リミットラバーズ   作:ホワイト・ラム

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さて、今回はリバース世界の夏休み!!
迫りくる、夕日の魔の手から天音は天峰を守り切る事は出来るのか!?


リミットリバース5

多くの学生が講義室で、鉛筆を走らせる。

そんな中、試験官と思わしき男が時計を見て時間が来たことを告げた。

 

「ふぅ……まぁ、いいか」

その中の一人、幻原 天音が鉛筆を置いて教授が回答用紙を回収していくのを横目で見る。

見てわかる通り、今は大学のテスト週間だ。

と言っても天音の取っている授業はコレで全て終わり、他のレポート課題を提出すればすべての苦労から解放される。

 

「さて、行くかな」

人もまばらに成った教室、天音が背伸びをして荷物をまとめる。

時間はちょうどお昼時だ、約束した訳ではないがいつもの様に自身の友人が居るであろう、第二食堂へと向かっていく。

僅かに眠い、テストに向けて昨日根を詰めすぎたみたいだ。

だが、明日からは夏休みだ。

天音はこの時間を利用して、大型バイクの免許を取ることを計画している。

もうすでに、買いたいバイクの目星は付けているし、免許を取るための資金も用意済みだ、ここ数か月バイトをこなした甲斐が有ったようだ。

 

 

「お、居た居た」

相変わらず人の少ない食堂の中、いつもの窓際の席にやせて、長い髪を垂らしている美少女を目にする。

 

「おーい、夕日!テスト終わった――か?」

此方を見た、夕日の顔をして天音がギョッとする。

その顔は、目の下にくっきりとクマが出来ており、髪の毛も何処か痛んでいる様に見えるし、肌も荒れている気がする。

 

「……て、……が……バ……もう……か……いあ……」

天音に気が付いてぼそぼそと何か話しだすが、やはりその眼には生気という物が宿っていない。

 

「おい!?どうした、しっかりしろよ!!」

パンパンと、数回夕日の頬を叩く天音。

酔っ払いを起こすような力で、気づ付けない様に気を付ける。

 

「ハイ……むい……コーヒー……ってき……」

 

「あ”?コーヒー?ちょっと待ってろ」

何とか聞き取れた部分を元に、食堂の端に有る紙コップの自販機に走る天音。

少し迷った末に、砂糖とミルク多めのカフェラテを手に戻ってくる。

 

「ほら、コーヒーだ。飲め!!」

 

差し出された、コーヒーに口に付けた夕日がゆっくりと覚醒する。

コクコクと、飲んでいく中で目に生気が戻ってくる。

 

「ふぅ……生き返ったわ……あー、ハイネありがとー。お金、今度返すね」

行儀悪く、紙コップを口に咥えて夕日が天音に礼をする。

 

「コーヒー一杯分位別にいい。

ってかそれより、なんでお前ぶっ倒れてたんだ?

テストの為に徹夜か?お前はそう言うのしないと思ってたんだが……」

天音の中では、夕日は生活の中では基本的に要領が良く、大体の事は簡単にこなしてしまうイメージがあった。

それだけに、此処まで切羽詰まった彼女を見るのは初めてだった。

 

「テストも有るけど……それ意外の要因が多いわね……」

 

「なんだ?監禁してる子供が家に帰りたいってぐずったか?」

冗談めかして、夕日をからかう天音。

自分から言ってなんだが、夕日の場合冗談でない可能性が有るのは悲しい事である。

 

「……ハイネの中で、私はそういう扱いなの?」

責める様な視線を、此方に向ける夕日。

その様子を見ながら悪い悪いと軽く謝る天音。

 

「私のお家に居る子がそんなワガママいうハズが無いじゃない!!

家に来れば、皆いい子に成るのよ?

『お姉ちゃんの事、どう思ってる?』って聞けば『おねーちゃんだいすきー』って言うのがお約束よ!?

子供たちは私が好きで、私は子供たちが好き。

これぞ完璧な、愛の無限ループシステムよね!!理想の世界よね!!」

 

「そっちかよ!?ってか、お前の世界は控えめに言ってビックリするほどディストピアだな!!」

さっきまで、力の無かった目に在ってはいけないタイプの危ない光が宿る!!

夕日は創作系でよくあるハイライトの消えた病んだ目に、狂気を光を宿したような目を偶にする。

勿論小さい男の子を目にする時も。

 

「愛する事が罪だとでも?」

 

「少なくともてめーの愛し方は罪だよ……」

キリッとした顔で話す夕日に対して、天音が力なく答えた。

 

「んで?その『意外の要因』ってのは?」

会話をずらす為に、半場無理やりこっちの会話に戻す。

これ以上この会話を続けていたら、夕日は間違いなく暴走するだろうし、天音は間違いなくストレスで胃が大変な事に成るだろう。

 

「バイトよ、バイト。

テスト勉強と、提出用のレポートがたまってたりと、厄介事が重なってたの……」

思い出した様に大きなあくびをすると、つまらなそうに夕日が話す。

そう言えば、少し前からバイトのシフトを多く入れる様にしていたと言っていたのを思い出した。

 

「バイトのせいで体、壊しちゃだダメだろ?

夏休みに向けて、なんか買いたいのか知んねーけど、学業が優先だからな?」

 

「あら、ハイネの口からそんな言葉が出るなんて、意外ね。

っていうか、この前までハイネも似たようなモンだったじゃない」

ふふふと、夕日が天音を笑った。

正直な話をすると、天音はあまり学業に熱心な学生とは言えない。

寧ろ遊びの方に力を手に入れている方が多いだろう。

結果として、夕日に泣きついて来た事も結構な回数ある。

意外という単語は、その事を暗に指摘していた。

 

「ぐっ……別にいいじゃねーか……単位さえ取れればいいんだよ!」

 

「はいはい、そうね。うふふふ」

天音の態度に夕日が、笑った。

 

「さてと、テストも終わったし、お前実家に帰るのか?

確か、学校から3時間位の所だよな?夏休み中、余裕が有ったら遊ぼうぜ」

天音の態度に、夕日がほほ笑んだ。

夕日は実家が学校から電車で3時間位のところにある。

通う事も不可能ではないが、6時間近く学校の行き帰りで消費するのはもったいなく、将来の生活の事も念頭に入れて夕日は一人暮らしをしている。

 

「そうね、適当に連絡し合って、遊びましょうか」

そう言って二人は別れた。

普通なら学校が始まるまでの長い別れ、そうなるハズ。

だった……

 

 

 

 

 

「あー、アッチィ……マジ死ねる……」

夏休みに入り、早2週間。

出掛けない事を理由に、ほぼ下着姿の天音が扇風機の目の前に陣取っている。

その時玄関の扉が開く音がした。

おそらく、小遣いを持たせてコンビニに走らせた天峰が帰って来たのだろう。

 

「ねーちゃん、ただいまー!!アイス買って来たー」

嬉しそうに駆けてくる天音の弟、天峰の手にはコンビニの袋が有った。

ニコニコと嬉しそうに、ビニール袋を掲げて見せる。

 

「おう、天峰サンキューな。適当なの一個選んだら冷蔵庫しまっといてくれ」

袋の中から、目当てのアイスを取り出し天峰の同じように一個のアイスを取り出す。

 

「ふぅ、夏はコレだなぁ……」

天音はお気に入りのレモン味のかき氷を、シャクシャクと音を立てながら食べる。

その横では、天峰が口の周りをベトベトにしながらコーンに入ったアイスを食べている。

 

「ねーちゃん、どっか遊びに行かないの?」

 

「ん?」

横目でジロリと天峰を見る。

一瞬だが天峰が怯えたような顔をするが、構わず再び口を開く。

 

「みんな、プールとか行ってるよ?」

 

「プールぅ?却下だ。めんどくせぇ上に、すっげー混んでる。

しかもナンパ男がうるせー、却下だ、却下」

ふりふりと手を振り、行くつもりが無い事を天峰に教える。

 

「ちぇー」

つまらなそうに天峰が唇を尖らせる。

 

「で、そんな事より宿題はやったのか?

夏休みの友、今年もあるだろ?八月の初めに終わらせろよ」

 

「終わらせたら連れてってくれる?」

 

「さぁな。けど、宿題を終わらせてないお前を、連れて行くプールはねぇ事は確かだ」

天音の言葉に、天峰が一喜一憂する。

 

「分かった!夏休みの友、明日はもっと教えてもらう!!」

 

「天峰!!ちょっとまて!!」

天峰が、自身の部屋へと向かっていこうとして天音に止められる。

自身の弟の言葉に非常に不穏な物を感じたのだ。

まるで音もなく進行している悪夢の残滓を見つけた様な……

 

「教えてもらうって、誰にだ?誰に宿題を教えてもらってるんだ?」

自身の予想が外れている事を祈りながら、天音が天峰に聞く。

そうだ、この予想は外れてるに決まってる。

アイツの家は県外だし、今は夏休みだ。

実家に帰ってるハズだし、きっと友達かそこらだ。

 

「えっとねー、夕日おねーちゃんにだよ!!」

元気いっぱいで天峰が答えた。

天音の口からは、自然と渇いた笑みが漏れだした。

 

「そっかぁ。あの、野郎は夏休みにも出て来るのかー

もう少しまともだろうと思ったんだけどなー

ははははははははははははははははははっははははは……」

予測していた最悪の結果。

夕日は、この町に潜伏していて天峰を狙っているらしい。

 

「ねーちゃん?」

 

「天峰?夕日は悪い奴じゃないんだ。むしろ子供好き――とも解釈できない事も無いい奴だ。だがな?

その、アイツは子供を見ると、自分を抑えきれなく成るんだよ……

変な事されなかったか?体を障られたり、物陰に連れ込まれたりしなかったか?無理やりキスされたり……

なんか有ったら、すぐに言うんだぞ?」

 

「大丈夫だよ。夕日おねーちゃんは優しい人だもん、そんなことしないよ」

夕日を全く疑うことの無い、純粋で屈託ない笑顔を向ける。

その笑顔はまさに夕日の大好物の笑顔だった。

 

「……そうだな、夕日は優しい奴だもんな……」

早々に天峰に警戒心を抱かせるのを諦め、天音が天峰を影から見守る事にした。

 

 

 

 

 

翌日

「夕日おねーちゃん、勉強教えてー」

駅前の図書館に、天峰の声が響く。

一瞬だけ、笑った夕日が自分の人差し指を天峰の唇に当てて、「静かに」とジェスチャーで伝える。

 

「天ちゃん?此処は図書館だから、少し静かにしてね?

お姉ちゃん怒られちゃうから、ね?」

そう言って優しく夕日が天峰を窘める。

 

「ごめんなさい、夕日おねーちゃん……」

 

「分かればいいのよ。ちゃんとごめんなさい出来る天ちゃんは良い子ね」

シュンとする天峰を夕日が抱き寄せて優しく頭を撫でる。

その光景はまさに仲の良い姉弟に見えた。

 

夕日の顔が盛大に歪んで、息を荒くさえいていなかったら……

 

「さ、お勉強をしましょうか?」

 

「うん、ねーちゃんお願いします」

 

「天ちゃん、違うでしょ?お勉強をする時はお姉ちゃんの事、なんて呼ぶんだっけ?」

何かを聞く様に、夕日が天峰に尋ねる。

その言葉に、天峰はハッとした。

 

「お願いします、夕日せんせー」

その瞬間、夕日が何とも言えない危ない表情をする。

体が小さく震え、恍惚の表情で唇を舌で濡らす。

 

「よく出来ましたぁ……さぁ、お勉強を始めましょうねぇ?」

尚も危険な笑みを浮かべたまま、勉強を始める。

夕日は天峰を自身の横に座らせ、ぴったりくっつく体勢で勉強を見ている。

しかしその視線は、天峰の宿題ではなく天峰本人に注がれて居た。

 

外で遊んでわずかに焼け始めた肌、幼くてもオトコノコ特有の逞しさが有る手足、そして夏の熱さでしっとりと汗ばむ体から零れる汗。

 

目の前20センチに有る天峰に、夕日の理性が刈り取られていく!!

夏休みとはいえ平日の図書館、人もまばらで周囲の目は無い!!

 

(これは、OKよね……天峰君が私を誘ってるのよね……よしんば誘ってないとしても、こんなかわい子は襲われても仕方ないわよね!?というかむしろ本人は、心の中では私が襲うのを待ってるに違いないわよね!?

興味無いフリで私を焦らしてるのよね……いけない子ね……お仕置きが必要よね……!!)

何というか、非常に犯罪者チックなロジックが夕日の脳内で繰り広げられていく。

しかし、所詮それは脳内での事。

実行していない夕日を捕まえる事は出来ないし、相手の脳内が読めない天峰は無邪気に宿題をこなしていく。

 

「夕日せんせー、ここわかんない」

 

「え、えっと……コレは、分数の割り算なんだけど、ちょっと特殊な場合なのよ」

天峰の声にはっとして、夕日がひっかけ問題を教えていく。

簡単の解いていくその姿を、天峰は憧れの視線で見る。

 

「はい、コレで解った?」

 

「夕日せんせーすごーい!!」

するすると解けた問題を見て、天峰が喜ぶ。

夕日はその姿をみて、小さく笑みをこぼした。

 

「天ちゃん、ちょっと汗かいてるね。それじゃ気持ち悪いでしょ?

せんせーが拭いてあげるわね」

そう言って、持って来たカバンからウエットティッシュを取り出す。

 

「あ、すーっとする奴だ。僕それ好き」

 

「ハイハイ、ちょっと待ってね」

ウエットティッシュを手にした夕日が、天峰の顔や腕を拭いていく。

拭かれた部分がすーっとして気持ちがいい。

 

「はぁい、中も拭きましょね~」

そう言って、夕日がウエットティッシュを持った手を天峰のシャツの中に入れる。

 

「はぁ、はぁ……痛かったら、言うのよ?」

息を荒くしながら、より激しく体をふき始める!!

 

「おねーちゃん、ちょっと、痛い……」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……大丈夫よ!!すぐに気持ち良くなるから――」

 

「おい、何やってるんだ?楽しそうに」

遂に興奮のあまり華血を垂らし始めた夕日の方に、聞きなれた声と共に手を置かれる。

 

「あ――ハイネ……」

 

「よう、夕日。私の弟が世話に成ったな?」

 

「う、うん……下のお世話もしっかりこなすわよ?」

笑顔の天音、そして笑顔のまま固まった夕日。

二人の視線が交差する。

 

「あ、おねーちゃん!見て見て!!これこれ!!」

天峰が無邪気に、天音に気が付き先までやった宿題を見せて来る。

 

「おう、天峰。えらいぞ、私はちょーっとお前の先生とお話があるから自習してろよ?

さ、先生。家の弟の将来について『お話』しようか?」

 

「ハイネ?ばかねぇ、天ちゃんの将来なんて私の隣に永久就職に決まってるでしょ?」

 

「永久就職というよりむしろ、終身刑なんだよな……」

何か話しているが、気にせず夕日を図書館の物陰に連れ込んだ。

 

「ハイネ……私、気持ちは嬉しいけど、心に決めた子が……」

ごまかす様な、夕日の言葉を無視して天音が問い詰める。

 

「うっせー!!お前、何やってるんだよ!?ってか、ずっとここに居たのか!?」

 

「馬鹿ね、始発電車で来てるに決まってるじゃない。

天峰君の勉強を教える為にね!」

 

「その情熱、他の事に使えよ……

っていうか……そろそろお前捕まんないのか?

なんなら、私が通報するか?」

 

「ま、まって!!待つのよ!!これは、そう……そう、授業料よ!!

勉強を教えてあげる代わりに天峰君を堪能させてもらう、システムよ!!」

 

「家の弟は非売品です。言い残す事はそれだけか?」

そういって、携帯電話のボタンをプッシュしようとする。

 

「ふふふ、ふふふ……バレちゃ、しょうがないわね。

そうよ……私は小さい男の子が大好きなのよ……」

 

「いや、知ってるし」

 

「私を通報してもいいのかしら?天峰君が悲しむわよ?」

夕日が不敵な笑みを浮かべ、カバンの中から一冊の冊子を取り出した。

その冊子には、何処かのリゾートの宣伝が乗っていた。

 

「ん?ソレがなんなんだよ?」

嫌な予感を感じながら、注意深くそれを観察する。

夕日は再び不敵な笑みを浮かべ、2枚の航空チケットを取り出す。

 

「おいおい……まさか」

 

「うふふ、本当に神様って居るのよね。

偶然なの、本当偶然買い物してたら、キャンペーン中でね?一回だけ福引が出来たのよ、特賞は――」

 

「み、南の島!?」

 

「そう!その通り!!小さな観光地の無人島のプライベートコテージ貸し切り1泊2日!!追加料金を払えば、最長2泊3日!豪華料理追加可能!!」

バシバシと、旅行雑誌を手でたたく!!

 

「や、やめろぉ……」

珍しく、天音が気弱に成って自身の側頭部を押さえる。

しかし、夕日の口撃は止まらない。

 

「勿論頼んだわよ……テスト期間中だってのに、バイト入れまくって軍資金の調達したわよ!!もちろん二人分の料金をね!!」

 

「あ、ああ……」

 

「もう、遅いわ。もう、天峰君を誘っているのよ!!

ああ、天峰君、と~っても楽しみにしてたわねぇ?

南の島初めてって言ってたわね?」

勝ち誇った様に、夕日が目の前でひらひらと旅行雑誌を見せる。

ソコには「カップルに最適」だの、「二人っきりの島で、ちょっと大胆に♡」などのうたい文句が乗っている。

 

「勿論、天ちゃんの御両親にちゃんと許可は取ってるわよ?

さぁ、私と天ちゃんの一足早いハネムーンね」

絶望する、天音の前で夕日が勝ち誇って見せる。

 

天峰を無理に連れて行かせなければ、きっと天峰本人から一生ものの思いでをつぶされたとして恨まれるだろう。

結果として、天峰との間に隙が出来ればそのチャンスを決して夕日は逃さない。

彼女はそう言う女だ。

 

だが、逆に天峰を旅行に行かせた場合は、凶悪な肉食獣(坂宮 夕日)によって天峰はパクリと食べられてしまう事は目に見えている。

 

行くも地獄、引くも地獄。

今!!まさに、夕日による天峰の包囲網が完成しているのだ!!

 

「うふ、お土産、期待しててね?義姉さん?

ひょっとしたらぁ、甥っ子か姪っ子が生れるかも――」

うっとりとする、夕日から旅行券の冊子を奪い取る!!

そして、願いに願ったわずかな可能性にすがる!!

 

そして、ソレを遂に見つける!!

 

「へへへ……やった、やったぜ。マジに、今回バッカはマジにやばかった……」

 

「?」

天音は夕日に向けて、雑誌のある一文を指さした。

 

 

 

 

 

空港

 

アテンションプリーズ……アテンションプリーズ……

 

夕日と天峰の乗る飛行機の搭乗が始まった。

「お父さん、お母さん行ってきまーす!!」

 

天峰が空港に来た両親に対して手を振る。

両親は優しくほほ笑み、手を振り返してくれた。

夕日は深々とお辞儀をする。

 

「おねーちゃん、早く行こ!!」

 

「ええ、そうね。天ちゃん」

 

「おい、夕日。私を置いてくなよ」

そう言って、大きなキャリーバックを持って天音が付いてくる。

ひくッと、夕日の頬が引きつった。

 

あの日、天音が見つけたチケットの説明分はこうあった。

 

『プライベートコテージ、2名様無料。

追加料金により、一泊二日を二泊日に出来ます。

さらに、追加により()()()()()()()()()()()()()()

 

そう、このチケットはカップルと家族をターゲットにしたもの!!

カップルなら、完全に無料だが。

家族の場合も考慮して、結構な金額を払えば無料の二人と同じサービスを受けれるのだ!!

 

「おねーちゃん、楽しもうね!!」

 

「ああ、そうだな……バイクと免許の為の金を派手に使おうか……」

少しだけ、悲しそうに天音が笑った。

 

「?」

なぜ自身の姉が悲しそうな顔をしてるか、分からなかったが天峰はすぐに、青い海に心躍らせ始め、姉の事を忘れてしまった。

 




海外旅行行きたいなぁ……

あえて、観光地ではなく後進国的な場所で――
けど、いろいろ怖そうだなぁ……

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