神無 優夜side
諏訪の国へと旅立って一週間、俺とルーミアは森の中を彷徨っていた。
一応俺は飲まず食わずでなんとか意識は保っているが、腹ペコのルーミアは空腹でここ最近ずっと機嫌が悪い。最悪、俺が食料になる日も近いだろう。
「ああ……肉が喰いたい。美味しい人肉が」
「俺だって空腹を我慢してるんだ。お前も頑張れよ」
「何で人間の貴方がそこまで耐えられるのよ」
「半月を水と塩だけで乗り切ったあの頃に比べればまだマシだ」
「……ごめんなさい」
「謝るな。何だか自分が惨めになる」
「やっぱり貴方を見ていると我慢できないわ」
「おい‼ 俺の話は聞き流したのか!?」
「だから先に言ったのよ。………ごめんなさい」
「洒落にならないからやめてくれ」
そんな会話をしていると、近くの茂みが不自然に揺れた。
俺とルーミアは足を止めると、茂みを凝視して互いに顔を見合わせた。
「なあ、ルーミア」
「なに、ユウヤ」
「俺さ、前にも同じことがあったんだよね」
「それは奇遇ね。私もよ」
「俺の場合は、茂みの中から人喰い美少女が出てきたんだよね」
「私の場合は、茂みから出たら美味しそうな獲物が居たのよね」
互いに互いの視点からの出会いを思い出した。
ってか、ルーミアからしてやっぱり俺は美味しそうな獲物だったのかよ‼
二人で茂みを見つめていると、茂みの中から何かが飛びだした。
俺は刀を取り出し、ルーミアも剣を取り出し、二人揃って戦闘態勢を整えた。
「いたた……」
そこに居たのは、意外にも人間の美少女だった。
長い金髪にツーサイドアップ、裾や袖に星の模様が描かれた白い着物、首には星の首飾りを付けている。なんだか雰囲気がヤ〇ちゃんに似てる気がする。………物凄く黒服のゴスロリを着せたい。
転んだ少女は立ち上がると、埃を叩いて顔を上げた。
「……こんにちは?」
「……こんにちは。お嬢さん」
「お嬢さんじゃありません。これでも二十歳です」
「なるほど。合法ロリか」
「意味が分かりません」
「コイツの言うことは大半は聞き流した方がいいわ」
「そのようですね。ところで、貴方達は?」
「あ~実は俺たち旅の者で、この近くに寝泊まりできるところはないか探してるんだ」
「だったら、この近くに私が住む村があります」
「そうか。それなら案内を」
「今は無理ですよ。だって……」
少女が視線を茂みの方へと向けると、そこから幾つもの影が飛び出してきた。
それは薄汚れた銀色の毛並みをした狼だった。しかし、その身には淀んだ妖気を纏わせている。
狼共は囲うように周りをゆっくりと歩いて俺らを睨みつけている、
「私、追われてますから」
「その割には落ち着いてるわね」
「毎度のことなので慣れました」
「ちなみに、なんで貴女はこの森に?」
「姉が風邪なので、その薬の材料を採りに」
「姉想いな良い子ね」
「そんな良いものでもないですよ」
そう呟いた少女の顔に、少し闇が見えた。
訳ありみたいだが、今はそんな事を勘ぐっている場合じゃないな。
相手は狼の妖怪が10匹程度、初戦にしては悪くも無い相手だろうな。
「ルーミア。その子を連れて逃げてくれないか?」
「あら? もしかしたら美味しく頂くかもしれないわよ」
「するつもりならわざわざ言わねえだろ」
「それもそうね。……それじゃあ、行くわよ」
「……アナタはどうするの?」
「俺はこいつらを倒してから追いつく」
「というわけよ。行くわよ、お嬢さん」
「お嬢さんじゃありません」
少女はルーミアに抱きかかえられると、森の奥へと消えていった。
俺の一人で戦った方が効率がいいからな。それに、少女にトラウマは抱えてほしくない
狼はルーミアたちを追おうとして俺に背を向けて走りだそうとするが、それは目の前に飛んで来た刀によって阻まれた。
「無視するんじゃねえぞ。駄狗」
俺は狼共に向かって中指を立てて挑発する。
すると狼共は俺の方へと向き直り、喉を醜く鳴らしながら俺に牙を向けている。
普通の犬畜生なら意味はないが、中途半端に知性のある妖怪なら単純に引っかかる。
「さて、相手になってもらうぜ」
俺が口元をニヤッとさせると、狼共は俺に向かって飛びかかってきた。
俺は姿勢を低くしてその下を走り抜けると、地面に突き刺さった刀を引き抜いて構えた。
「一瞬で決めるぞ、月美」
狼共が地面に着地した瞬間、俺はその場に足を踏みしめて一気に加速する。狼共は一斉に振り返るが、その隙を突くように一筋の剣閃が狼共の身体を斬り抜けた。
「―――『舞月』」
刀を振って血を落として鞘へと納めると、狼共はバラバラに斬り裂かれてただの肉片となった。
生々しい肉片と吐き気を催す様な血の臭い、それが自分の手で作り上げたかと思うとゾッとした。
「あの子が見たらトラウマ待ったなしだな」
そんな事を思いながら、俺は二人が向かった方向へと歩き出した。
俺の出会いは森の中でしかないのか………………人生もワンパターンだな。
空亡「文章力が徐々に下がっていく」
優夜「今に始まったことでもないだろ」
空亡「しかし、これではいけないですよね」
優夜「まあ、素人でこれだけやれてるからいいと思うけどな」
空亡「先人様のを見て勉強しているんですけど、やっぱり駄目ですね」
優夜「今まで似ないからな。こんなテンプレ」
空亡「テンプレ言わないでください。これでも悩んでいるんですから」
優夜「そして、本編の話はまったくでなかったな」
空亡「あ」
次回予告
妖怪を退けた優夜、彼が森を抜けるとそこには目的地である諏訪の国があった。
東方幻想物語・大戦編、『諏訪の国へ』、どうぞお楽しみに。