コードギアス反逆のルルーシュ Children in succession to will 作:ラムネ便
太陽光に反射するバイザータイプの複合ツインアイカメラ。両手にクローアームを装備し腕の枝分かれした部分には補助ジェネーレーターが後付けされている。コックピットの内部は試作機にしては珍しいモニター方式を扱ってデータを取るようだ。組み立てられた三号機に乗り込んだ俺は試験場の太陽に晒されながらオペレーターの指示通りに起動を開始した。
『補助ジェネーレーター出力異常無し。クローアーム動作確認』
「動作確認!」
『脚部スラスター異常なし。背部一番から四番スラスター異常なし。点火確認』
「点火確認!」
『クルセイド三号機のモニター接続完了。内部圧力問題無し。カメラを作動』
座席が下に下がっていきコックピットハッチが閉まる。メインカメラの映像が足元にまで映し出されOSが作動を始める。幾つかのデータ欄をスワイプして退けさせると試験場の遠くにあるフェンスが映し出された。ここまではまだ大丈夫なようだがFATSをまだ起動していない。
「カメラ異常なし。OS不具合無し。あとはFATSのみ・・・」
FATSを起動させる為オペレーターに合図を送って起動させた。すると瞬く間にエラーが表示されてしまいコックピットハッチが開き座席が上に上がって元の状態に戻ってしまった。もう一度オペレーター側から再起動を繰り返しかけたが、FATSが起動をする度にエラーを起こして振り出しに。
「んー・・・ニムバスさん。FATSの詳細は教えて貰いましたがOSの構成はどうなってるんです?」
『通常の機体OSにFATSを載せただけだが』
「あ、分かった。だからだ。ニムバスさん。機体OSで武器システムだけ外したものをこちらにインストールして下さい。これで解決します」
『そうか。元の武器選定システムにFATSが干渉してしまった訳か。単純なミスだった・・・』
この後特定の機能を外したOSをインストールしたクルセイド三号機はFATSを見事に起動。無人機による訓練とはいえ、単騎で空の制空権を確保出来る程の戦闘力や機動力を俺に見せつけた。一時間の訓練で大量のデータを解析出来たのでスラスターを今も使っている理由を聞いたが教えてくれなかった。代わりにとFATSの基礎データは貰えた。やったぜ。コイツを持ち帰ってルルーシュおじさんに再度プログラムして貰おう。もちろん残業代なしで。
「よし。なんやかんやでデータ貰えたし土産話も出来た。明日には帰ろうかな〜」
「零久」
「ニムバスさん。どうかされたんですか?」
「いや・・・少し聞きたい事がある。私がアレを旧式だと言ってお前は最新式と言ったな?だがお前の世界でも旧式なはずだ」
「何故です?」
「特殊なフレームだからだ」
「ありゃ。ばれましたか」
「あんな機体フレームでは内部の形態も旧式にするしかあるまい」
「アレは元々並行世界間を移動する為に作られた物でしてねぇ。内部形状が特殊なんで旧式のサクラダイトを積まないとフレームに負担がかかるんですよ」
エンジンの性能の向上は同時に機体のフレームへのダメージ上昇が付き物だ。次元間の航行という正気とは思えないその技術は機体に特殊なフレームと大型化してしまったサクラダイトに小型化という難題を突きつけた。他の問題は片付いたものの、サクラダイトの小型化は未完成となったので旧式のサクラダイトを流用し合わせて武器も旧式を使用するしかなかった。これが現実だ。
「それにしてもフレームなんてよく分かりましたね。どこかで聞きました?」
「勝手ながらCTを撮らせて貰った」
「ああーそういうことですか」
「すまない」
「大丈夫ですよ。別に見られて減るもんじゃないですし」
橋を渡りニムバスと別れたあと明日帰ることを総司令に伝える為に総司令室に向かおうとした。足元から変な音がする。この下には自分の機体が収納されたハンガーがある。機体を見るとツインアイが光り起動していた。ハンガーの留め具を無理矢理外すと目の前に次元ゲートを開いて自分から飛んでいく。ゲートは閉じて俺は取り残されてしまった。
「え?ちょ?マジで⁈俺帰れなくなった⁈」
『警告。敵による爆撃を基地が受けています。非戦闘員は地下へ退避。戦闘員は各機体に搭乗し迎撃を開始して下さい』
「こんな時にかよ!今は・・・行くしかねぇ!MAGI!」
『はい』
「クルセイドの機体パスワードは分かるか?」
『肯定』
「クルセイド三号機のコックピットを開ける。迎撃するぞ!」
俺は先程の試験場へ走ってハンガーに収納されているクルセイドを見つけるとMAGIでパスワードを入力してコックピットに入る。起動したとはいえモニタリングしながらの状況だったので何が起きても保証出来ないのが面倒だなぁ。
「クルセイド三号機。零久!出る!」
三号機はハンガーの扉を開くとスラスター全開で空に飛んだ。攻撃が激しい場所では一機の巨大兵器が放たれたミサイルやハドロン砲を受け止めている。その堅牢な機体のフレームにはR.Sの文字がナイフで削られたような傷で刻まれている。巨大な軋む咆哮を上げたソイツはメタルギアREX。レックスの相棒であり、兄弟。
「行くぞREX。弾薬を惜しむなと親父から言われてんだから暴れさせてもらうぜ!」
『ヒャッハァー!盛り上がってきたねぇ!』
「パーティーの時間に間に合わない馬鹿どもの為に時間稼ぎくらいしてやらんとな」
『んじゃ、始めますか兄弟!』
「言われなくとも!」
REXは追加されたミサイルを大量に打ち上げると空には煙幕が張られた。そこに赤外線誘導ミサイルを放ち確実に当てていく。ステルスミサイルとも称されるコレもシンフォニーと日本の共同開発兵器だ。
『よっしゃぁぁ!同時撃墜16機!初だぜ!』
「ああ!もっとやれるさ!」
『っと兄弟。チョイとパーティがつまらなくなりそうだぜ。クルセイドが来た』
「クルセイド?未完成機じゃなかったのか?」
空を自由に舞うクルセイド。正門から強行突破してきた敵を逆さまの状態でロックオンし小径弾で敵を制圧状態に持ち込む。そこをすかさずREXが突撃し一網打尽。あり合わせの戦法でも十分に戦えるのが二人のいいところだ。
「おい!クルセイド!応答しろ!クルセイド!」
『反応なしですなぁー。ま、今は目の前の敵が優先だ。ドーム輻射障壁も展開したし、あとは残存兵力を片付けるべ』
「了解した。仕掛けるぞ」
侵入してきたのは基地のレーダーと連携して確認した限りではKMFが5機。歩兵部隊が8くらいだ。東側の門の迎撃にはストライクフリーダムでラファーエットが向かってくれている。じきに鎮圧してくれるだろう。ふとレーダーの警報機が鳴りハドロン砲を上空に構える。肉眼で見るとそれはデルタガンダム。エクスが帰ってきたようだ。ついでに何か黒いやつもいる。ジョセフの嫁だ。
『兄さん!攻められてるじゃないですか!近くの部隊は迎撃します。中は頼みますよ』
『うあ〜ん。残業じゃない!ジョセフとイチャコラしたいのに!』
「はあ・・・ジョセフ。聞こえるか?」
『はい。何か用?』
「嫁が会いたがってるぞ。早く帰れ」
『嫁って・・・わかったよ。スグに帰る』
「あ、多分帰ったら饅頭ないけどゴメン」
『は?オイ、クソ兄貴。それは一体どうい』
チャンネルを限定周波数に切り替えると外も中も派手に爆発が起き始める。どうやら他も暴れ始めたようだ。増援も来てガンガン押し返してるのでレックスはやることがなくなった。数分後東門の部隊から敵殲滅が報告されて鎮圧に成功。被害は軍事棟に関連するもののみ。しかしシンフォニーに直接攻め込んでくるということは、それなりに武装が整っている事を示している。
「各隊員は負傷者の集計を急げ。正門の警備隊を最優先に治療しろ」
『司令補佐に通達。オーキス総司令より通信が入ります』
「父さんが?」
『レックス。ちょっと用事が出来た。帰るのは暫く先になる。それまでは総司令をレックス。お前に任命する。あとは頼んだぞ』
「・・・了解」
父さんはそういって通信を切ると自前の機体で大空に飛び立つ。それを見届けるとフロートバイクで駆けつけたジョセフが此方を見ていた。もちろんアイツの饅頭食ったのが原因。だが残念だったのは俺みたいだ。
「おう・・・やべ・・・腹がイテェ」
『どした兄弟?変なもん食ったのか?』
「ジョセフの饅頭が傷んでたみたいだぜ」
『んじゃ、早く降りな。コックピットが臭くなるのは勘弁だ』
REXがアゴのコックピットを開いてくれたので全力でトイレに向かったレックス。ジョセフは残されたREXに乗り込むとフロートバイクを自動モードで片付けてREXのシステムメンテナンスに入った。
『レックスの野郎。傷んでた饅頭食ったみたいだぜ?いいのか?』
「いつもの事だし大丈夫。それよりもREX。お前さ、最近もっと人間らしくなったよな」
『人間らしくねぇ。俺はAIだが自己学習能力が組み込まれてる。それもあんだろ?』
「いや・・・昔と比べたら全然違う。ただの片言外国人が急に日本人になったみたいだ」
『ほお。ま、褒め言葉として受け止めてやらぁ。それより早くメンテナンス終わらせてくんない?俺寝たいんだけど』
「分かったよ・・・早めにやる」
夕日に照らされたREXを陰に負傷者の応急処置が進められ、何人か重傷者はいたものの死者はゼロ。破壊された警備棟は仮止めで固定。その夜、対KMF戦を想定した武装隊員が警備隊として警備についた。REXなどの機体は全てハンガーでメンテナンスを受けた上で収納され零久は休憩室へ行ってしまった。で、ジョセフはというと腕を巨大なその二つの実に挟まれながら生活区域へ歩いていた。
「ジョセフぅ〜」
「あのね・・・結婚しても人前で引っ付くのはどうかと思いますが?」
「どうしたんだよ補佐!嫁さんから離れたいってか?今のうちだぜ?こんなにしてもらえる事なんかないんだからな!」
「そうそう!」
この桃色の髪と綺麗な私服を見てるだけでも凄いのに引っ付くところまで来ると俺も理性の制御が難しいものでして。少し前までは彼女の方から寄ってきたのだが余計可愛くなって・・・2回ほどやってしまった前科を持ってしまった。その後に結婚の申し入れをしたらアッサリと結婚出来たのは驚いたなぁ。
「ねぇ。お義父さんは?」
「ん?父さんは出掛けたらしいよ。何の用事か知らないけど。何か用でも?」
「ふふふふ・・・コレを見なさい!」
彼女の右手から出てきたのは母子手帳。とうとう来たか。
「要するに・・・デキました!これからよろしくね!お父さん!」
「あ、あえ?お父さん?マジでか!」
「ヴァルキリーにも報告してあるから全てバッチリ大丈夫よん!」
「ヴァルキリー姉さんに?そういえば最近見てないな・・・」
「私ならここにいるわよ。勝手に殺さないで」
そんなこんなで夜の食事を済ませるために何人かの友人整備員達と話しながら食堂へ向かったジョセフ一行。ちなみにレックスは未だにトイレから出てなかったりする。そしてエクストリームに乗って用事を済ませに行ったオーキスはE.Eと神根島にいた。
「さて・・・ここの思考エレベーターを使うのも久しぶりだね。開け。次元の扉よ。我が命に従い法を捻じ曲げ存在させよ」
思考エレベーターをフルで活動させ異次元の場所を確保。扉に入った二人は目の前の白い空間に閉じこもる。その空間には三つの椅子。机の上にカップと紅茶の茶葉が入った淹れる容器が置かれている。オーキスが瞬きをした瞬間、椅子の一つに狐のような姿をした女性が座って優雅に紅茶を飲んでいた。
「・・・遅かったのう?」
「神様が俺なんかに何の用だ?今更俺にアドバイスなんかするつもりか?」
「まさか。儂が興味あるのはキシのみ。他がどうなろうと知ったことではない」
「じゃあ何の用だ?」
神狐は一息つくと浮かない顔をしてオーキスとE.Eを椅子に座らせた。話すのすら嫌そうな感じが出ている。それでも必死に口を動かそうとしているところから話さない訳にはいかないみたいだ。
「キシについて・・・話しておかなければならない事がある。本名を・・・教えなければ」
「本名?軍司キシが本名ではないのか?」
「この世界では・・・な。あやつの本名、それは・・・」
「それは?」
「河上彦斎。人呼んで・・・人斬り彦斎」
続く!