記憶の片隅で   作:to110

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雪ノ下の母は、以下雪母ということで。
名前がわからない………
ちなみに父親は雪父で。


第三話 人はいずれ大きな決断をする。

八幡「………」

 

 

陽乃「………」

 

 

雪乃「………」

 

 

雪母「………」

 

 

八幡「………」

 

 

陽乃「………」

 

 

雪乃「………」

 

 

雪母「………」

 

 

………一体どうすればいいんだ⁉︎

てか、なんなんだこの状況⁉︎

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

八幡「お、お邪魔します………

でいいんですか?」

 

 

陽乃「別にいいよ〜」

 

 

ちくしょう………全然わからねー。なんなんだよ、この圧倒的な広さと、高さ!門じゃねーかよ!入っていいの?俺なんか入っていいの?

 

 

陽乃「やっぱりやめとく?」

 

 

八幡「いや、入っていいのかなーって」

 

 

友達の家にすら入ったことがないのに(友達すらいなかった)、初めて入る家がこんな豪邸とか、なんなの?

 

 

陽乃「はいはい上がって上がって〜」

 

 

八幡「」カクカク

 

 

陽乃「義弟君はやっぱりおもしろいな〜」

 

 

いやいやいや、この人何言ってんの⁉︎いや確かに動きがとんでもないことになってる自覚はあるが、普通、普通の一般人が入ったらこうなるよ⁉︎もう動揺がやばいんだけど⁉︎普通の一般人とかおかしいから、日本語的におかしいから、違和感を感じるくらいにおかしいから。

 

 

陽乃「この奥だよ、お母さんがいるの。じゃあ開けるね」

 

 

八幡「え、ちょちょちょちょっと待ってください。心の、心の準備をさせてください!」

 

 

だめだ。思考がまったく追いついてない。どないしましょか………?

 

 

陽乃「」コンコン

 

 

せめてなんか言ってよ!なんで無言でノックしてるの⁉︎

 

 

「はい」

 

 

あーこれはだめだ。俺の聴覚がこの声を聞くのを拒否してる。なんか超怖いんだけど。

 

 

陽乃「入るね〜」ガラガラ

 

 

八幡「」ピクッ

 

 

………めっちゃ睨まれてる。

 

 

八幡「し、失礼します………」

 

 

陽乃「えっと〜、彼がこの間言ってた雪乃ちゃんの彼氏の」

 

 

八幡「比企谷八幡です」ペコリ

 

 

一礼。庶民の礼儀として行うが、お偉いさんに対してこれでいいのかはわからないが。

 

 

雪母「雪乃」

 

 

雪乃「なんです………か………っ⁉︎」

 

 

向こうの扉(?)から雪乃が出てきた。んで、俺を見て驚いている。………俺は幽霊にでもなったのかね?ってくらいの驚きでショックなんだが。

 

 

雪母「この人でいいのよね?」

 

 

確認、だと思うが。思うとしか思えないのは、明らかに目が有無を言わさない睨みつけである。

 

 

雪乃「えぇ………」

 

 

雪母「それでは比企谷さん。何の御用ですか?」

 

 

庶民は帰れと目が言っている。んー、この睨まれぐあい、そこらの竜王よりも怖い。竜王は最初勧誘してくれるからね?ラスボスってなんだかんだ言っても優しいからね?じゃあこの人ラスボスじゃないの?この人より上がいるとかもうあれだな。リアルはクソゲーだ、という言葉がよく似合う。もう完全に詰んでるだろ。さて、んじゃ、今日やることを済ませそう。たしか、たしか、なんだっけ?んー………あ、思い出したわ。

 

 

八幡「雪乃さんを僕にください」

 

 

雪母「」

 

 

陽乃「」

 

 

雪乃「」

 

 

雪母「」

 

 

陽乃「」クスクス

 

 

雪乃「」ポロポロ

 

 

やべぇ………

緊張のあまり口走った………

今日言うのって留学をやめさせろ、とか言いにきたんでした。テヘッ

 

もうなんか、陽乃さん笑いをこらえきれてないし。お母さんよくわからない表情だし。雪乃、なんか泣いてるし。俺は今混乱してるし。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そして現在、全てが無音で時間が進む。いや、時計の音すら聞こえないこの空間、時間が進んでいるかもわからない。

 

 

その中音立てる人ありけり。

 

 

雪母「陽乃」

 

 

陽乃「な、なんですか………?」

 

 

雪母「聞いていた話と違うけれど、どういうことなの」

 

 

陽乃「私だってこんなこと聞かされてなかったんだけど………」チラッ

 

 

え?何、俺なんかした?なんで俺の方見るの?

………どうやら今日俺がしようとすることは陽乃さんが報告していたらしい。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

俺は今陽乃さんの乗ってきた車で(まぁ陽乃さんも考えてくれたのかたまたまなのかは知らないが、あの黒いやつではなかった)、雪ノ下家に向かっている。RPGでいえばラスボスの家である。なかなか似てるシチュエーションだしな。最後は必ずというほど何かの乗り物で移動するからな。そして、俺はお姫様(雪乃)の元へ。

って、何言わせてんだ!陽乃さんが隣にいるんだぞ!読心術でバレるじゃねーか!恥ずかしいセリフ言わせてんじゃねーぞ!

………ところで。ねぇ陽乃さん?そんなに近くなくてもいいんじゃないですか?

 

 

陽乃「文句言わないのっ」

 

 

八幡「まだ言ってないですけどね………」

 

 

陽乃「てへっ」

 

 

八幡「かわいく言ったってダメですよ」

 

 

陽乃「義弟君が誘惑してきた〜。浮気はダメだぞ?」ウリウリ

 

 

八幡「してないんですけど」

 

 

陽乃「それで?何話すつもりなの?」

 

 

この人切り替え早すぎだろ。なんであの状態からこんな真剣な表情に一瞬で変えられるの?

 

 

八幡「まぁとりあえず雪乃の留学阻止、ですかね」

 

 

陽乃「ふーん、それだけ?」

 

 

八幡「だけですよ?」

 

 

陽乃「んー………その交渉に雪ノ下家のメリットがないと話しにならないよ?」

 

 

八幡「そこなんですよねー………どう考えても雪ノ下家にメリットがないんですよ」

 

 

陽乃「じゃあ無理じゃないの?」

 

 

八幡「まぁそこは運に任せるってことで。話し合いで解決しますし」

 

 

陽乃「………まぁーいいんじゃない?やりたいようにやるといいよ。話し合い、は。………約束だよ」

 

 

八幡「………どうも」

 

 

陽乃「でも、私が義弟君の味方になるかは別の話、だよ」

 

 

八幡「でしょうね………」

 

 

少しは期待してたんだけどなー陽乃さんが味方になるの。

 

 

陽乃「ごめんねっ」

 

 

八幡「別に構いませんよ。もともと一人での行動の方が得意ですし」

 

 

陽乃「じゃあ降りる?」

 

 

八幡「陽乃さんには感謝してますすごいしてます助かってますだからこのまま連れていってくださいお願いします」

 

 

こうも並べられたらさすがに手も足も出まい。

 

 

陽乃「んーどうしよっかなー」

 

 

八幡「お願いします、陽乃さん」ニギッ

 

 

陽乃「っ………ま、まぁその、し、仕方ない、わね………///」

 

 

陽乃さんからのアタックってかなり激しいのに、俺からするとこうも簡単に堕とせるのか。これから使っていこう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

陽乃「君はやっぱりおもしろいね〜」

 

 

八幡「おもしろくなくていいんですが………」

 

 

雪乃「しくっ………しくっ………」ポロポロ

 

 

八幡「よ、よしよし………」ナデナデ

 

 

雪乃「はっ、はちっ、八っ幡…君っ………しくっ………」ギュウー

 

 

陽乃「はぁー………、お母さん、もう諦めたら?たぶん比企谷君、私の想定外のことしかしないよ?」

 

 

雪母「比企谷さん、お父様のご職業は?」

 

 

八幡「平凡なサラリーマンです」

 

 

雪母「そう。なら雪乃はあげられないわね。そんな低いところに渡せるわけがないじゃない。仕事は人としての価値を測るために重要なものよ、一般的に考えても。高校生ならそのくらいわかるものでしょう?」

 

 

明らかな脅し。これ以上近寄るな、関わるな。そんな意が込められている。それにしても………

 

………なんなんだろうな、この人。

なんかなぁー、住んでるところが違うというか。考えてるとこが違うというか。

 

………ただそのことは許せない。

 

 

八幡「人の価値はそんなものじゃ測れませんよ」

 

 

雪母「なにを」

 

 

八幡「人の価値なんて、主観でしかない。よって、あなたのそれは所詮主観だ。一般論として発言するな」

 

 

陽乃「ちょっと八幡君!それ以上はだめ!話し合いで解決するって言ったじゃん!」

 

 

読心術もここまでくるとどうでもよくなる。さて、最後の行動だ。

 

 

八幡「じゃあその価値で、頑張ってみますよ、それじゃあ。行くぞ雪乃!」

 

 

雪乃「えっ、ちょっと八幡君。待って!」

 

 

右手で雪乃の手を握る。そして俺は走る。とりあえずこの敷地から出ないとどうしようもない。

陽乃さん、どうにかしといてください。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

雪乃「疲れたわ、休憩しましょう………?」ハァハァ

 

 

八幡「ん?あぁそうだな」

 

 

ここはどこかというのは携帯を使えばわかるが、なんか面倒だ。そこにあった公園のベンチで座って休憩だ。陽乃さんがうまいことやってくれたかな?

 

 

雪乃「それにしても、いきなりお母さんにあんなこと…言うなんて………」ハァハァ

 

 

あんなこと?………あ、あれか。雪乃をくださいってやつか。

 

 

八幡「………悪い、勝手に」

 

 

雪乃「いいえ、その、とても嬉しかったわ………///」ギュッ

 

 

八幡「そうか………」ナデナデ

 

 

雪乃「ねぇ八幡君」

 

 

八幡「ん?なんだ?」

 

 

雪乃「あなた、私の前からいなくならないわよね?」キュッ


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