リミットラバーズ   作:ホワイト・ラム

40 / 102
最近肌寒さを感じるようになった作者です。
季節の変わり目、特に秋に関連するとなぜか無性にさみしく感じます。
気が付けば、足音に落ち葉を踏む音が混じる今日この頃……
どうかお風邪などを患わない様にお気を付け下さい。


急に静かになると寂しいですね

佐々木さんが再びリムジンを用意する。

「どうぞこちらに」

丁寧な感じで扉を開く佐々木。

「うわぁ~い!ふっかふか!」

木枯がリムジンの座席で飛び跳ねる!再びめくれるスカート!

(ヨォシ!あとチョットだ!)

天峰心の中で思わずガッツポーズ!

そんなにパンツがみたいのか!!

見たいんです!それがこの作品の主人公!

「天峰様?お乗りにならないので?」

すぐ後ろから佐々木さんの声がした。

「おおぉ!びっくりした!すぐ乗ります」

そう言ってそそくさとリムジンに乗り込んだ。

(佐々木さんって気配なく現れるな……忍者かなんかか?)

天峰は微妙に苦手意識を感じた。

間もなくリムジンは静かに発進した。

「ねぇねぇ!!道案内さん!!まどかにスッゴク気に入られたね!」

ころころと楽しそうな笑顔でそう話す木枯。

「気に入られた?俺が?」

全く心当たりのない言葉に天峰は頭を悩ませる。

(気に入られてるのか?怒られたり怒鳴られたりロリコン扱いされたり……気に入った相手にする態度ではない気が……まさか!なじる対象として気に入られたのか!?そうだよ!木枯ちゃんは良く怒られたりしていたし……俺は新たなターゲットになったのか!?アレか?気づかないウチに叱られるのが喜びになってしまうのか!?最終的に俺は自分から叱ってくださいと懇願するようになってしまうのか!?……それも悪くない!)

気に入られたというセリフに対して満更でもない天峰!

彼は幼女が相手なら紳士でもケダモノにでも成れる男!

「そ~だよ。まどかが家に誰かを招待するなんて、私が知ってる限りでは初めてだよ?それに~誰かに連絡先を渡すなんてまずなかったし、誰かにあやまるのなんてすごい久振りなんだよ?」

ものすごくうれしそうに語る木枯。

木枯は自身の友人の変化を心の底から喜んでいるのだ。

「まどかちゃんって人に謝ったりしないの?自分のミスはちゃんと認めないと……」

「ううん!!それは違うよ。まどかはすっごい努力家なんだよ!ミスはしないっていっつもガンバってるんだよ!だから間違う事自体無いんだって~」

何処までも楽しそうに話す木枯。

それはまどかのワガママに慣れてしまっているというよりも、自身が心の底から信頼しているからこそ言える事だと思った。

しかし天峰はその言葉に小さなしこりを感じた。

「あ~なんとなくわかるかも……まどかちゃんって意外と自分に厳しいんだろうね」

天峰が今日のまどかの行動を思い出す。

「木枯様、お家に到着いたしましたよ」

佐々木さんが一軒の家の前で車を停車させる。

「あ!佐々木さんありがとー。道案内さんまたまどかと遊んであげてね!」

笑ながらリムジンを降りて玄関に向かって走る。

しかし途中で振り返り。

「けどまどかの一番の友達は私だよ!!それじゃ~オヤスミ~」

そう言うと玄関に姿を消した。

木枯が居なくなると急にリムジンの中が広く、静かに感じるようになった。

「ホッホッホ、木枯様が居なくなって静かになりましたな……」

天峰の心の内を代弁するように佐々木がつぶやいた。

「ええ、急に静かになると寂しいですね」

木枯の存在がどれだけ大きかったのか、天峰は改めてその身で知ったのだ。

「おや、やはり幼い女性が居ないと寂しくなりますかな?」

運転をしながら佐々木が天峰をからかう。

「やだな、そんな事ありませんよ」

天峰も笑いながら否定する。

 

「お暇でしたら私が面白い話でもしましょうか。まどか様のご実家、トレーディア家には変わった家訓が有りましてね、『どんな相手にも敬意を示せ、そして勝者として君臨せよ』そのせいか争いごとが起きれば相手の最も得意な分野で勝利を収めようとするのですよ、それこそが相手を超えた証左だと信じているのでしょうね。たとえば……」

天峰が話に割り込む。

「自分が長年目標にしていた、人物を追い越す時でも?」

「御名答」

天峰は後ろの席に座っているため、佐々木の表情はうかがい知れない。

「佐々木さん、まどかちゃんはまさか……」

自身の嫌な考えを振り切るために、佐々木に確認を取ろうとするが……

「天峰様、自宅に付きましたよ」

佐々木が車を停車させる。

「佐々木さんさっきの話もっと詳しく……」

「すみません、お仕えする家の事をペラペラしゃべる事は出来ません、さっきのは口が滑ったのです、他言無用でお願いいたします」

今度は佐々木が天峰の言葉を遮る。

「それでは失礼いたします」

そう言って佐々木はトランクから天峰の自転車を手早くおろし、車を発進させた。

天峰は小さくなっていくまどかのリムジンをただ黙って見送った。

「ただいまー」

天峰が自分の家のドアを開ける。

「あ、兄貴。お帰りー」

風呂上りなのだろう、自身の濡れた髪を拭く天音とすれ違った。

「飯は?」

「さっき外で食部てきた」

靴を脱ぎながら天峰が答える。

「外で食うなら夕日に言っとけよ。アイツずっと兄貴が帰るの待ってたんだぞ?」

不機嫌な表情になり天峰を糾弾する。

「そっか、悪い事しちゃったな。天音、今風呂空いてるか?」

今はとにかくゆっくり考え事がしたかった、そのため天峰は風呂に入りたかった。

しかし……

「ああ、ワリィ。俺の次夕日は入るって言ってたから、さっき声掛けちまった。たぶん今は夕日が入ってる」

天音が天峰の質問に答えた。

「そうか……なら夕日ちゃんと一緒に入ってくるよ」

そう言ってお風呂場に向かって歩きだす。

「おう、そうか……って行かせねーよ!兄貴なに考えてるんだよ!」

ゾンビの様に歩く天峰に、後ろから両足をそろえての跳び蹴りを食らわせる!

「痛!……ごめん考え事してた。あー、今日は風呂もういいや。俺先に寝るわ」

そう言って蹴られた腕をさすりながら自身の部屋に向かう。

箪笥から自身の変えの服を取り出し着替えていく。

「今日は疲れたな……ああ、着替えくらいエンカウントしたかった……」

煩悩とまどかの家の事を考えながら、天峰の意識は夜の闇に沈んでいった。

 

 

「お兄様、夜分遅くに失礼します」

まどかが電話を掛ける、相手は言わずもなが山重だ。

「おう!どうした?」

何時もと変わらない山重の声。

まどかは自身の心を殺し、前もって用意していた言葉を紡いだ。




巻末茶番!!
ベアード「最近パンチラ多くない?」
???「ゲドゲド!作者の頭のネジがゆるんでるのさ!前からだけどな!」
ベアード「今回天音の風呂上りが出てきたのだが……」
???「本来ならあのシーンが唯一の妹のシーンだったそうだぜ?」
ベアード「そうなのか!?ずいぶん出番増えたな……」
???「パラレルの番外編、タイトルをつけるなら『リミットリバース』か?そこでは実質主人公だもんな!作者も『すごい成長した』って驚いてたぜ!ゲドゲド!」
ベアード「そう言えばお前名前無いの?」
???「そんなことないゲド?敢えて言わないんだゲド!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。