東方幻想物語   作:空亡之尊

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大晦日コラボ企画・午前の部。
鈴華さん作。『東方禁初幻譚』の主人公とヒロインが登場。
ちょっと笑えるような、そんな物語をどうぞ………………。




禁忌との邂逅

???side

 

 

多元世界、それは今和僕たちが過ごす世界とはまた別に存在する無数の世界。

ゲームの選択肢次第でストーリーやエンディングが変わるように、僕たちの世界にも違う選択肢をしていた世界、『If(もしも)の世界』がある。

 

今回お話するのは、選択肢どころか物語自体が違う世界。

禁忌を犯し、魔神と成った少年の、現在へと至るまでの世界。

転生され、邪神との戦いに巻き込まれた少年の、旅の終わりまでを紡ぐ世界。

 

この二つが交り合う選択肢など存在しない。

だが、どこぞのバカの突拍子もない考えの前では、世界の法則など簡単に破られる。

 

今宵の物語は、“禁忌の魔神”と“通りすがり”との邂逅のお話。

読者も、作者さんも、どうか最後までお付き合いください。

 

では、始まりはじまり……………………。

 

 

 

 

 

神無 優夜side

 

 

出会いというものは、いつも突然に、それと共に素敵に訪れるものだ。

この世界で初めて出会った人喰い妖怪が、今では俺の旅の仲間として隣に居る。

今までもそんな風に出会ってきたが、今回はまあ、面白い出会いだったと言おう。

事の始まりは俺がルーミアと別れ、旅の途中でとある村に立ち寄ったところから始まる。

 

俺は村で評判だという甘味処で団子を頬張っていた。

たまに喉を詰まらせてもいたが、そこはお茶で流し込んで事なきを得ていた。

このところ、色々な事がありすぎてのんびりできる時間もなったが、こういう平和な時間を過ごしていると心が安らいだ。

 

 

「あ~この時間がいつまでも続けばいいのに」

 

 

そんな事を呟いて空を見上げた、その時だった。

空に摩訶不思議な穴が開き、そこから二人の男女が落ちてきた。

 

綺麗な長い黒髪、苔色がメインの短めな浴衣を着ており、紫の帯を巻いている。巫女のようだが、何だか色合いが派手というか、目のやり場に困る人だった。

男でも見惚れるほどの金髪、黒い衣に身を包み、左目は赤く、右目が金色のオッドアイ。中性的な顔立ちだが、彼からは俺と似たようなものを感じた。

 

目の前の光景に呆然としていた俺は、何もなす術なく二人の下敷きになった。

その重みで店前の長椅子は真っ二つの壊れ、俺はその中心で息も絶え絶えに言った。

 

 

「お、親方………空から、男と女が………‼」

「いたた………大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃない、問題あり………」

「そこまで口が利けるなら心配する必要ないだろ」

「だったら早く降りてくれ………」

 

 

俺は二人をどかすと、立ち上がって砂埃を叩いて落とした。

同じく二人も、痛そうに背中を押さえながら立ち上がった。

 

 

「いつつ………何でこういうなるんだ」

「おかしいですね。確かに博麗神社に繋いだはずなのに」

「やっぱりお前と買い物に行くんじゃなかった」

「財布を忘れたカルマが悪いですよ」

「うぐ………」

 

 

少女に反論され、青年はバツが悪そうにそっぽ向いた。

しかし、さっきの会話でどうも聞き捨てならない言葉が出てきたんだよな。

 

 

「あの、お二人さん?」

「ん、誰だお前?」

「人の上に勝手に落ちてきてお前は無いだろ」

「あはは………すみません」

「まあ、いいんだけどさ。奇跡的に団子も無事だったし」

「あ、美味しそうですね」

「よければお一ついかが?」

「遠慮なく頂きます」

「アンタもどうだ?」

「ありがたいが、俺は早く家に」

「まあまあ………」

 

 

俺が指を鳴らすと、一瞬のうちに壊れた長椅子が復元した。

その光景を目にした二人は、驚くことなく、ただ俺を見据えた。

 

 

「お互い、時間には余裕があるんだ。ゆっくりしていこうぜ」

「お前……」

「そうそう。俺は神無 優夜、ただの通りすがりだ。アンタたちは?」

「………『カルマ』だ」

「『博麗 麗夢』です」

「カルマに麗夢か。よろしく」

 

 

俺は二人に優しく微笑むと、長椅子に腰を下ろした。

麗夢、カルマ、俺の順で座ると、店員に追加で団子を注文した。

 

 

「さて、それじゃあ、何から話す?」

「とりあえず、ここがどこなのか知りたいですね」

「生憎と俺にもこの村の名前は分からないが、少なくとも幻想郷じゃないないな」

「幻想郷の事をご存知なんですか?」

「知ってるよ。でも、アンタたちの知ってる幻想郷とはちょっと違うな」

「どういう意味だ?」

「とりあえず、俺の身の上話でも聞いてくれ」

 

 

俺は注文してやってきた団子を手に取ると、これまでのいきさつを語り始めた。

ルーミアとの邂逅、月の民の街で一年間、邪神との出遭い、人妖大戦の裏。

諏訪の国での暮らし、諏訪大戦、三貴子との戦い、狩人との戦闘。

紫の出会い、妖怪の山での攻防、薊との一騎打ち。

かぐや姫の難題、妹紅たちとの旅、月の使者の迎撃、チクタクマンとの対決。

小説投稿サイトに投稿すれば70話近くの話を、俺はカルマたちに話した。

 

 

「ということで、本当なら幻想郷自体まだないはずなんだよな」

「そういうことですか」

「恐らく、何かの手違いで『こちら側』に来ちまったんだろうな」

「そう考えるのが妥当か」

「災難だな。まあ、どうせ時期が来ればすぐに戻れるって」

「何でそう言い切れるんだよ?」

「コラボ回の最後っていつもこういうもんだろ?」

「何言ってるんですか……」

 

 

呆れる麗夢の横で、カルマはずっと何かを考えているようだった。

 

 

「ところで、二人ってどういう関係?」

「ああ、それは」

「よくぞ聴いてくれました‼」

 

 

カルマを押し退け、麗夢は目を輝かせながら身を乗り出した。

 

 

「ちっ、麗夢‼」

「カルマとは互いに愛を誓い合った」

「誓った覚えはない」

「お風呂だって一緒に」

「お前が勝手に入ってきただけだろ。後すぐに追い返した」

「行ってらっしゃいの接吻も」

「してない」

 

 

麗夢の一人が足りに、カルマは次々と突っ込んでいく。

この時点で二人の関係性が見えてきた。要するに真〇とニャ〇子か。

しかし、カルマを見ているとまんざらでもないように見える。ああ、ツンデレか。

 

 

「カルマ」

「なんだ?」

「ツンデレが許されるのは女の子と男の娘だけだ」

「随分前の夢で同じような言葉を聞いた事あるぞ。何だよツンデレって」

「ツンデレ、それは萌えを語るに欠かせない最も重要な属性だ」

「お前も面倒な奴だな」

「優夜さん。そのツンデレについて詳しく」

「いいぜ。まずツンデレとは………」

「もう嫌だ、こいつら………」

 

 

俺と麗夢に挟まれ、カルマは溜息を吐いて俯いた。

 

 

「羨ましいよ。こんなに想ってくれる人がいるんだから」

「鬱陶しいだけだ」

「酷い言い方だな。そんなんじゃ、嫌われるぞ?」

「いつもの事ですから平気です」

「ったく、見せつけてくれるな」

「ふふ~ん。いいでしょう」

「抱きつくな‼ 離れろ‼」

 

 

腕に抱きつかれれていやがるカルマだが、無理に振り払おうとしていない。

本気で引き剥がそうとするなら能力でも使えばいいと思うのに、やっぱりツンデレだな。

 

 

「さて、もうそろそろだな」

「え?」

「あ、カルマ」

 

 

よく見ると、二人の足元から姿が消えていっていた。

もうすぐ終わりみたいだ。テンプレと言われても仕方ねえな。

 

 

「短い間だったけど、楽しかったぜ」

「こちらこそ。焔に良い土産話ができました」

「それは良かった」

「じゃあ」

「ああ、最後にちょっと」

 

 

俺はカルマから少し離れて麗夢に手招きすると、小さい声で話しかける。

 

 

「――諦めずに頑張れよ」

「――ありがとうございます」

「――伝えられるうちに伝えておかないと、後悔するからね」

「――参考にしておきます」

「おい。何コソコソ話してるんだ?」

「何でもないです」

「彼女とられて嫉妬とは醜いぞ?」

「うるせえ、ド低能」

 

 

カルマに睨まれながらも、俺は口元をニヤッとさせる。

 

 

「やっぱり、弄り甲斐があるな」

「こっちはお前らの所為で胃が痛いよ」

「大丈夫だろ。魔神様なら」

「魔神でも元は人の子だ」

「それもそうだな」

 

 

俺はカルマを見て笑うと、カルマは呆れて溜息を吐いた。

 

 

「そうだ。最後に一つアドバイスだ」

「なんだよ」

「人の好意は素直に受け取れ。変な意地張ってると、いずれ後悔するぜ」

「まるで体験談だな」

「まあ、今のうちにありがたみを感じるんだな」

「……善処する」

 

 

カルマが小さく笑うと、徐々に体が光に包まれていく。

 

 

「お別れだな」

「どうせまたすぐに会えるさ」

「私もそんな気がします」

「そんな簡単に会えるかよ」

「解からねえぞ? 忘れた頃にまたコラボするかもしれねえし」

「最後の最後までメタいですね」

「それが俺だからな」

 

 

俺は二人に向かって笑った。

 

 

「また会おうぜ。禁忌の魔神に博麗の巫女」

「ああ。またな、通りすがりの旅人」

「今度会うときが楽しみです」

 

 

その言葉を最後に、二人の姿は光となって消えていった。

 

次に目を覚ますと、そこは旅の途中で訪れた大草原の上だった。

隣ではルーミアが俺の腕に噛り付きながら、幸せそうな顔で寝息を立てていた。

あれが夢だったのか、それとも現実だったのか、それは分からないが……………。

 

 

「お前らとの絆は、確かにあったようだ」

 

 

『カルマ:禁忌魔法を使う程度の能力』

『博麗麗夢:歪める程度の能力』

 

 

スマホに表示されたその名前だけが、アイツ等との繋がりの証のようだった。

さあ、次はどこを旅しようか。

 

 

交わるはずのない世界で紡いだ絆、それは触れてはならない禁忌の邂逅だった。

 

 

 

 

 




空亡 「そういうわけで、今回のゲストはカルマさんと麗夢さんです」
カルマ「家に帰ったと思ってのに、なんでまたここに」
麗夢 「駄作者さんに頼まれてここに繋ぎました」
空亡 「ご協力ありがとうございます。お礼の方は後ほど」
カルマ「おい、何を要求した」
麗夢 「秘密です♪」

空亡 「ええ、お二人を知らない人の為に軽い説明を。
    博麗 麗夢さん、あちらの世界の博麗の巫女さんです。
    主人公であるカルマさんにベタ惚れで、酔うとよく脱ぎます。
    補足、ドSです。うちの主人公も被害に遭いました。
    カルマさん、ツンデレな魔神様。以上」

カルマ「おい‼」
麗夢 「まあ、間違ってはいませんね」
カルマ「それが主人公に対しての説明か……‼」
空亡 「ここで普通の扱いを受けれると思ったら大間違いですよ」
カルマ「優夜の奴、よく我慢できるな」
優夜 「諦めてるだけだよ。………あ、駄作者ジュース取って」
空亡 「ただいま~」
麗夢 「扱いが雑ですね」

空亡 「本当ならこのコラボ回、ユウヤとカルマさんのバトルでした」
麗夢 「何で変更したんですか?」
空亡 「正直言って、こっち側を贔屓してしまう可能性があったのでボツ」
カルマ「やっぱりそう言う感情は湧くのか」
空亡 「これでも大切なウチの子ですからね。情は移りますよ」
優夜 「その割には死亡率がすごいけどな」
空亡 「うるさい。良い話で終わらせろ」

麗夢 「なんだか、賑やかですね」
カルマ「漫才だな。いや、悠月と月美と美羽を合わせたら五人組か」
二人 「「誰が超〇塾だ‼‼」」
カルマ「言ってねえよ‼」
麗夢 「トリオだ……」

空亡 「さて、茶番はこのくらいにして、今回は本当にありがとうございました」
カルマ「最終的には俺の胃が限界まで痛みつけられただけだな」
空亡 「竹林のいい薬師を紹介しましょうか?
麗夢 「後で寄りましょうか。お土産話も持って」
カルマ「こいつらは…………はぁ」

空亡 「そういうわけで、鈴鹿さん、本当にありがとうございました。
    またコラボできる日を楽しみに待っております。それでは皆様」
優夜 「よいお年を‼」
空亡 「あ、それ俺の台詞‼」



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