リミットラバーズ   作:ホワイト・ラム

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さぁて!!盛り上がってきました!!
どんどん書くぜぇ!!書くぜぇ~

思ったより長くなったこの作品ももう少しで終了です。
最期まで、ラストスパートよろしくお願いします。


目指すは勝利の二文字のみ!!

「しばらく、暇か……」

「……仕方ない……」

全てのメンバーが思い思いの場所に座り、自分たちの出番を待っている。

料理対決の結果が、2位と言う順位に落ち着いた天峰達一行。

午後の部が始まり、最初は『園田家』と『H&S連合』が、次は『フリーダムソングス』と『ゴールデン・ストーンズ』がそれぞれ試合に参加した。

結果は一試合目が『H&S連合』が勝利、二試合目が両者引き分けとなっている。

正直言って今の所すべてのチームが横並びになっている、しかし次の試合で天峰達のチームが勝利すれば他のチームを出し抜く事が可能となる。

 

しかし!!次の試合相手は出たカードから見ると……

 

『ゲドゲド!!さぁ!!最終試合ゲド!!『天気屋』と『志余束高校』出てこいや!!』

外道のうるさい声が響き、天気屋全員がその場で立ち上がる。

そして誰も声を上げることなく静かに会場に向かう。

 

 

 

 

 

「よお!!まどか!!調子はどうだ?まさか素人のお前たちが、ここまで来るとは思っていなかった!!」

山重が『天気屋』一向を迎え入れる。

その後ろには新芽と卯月が立っていた。

 

「ええ、まさかここまで自分でも来れるとは、思っていませんでしたわ……すべてはワタシに力を貸してくれた皆の助力が有ってこそですわ……ねぇ、お兄様?ワタシにもこんなにたくさんの友達が、ワタシを助けてくれる人たちが出来たんですの……一人一人は本当に小さな存在ですわ、けど今のワタシにとってはどんな宝石よりも輝いて見えますの!!ワタシも……ワタシもこの一戦!!誰よりも輝いて見せますわ!!」

 

2人が同時に種目選出の紙を引く!!

暫くして最終種目が発表される!!

 

「最終種目は……ブラックアンドホワイト、ゲド!!」

その種目を聞き、山重が僅かにガッツポーズをする。

 

天峰はこの競技を知っていた!!

(これって……確か初めて先輩達とやったゲーム!!)

 

そう、ブラックアンドホワイトは初めて天峰が体験したゲーム、そして……

 

「よぅし!!俺が!!得意なゲームだな!!」

山重の得意競技である!!

 

 

 

「まどかちゃんここは……」

「ワタシが行きます、いえ、行かせてください!!」

天峰の言葉を区切りまどかが全員に対してそう言い放つ。

 

「……けじめは……大切……決着……つけて来て……」

夕日が何時もの様に、感情を読み取らせないローてテンションでまどかの背中を押す。

 

「まぁ?俺は助っ人だし?主役に譲れって言われちゃどうしようもないでしょ?」

八家も同じく、何時もの様なおちゃらけた様な態度を露わにする。

 

「まどか先輩!!がんばってきてくださいね!!」

藍雨が何時もの様にまっすぐな態度で応援する。

 

「……行ってきなよ、まどかちゃん」

天峰が優しくそう言って道を開ける。

 

この種目、優勝よりも山重に勝と言う事が重要視される。

それはまどかと山重の約束。

それはまどかが勝利した場合、山重はボーノレをやめ、山重が勝利した場合まどかはもう日本に来ないという約束。

 

(今思うとずいぶん愚かな約束ですわ……何の得も無く相手の大切なモノを奪う戦い……なぜワタシはこんなに愚かな約束をしたのでしょう?……きっとそれはワタシ自身がそれだけ世間知らずだった。という事ですわね……)

 

そう思いながら山重の座る椅子に腰かけた時……

 

「まどかぁー!!まっけんなぁーーーーーー!!!!」

最後に聞こえたのは自身が良く知る声、ずっと自分の傍に居てくれて支えてくれた存在。

自身の親友の珍しく真剣な声だった。

真後ろの観客席からの為、姿は見えない。

しかし、しかし彼女の親友の声は、まどかを今までの誰よりも強く勇気付けた!!

 

 

 

「さぁ!!圧倒的実力差を見せてあげますわ!!」

「かかって来るがいい!!」

2人は同時にコマを取った!!

 

パチン、パタパタ……パタ……

 

パチ、パタパタ……

 

前半までの賑やかな雰囲気はすっかり鳴りを潜め、静かな戦いが続いている。

 

「……すまん、熟考する……」

そう言うと山重は盤上を見つめたまた、動きを停止させた。

ゲームのルール上時間制限と言う物は無い、お互い打てなくなるまでが競技時間だ。

露骨な時間稼ぎは問題視されるが、2~5分程度なら止められる事は無い。

 

「大分強く成ったな……正直驚いた……」

パチ、パタパタ……

指を動かしながら山重がゆっくりとつぶやく。

 

「ええ、ずっとお兄様に憧れていましたから……」

パチ、パタパタ……

 

「憧れ?俺なんかにか?」

パチ、パタパタン

 

「ええ、誰しもワタシの顔色を窺ってばかり……本当の顔を見せてくれる人は殆どいませんでしたわ……」

パタパタパタパタ……

自身の幼少の頃の思い出をゆっくり語りだす。

 

「フン、あの時は俺も馬鹿だっただけだ……」

 

「あら、今でもワタシに()()()()()()()いるじゃないですか?」

パチ、パチパチ……

 

「当たり前だ、お前には解らないだろうが、ボーノレは俺の青春そのもの!!誰にも奪わせはしない!!」

パチ、パタ

楽しそうに話すまどかに対して山重は重々しく、絞り出すような声で話す。

「そうですわね、それほど大切なんですよね……」

パタパタ……

「どうした?やけにしおらしいではないか?手加減はしないぞ?」

パタンパタン

「無用ですわ、この勝負ワタシが勝ちますもの」

パタ、パチ

「よく言った」

何処かうれしそうに山重かコマを取る。

パタンパタパチ

 

「ねぇ?初めて会った日の事覚えてます?」

パチ!!

「覚えてないな。いつの間にかお前が、俺の友達の妹に付いて来ただけだ」

パチパチ!!

「アナタにはその程度でしたけど、ワタシは革命的でした」

パタンパタパタ

「……何が言いたいんだ?」

パチパチパタ

 

「さっきも言ったようにワタシの憧れだったんです、アナタが……新しい考え、見た事も

無い遊び、無邪気な笑顔、たまにワタシにするイジワル……新しい世界に見せてくれたんですわ!!」

パタパタ

「ふぅん……で?」

パチパチ

「あら、気が付かないフリですの?」

パタパタパチン

「フリも何も、お前の言いたいことは全く理解出来ん」

パチ、パチ……パチ

「あら、本当に酷いですわね……泣きたくなりますわ……」

パタンパタン

「何が言いたいかさっさと言え!!」

バッチーン!!パタパタ

苛立ちを隠そうとせずに山重がボードにコマを叩きつけるように置く!!

 

「あら?女の方から言わせるなんて……イジワルですわね……」

「…………?」

パチ、パチパタパタ……

 

 

 

「アナタの事が好きでした……!!」

絞り出すようにまどかが話す。

この気持ちは嘘偽りない本心、まどかの心の中には常に山重がいた。

「…………!!」

一瞬だが山重が硬直する。

「何も言わないんですの?」

パチン……

「こんな時に、悪趣味な冗談はよしてもらおう!!」

しかしそんなのは本当に僅か一瞬、すぐに態度を改める。

パタパタ!!

 

「今のアナタに何を言ってももう聞こえないんですわね……」

パタンパタパタ……

「安いお涙頂戴は要らん!!何をしようとも、俺は動くつもりはない!!目指すは勝利

の二文字のみ!!」

バッチーンン!!

「……そうですわね……ある意味、この段階に追い詰めたのはワタシなのかもしれません

わ……」

 

「そうだ!!お前が変な条件を付きだして来た!!何が目的かは知らん!!だが、だが

なぁ!!コレは俺が見つけた俺の輝く場所!!自分の守るべき場所!!お前なんぞに、

お前なんぞに絶対に譲らん!!」

僅かにうなだれる、まどかに対して山重が追及するような話し方をする!!

その態度に、まどかの中に会った山重への熱がどんどん下がっていくのを感じた。

 

 

 

「良いですわ、そうでなくちゃ、そうでなくちゃ面白く有りませんわ!!絶対、ぜぇえ

ええええったあああいに!!叩き潰してあげます!!」

そう宣言すると同時にまどかの指筋が変化する!!

戸惑う様な動きから、目的に向けて一直線に動く姿へと!!

 

「……くそ……!!そんな……馬鹿な!?」

圧倒的なまどかの手によりどんどん山重の色は失われていく!!

 

「アナタ、今まで自分が強い積りでいたんですか?」

何処か余裕じみた、正確に言えば()()()()まどかの態度へと変化する!!

 

「なぜ……ここまで……」

コマがかなり消えた盤上を見て唖然とする山重。

「オセロを教えてくださったのはアナタですわ!!ワタシね?一人でいる時、次アナタに会う事ばかり考えてましたの!!」

 

「俺を倒すためにか!?」

 

「違います!!アナタとまた遊びたかったから!!前みたいに!!」

 

「今更何を言う!!」

 

「アナタはワタシの憧れだった!!けれど、再び出会ったアナタは……アナタは変わって

しまった!!ワタシの理想から大きく外れた!!」

 

「当たり前だ!!俺の人生だ!!なぜお前の思い通りにならなくてはいけない!!」

 

「そう、全てがワタシの思い通りになるなんてただの甘えでしたわ!!」

 

「それを理解しているならなぜ?俺の邪魔をする!!なぜだ!!」

 

「ワタシね?ワタシにもね、譲れないモノ(友達)が出来ましたの!!その人達は、

愚かなワタシに味方してくれた!!間違っているのはワタシなのに……!!叱ってくれ

て、それでも協力してくれた!!間違ってもいいって、失敗しても良いって教えてくれ

た!!だから、だから……」

 

「俺を倒そうと?自分だけでなく友達の為にも、と?」

 

「ええ、そうですわ!!そしてこれで……」

そう言って盤上の開いた空間に、コマを近づける。

「!!それは……」

そこは、量自体は少ないがコマを取りにくい場所、ここにコマを置けばまどかの勝利はほぼ確実になる!!

 

「ここでワタシの勝ですわ……けれど……」

パチン!!

「なぜ、そこに置いた?勝ちは確実で……」

まどかが置いたのは別の場所だった、誰しも一目で解る悪手だった。

 

「ワタシからアナタへの最後の慈悲です、ありがとうお兄様。楽しい夢を、思い出

を……」

パチン

「馬鹿な奴だ……」

帰す一手で、山重が先ほどまどかの使わなかった部分を使う。

パタパタパタパタ……

おおくのコマが入れ替わっていく……

そして遂に……

 

『決着ゲドー!!最終決戦は『志余束高校』の勝利ゲド!!そして同時に今回の大会す

べてのゲームが終了したゲド!!それぞれ選手は控え室にて結果発表を待つゲド!!』

 

 

 

アナウンスが響くと同時に二人が席から立ち歩いて行く……

どうしても、どうしてもまどかは山重に勝事は出来なかった。

きっとそれは彼に対する罪悪感……散々利用した自分に対する負い目からの行動だったのかもしれない……最後の最期で彼女は自ら敗北を選んだ。

「さよなら、ワタシの初恋、ワタシの親友……」

会場に小さく誰かの声が響いた……

 

 

 

「まどかちゃん!!」

「ああ、みなさん……ごめんなさい、負けてしまいましたわ……優勝も出来なかった……明日の便で帰る事に……」

帰って来た、まどかに天峰が声を掛けるが何処か心ここに非ずと言った感じだ。

 

「そんなの!!そんなのダメだろ!!」

「……!!放して!!」

天峰がまどかを激しく揺さぶる、その中にはいろいろな感情がないまぜになっていた。

 

「せっかく木枯ちゃんとまた会えたんだろ!?こんなすぐにあきらめて良いのかよ!!」

 

「良い訳有りませんわ!!けど……それが約束――」

 

そこで再びアナウンスが流れだした。

『ゲドゲド!!集計が終わったゲド!!優勝は……いないゲド!!現在ゴールデンストーンズとフリーダムソングスが同着ゲド!!そのため最終(予備)戦を開始するゲド!!競技を選ぶ為両チームは、こちらで今スグ引くゲド!!……あ、関係ないチームは帰って良いゲドよ?』

 

放送を聞きまどかが自嘲気味に笑う。

「ほぅら、帰れですって……さぁ、みなさん行きましょう?ああ、そうだ。ワタシに付き合ってくれたお礼に帰りにお寿司でも――イタァ!?」

 

後ろから誰かが現れまどかを殴りつけた!!

「一体何を――」

「まどかのバカァ!!」

そこに居たのは木枯だった。

眼にいっぱい涙をため、前進を震わせながらそこに立っていた。

 

「あら、アナタに馬鹿って言われる日が来るなんて……」

「悔しくないの!?なんで勝たなかったの!?まどかなら絶対勝てるでしょ!?」

今まで見た事ない様な鬼気迫る表情で、まどかの服の襟をつかみ上げる!!

 

「やめなさい……この服高いんですのよ?」

「悔しくないの?……悲しくないの!!もう会えないかもしれない――」

「悔しいですわ!!悲しいですわよ!!ワタシは……ワタシは二つの物を失いましたわ!!なぜ悲しくないなんて言えるんですの!!」

遂にまどかまで泣き出した、彼女のウチに有るのは後悔……

きっとこれからも、ずっと悲しみ続けるのだろう……

 

 

 

 

 

『おおーっと!!最終競技(予備)が決まったゲド~!!コレは…………は?……こんなことが有るゲド?い、いや……決まったものは……決まったものはしょうがないゲド!!全参加者!!聞くゲド!!最終競技(予備)『スク乱舞る・奪取』ゲド!!本来コレは全員同時の競技……個人競技にはないハズゲドが……出た物はしょうが無いゲド~。帰るのをやめて!全チームグラウンドに集合ゲド!!』

 

その言葉を聞き天峰達の瞳に再び光がともった!!

「まどかちゃん、いや、お嬢様……今、欲しい物はなんですか?」

佐々木の口調をマネしながら天峰がまどかに、すでに決まりきった事を聞く。

 

「もちろん……勝利ですわ……ワタシにふさわしい」

その言葉に天峰はニッと笑った。

 

「夕日ちゃん、藍雨ちゃん、ヤケ……他の奴から『勝ち』奪いに行こうぜ?」

「……そう言うと思った……」

「ええ、先輩ならそう言いますよね!!」

「ちょっとハッピーエンド拾いに行こうか!!」

そう言ってメンバー達はグラウンドに走って向かった。

 




最初から引っ張ったボーノレ!!
このタイミングで使うと言う暴挙!!
作中の告白シーンはなぜかテンションがスゲー上がった……
なぜだ?寝取りと言う奴か?そうなのか!?

自分の新しい一面です。

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