東方幻想物語   作:空亡之尊

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幻想の能力

神無 優夜side

 

 

永琳の世話になって早二ヶ月、色々あったが俺はまだ生きている。

この街に住む為に永琳が上のお偉いさんたちに許可を取ってくれたおかげで、俺は何とかここで暮らせてもらっている。話によれば研究対象として匿っていると聞いたが、真意は彼女のみぞ知る。

ここでの性格は技術が元の時代より進歩しているという点を除けば、そんなに変わりなかった。

ただ、余所者というのと、あの八意永琳と一緒に住んでいるという理由で周りからの視線が痛い。

 

だが、ここにきて大変だったのはむしろ彼女の俺に対する扱いだった。

例えば、何も知らない俺に“ただの飲み物”と偽って“実験中の薬”を飲まされた。その後、俺は一週間程目を覚まさなかったらしい。ちなみに、暮らし始めて初日の出来事だ。

その後も彼女の気紛れで死の淵に立たされたりもしたが、俺は今日もなんとか生きている。

 

そんな俺は、郊外で一人、刀を片手に素振りをしていた。

目の前に落ちてきた木の葉を斬り裂くと、周りには真っ二つに斬れた木の葉が散らばっていた。

 

 

「これぐらいでいいか」

 

 

俺は刀を納めると、近くの岩に腰かけた。

昔から剣術を教わっていたが、ここ最近まではご無沙汰だった。

この前のルーミアとの戦いでそのブランクを感じた俺は一ヶ月前から稽古をしているが、まだまだ純粋に彼女と剣術で勝負できるほどには届いていない。

 

 

「やっぱり、これをどうにかしないとな」

 

 

俺はポケットからスマホを取り出した。

画面には中央にたった一つ、真っ白な本の形をしたアプリだけが表示されている。

そこをタップすると、あの時見たメッセージと東方の作品欄が出てきた。作品を選択すると、それに登場したキャラの名前が登場順に並べられている。

 

ここ二ヶ月、俺はこれについて自分なりに調べてみた。

まず、キャラを選択すると俺が持つ刀がそれをイメージした形へと変わる。ルーミアなら黒い刀、他にも試してみたが、それは今後の展開で明らかにしてく。

 

そして、同時にそのキャラの『程度の能力』や弾幕を使うことができる。ルーミアの闇を操る程度の能力では影を刃にして操り、そして原作でもあった周りに暗闇を纏うことも出来る。

 

 

「これが俺の能力なのかな……」

 

 

俺はスマホを眺めながら呟いた。

そうだとしたら名前はどういう風に付ければいいのだろうか?

ハッキリ言って俺のネーミングセンスはおぜう様並、後々後悔するような予感しかしない。

ここはあえて平凡そうな名前にしておこう。どうせ名前なんて飾りだけなんだし。

 

 

「……『幻想を形にする程度の能力』、これにしよう」

 

 

なんか若干厨二っぽい感じになったが、これの方がしっくりくる。

これで求聞史紀に載せられても恥ずかしくない。……会えるかな、あっきゅん。

そんな事を考えていると、いつの間にか空が黄昏色に移り変わろうとしていた。

 

 

「そろそろ帰らないと…………永琳に殺される」

 

 

冗談ではないトーンで呟くと、俺は岩から立ち上がって帰路へと着いた。

 

 

 

               少 年 祈 祷 中

 

 

 

家に無事辿り着いた俺だが、現在永琳と対峙していた。

その間では月美が俺と永琳を交互に見ながらあたふたしている。

 

 

「永琳」

「……なによ」

「俺に何か言うことは無い?」

「さあ?」

「そうか。なら、俺が言わせてもらおう」

「あ、あのユウヤさん」

「いいのよ月美。言わせてあげなさい」

「でも」

「さあ、言いなさい。優夜」

「じゃあ、言わせてもらうけど…………どうして部屋が散らかってんだよ!?」

 

 

俺は部屋を見渡しながらあらん限りの声で叫んだ。

山に積まれた資料、謎の液体が入ったビーカーやフラスコ、そして足の踏み場もない資料の山脈。お世辞にもこれが女性の部屋だとは到底思えない。

 

 

「初日に俺が片付けの忘れたのか?」

「いや、まあ、あれについては正直感謝しているわ」

「だったら、もう一度あんなことにならないように整理整頓するのが常識だよな」

「でも、研究に没頭していると周りが見えなくなって」

「嫌でも資料の山が目に入るんだけど。ってかこれ、俺が飲まされた薬のじゃん」

「それに、私だったらある場所くらいは把握してるし」

「そういう問題じゃねえよ。共同生活しているこっちの身にもなってくれ」

「いや、でもここは元々私n「あ?」………すみません」

 

 

俺は殺気全開で彼女を睨みつける。

あの月の頭脳に正座させているのは妙な気分だが、叱る立場として臆するわけにはいかない。

 

 

「ユウヤさん、まるでお母さんみたいですね」

「男なのに無駄に家事が上手いのよね。信じられないわ」

「一ヶ月でここまで散らかせる永琳の方が信じられないよ」

「あはは……」

「とりあえず、この部屋が片付くまで俺は料理当番から抜けるから」

「「え!?」」

「それじゃあ、俺はもう寝るから。ああ~疲れた」

「待ってください! ユウヤさんが作ってくれなかったら私たち飢え死にします」

「そうよ。この家でまともに料理できるのは優夜しかいないのよ」

「二人には自分で作るという発想はないのか」

 

 

俺は呆れながら自分の部屋へと戻って行った。

後日、見違えるほど綺麗に掃除された部屋と真っ白に燃え尽きている二人の姿を見た。

 

 

 

 





優夜「能力名が中二臭くなってるぞ」
空亡「やっぱり、こっちの方がかっこいいと思いまして」
優夜「いいのかよそれで」
空亡「そうは言うがな大佐」
優夜「誰が大佐だ」
空亡「人は誰しも厨二病を患うんです。今更どうかしようなんて間違ってますよ」
優夜「だめだこいつ、何とかしないと」
空亡「まあ、今更変更なんてしませんけどね」
優夜「もうヤダこの駄作者」


次回予告
永琳の紹介で出会ったのは二人の姉妹、しかしそこでは一波乱の予感が。
東方幻想物語・神代編、『綿月の姉妹』どうぞお楽しみに。

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