッ!!とお互いバトンタッチするように手を叩きあわせ天峰は自転車の向かって走り出す!!

 

 

 

「ふぅん……変質者の友達はロリコンかぁ、お前のチーム変質者ばっか?うえ!!キッモチワルー……」

他の参加者を叩きのめしながら、鈴菜が吐き捨てる。

心底気に入らないと言った心理が見え隠れする。

 

「……オイ、今の取り消せよ……」

「あ”?ナニ?私になんか文句有るの?」

 

「俺は、確かに他の奴らより欲に忠実さ。ジャンルもJY、JC、JK、JD、OL、SM、熟女、未亡人、バイト、正社員、派遣社員、秘書、社長、不良、優等生、委員長、お嬢様、転校生、幼馴染、電波系、男の娘、従妹、義妹、義姉、義母、ツンデレ、ヤンデレ、クーデレ、デレデレ、レズ、天然、小悪魔系、エルフ、モン娘、単眼、くっ殺、おねショタ、ショタおね、調教、逆レ、和姦、無乳、貧乳、膨らみかけ、普通乳、巨乳、爆乳、超乳、奇乳、魔乳!!!有りとあらゆるジャンル、シチュエーションが俺の守備範囲だ!!だけどな、だけど天峰はブレ無い漢なんだよ!!ひたすら、自分の好きな物だけを持て目続ける探究者なんだよ!!たった一つのジャンルを守る男は強いんだよ!!お前なんかが理解できない程にな!!」

 

「ひぃ!?キモ!!キモチワル!!」

 

 

 

 

 

「あと、少し……あと少しで自転車……ぐはぁ!?」

「どけぃ!!」

天峰は隣から現れた大男に突き飛ばされた。

その男は、蛇野 獅石。

圧倒的に恵まれた体格を持つ男だった。

序盤は緊張で動けなかったようだが、現在はその圧倒的能力を遺憾なく発揮出来ている様だった。

 

「はっはー!!先に行かせてもらうぞ!!」

自転車の飛び乗ると同時に、猛スピードで走り出す!!

 

「クソッ!!他は……他は無いのか!!」

狼狽えながらも他の乗り物を探すが、有るのは2人乗りや、何故か有るミニカーだけだった。

不意に見ると、先頭集団に山重と新芽が見えた。

2人とも、自転車のスピードがかなり早いのは天峰がまどかと初めて会った日に嫌と言うほど知っている。

天峰の中に絶望がジワリと広がる。

 

「こ、こうなったら走ってでも……」

天峰が走り出そうとした時、夕日が天峰の袖を引っ張る。

 

「……来て……渡された」

そう言って夕日が天峰に見せるのは車のキーだった。

「?」

状況が読み取れない天峰。

自動車を使う場合、自分が運転するか公共のものを使う必要がある。

もちろん天峰は車など運転出来ない。

「……相棒が……待ってる……」

 

夕日に連れられ、向かった先は駐車場だった。

やはり、無駄に広く車もまばらにしかない。

そこで待っていたのは佐々木だった。

 

「お待ちしておりました、私は選手ではないのでお手伝いできませんが……これをお渡しするくらいなら、問題有りません」

夕日からカギを受け取りリムジンのトランクを開ける。

 

「!!コレ……って……なんで此処に?」

「学校にお忘れでしたので、午前中に持ってきました」

そう言って、トランクからそれを下ろす。

青と銀の輝くマシン……天峰の通学を支える相棒――

 

「サイクロンシューター!!」

通学自転車だった。

 

「ありがとう、佐々木さん……アナタの、アナタのお陰でまどかちゃんの為にまた戦える……またまどかちゃんに笑顔を届けれられる!!」

それだけ言うと、天峰はペダルに足を掛けて勢いよく走り出す!!

 

「……お気をつけてください……」

佐々木はポツリと心配そうにそう漏らした。

「……大丈夫……天峰は……勝ってくる……」

それを励ますように夕日がそう漏らした。

 

 

 

 

 

自転車をこぎながら、天峰は自身のマシンサイクロンシューターに話しかける。

「よう、相棒――調子はどうだ?」

シャー、シャー、シャー……

「そうか、久しぶりだよな、こうやって誰かと競争するの。八家と最後にやったのいつだろう?」

シャーシャーシャー!!

「勝とうぜ!!誰かの為とかじゃな!!目の前に誰かがいるなら!!追い抜きたいよな!!!???」

シャー!!シャー!!!シャー!!!!!

「いっくぜぇ!!」

ガゴン!!

天峰はより一層ペダルに力を入れた!!!

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……王聖さぁん!!今、今俺達ドン位行きましたっけ!?」

チーム『園田家』のメンバー園田 灯直が()()()()園田 王聖に話しかける。

現在二人は2人のり自転車をこいでいた。

誰も選ばなかった為、余っており運よく入手できたのだ。

 

「知らん!!だが、前には他の奴らがいる!!追い抜くぞ!!追い抜いてトップに立つ!!」

「はぁ、はぁ……ハイ!!がん、頑張りましょう!!」

灯直がそう言った瞬間自身の横を、天峰が通り過ぎた!!

鬼気迫る表情に凄まじいスピード!!その両方を誇り、灯直は冷や汗をかいた。

 

「王聖さん、今の……」

「ああ、もう諦めよう……」

実に残念そうに王聖が灯直に言う。

それに反発したのはほかならぬ灯直だった。

「ぜぇ、王聖さん!!何言ってるんですか!!ぜぇ、せっかくここまで……ここまで来たのに!!」

「お前、体力の限界だろ?先ほどからずっとそうだ、無理をさせ過ぎた様だな……」

そう言ったゆっくりブレーキをかけ、遂には止まってしまった。

 

「王聖さん!!なんで!!なんでみすみすチャンス逃すんですか!!おれ、おれなんかに構ってないで……ぜぇ、一人でも……!!」

「煩い!!黙っていろ!!」

尚も食い下がる灯直をバッサリと一刀両断!!

 

「なんで、なんで俺なんかにぃ……すいません、すいません王聖さん、俺が、俺が体力無いせいでぇ……」

「なんの事か知らんな……俺は、園田のヤツが美味そうに味噌汁を飲んでいるせいで自分んも飲みたくなっただけだ、飲みたくなったから自転車を止めた、それだけだ……」

 

崩れ落ちる、灯直にそう言い放つと近くに有った自動販売機から味噌汁を2本買って一本を灯直に渡した。

「飲め、園田。おごりだ」

「ぜ、全員園田で……す……名前、で……ぜぇ……名前で呼んでください……」

「疲れただろう?ゆっくり休め、()()

 

 

 

 

 

トン……

天峰のスタンプカードにスタンプが押される。

これで二個目だ。

 

「行くか……」

そう言って再び自分の相棒に乗り込む。

ここまで来るのに、一組抜かした。

 

まだまだ本命の先輩二人は愚か、さっき逃した蛇野すら姿が見えない。

 

心なしか前回よりも焦りが消えた気がした。

なぜかは天峰には解らない。

しかし体はまだまだ動く、もっと、もっと速度をと求めている気がする。

 

「っしゃ!!」

再び勢いよく自転車に乗り込む!!

 

 

 

「!! 見つけた!!」

天峰の前には大柄な男の背中!!

ガシャガシャと凄まじいスピードで自転車をこいでいる!!

 

無言で息を吸った天峰は足をさらに加速させる!!!

「……おお!?……まさか追いつくとは……!!あっぱれ!!」

 

威厳に満ちた表情で、獅石が笑う。

その名の通り彼は蛇の狡猾さと執念深さ、獅子の様な威厳と力強さを誇る。

 

「…………」

「オイ、なぜ無言なんだ!?何とか言ったらどうだ!!」

無言でひたすらサイクロンシュータ―を漕ぎ続ける天峰。

その瞳は遥か向こうを見ていた。

 

(こいつ……!!俺を見ておらん!!……話しかけられても気が付かんまでの集中か!?面白い!!俺の存在をその眼に刻んでやろう!)

天峰の態度に、強い意志を感じた獅石は敵を倒すべく自身のマシンに力を込める!!

 

シャーシャーシャー……

ガチャン!!ガチャ、ガチャ!!!

此処はすべての中でも、最長のストレートコース!!

お互いのマシンの音が周囲に響き渡る!!

シャーシャーシャー……

ガチャン!!ガチャ、ガチャ!!!

 

「…………」

「むぅおおおおお!!!」

シャーシャーシャー……

ガチャン!!ガチャ、ガチャ!!!

 

レースコースとして使われているが、ここは普通の道の為それ様に作られたコースではない。

砂利や小石などが容赦なく、転がっておりスピードをトップスピードに持って行くのを防いでいる!!

獅石の体力にも陰りが見え始めた。

 

「…………」

「ふぅおおおッおお!!!」

シャーシャーシャー……クイッ!!

ガチャン!!ガチャ、ガチャ!!

 

しかし天峰のスピードは、まるで落ち体力スピード共に落ちる事は無かった。

遂に、獅石がその事を怪しみだす。

その時、僅かに天峰がハンドルを動かす。

(な、何故だ?なぜ奴はこんなにも涼しい顔で……ハッ!?地面か!!地面の状況を読んでいるのか!?)

 

天峰は地面の小さな石を、躱していた!!

それだけではない!!より石の少ない場所を選び、体力の消耗を押さえていた!!

 

(障害物が少ない方が早く、体力の消耗も少ない!!だが、だがそんな事狙ってできるのか!?)

その時、獅石の心を読み取ったかのようにポツリと天峰がつぶやく。

「サイクロンシューター……それが俺の相棒(マシン)の名前だ……」

疾風の狙撃手(サイクロンシューター)……か……見事だよ……」

敗北を認めた獅石が、速度を緩める。

 

「なるほどな……惜しいな……最初から全力で戦いたかったものだ……」

そう言う獅石は、何処か満足気につぶやいた。

 

 

 

 

 

「これで、後一つ……」

3つ目のスタンプを押した天峰がそうつぶやく。

 

「ああ、最後はもうすぐだ……」

肩で息をしながら目の前の新芽が天峰に対して、答える。

彼の様子は明らかな疲労困憊で、立っているのもやっとの様だった。

 

「やり過ぎたよ……少し……ピッチを上げ過ぎた……」

「そうですか……」

天峰はただそう言って再びサイクロンシューターにまたがった。

新芽とは木枯に付いての事など、まだまだ話したい事は有ったが山重がまだ先に居る。

ゆっくり話す事は出来ないと考え、軽く会釈して最後のスタンプを押しに向かう。

 

 

 

 

 

「…………見えた!!」

遂に天峰が自身の視覚に山重の姿を捕える!!

目の前に追い越すべき最後の刺客がいる!!

彼に勝利することが最低条件、天峰は自分の両足にさらに力が入れる!!

 

その時天峰は不思議な感覚を感じていた。

(なんだろう?……すごくおかしな気分だ、体は全身が疲れてる、汗も酷いし両足も突っ張る、もう辞めたくてしょうがないハズなのに、なのにどんどん力が湧いてくる……!!どんどん頭が冴えてくる……!!そして……今と言う時間がたまらなく楽しい!!)

 

天峰の自転車が遂に、山重の隣に並ぶ!!

「幻原!!お前遂に来たのか……!!まどかと云いお前と云い、余程俺の邪魔をしたい様だな!!」

憎しみの籠った視線で天峰を睨みつける。

しかし天峰は全くそれを意にかえしはしない。

 

「何の事です?俺はやりたいから此処に居るんですよ。先輩と一緒です……先輩はこの競技が好きだから、俺はまどかちゃんの笑顔が好きだから此処に居る、それだけです」

そう言いながら尚もスピードを上げる!!

僅かに、僅かに天峰のマシンが先に出る。

 

「ふざけるなよ?俺は自分の――」

「『自分の夢の為』でしょ?知ってますよ、恥ずかしくないんですか?自分の好きな物を邪魔されたくらいで喚いて怒って」

 

冷めた目で天峰がチラリと山重を見る。

その態度には明らかな呆れが潜んでいた。

 

「俺はねぇ!!自分が好きなら何を言われようとそれを貫く意志を持ってます!!誰が邪魔しようと!!何度馬鹿にされようとも!!絶対に譲れはしないんです!!先輩は自分の好きなものを馬鹿にされたと喚く子供です!!俺ねぇ……俺は!!!ロリは好きだが子供(ショタ)は好きでもなんでもないんですよ!!

寧ろうぜぇ!!そこ代われ派の人間なんです!!」

 

「はぁ!?一体何を言いたいんだ!?まどかいいお前といい、一体なんなんだ!!」

 

「俺は!!!夢の追い人!!幼女の守護者(自称)!!幻原 天峰だぁ!!

追いついてみろ!!俺の幼女へのラブは!!誰にも止められない!!」

そう街中で大声を上げる!!

周りの買い物帰りの主婦が、ひそひそ噂するが気にしない!!

ランナーズハイ!!

 

「良いだろう!!!お前の幼女愛と俺のボーノレ愛!!どちらが勝つか勝負だ!!」

両者同時にスピードを上げる!!上げる!!!上げる!!!尚も速度は上昇し続ける!!

「「見えた!!」」

両者が同時に最後のスタンプを目にする!!

 

「世界に響けぇぇっぇぇぇえ!!!!俺の……俺のボーノレ愛ぃっぃっぃぃぃ!!」

「うをおおぉおっぉぉ!!!打ち込めぇええええサイクロン!!!シューターぁあああぁぁ!!!」

両者デットヒート!!譲らぬ勝利への思念!!

2人が台の上のスタンプに手を伸ばす!!

 

「獲った!!!」

そう宣言したのは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天峰!!その手に最後のスタンプを手にした!!

 

パァン!!

 

小気味の良い音がして最後のスタンプが、天峰の持つカードに押される。

 

「先輩、どうぞ……」

天峰が山重にスタンプを渡すが、山重は受け取らなかった。

 

「俺の負けだ……お前に勝てなかった……」

先ほどまでの勢いは何処かへ消え去り、ぐったりとしている。

しかしそんな山重へ天峰は無理やりスタンプを押しつけた。

 

「なんで、なんでアンタらはそんなにあきらめが良いんだよ!!足掻けよ!!万が一、億が一の可能性にすがれよ!!きっぱり諦めてカッコイイ積りかよ!!」

 

最早先輩という事も忘れ、激情に駆られたまま叱咤する。

天峰は諦めが良すぎる態度が気に食わなかった。

たとえ1000回負けても次の一回を求めない姿勢が気に食わないのだ!!

勝てるまで!!という泥臭さが足りない!!

天峰はその事をここでやっと理解した。

 

「先輩、先輩ならきっと来れるって信じてます」

そう言ってゴールへの道を進む。

 

最早何も考えていなかった。

追い抜いた奴らが来ないウチにと、最後の力を振り絞る。

 

「幻原!!幻原ぁ!!」

後ろから、山重の声が聞こえる。

同時に車輪の駆動音も、復活しこちらに向かっている様だった。

 

「良いですね!!やっぱり独走は詰まらな――」

「後ろだぁ!!」

復活した山重に笑顔を向けようと、首を右に回転させ後ろを振り向こうとした時。

逆側を凄まじいスピードで何かが通り過ぎた。

 

「え……?」

「『カルマ・スピード(業速弓)』………………」

 

気が付いて前を向きなおす時はもう遅かった。

カルマ・スピード、その自転車は確かにそう名乗った。

正に弓の様に、プロ野球選手の剛速球の様にまっすぐ飛んでいく!!

 

「な!?だ、誰だ!?速い、速すぎる!!」

このゲーム中何処かで見た背中を見送る。

誰かは解らない、しかし確実に見た事のある背中だった。

 

さっきも言ったように、現在順位はほぼ横並び。

『業速弓』がさきにゴールすれば、そのチームの勝利となる!!

 

「くそッ!!行かせるか!!この勝負は……勝ちは誰にも渡さない!!」

悲鳴を上げる身体に鞭を入れる!!

前の奴を追えと、勝利を逃がすなと

 

「幻原、俺も行くぞ!!あんな、あんな奴に……あんな奴に勝たせたならん!!」

山重も同じくボロボロの身体で『業速弓』を追う!!

 

「行くぜ先輩!!アイツから勝利をもぎ取る!!」

「おう!!優勝は俺かお前だ!!」

2人が再び足に力を入れ、速度を上げる!!

ボロボロの身体、僅かな残り距離、しかしそれでも、それでも必死に目の前の『業速弓』の追いすがる!!

お互いが、競うように。お互いが相手を思うように2台が疾走する!!

「うをっぉぉぉぉ!!」

「はぁああぁぁぁ!!」

あと僅か、あと僅かと言った所まで遂に追いつく!!

そして……

 

「ゴールだ!!ゴールが見えた!!」

3人の前にゴールとなる会場が見えてきた!!

最早どこにあるのかという気力を振り絞り、全力でペダルを踏む!!

そして遂に『業速弓』に並ぼうかというところで……

 

「カルマスピード……マックススピード!!」

グン!!と加速する『業速弓』!!

そしてそのまま、ゴールのテープを切った!!

 

外道が現れその男の手を高く上げる!!

 

「そんな……」

天峰が驚愕に目を開く!!

『ゴールゲドぉ!!優勝者は!!野原 八家ゲド!!』

 

「やったぜー!!ひゃっほう!!!」

その場で元気に飛び跳ねる!!

 

「……オイ。ヤケ……お前他の選手の足止めしてたんじゃ……」

「ん?その後、追ったんだけど?」

「イヤイヤ、お前のマシンって8(エイト)・ビート・ヒートじゃないのか?」

「パンクしたから修理出した、これ玉五兄さんの」

「ああ、五男の……」

がっくりと天峰はうなだれた。

 

「俺が最速だ!!おらぁ!!!」

会場に八家の声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日談

その後閉会式が行われた。

八家と天峰が1、2フィニッシュを決めたおかげで文句なくの優勝。

まどかは日本に残る事となった。

帰りにお寿司を食べに行き、簡単な祝賀会も行った。

MVPはもちろん八家だが……どうしても納得いかないのは無理もない話だろう。

そんな事が起きてから1月が経った。

 

 

 

 

天峰は廊下を歩いていた。

時間はお昼時、あれ以来ボーノレ部は解散し天峰は新しく「写真帰宅部」に入った。

帰り道の日常を写真に撮るというのもで、かなり緩い部活だ。

一緒に帰る夕日や藍雨ばか撮ってしまうのは、彼のサガだろう。

 

話を戻すと今日は購買で何かジュースでも、と思い校舎内を歩いていた。

そこに横から声が聞こえた。

「はぁい、庶民。久しぶりね?」

そこに居たのはまどかだった。

あれ以来学校どころか、殆ど姿も見なかったのみ当たり前の様に立っていた。

しかし驚くのはその服装だった。

 

「なんでウチの制服?」

まどかの服装は志余束の女子制服だった。

他の生徒と比べると明らかにサイズが小さいが、確かに天峰の学校の制服だった。

 

「あら、無知なんですのね?海外には飛び級という制度が有りまして、イギリスではワタシ高校レベルですの!!……ホントはお兄様と同学年になりたかったので頑張ったのですけど……まぁ良いですわ。

さて、ワタシは晴れてアナタの先輩なんですけれど……一回やってみたい事が有りますの!!う、ううん『おい、カレーパン買って来いよ』」

そう言って天峰に500円を渡す。

 

「まどかちゃん?ナニコレ?」

 

「何って……ジャパンの伝統パシリですわ!!ほらほら!!先輩のいう事は絶対!!その腱脚で早く行ってきなさい!!」

まどかはいつもの様に高飛車な態度でそう言い放った。




はい、今回でリミットラバーズ2部は終了です。
結構スランプ気味でしたがゴール出来て良かったです。

次は3部!!……と言いたい所ですが……

一回戻ってゼロ部行ってみましょう!!
活動報告に、次回予告上げときます。

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