東方幻想物語   作:空亡之尊

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災厄の取り扱い注意

神無優夜side

 

 

前回のあらすじ、狩人の怨念と遭遇。

そして、今俺は謎の声の所へと言ったらなぜか草むらの中に引きずり込まれてしまった。

何を言っているのか分からないが、俺も(ry

 

 

「なんだよいきなり!?」

「しー‼ 見つかるわよ」

「貴女も静かにしてなさい」

 

 

草むらの向こうで狩人の怨念が俺の事を探していた。

俺たちは互いに口を塞いで、狩人が通り過ぎるのをじっと待った。

 

 

「……もう行った?」

「そのようね」

「意外と諦めがいいんだな」

「呑気ね。さっきまで危なかったのに」

「そっちこそ。隠れる気があるなら少しは静かにしていてくれ」

「一理あるわね」

「姉さんまで、酷い」

 

 

こんな状況だというのに、少女達はマイペースにじゃれている。

一人はフェーブの掛かった金髪のボブ、赤い上着に裾に掛けて赤から黄色へと移り変わるグラデ―ション生地のロングスカート、頭には楓の髪飾りを付けている。

もう一人はカールした金髪のボブ、黄色い上着に黒いロングスカートとオレンジのエプロン、頭にはブドウの飾りが付いた赤い帽子を被っている。

 

もちろん、俺はその姿に見覚えがあった。

 

 

「ところで、アンタたちは?」

「あ、そういえばまだ言ってなかったわね。私は秋 穣子」

「その姉の秋 静葉よ。貴方は?」

「神無 優夜、ただの通りすがりだよ」

 

 

やっぱり、この二人は秋姉妹だった。

姉の秋 静葉は紅葉を司る神、妹の秋 静葉は豊穣を司る神、二人は秋の神様だ。

一部の農民(ファン)からは熱狂的信仰を集めている、まあ東方でも有名な姉妹だ。

でも、その二人がどうしてここに?

 

 

「その名前、どこかで聞いたことがあるような………」

「き、気のせいだろ。それより、何でアンタたちがここに?」

「それについては、あの子を止めてからでいいかしら」

「鍵山雛のことか」

「知ってるの?」

「まあ、厄病神だってことだけだがな」

「本当の事だけど、今は少し違うのよね」

「どういうことだ?」

 

 

俺は二人に尋ねた。

すると、彼女らは今に至るまでの経緯を語り始めた。

 

 

「私たちは住処を求めて各地を旅していて、ここには偶然立ち寄ったのよ」

「雛は厄を集める能力があるから、ここの厄も彼女に吸い寄せられるように集まったわ」

「でもその中にアイツの、狩人の怨念も混じっていた。それで乗っ取られたってわけか」

「以来、なりふり構わず厄を撒き散らしてるわ」

「それは面倒だな。早く何とかしねえと」

「無理よ。近付こうにも、あの怨念が邪魔してくるのよ」

「まあ、実態も無い怨念に攻撃もしようがないからな………………ん?」

 

 

怨念に攻撃………いや、できるのが一つあったな。

でも、その為には狩人の死角に潜り込む必要がある。

 

 

「二人共、頼みがある」

「何か策があるって言うの?」

「ああ。そのために、お前らに協力してもらう」

「言っておくけど、私たちに戦うほど力はないわよ」

「それでもいい。アイツの目くらましのために弾幕を張ってくれ。できるだけ多く」

「それだと貴方が」

「構わない。気合で避けてやるさ」

「無茶言うわね。できるの?」

「気合避けは俺の十八番だ。少しは信頼しろ」

「………わかった。穣子も、いいわよね」

「人間に頼るのも何だけど、この人なら何とかしてくれそうな気がする」

「じゃあ、頼むぜ」

「ええ、行くわよ‼」

 

 

草むらから二人が飛びだすと、狩人の目の前に彩り豊かな弾幕が展開された。

俺はワンテンポ遅れて飛びだすと、弾幕の配置を確認してその間を素早く潜り抜けていく。

 

 

「上上、下下、右左右左………‼」

 

 

最短ルートで狩人の背後へと回ると、俺は『光姫』に『霊夢』の能力を加える。

弾幕で視界が覆われているうちに、俺は紅く光る『光姫』の糸を狩人に向かって放った。

しかし、その寸前で俺に気付いた狩人は素早くそれを避け、そのまま俺に向かって飛んで来た。

 

 

「優夜‼」

「避けて‼」

『……終わ……リダ』

「残念だったな」

 

 

俺はニヤッと笑うと、もう片手に隠し持っていた『星羅』を狩人に突き付ける。

 

 

『宮古 芳香:何でも喰う程度の能力』

 

 

「こいつなら、神霊でも怨念でもひとたまりもないだろ?」

『……キ……様‼』

「あばよ、哀れな狩人」

 

 

乱れ撃つように放たれた銃弾の雨は、狩人の身体に無数の風穴を開けた。

狩人は地面に落ちる前に真っ黒な塵となり、跡形もなく消え去った。

それと同時に、雛は糸が切れた人形のように地面に倒れた。

俺は咄嗟に彼女の身体を受け止めると、静かに地面へと下ろした。

 

 

「これで一件落着だな」

「大丈夫なの?」

「ああ。しばらくすれば目が覚めるだろ」

「良かった………」

「それじゃあ、俺はもう行くぜ」

「え? もう行っちゃうの」

「元を辿れば俺が原因なんだ。ここに居るべき人間じゃない」

「でも、雛を救ってくれたのは事実よ」

「そうかもな。ああ、そうだ。住処にするなら妖怪の山が最適だと思うぜ」

 

 

彼女たちにそう言い残すと、俺はその場から立ち去った。

狩人の怨念、もしかしたらまたアイツの仕業かもしれない。

 

 

「――これ以上関係ない人達を巻き込みたくない」

 

 

俺はそんな事を呟きながら、諏訪へと戻って行った。

一刻も早く、この戦いに決着を付けたくなった。

 

 

 

 

 

???side

 

 

邪神が住まう館の一室、黒扇の部屋。

そこには二人の邪神が場違いで古びたブラウン管テレビの光景を見ていた。

 

 

「へえ~意外とああいう使い方もあるのね」

「あまりアイツを侮らない方がいい。チクタクマンと同じ運命を辿るわよ」

「侮るなんて失礼ね。私、あの子のこと気に入ってるのよ?」

 

 

赤の女王を見ながら、彼女は楽しそうに微笑んだ。

 

 

「でも、やっぱりアイツは役に立たなかったわね」

「もう少し善戦するかと思ったが、やはり神無も成長しているということね」

「人間って本当に不思議よね。たった数百年見ないだけで進化しちゃんだもの」

「だけど、それと同時に愚かよ」

「ええ。だからこそ、あの人は人間が大っ嫌い」

 

 

黒扇はクスクスと笑いながら、手に持っている継ぎ接ぎだらけのカードを見つめる。

 

 

「世界を何億回滅ぼしても、あの人の“世界”に対する怒りは収まらない」

「あの方の障害となる人物は誰であろうと、私たちが潰さなければならない」

「その為に、少しでも彼の心に絶望と怒りを……」

 

 

継ぎ接ぎのカードは黒い光を纏うと、黒扇の手元から飛び立っていった。

それと同時に、テレビのチャンネルが砂嵐を挟んで替えられた。

 

 

「さあ、貴女はどんな風に遊んでくれるのかしら?」

 

 

そこに映っていたのは、森の中を一人で歩く、紫の姿だった。

 

 

 

 





空亡「意外とあっさり終わりました」
優夜「キャラの登場が無理矢理だな」
空亡「なんとでも言いなさい。こうなった意地ですよ」
優夜「どうどう………ところで、この章で終わりか?」
空亡「いえ。実は最後の二話、紫さんのお話です」
優夜「大丈夫か?」
空亡「まあ、幻想郷への足掛かりとでも言いましょうかね」
優夜「ちょっと気になるな」
空亡「まあ、次回のお楽しみということで」


次回予告
人と妖、退治する者と喰らう者、その境界は未だ崩れず、狭間で彼女は迷う。
東方幻想物語・探訪編、『夢物語で終わらせない』、どうぞお楽しみに。

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