リミットラバーズ   作:ホワイト・ラム

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すさまじく遅く成った、リクエスト作品。
申訳ありません!!

今回は、すさまじく不遇なキャラクター卯月が主人公です。


特別短編No5

とある大型量販店の一角に、短冊が飾ってある場所が有った。

『彼女が出来ますように』『新作ゲーム買ってもらえますように』『萌モン3期希望』『友達が破局しますように』『パパがお酒飲んでもママをぶちませんように』『神に成りたい』『その時不思議な事が起こりますように』『籠鳥高校合格しますように』『全人類が死滅しても自分だけ生き残れますように』『俺のギターで世界を揺らす!!』『芸能人と付き合いたい』『2次元に行きたい』様々な願いが笹に吊るされ、風を受け揺れる。

 

その笹を見て卯月 茉莉が不機な顔をする。

 

「願い事、ねぇ?願うだけでなんでも叶ったら人生、楽よね~」

何か願い事を書いた紙を、飾ろうとしてやめて歩き出す。

特に用事もない暇な、休日の午後。

卯月は近所のデパートに遊びに来ていた。

 

「さてと……来たはいいけど何処行こうかしら?」

そんな事を思案していると、空腹感を感じて適当なカフェを目指して歩き出す。

 

「ふん~ふ~ん♪」

 

「……………え!?」

今、通り過ぎた影を見て振り返る卯月!!

その姿は、彼女の思い人である、幻原 天峰だった!!

 

「天峰!!天峰!!」

 

「ん?お~卯月、よっすよっす!!」

卯月が呼び止めると何時もの様に、柔和な笑顔を向けて天峰が卯月に手を振る。

偶然天峰も、此処まで遊びに来ていた様だった。

 

「偶然ね!!なにか買い物?」

天峰を見た瞬間卯月のテンションが一段階高くなる。

天峰の下げるビニール袋を見て、卯月が疑問を呈す。

 

「コレか?コレは盗聴器のパー――」

 

「あ、もしもし?警察?じつは――」

 

「ストーップ!!ストップだ!!やめろ!!いや、むしろやめてください!!」

一瞬にして状況とその使い道を理解した、卯月は携帯電話で素早く110をプッシュ!!

目の前の幼い子供を毒牙にかけようとする変態を、国家権力に付きだそうとした!!

 

「なによ……近寄らないで変態!!その盗聴器で何をする気だったのよ!!」

天峰(変態)から距離を取りながら、携帯電話をかまえる。

 

「コレは、夕日ちゃんに頼まれたんだよ!!」

必死で天峰が弁明する。

『夕日』の名が出た瞬間上がっていた卯月のテンションが一気に下がる。

正直な気持ち『またか』というのが大きい。

ゴールデンウィークに一件以来天峰の家の居候(養子扱い?)の例の中学生だ。

天峰の好みのタイプなのか、彼女が来てから天峰の機嫌が非常に良い。

今目の前にある天峰の笑顔を作ったのが自身ではなく、あの何処かおかしい少女だと思うと卯月の心に嫉妬の炎が僅かに燃える。

 

「ふぅん、で?そのゆーかちゃんが何でそんな物、欲しがっているのよ?」

ジト目で天峰を睨む。

さて、このロリコンの口から一体どんな言い訳で出るのか。

 

「実はな?最近夕日ちゃんが工作にハマっているみたいで……前々から手先は器用だったんだぞ?切り絵とか、本当上手だったし……あ、話がそれたな。

まぁ、そんな事が有って電子工作っていうのか?簡単な時計とかモーター式の……ミニ四駆って解るか?そう言ったのに興味を持ったらしくてさ。

パソコンで簡単な、図面と作り方調べていろいろ作ってるんだよ」

しどろもどろながらも天峰が説明を始める。

 

「で?盗聴器は何処ででてくるの?」

 

「…………夕日ちゃんが作ってみたいって……」

 

「はぁ!?あの子何を考えて――」

 

「興味を持ったらしいから俺が勧めたんだよ!!『俺の部屋なら仕掛けてもいいよ』って言ったら大喜びで――――」

 

「待て待て待て待て!!なに!?同意の上なの!?同意の上でアンタ等そんな事してるの!?」

予想外の展開に卯月が驚きの声を上げる。

当の天峰は全く気にした様子もなく、

 

「いや、別に家族だし。っていうか、夕日ちゃんを呼ぶ時とかいちいち呼びに部屋まで行かなくてもいいから、便利だよ?」

理解不能!!圧倒的理解不能の事態に卯月が頭を抱える!!

 

「もう少し健全に生きた方がいいんじゃない?一応兄妹って言ってもプライバシー的な」

 

「大丈夫だって、俺は夕日ちゃんを信じてるから。

卯月は『あの時』のイメージが強いから、あんまりいい印象持ってないかもしれないけど、本当はすごくいい子なんだよ。

大切な物を集めてる最中なんだ、俺が見守ってあげないと――って言っても俺が驚かされる事も多いんだけどさ!!じゃ、なるべく早く帰りたいから。じゃあな」

そう言って再び、卯月の笑いかける。

手を振りながら、楽しみでしょうがないと言った様子で歩き出す。

 

「あ……」

その笑みは幼い頃、天峰が卯月に向けていた顔で……

今、その笑みは自身でなく夕日が独占している事を理解した。

嘗て自身に向けられた笑顔もやさしさも、今は彼女が独占している!!

その事を思うと、卯月は悲しみが込み上げてきた。

いや、事態はもっと悪い。

正真正銘の小学生の晴塚 藍雨は料理上手で気立ても良い、何より愛嬌が有る。

飛び級して現在天峰の先輩の立場に座っている、まどかは家が裕福であるし、本人にリーダーシップが強く人を引き付ける魅力がある、さらに実際その魅力に見合うだけの努力家で隙が無い。

その親友である、森林 木枯は無邪気さを誇り他人が躊躇する事すら簡単に行ってしまう。

 

ここ数ケ月でなぜか天峰の周りに、美幼女と言える人物が集まってきている。

まるで、引き合うかの様に……

 

「私は……もう……」

卯月の目の前で、天峰が遠ざかっていく。

それは実際にも。心的にも卯月から天峰が遠ざかっていくのを示唆している様で……

 

カサッ……

 

さっき願い事を書いた紙を、ポケットから落ちわずかに音を立てた。

足元で、紙が店内もエアコンの風に吹かれた揺れる。

ウジウジした、つまらない存在。

卯月はそれを拾い……

 

ビリィ!!

 

真っ二つに破り捨てた!!

 

「神ごときに頼らなくても……!!

私の願いは私で叶えるわよ!!願うだけ!?ふざけんじゃないわよ!!

恋する乙女舐めんな!!」

びりびりと何度も、紙を破り自身の頭の上に向かって投げ捨てる!!

紙吹雪と成った、願いが卯月に降り注ぐ!!

 

まるでそれがスタートの合図だった様に卯月が走り出す!!

目指すは、さっき自分を置いていった愚か者の所だ。

 

「天峰ェええええええ!!」

 

「う、卯月!?何――ぐえ!?」

走ったままの衝撃を持ったラリアットを天峰の面白半分に叩きこむ!!

突然のラリアットに天峰が目を白黒させる!!

 

「一体なんの積りだよ?」

 

「せっかくの日曜よ?学園の美少女が貴方に出会ってあげたのよ?コレはご機嫌取る為、遊ぶしかないでしょ?」

倒れる天峰を立たせながら卯月が、近くのカフェを指さす。

 

「ええぇ?なにその訳解らんルール……っていうか俺ささっと帰って夕日ちゃんに買った物を――」

 

「シャラーップ!!ロリコォン野郎!!こういった場合男はエスコートするもんでしょ!?そんな常識もしらないの?」

有無を言わせず、まくしたてる!!

 

「はぁ、解ったわかった。久しぶりに俺と遊びたいんだな?わかったよ、せっかくだし――」

尻もちをついた、尻を叩きながら天峰が立ち上がる。

 

「あ、おばさん?私、私卯月。そうそう、うーちゃん。

うん、今、偶然天峰と会ったから遊ぶって話になったの、で天峰夕飯いらないって。

そうそう、じゃ、はーい」

あっけにとられる天峰を無視して、卯月が電話を切った。

 

「おい、卯月?いま誰に電話したんだ?」

 

「誰って、アンタのお母さんよ。4人で外食するって」

圧倒的スピードで、外堀を埋める卯月!!

その時点で天峰は家のカギを持ってきていない為、家に入る事が出来ない!!

それどころか、夕飯自体自分の分が無い!!

 

「お、おいおい……俺、そんなに金持ってない……ぞ?」

 

「あら、そう?なら私が貸してあげるわ。利子は10日で10割ね?」

 

「トジュウ!?何それ!?どこぞの漫画か!?」

ブラックな金融企業も思わず真っ青に成ってしまう、利子率の天峰が抗議の声を上げるが卯月の暴走は全く止まらない!!

 

「さーて、デートよ!!私お昼まだなのよね~、ジャンボパフェ食べたいわ!!

こう、カロリーを気にしてダイエットしている女の子に正面から、中指立てる様なでっかいの!!」

そう言った近くの店に駆け足で入っていく卯月!!

家に帰るわけにもいかない天峰は、半場諦めの境地で付いていく!!

 

「あの……卯月?俺、こういった『女の子専用!!』って感じの店、肩身が狭いんだけど?」

周りのピンクな、壁紙を見ながら身をちぢこませる。

 

「あ”?男でしょ!?もっとちゃんとしなさいよ!!」

 

「は、っはい……!!」

卯月の迫力と店の空気の押され天峰が更に肩身を狭くする。

 

「あの~、カップルの方ですか?今キャンペーンで、お写真を撮らさせて頂くとドルチェセットが無料でご利用いただけるのですが……」

近寄って来た店員に卯月がいち早く反応し、天峰を首に手を回し顔を近づける!!

 

「はい!!もう10年カップルやってます!!いまだにラブラブで~す!!

ね!!ダーリン!!」

店員がその様子を見て、ほほ笑んでカメラを取りに戻っていく。

そのままのポーズで、天峰が抗議をする!!

 

「お、おい……さすがにウソは……」

 

「(黙りなさい。今の間だけは、カップルを演じなさい!!ほら、私の事はハニーって呼びなさい!!)」

ドスの聞いた声で、ぼそぼそと天峰に語り掛ける卯月!!

『はい』と答える以外、天峰に道は無かった!!

 

 

 

「はーい、お二人ともお写真をとりますよ?」

 

「は~い!!ダーリン、ダーリン!!」

卯月が上機嫌で手をCの様な形でこちらに向けて来る。

二人で手を合わせて、ハートマークを作りたい様だ。

 

「あ、卯月?」

その瞬間!!卯月の足がテーブルの下の天峰の足を踏みつける!!

 

「(ハニーでしょ?)」

小さく、声を出す。

 

「はい、ダ~リン?」

 

「は、はは……は、ハニー……」

天峰と卯月の手によってハートマークが出来上がる。

 

パシャ!!

 

フラッシュがたかれ、一瞬の出来事が永遠に残される。

写真には、幸せそうな卯月と引きつった顔の天峰が写っていた。




主人公補正か?卯月がヒロインをしている!?

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