記憶の片隅で   作:to110

20 / 35
記念すべき最終章を迎えた筆者がおくる長編シリーズ最終話、では、どうぞ。


最終章 未来にも過去にもそれぞれに時間はある。

八幡「いや、あのな雪乃」

 

 

雪乃「何かしら?」

 

 

八幡「そもそもどうやって証明するんだ?」

 

 

雪乃「見たり、触ったり?」

 

 

八幡「雪乃は恥ずかしくないのか?そんなこと普通に言ってるが」

 

 

雪乃「恥ずかしいに決まってるじゃない」

 

 

八幡「ならやめようそうしよう。無理する必要はない」

 

 

雪乃「別に無理はしてないわ」

 

 

はぁ………

 

 

八幡「なぁ雪乃?」

 

 

雪乃「何かしら?」

 

 

八幡「俺は楽しみはとっておく人間なんだ。だから、高校を卒業するまではそういうことはしたくないんだ」

 

 

雪乃「………そう、ね。なら今日はやめておこうかしら」

 

 

八幡「そうそう。まだ俺たちには早いだろ?」

 

 

雪乃「八幡君は焦らしが好きなのね」

 

 

八幡「おい」

 

 

したことないから好きなのかもわからない。雪乃にしたらめっちゃかわいいと思うくらいの想像しかできん。

 

 

雪乃「なら、時間も遅いし、もう帰った方がいいわね」

 

 

八幡「そうだな。んじゃ、おじゃましました」

 

 

雪乃「ええ、また明日学校でっ」

 

 

八幡「あぁ、また明日な」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ひゃっはろー!八幡君」

 

 

え?なんなの?まだ家に着けないの?てかこの展開前にもあっただろ。やめてくれ………

 

 

陽乃「そんな嫌がることないじゃん」♪

 

 

八幡「用がないなら帰りますよ。明日学校なので」

 

 

陽乃「まぁまぁ〜今日は言いたいことがあるだけだからっ」♪

 

 

八幡「雪乃は渡しませんよ」

 

 

陽乃「コホン。………ふぅ。八幡君のことが好きです。わ、私と付き合ってください!」

 

 

……………はぁ。そういえば聞いてなかったな。雪ノ下さんなりのけじめ、だろう。

 

 

八幡「すみません。それに応えることはできないです」

 

 

陽乃「ははっ、うん………知ってた………」シクッ

 

 

俺なんかが雪ノ下さんのことを理解するなんてできないことだろうけど。

 

 

陽乃「私の告白を………ふるなんて………贅沢な………ことだよ?」ポロポロ

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

八幡「もう落ち着きましたか?」

 

 

陽乃「うん、ごめんね」

 

 

八幡「お気になさらず」

 

 

陽乃「じゃっこれからよろしくねっ義弟君っ」

 

 

八幡「それじゃ、失礼します」

 

 

義弟君、か。嫌じゃないな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

八幡「てでーまーーーーーーー」

 

 

なんだこの靴は。見覚えがある。そして、この靴の持ち主も知っている。やつだ、やつがいる。

 

 

小町「お兄ちゃんおかえり〜」

 

 

大志「お兄さんおかえりなさいっす」

 

 

八幡「よし、命を捨ててきたようで安心した。ならば正々貴様を殺してやる」

 

 

小町「お兄ちゃん、とりあえずそれしまって」

 

 

八幡「ちっ………」

 

 

大志「ほんとにどこから出てきてんすか」

 

 

八幡「それで?なんの用だ」

 

 

小町「小町〜、大志君と付き合うことになりました〜」

 

 

……………は?

……………は?

……………は?

 

 

八幡「……………は?」

 

 

大志「小町さんを俺にください!」

 

 

小町「それは結婚のときに言うセリフだよ!」

 

 

まぁ、小町がいいってんならそれが一番だろう。だがな………

 

 

八幡「大志、父親に殺されかねないがそれでいいか?」

 

 

大志「いいっす!」

 

 

八幡「なら問題ないだろう。んじゃ、疲れたから寝るわ」

 

 

小町「おやすみ〜」♪

 

 

大志「おやすみなさいっす!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

それから時は巡りて一年と少し。俺たちは卒業を迎えるのであった。

 

 

雪乃「八幡君、嘘はいけないわ。それから一日しか経ってないもの」

 

 

モノローグですら雪乃の前ではできないらしい………

 

 

八幡「もうあれだろ。どうせ依頼なんて来ないしそんなに堅くして待つ必要はないだろ」

 

 

雪乃「例え依頼がなくても私はこうしていなければいけないもの」

 

 

八幡「そうか………じゃあ俺もここで」

 

 

本を読むとしよう。付き合ったからといって椅子の位置は変えていない。これが奉仕部の椅子の置き方なのだから。変えていいものではない。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

八幡「もうそろそろ時間だぞ」

 

 

雪乃「ええ、わかっているわ。けれど………」

 

 

八幡「今日来るってメールがあったわけでもないんだろ?」

 

 

雪乃「それはそうなのだけれど………」

 

 

八幡「んじゃま、もう少し待つか」

 

 

雪乃「ええっ」ニコッ

 

 

本当に嬉しそうに、そう微笑んだ。だが、来るとは思えない。いずれは来ると仮定しても、たかだか一週間、だ。

 

 

だが、扉は突如開く。勢い、よく。

 

 

「やっはろー‼︎」

 

 

雪乃「由比ヶ浜さん………」

 

 

八幡「由比ヶ浜………」

 

 

結衣「ん?どしたの?なんか暗いけど」

 

 

雪乃「いいえ、なんでもないわ。

………おかえりなさい。お茶、淹れるわね」

 

 

結衣「一週間、休んでごめんなさい」

 

 

八幡「ん?なに気にするな」

 

 

雪乃「ええ、そうね。特に気にする必要はないわ」

 

 

結衣「うん‼︎ありがと‼︎

それでさ〜ゆきのん〜」

 

 

雪乃「なにかしら?」

 

 

なんて、ごくごく普通の会話も、心地いいと、そう思う。まぁ、思うだけで未来これを振り返ったときにそう思うかというのは別の話なのだが、

 

 

結衣「ヒッキー‼︎今日これからサイゼ行くけど一緒に行く?」

 

 

八幡「行かせていただきます」

 

 

結衣「よし‼︎じゃあ行こう‼︎」

 

 

雪乃「戸締りはしておくから待っててくれるかしら?」

 

 

八幡「おう、じゃよろしく」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

結衣「ねぇヒッキー」

 

 

八幡「なした?」

 

 

結衣「私ね、考えたよ。それでね、結局諦めれなかった。だから、ゆきのんから奪うよ‼︎正々堂々と」

 

 

八幡「正々堂々なんて言葉がお前から出る日がくるとは驚きだ」

 

 

結衣「バカにしすぎー」プクー

 

 

雪乃「あら八幡君、浮気かしら?」

 

 

八幡「安心しろ。それはない」

 

 

結衣「ひどいっ‼︎」

 

 

雪乃「なら行きましょうか」

 

 

八幡「あぁそうだな」

 

 

一人増えただけでこうも変わる奉仕部は、今の俺にとっては大事なのだろう。

 

 

雪乃「八幡君、さっきから捻くれすぎよ」

 

 

読心術は百合百合していても発動できるようだ………




ふぅ。再びアンケートの実施をいたします。詳しくは報告欄にあります。
長かったですね。20話。なかなか題名のネタが出てこないという謎の悩みがあったことが懐かしいです。
ここまで続けられたのもたくさんの読者様のおかげです。本当にありがとうございました!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。