リミットラバーズ   作:ホワイト・ラム

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もうすぐ9月ですね。
すっかり夏の暑さも消えていくのでしょう……
秋はなぜか物さみしく感じてしまう作者です。


ふふん!甘い甘い!!

愛するべき変態達との時間はあっという間に過ぎ!

そんなこんなで時は放課後。

天峰は今日も憂鬱な気持ちでボーノレに向かう。

心の中があまり晴れない理由は二つ。

一つは昨日のまどかの事、悲しそうに帰って行った彼女の事が気がかりなのだ。

(性格はちょっとキツイけど……やっぱりあれくらいの子には笑顔でいてほしいよな……)

天峰の素直な心情である。

(ツンツンしてる子が弱った所をつつかれて、コロッと態度が一変してデレてくれると最高だよな!)

もう一度言おう、天峰の素直な心情である。

そしてもう一つは……

(にしてもボーノレ部すっげーつまらねー)

そう!ボーノレ部が圧倒的つまらなさを誇るのだ!

(何度も言うけど俺の青春もっと使い時有るよな!?なんかこう、小さな子に頼られるシチュエーションとかさ!)

天峰の脳内では先輩呼びが今熱い!

そんなこんなで今日も!ロリコン妄そ……ではなく!自問自答を繰り返す!

 

そうしている間に部室の第二理科準備室に到着する。

部室には先に山重と森林が先に来ているようだった。

ガラッと扉を開け、部室にはいるといつもとは違う雰囲気。

昨日帰ったまどかが先に来ていたのだ。

「お兄様昨日はすいませんでした、今日は静かにしますのでまた見学させてください!」

プライドが高いまどかが頭を下げる。

「解った、今日は静かにするんだぞ?」

山重が依然厳しい目でまどかを見ながら言った。

「アナタも失礼な事してしまいすみませんわ、今日お時間有るかしら?ワタシの屋敷に自転車が有るのでお送りいたします、それから良ければ食事も家でとっていてください、せめてものお詫びですわ」

年不相応に丁寧な言葉で、同じく天峰にも話しかけた。

「ああ、解った。お邪魔させてもらうよ」

何とか天峰はそういったが、内心ではまどかの激変に戸惑っていた。

まるで昨日とは別人のように感じてしまうからだ。

「よし!今日は連絡事項が有るぞ!」

天峰の心配を余所に部活が開始される。

「来週の日曜日に、ボーノレの大会が有ることが分かった!運良く場所はこの街!我ら初めての参加になる!各々大会に向けて練習するように!」

大会。その言葉に天峰は驚いた。

「なんですって?先輩そんな事聞いてませんよ!いきなりなんて無茶です!」

まともな練習もしておらず大会など恥をかきに行くようなモノ、天峰はそう思っていた。

更に言うと全く競技というものが理解できていないのも心配なポイントだった。

「心配無用だよ、ボーノレの大会は基本的に開催一週間以内に場所が発表されるんだ、どのチームの万全ではないし、基本的に競技はチーム戦なんだ、僕たち二人が君の苦手なところをガードするから大丈夫さ」

新芽がそう言って天峰に話す。

要するに天峰の意見は聞き入れてもらえなかったのだ。

「そうと決まれば練習だ!今日から大会まで気を抜くなよ!」

「もちろん!」

あまりに真剣な二人の態度に若干引き気味の天峰、結局その日は夜遅くまで活動し、その間結局まどかは一言も話さなかった。

その様子が天峰にはどうしても気がかりだった。

 

「お疲れ様、ワタシの車に乗ってくださる?」

まどかが天峰を自身のリムジンまで案内する。

「さ、のってください」

まどかが自分で天峰のためにドアを開ける。

しかし!そこには意外な人物が!

「あれ?木枯ちゃん?」

天峰の前には、お菓子の食べカスを口につけて眠る木枯がいた。

しかし!天峰が注目したのそこではない!

(あ!スカートが!絶妙な位置にずれている!)

そう!

寝相が悪いのか木枯の制服のスカートがギリギリの部分までめくれてしまっている!

白い太ももがこんにちわ!

(おおぅ!やばいぞ!指でなぞりたい!お互い目をつぶって文字を指で書いて当てるゲームがしたい!)

「ん……うん……」

何時までの見守っていたい寝顔!しかしそんな望みも長くは続かない。

ゆっくり木枯が起きたのだ!

「あれぇ?道案内さん?」

ふわぁーっとかわいくあくびをする。

「出涸らし、なぜワタシの車で寝てるんですの?」

さっきまでのお嬢様モードとは一変!いつもの高飛車な物言いにまどかが戻る!

「うーん、ビデオ見てたら寝ちゃったみたい?」

シートの前にあるテレビ画面を指さす。

「はあぁ、まあいいですわ。アナタもウチに来なさい」

そう言ってまどか自体も車に乗り込む。

静かに車が発進する。

 

「ね~!まどか、しりとりしようよ!」

「気分じゃありませんの」

木枯の誘いを突っぱねるまどか、その視線は気だるげに窓の外を見ている。

「じゃ~道案内さん私とシよ?」

「俺と?まあいいけどさ」

天峰は何処となく空気が重いので木枯のゲームに乗った。

「まず私からね!しりとりの【り】!」

「じゃあ、りん【ご】」

「ゴー【ル】!」

「ん、ル【ビ】ー」

「ビー【ル】!」

「る?ルーレッ【ト】!」

「トンネ【ル】!」

実にいやらしい木枯の戦法!見事に【ル】で返してくる!

(フン、途中から読めていたさ、たまにいるんだよなこういうタイプ、しかし!逆転の一手が俺にはある!)

「ルー【ル】!」

天峰は声高く逆転の一手を放った!

「ふふん!甘い甘い!!こがれさまは負けないのだ~!ルミノー【ル】!」

ルミノールそれはドラマなどで有名な血液に反応する液体!

「え?え、えっ?る?るぅ?」

逆転の一手をあっさり返され一気に混乱する天峰。

「ふっふ~土下座して足をなめたら許してあげますわ~」

ローファーと靴下を脱ぎ、天峰の方に素足を差し出す木枯。

「ちょっと!?誰のマネですの?」

さっきまで外を見ていたまどかが、木枯に聴く。

「え?まどかだよ?似てなかった?」

当たり前といった風に聞き返す。

「きぃぃぃぃ!!ワタシそんな事言いませんわ!」

まどかが怒る。

怒るのだが……

(うーん、まどかちゃんならやらせそうだよな……)

天峰の脳裏に、革製のスーツに身を包んだまどかがイメージされる。

(うん、良く似合ってる……)

 

「あは!やっとまどからしくなったね!いつまでも悩んでるなんてまどからしくないよ?」

ニコリとまどかに笑いかける木枯。

「あなた……フン!そんな事いくらでもわかってますわ!けど……今回だけは礼を言いますわ」

ツンケンしながらもどこかうれしそうなまどか。

え?天峰?いまだに妄想世界の中だけど?

暫くしてリムジンが巨大な屋敷の前で停車する。

「お嬢様、御屋敷に到着いたしました」

運転手の佐々木がドアを開ける。

「御苦労、佐々木」

すっかりまどかはいつもの調子に戻っていた。

「さあ!庶民!見なさい!!そして羨ましがりなさい!アナタが一生馬車馬のように働いても縁すらないワタシの屋敷に招待させてあげますわ!」

「こりゃすごい……」

天峰の前には文字通り屋敷!

テレビやドラマで見るようなまさに城と言っても差し支えない豪邸!

噴水に、鉄柵の付いた門、見上げるような屋敷!すべてが天峰にとっての非日常!

その中に平然と立っているまどか!

この時天峰は初めて!

(ああ、この子は俺と住む世界が違うんだ……)

生まれの差を思い知ったのだ!

「さぁて、何時までも馬鹿みたいに口を開けてるんじゃありませんわ、今回はアナタに鉄くずを返すのと同時に食事にも招いてあげますわ、さ!早く屋敷の中に入りなさい?」

 

まどかの合図で扉が開いていく、未知の世界の扉……

天峰は期待に胸を膨らませた。

 


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