寒さに対するアンチテーゼ。
寝ないようにしなければ……
まどかの屋敷にて天峰達がボーノレについての作戦会議をしている。
場所はまどかの家の食堂。天峰とまどかが向き合うようにテーブルを挟んで座っており、天峰の隣には夕日がまどかの隣には木枯が座っている。
先ほど、佐々木さんが厨房に入って行ったので何か用意してくれているらしい。
4人の中で最初に口を開いたのは天峰。
「パソコンで調べた情報なんだけど、ボーノレは複数の競技をする事になるみたい。あらかじめ俺達個人の得意分野を整理しないか?」
それぞれの得意な事を生かすのはボーノレの基本である。
「解りましたわ、私は主に経済学、商業、後は暗算などでしょうか?ああ、宝石と装飾などについても知識はありますわ」
自慢げに話すのはまどかだった。
「安産?……ああ!!暗算か、びっくりした」
アンザンの言葉がまどかの口から放たれた瞬間、病室で赤ん坊を抱いているまどかの姿が頭をよぎった!!
「天峰、何を想像したの?」
夕日が非常に厳しい目でこちらを見ている!!
ツンツン!!ツンツン!!
天峰の左足ももに僅かな刺激が伝わる。
何かと思って自身の足を見ると、夕日がカッターで天峰の足をつついていた。
幸い刃は出していないが気分の良い事ではない。
「ゆ、夕日ちゃん?なにしてるの?」
天峰が顔を引きつらせる。
「……コレは警告」
厳しい視線はそのままでニヤリと夕日が口角だけを上げる!!
次、何か他の娘に手を出したら容赦はない!!と遠まわしに言っているのだ!!
「うん……ゆ、夕日ちゃんの特技って何かな?」
話題を無理やり戻す天峰!!
「……天峰を
恐ろしい事を平然と言ってのける!!
「あー!さっきロリコンだってばらしたもんね!!」
ばらすの意味を誤解した木枯がカラカラと笑う!!
「そ、それ以外に得意な事って無い?」
天峰が再びマズイ方に行きつつある会話をもとに戻そうとする。
「……他に?……有る」
そう言ってテーブルの上の紙ナプキンを一枚取って折り曲げる。
チキ……チキチキ……チキチキ!!
カッターナイフの刃を出す!!
「…………ん!……」
凄まじいスピードでカッターが紙ナプキンを切り刻む!!
「まあ!!」
「おおー!!すごーい!!」
パッと紙ナプキンを広げると、そこには二人の男女が仲良く手をつなぐ切り絵。
「おお!!すごい、夕日ちゃんって意外な特技持ってるんだね……」
天峰が驚き半分怯え半分で夕日の技量を褒める。
「夕日ちゃんは芸術センスと手先の器用さが武器だね。木枯ちゃんは何か得意な事ないの?」
今度は木枯に対して質問をする。
「ん?私か~。得意な事……得意な事?無いよ!!」
元気よくその場で立ち上がる!!
(あら、かわいい……)
しばし純粋な笑顔に癒される天峰!!
しかし夕日の持っていた二人の切り絵の内、男の首が音もなく落ちたのを見て現実に戻される!!
「木枯ちゃんは純粋さが魅力だね!!」
夕日が凄まじい目でこちらを見ている気がするが気にしない!!
気にしたら取られる!!大事な何かが!!そんな気がする!!
「いえ~い!!褒められた~」
その場でうれしそうに謎のダンスを踊る!!
「まあ、出涸らしはメンタルの強さが売りですわね?」
助け舟のつもりかまどかが天峰にそう話す。
「うぇーい!!メンボウ強~い!!」
「メンタルですわ!!おバカ!!……まあ、前の敗北に左右されない精神力は思った以上に大切ですわ」
実際思い当たるところが有るのか、まどかは木枯の性格を高く評価しているようだ。
「……天峰は……何ができるの?」
夕日が天峰に聴く。
そこでハタと思い直す天峰!!
(あれ?俺って何が得意なんだ?……幼女センサー?……イヤイヤ!!もっと役に立つ能力が…………あれ?不味いぞ……俺得意な事って………てもしかして無い?)
絶望的な事実が頭の中をよぎる!!
自身の心の中で必死に否定し、自分の特技を考え始める!!
が!!
「やばい……俺特に得意な事ない……夕日ちゃん!!俺の特技って何かな!?」
最期の手段としてついには他人に聞き始めた!!
「……ん?……優しい?……事?」
しばらく考えてから首をかしげる。
「
「…………」
気まずいのか目を合わせない夕日!!
「道案内さんむのー!!」
天峰を指さし笑う木枯!!
グサリ!!と天峰にダメージが入る!!
「……良いよ!!無能あろうとやってやるぜ!!」
椅子から立ち上がり高く右手を上げる。
「……追い込まれた……時の……爆発力がすごい……」
「だよな?そこが俺の魅力だよな?」
天峰がうれしそうにポーズを決める。
正直ださい!!
「さて……お互いの得意分野がわかって来たのなら、次は相手の情報ですわ!!残念ながら他校のボーノレ部のデータは有りませんわ、しかし前年の競技データなどから今年も出そうなのをピックアップして……」
「あー!!忘れてた!!ビデオー!!」
まどかが過去のデータを探ろうと話している最中に、木枯が立ち上がった。
そしてそのまま走り去ってしまう。
「ちょ!!ちょっと何処行きますの!?…………なんなんですの?ビデオ?」
木枯を止めようとするがすでに部屋を出てしまっていた。
数分後
木枯は2枚のDVDを持って帰ってきた。
「木枯ちゃんそれは何のDVDなんだい?」
一つは製品版の様だがもう一つは録画用に市販されているディスクの様だった。
「お兄ちゃんの部屋から持って来た~。みんなで見よ?」
ディスクを持ってパタパタと部屋を走りまわる。
(先輩の部屋って……子供に見せて大丈夫なDVDなのか?)
非常に失礼な心配をする天峰!!DVDと聞いて想像するのは一つのみ!!
「だから一体なんのDVDですの?」
周りの人間の質問を無視して木枯はTVにディスクを挿入しようとする。
「あれ~どうやるんだっけ?あ!!わかった!!」
適当にボタンを触る木枯、何とか再生させる事に成功する。
軽快な音楽と共に映像がスタートする。
『みんなと一緒に!!レッツボーノレ!!』
二人の人間が出てきてボーノレの歴史や、種目などを紹介する。
天峰が初めてボーノレの部室で見せられたものと同じだった。
「ああ、これなら市販してますわよ?持ってきてくれた所悪いのですけど……」
まどかがDVDを停止させようとする。
しかし
「ちょっと待ってまどかちゃん、リモコン早送りってどこ?」
天峰がまどかを制止する。
「え?なんですの?とりあえずここですけど……」
「ありがと……」
天峰が映像を早送りしてゆく。
『……で……ある……yt………』
ディスクが早送りで進んでいく。
「何がしたいんですの?」
まどかが訝しむ。
「ちょっと気になることが有って……」
そしてディスクの映像に変化が起きた!!
「あ!!」
「すごーい!!」
「……録画失敗?」
ボーノレの映像が切れ他の映像になった。
画面の中では選手たちが動いて居るが、手振れや雑音が入り素人がとったモノだと解らせる。
「やっぱりか……」
天峰がつぶやく。
「昔はビデオの先に関係ない画像をわざと撮って、本命を隠す手段が有ったんだ。先輩は製品版を持ってたからね……同じのが有るなんておかしいと思ったよ」
画面に映るのはまだ最近と思われる大会の様子だった。
「すごい……お手柄ですわよ!!出涸らし!!これさえあれば実際の競技の様子や警戒すべき選手たちもわかりますわ!!」
圧倒的に不利だった天峰達一行に有力な情報が手に入った!!
これが逆転ののろしとなるのか!?
「……天峰……なんでそんな事……知ってるの?」
「ああ、それ?ヤケが貸してくれるDVDに似たような仕掛けが……」
ボゴン!!
「……最低……」
一気に台無し!!
ゲーセンで800円使ってハムスターのぬいぐるみゲット!!
ヤバイ!!かわいい!!今日から抱いて寝るかな!!
かわいいぬいぐるみ?好きですよ?
似合わないって良く言われる……