東方幻想物語   作:空亡之尊

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序章
始まる物語


???side

 

 

人生というのは本当に何が起こるか分からないものだ。

 

今朝の天気予報で今日は一日快晴だと言っていたのにも拘らず、家を出てすぐバケツをひっくり返したような大雨が降り出したり。

大学では気さくな教授に教材を運ぶのを手伝わされ、その挙句に非統一性魔法世界論などというものを小一時間程度聞かされた。

カフェテラスでは不良オカルトサークルの後輩二人に遭遇してしまい、そのうちの一人に言いくるめられてケーキセットを奢る羽目になった。

そして、帰りになった時、年末のバーゲンセールで驚愕の9割引きで買った傘が盗まれるという今日一日で最悪の出来事が起こったと思っていた。

 

しかし、最悪な出来事というのはそう簡単に尽きないものらしい。

そんなことを走馬燈のように思い出しながら、俺は鉛色の空を見つめた。

 

雨にすれたいつもの通学路、色の薄れた赤い血の海の中心に俺は壁に寄り添いながら座っていた。

出血しているだろう俺の腹部からは未だに生暖かい血が流れ出ている。

雨に打ち続けられている所為か、はたまた出血のし過ぎなのか、身体が冷たかった。

これが夢ならと……心のどこかで思ってしまうが、近くに捨てられた血塗れたナイフと腹部に残る痛みがそんな希望論を完全論破した。

 

 

「あ~あ、ツいてないな」

 

 

俺は弱々しく呟いた。

本当ならこの後、〇ニメイトに寄って東方の限定フィギアを買おうと思ったのに、とんだ厄日になってしまった。ああ、来週は予約していた東方の同人誌が届くはずだったのに、残念だ。

あ、そういえば寮の部屋にあるUSBメモリ、中身を見られたら御代までの恥が! ………って、俺の血筋は御代までもないか。HAHAHA……あれ? 雨が目に入って前が見えないな。

 

そんな事を考えていると、俺の視界を少しの暗がりが包んだ。

視線を動かすと、そこには一人の女性が傘を差して俺を見下ろすように立っていた。

肩まで伸びた長い茶髪、白いロングスカートに黒いコートを羽織っており、素敵な赤い瞳が特徴的だった。

 

 

「御機嫌は如何?」

「どうかな。死に際に女神さまが迎えに来てくれたのは嬉しいけど」

「ふふ、そんな傷なのに随分と余裕なのね」

「美しい女性には失礼の無いように、それが俺の信条ですからね」

「そう」

 

 

女性は少し悲しげな表情を俺を見下ろした。

 

 

「女神様、殺人犯がこの辺りをうろついているかもしれません。早くここを離れた方がいい」

「自分のことよりも、他人を心配するのね」

「死に逝く奴にできるのは、今を生きる奴の幸せを願うことだけですよ」

 

 

俺は多少無理をしながらにっこりと笑った。

男としての意地なのか、なぜか目の前にいる彼女を悲しませたくなかった。

 

 

「貴方は、死ぬのは怖くないの?」

「怖いに決まってよ。でも、だからって何もできないじゃないか」

「そうね」

「あゝ、こんなことなら岡崎教授へのレポート出しとけばよかったな。

 それと、宇佐見やメリーちゃんにももっと上等のケーキをおごってやれば………」

 

 

俺は笑みを浮かべているが、瞳からは絶え間なく涙が溢れ出ていた。

死ぬのが怖くない人間なんていない。例えそんな人間がいたとしたら、それはもはや人間ではないだろう。そう、それは最早、『化物』だ。

 

 

「あ~あ、本当に今日はツいてないな」

「生きたい?」

「ああ」

「なら、貴方の願い、特別に二つ叶えてあげるわ」

 

 

彼女は俺の近付くと雨や血で濡れているにも拘らず、俺を抱きしめた。

それはとても暖かく、なぜか懐かしい感じがした。

 

 

「あはは……あんた本当に女神様かよ」

「いえ、私は……」

 

 

彼女の言葉を最後まで聞こうとするが、急に瞼が重くなってきた。

眠るように意識が遠のいていく中で、雨の降りしきる音と彼女の優しげな声が最期に聞こえた。

 

 

「神無の神子、巡り巡って現世に戻る時、幽明境を分かつ、

 果てしなく永い悠久の中で、我が愛しき想いをもって、その魂を転生させる。

 願うなら、二度と苦しみを味わうことの無い様、素晴らしき出会いに恵まれますように………。

 そして叶うなら、この先の苦難を乗り越えるために、彼に絶えない絆があらんことを…………」

 

 

その日、俺の、神無 優夜(かみなし ゆうや)の人生は終わった。

だが、それと共に俺の新たな物語が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

???side

 

 

さて、ご存知の方々は知っていると思いますが、これも一応“第一話”。

初めて読んでくださる方のために改めてご挨拶さえていただきます。

私(わたくし)、今作の駄作者こと、『空亡之尊(そらなきのみこと)』と申します。

まあ、呼びやすく空亡、罵ってくれる方は駄作者で結構です。

 

第一話はごく在り来たりな転生ものの話でした。

僕も初めはこんな感じだったんですけど、序盤に行くにつれて東方要素が薄れてきて、今では東方要素を含んだオリジナルとなりつつあります。

そこで、ここからはそう言うのをご承知の上、読んでいただきたいと思っています。

 

こんな物好きの在り来たりでどこか可笑しな物語に、最後までお付き合いしてくれたら幸いです。

では、改めまして『東方幻想物語』の、はじまりはじまり~………………。

 

 

 

 

 





空亡「さて、始まりましたね」
優夜「周回プレイってこういうことを言うんだな」
空亡「うるさい。それより、色々変更してるのでそこら辺は意識してくださいよ」
優夜「いや、俺この後の展開知ってるんだけど」
空亡「……仕方ない。次回から記憶処理でもしておきますか」
優夜「物騒だなおい!」
空亡「さて、では次回予告に行きますか」
優夜「改変してもそこは同じかよ」


次回予告
主人公、落ちる。優夜「やっぱり同じか!?」
東方幻想物語・序章、『目覚めろ、その魂』、どうぞお楽しみに。

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