楽しみにしていた人ごめんなさい!!
失踪はしてませんよ?
休み時間。
天峰は気が進まないながらもまどかのケータイに電話をしていた。
「あ、もしもし?まどかちゃん?俺、天峰だけど……」
「ああ、庶民……代わりのメンバーは何とかなりました?一応出場可能人数はそろってますけど……」
不安そうなまどかの声、後ろで微かに咳をする声も聞こえてくる。
どうやら木枯の看病をしている様だった。
「ああ、それなら……何とかなりそう……かな?」
不安に成りながらもそれに応える。
正直天峰は八家がどの程度の能力が有るか知らないのだ。
不安なのもうなずける話である。
「はっきりしませんのね?まぁ良いですわ……とにかく今日も学校が終わり次第佐々木を向かわせますから、今日は家に泊まって明日直接会場に向かう様に!」
そう言うと電話が切れた。
(うーん……ヤケを信じてない訳じゃないけど……大丈夫かな?)
明日の事を思うとますます心配になる天峰。
(にしても……まどかちゃん遂にデレたか!?イヤ!!まだ正確にはデレていない!!ツンな言葉で優しい行為が来る段階!!俺が思うにツンが有る子のここが一番の魅力だと思う!!たとえるならバレンタインがわかりやすいか?『大好き』と書かれた手作りチョコがデレ100とすると、あれは10円チョコ!!人によってはまだまだと思うかもしれない!!しかしこれはツンとデレを同時に味わう事の出来る唯一の場面!!俺はこの瞬間こそが最高だと思う!!その輝きは女児から少女に成長する幼女のごとk…)
長くなるので割愛♥あんまり読むと頭がおかしくなるよ?
悩ましげな表情をしているが、机の中にはヤケから借りた本がちゃっかり有る!!
彼の残念さが良くわかる!!
放課後
中等部に向かい夕日と合流する天峰、その足で駐車場に向かっていく。
学校の駐車場にもうすっかり見慣れたまどかのリムジンが停まっている。
「おまたせしましたわね?」
窓からまどかが姿を現す。(ダジャレじゃないよ?)
「ああ、まどかちゃんお迎えありがと」
「あら?庶民が見つけた助っ人は何処にいますの?」
キョロキョロと辺りを見回す。
「実はそれがさ……俺の親友のヤケって奴が参加してくれることになったんだけど……」
天峰が気不味そうに話しだす。
「さっさと言いなさいな!!」
「勝手に帰っちゃいました、テヘ!!」
かわいく舌を出して誤魔化す天峰。
「はぁ!?ちょっとソレどういう事ですの!?その……えっと誰でしたっけ?」
「ヤケ?」
「そうです!!その焼け?でしたっけ?大会は明日だって知ってますの!?」
半場ヒステリック気味に声を荒げるまどか!!
周りにいた学生がビクッとこちらを見るが気に留めないまどかの言葉は続く!!
「ちょっとその方誠意というか……心構えとかが足りないんじゃありませんの!?一体何を思った帰って行ったんですの!?」
「ああ、それなら……」
以下回想~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お前ホントにできるのかボーノレとか……」
心配そうに八家に聴く天峰。
当たり前だがボーノレはあまりポピュラーなスポーツ?ではない。
そもそも八家が知っているかどうかすら怪しいのだ。
しかしそれに対して意外な言葉が帰って来た。
「何言ってるんだよ?ボーノレの会場俺んちのすぐ近くだぜ?この季節になるとオカシナ特技持った奴らが集まって来てさ~。俺んちの近くのコンビニで作戦会議とかしている奴らもいんだよ?知らない訳ないじゃん」
淡々と話す八家の言葉に目が思わず点になる天峰。
「え?じゃあ……お前って経験者?」
あまりの出来事に理解が追い付いていない天峰が、何とか言葉を紡ぐ。
「いや……経験者って訳じゃねーよ?確かに何度か面白そうだから見に行った事は有るし、大体のルールも把握してるけど実際にやったことはないな」
実にあっけらかんと八家が言い放つ。
「え?じゃあなんで俺がボーノレ部に行く時教えてくれなかったんだよ?」
「いや、お前ボーノレじゃなくて、『総合ボール球技部』って言ってたじゃん。『総合ボーノレ王求技部』って言ってりゃ解ったぞ?」
圧倒的なすれ違い!!ガクッと膝から崩れ落ちる天峰!!
「マジか……マジだ……マジで?しょうか?つまり俺たちの中でもかなりの経験者?」
「いや……だから実際にやったことは……」
訂正しようとする八家。
しかし!!天峰は止まらない!!
「イヤイヤ!!場合によっては超戦力ジャン!!さっそく明日まで練習しようぜ?」
思いも依らぬ強力?な味方の登場でテンションが上がる天峰!!
しかし!!
「あ、ワリ。練習はパスで、今日で点描画仕上げたいんだ。提出も期限近いし……んじゃね」
そう言って学校が終わると同時に部室に入りこんでしまったのだ!!
部室の中からは
「うおぉおぉおおお!!八斗!!百裂点描拳!!あたたたたたたたたたたたたた!!あったたたたたたたたたたたたたたたたた!!!目指せ!!『しゅごいぃいい!!腕がいっぱいあるみたいぃっぃい!!』あたたあたたたたったたああたたたったたあああ」
八家の自分の夢に対して真剣に努力する声が響く。
「こらぁ!!野原!!何やってんだ!!」
あ、怒られた。
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「という風なんだけど……うわ!」
天峰の言葉を聞いていたまどかが鬼のような形相をしている!!
「なんなんですの!?その訳解らない人は!!やる気が足りませんわよ!!やる気が!!これが噂に聞く『ゆとり』という奴ですの!?」
その場でダンダンと地団太を踏む!!
「(癇癪もかわいいな)まどかちゃん落ち着いて!!俺達は俺達でしっかりやっていけばいいんだよ!4人でも何とかなる筈さ。だからおちついて、ね?」
何とかまどかをなだめようとする天峰。
「ほら、夕日ちゃんも一緒になだめて!!」
手におえないと判断した天峰が夕日に助けを求めるが……
「……めんどくさい」
そう言って完全無視!!
結局、ひたすら家に付くまでまどかの愚痴に付き合わされた天峰であった。
「ふう、完成だ……」
そう言ってペンを机に置く男。野原 八家。
夢中だったのか、気が付くと外はすっかり夜の帳が降りており、自分以外の部員は一人もいない。しかし八家の中には心地よい疲れと、確かな満足が有った。
彼が今週の初めから書き始めていた現代リメイク風、モナリザが完成した。
イマイチ萌えないモナリザをラノベの絵風にリメイクする、というのがコンセプトで歴史に有るイマイチ萌えない名絵を、かわいいけどどこか不健全な匂いのする作品に書き換えた。
道具をかたずけ、カバンを持って駐輪場に向かう。
「待たせたな俺の8(エイト)・ビート・ヒート……」
自分の自転車にまたがる。
「あ、天峰のヤツサイクロンシューター(自転車)また忘れてる……学習力のない奴だな……きっと年中幼女幼女言ってるせいで頭にカビが生えたに違いないな」
ニヤリとしながら自転車を発進させる。
駅前を通る時僅かに空腹を感じ、自転車をハンバーガーチェーン店に停車させる。
「明日はボーノレか……」
思わすその言葉が八家の口から出る。
丁度駅から多数の乗客たちが降りて来た所だった。
「この季節はこうなるんだよな……」
八家の隣をギターの音を口で出しながら通る男がいる、何を思ったのか竹刀にWiiリモコンをストラップの様に付けた男が横を通る。
ハンバーガー屋の店内に入ると、モデルガンを机に並べながら整備する男の前で堂々とBL同人を読む女がいる。
逆に目を向ければ、楽しそうに空の紙コップを積む男達が居る。
それだけではない少し目を凝らせば、おかしなやつらは何処にでもいるのだ。
間違いなく集まって来ているのだ!!全国から歴史の闇に葬られたスポーツに魅入られた人々が……
「明日はボーノレか……」
感慨深そうにヤケが一人つぶやく。
遂にあのキャラクターが本格始動!!
次回から遂に大会が始める予定です!!