記憶の片隅で   作:to110

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第八話 落ちたものは拾うことができる。

八幡「おい雪乃。少し、落ち着ーーーーー」

 

 

………俺は自分の体に違和を感じた。体の芯から熱を発して、とてつもなく暑い。

 

 

雪乃「はぁ………八幡………君………はぁ………」

 

 

二人ともがこうなっている。そしてすき焼きの味の違和感。小町のやろう、絶対にあれを入れやがった………

やばいやばい。雪乃が浴槽からこっちに体を乗り出し、甘い呼吸音を近づける。細くしなやかな、柔らかい腕とともに俺と雪乃の距離が近づく。

 

 

八幡「や、やめろ雪乃。雪乃がそうであるように俺だってやばいんだ。歯止めがきかなくなるぞ」

 

 

雪乃「私………はぁ………はっ………はぁ………かまわない………わ………よ」

 

 

なら仕方ないな。彼女が綺麗な裸で誘ってくるんだ。なら俺も

ーーーーーってやめろやめろ!邪念を振り払え。

という抗争(構想?)が俺の中で起きているうちに、いつの間にか雪乃が俺の上で、倒れてる。

 

 

八幡「お、おい雪乃!大丈夫か!」

 

 

雪乃「………ぅん………はぁ………大………丈夫………よ」

 

 

こいつ、のぼせてる。

まぁそりゃそうだろうけどね。風呂の温度はそれなりだし、体も暑くなって、雪乃の体力はないんだから。性欲って体力がなくなったら弱くなるんだな。

今回ばかりは雪乃の体力のなさのおかげで助かった。

 

 

八幡「ほら雪乃、もうあがるぞ」

 

 

背負って雪乃をひとまずリビングへ。

 

 

雪乃「………はぁ………ごめん………んんっ………なさい………はぁ………」

 

 

耳元でこれはまずい。雪乃を背負ったのは失敗だった。というか、俺の理性よくもったな。うんほんと、よくもった………

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

小町「え⁉︎お姉ちゃんどうしたの⁉︎」

 

 

八幡「お前がすき焼きに変なもん入れるから雪乃がのぼせたんだよ」

 

 

小町「え〜、じゃあなんにもイベントなかったの〜?」

 

 

八幡「なかった」

 

 

小町「残〜念〜だな〜」

 

 

八幡「なんでこんなことしたんだよ………」

 

 

小町「これはお兄ちゃんたちのためなんだよ?」

 

 

八幡「なんでだよ」

 

 

小町「お兄ちゃん。いつまでもちんたらヘタレの彼氏してたら雪乃お姉ちゃん、離れていっちゃうよ?」

 

 

八幡「いや、それはなーーーーー」

 

 

小町「いい加減にしなさい。そうやっていつまでも雪乃お姉ちゃんを信じない。いい?お兄ちゃんより魅力的な男の人がこの世の中、何人いると思ってるの?」

 

 

八幡「………」

 

 

実にその通りだ。反論のしようがない。

 

 

八幡「………俺は雪乃を運んでくる」

 

 

小町「………そっ」

 

 

今は寝ている雪乃を再び俺の部屋に運ぼうと、リビングを出ようとする。

 

 

小町「雪乃お姉ちゃんは今のお兄ちゃんが好きなんだよ?昔の、お兄ちゃんは関係ないんだよ?ちゃんと雪乃お姉ちゃんを信じてあげなよ」

 

 

八幡「信じるのか信じないのかどっちなんだよ」

 

 

小町「お兄ちゃんはお兄ちゃんのことをまずは信じてあげなさい。雪乃お姉ちゃんはそれからでもいいんじゃないかな?」

 

 

八幡「生意気言うな」

 

 

小町「だーれの妹だと思ってるの?」ニヤニヤ

 

 

八幡「俺と、………雪乃の妹だろ」

 

 

小町「それでいいよっ。へへっ」

 

 

あとは陽乃さんの、もか。

小町のやろう。まったく、嬉しそうにしやがって………

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

雪乃「んっ………ううん………あっ………八幡君」

 

 

八幡「ここは夢じゃなくて現実だぞ?」

 

 

雪乃「知っ………知ってる………わよ………

ばかっ………///」

 

 

八幡「そーかよ」ナデナデ

 

 

雪乃「ふわあぁぁぁ〜………」トロ〜

 

 

八幡「………」ナデナデ

 

 

雪乃「」♪

 

 

八幡「………」

 

 

雪乃「?」

 

 

八幡「」スッ

 

 

雪乃「どうしたの?」

 

 

八幡「あ?あーいや、なんもないぞ」

 

 

雪乃「八幡君の嘘なんて、簡単にわかるものよ?」

 

 

八幡「いや、本当になにもーーーーー」

 

 

雪乃は右手を俺の左頬に添えて、顔を近づける。決してキスをしようという距離ではない。が、それでも、近い。

 

 

雪乃「八幡君が私に嘘をつくときってどんな顔してるか知ってる?とても、悲しそうな顔をしているのよ?そんな顔を向けられる私の身にもなってよ」

 

 

八幡「それは、悪かっーーーーー」

 

 

雪乃「それから、隠し事をしようとするときも、そんな顔になるのよ?」

 

 

八幡「………」

 

 

雪乃「言いなさい」

 

 

八幡「へ?なにを?」

 

 

雪乃「嘘をついた理由と、隠し事について」

 

 

八幡「………」

 

 

………言って、言っていいのだろうか。俺は、雪乃を信じてもいいのだろうか。過去の自分なんて清算できない。違うな、できてないだけか。しようとしてこなかった。そんな俺でも、雪乃は見れるのだろうか。

 

 

雪乃「言うか言わないかは八幡君が決めることよ。それから、私は待つわよ。いつまで、でも」

 

 

八幡「聞いてたのか?小町との会話」

 

 

雪乃「ええ、全部かは知らないけれど」

 

 

八幡「俺はこんな性格だ。俺よりもいい人はいくらでもいる。俺じゃ雪乃を幸せにできないかもしれないし、俺よりも幸せにできる人はいるんだ。それでも、それでも!待っていてくれるのかよお前は!」

 

 

最後は完全に震え声。それに、言ってて情けない。一体なにを言っているんだろう。ほんと、俺を嫌って別れてくださいって言ってるみたいじゃねーかよ………

 

 

雪乃「八幡君は記憶力がないのね。私は待つと言ったはずなのだけれど?私は八幡君が、八幡君の全てが好きよ。その最悪の言葉のプロポーズだって、そんな性格だって、全て好きよ」

 

 

八幡「ならさ………待っていて………くれよ………」ポロポロ

 

 

雪乃「ええ、もちろんよ。でも、今度はもっとかっこいいプロポーズにしてね?」

 

 

あぁ、わかった。そう心の中で叫ぶ。雪乃を強く、強く抱きしめて。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

小町「うんうん、やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだな〜」

 

 

八幡「悪かったな」

 

 

小町がさっきのやりとりを見ていた。以上説明終わり。

 

 

小町「いやいや〜、小町的にはそれで十分ですよ〜。お兄ちゃんが雪乃お姉ちゃんとちゃんと話をして、それだけで十分だよっ」

 

 

八幡「俺の性格が変わることはないってことだ」

 

 

小町「それにしても雪乃お姉ちゃん、相変わらずかっこいいね〜。お兄ちゃんのかっこ悪さのおかげでさらに際立ってるよね〜」

 

 

八幡「それはもうほんとだよな」

 

 

小町「かっこよくなろうとしないの?」

 

 

八幡「雪乃にああ言った手前、そんなことしなくてもいいだろ」

 

 

小町「はぁー、勝手に惚気ちゃってー。大志君のプロポーズはいつになるのかな〜」

 

 

八幡「したら死ぬと思うぞ」

 

 

死因は失血死。犯人は親父。いや、もっと酷いかもしれない。

 

 

小町「雪乃お姉ちゃんを悲しませたらだめだよ?」

 

 

八幡「そりゃそうだ」

 

 

小町「頑張ってよ〜、お兄ちゃん」

 

 

八幡「できる限りは幸せにする」

 

 

小町「できる限りって………」

 

 

八幡「いや待て。できる限りってことはできる全てをもってってことだ。限りだからな。余すことなく俺は雪乃に尽くす、ということだ」

 

 

小町「お兄ちゃん、微妙にかっこいいよー!」

 

 

八幡「いや、微妙をとれ」

 

 

小町「まっ、お兄ちゃん!頑張ってね!」

 

 

八幡「まぁ、な」

 

 

小町「こんなお兄ちゃんですがよろしくお願いします。雪乃お姉ちゃん」

 

 

雪乃「」ポワポワ

 

 

そう。雪乃はこの場にいるのだ、最初から。できる限りの説明をしたあたりにボンッという音が聞こえてた。

 

 

雪乃に好きと叫ばれ、待つと言われて、俺は、まぁ、あれだな。

 

 

 

 

 

ーーーーーあーいや、なんでもない。

 

 

小町「お兄ちゃん、顔真っ赤だよ〜」ルンルン




もうこれからは完全に単発を送ると思います。これで終わってもよかったのですが、解決してないこともありますし、さらに卒業式まで、ということも聞きましたし、卒業式までやろうかなーという感じです。
これからもよろしくお願いします。

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