コードギアス反逆のルルーシュ Children in succession to will 作:ラムネ便
ナヴィスが扉の先に見たのは同じシンフォニーの戦闘服を着用している自分だった。鏡合わせのようにその姿は寸分にも満たずに狂いがない。だがギアスは持っていないようだ。
『さて。自己紹介から始めようか。俺はシンフォニー傭兵師団副艦長のナヴィスだ』
「俺も同様だ。だが・・お前はなんだ?不思議な感じがする」
そう言ってナヴィスは思い切り彼に鳩尾へ重い一撃を入れた。彼は血を吐き一瞬だけ倒れたが足を引っ掛けて体勢を崩させたあとナイフを足にめがけて投げつけた。気づいたナヴィスは崩された体勢を変えてナイフを避ける。
「全く・・俺と戦うのは初めてだ」
ナヴィスは腰につけていたグロックを数発放った。銃弾は彼の体を貫通したかに見えたがその1発1発は全てありえない方向へと曲がっていた。全ての弾丸を撃ち尽くしたシリンダーを投げ捨て再びリロードしている間に飛んでくるナイフをリロードした弾で弾いていくがナイフより弾の方が少ない。彼が持っているナイフは未知数でナヴィスが持つ残りの弾は計15発。あまりにも分が悪い。
『俺は知っている!俺は何でもできる!だから誰一人振り向かせる事が出来ない!ただの器用貧乏だといのは俺達が一番よく知っているはずだ!』
「だから?」
『艦の外に出たことは少ない。それもよく知っている!いいか⁈俺達は所詮中途半端なまま生きているんだ!』
「そうか・・俺は逆に光栄だな。もしオーキスが俺を残しているの理由がそれだとしたら奴は俺のことなど信用しないだろう」
『強がりを!俺達はいいように使われているだけだ!』
ナイフと銃から徒手空拳に切り替わる二人。互いに一歩も引かないその戦いは若干ナヴィスに負けがきていた。受け止めては流すの繰り返しをして次第に動きは更に鋭くなっていく。二人の顔はあのナヴィスの顔ではなく戦士のそれとなっていく。やがてナヴィスの空中蹴りで彼は顎を強打。倒れこんだが立ち上がり抜けた歯や血を口から出した。それでも構えた彼はナヴィスの肋骨を肘鉄で折り腹部を蹴り飛ばす。
『ここで勝てないと俺達は意味の無い存在となり果てる。思いを持ったまま溺死だけは勘弁だ!』
「そうか・・・俺はてっきり知っているうえで言ってるかと思った。お前は一つ勘違いをしている。オーキスより俺達は下だと思ってるだろ?」
『は?下に決まっているだろ?』
「どうやら本当に知らないようだな。確かにオーキスの能力や身体能力は高い。だがな、俺は身体能力だけならオーキスの数段階上にいる。ついでに言えばあいつより頭はいいぞ。ただテンプレ的な作戦しか考えられないがな。オーキスは全員が考えつかないような作戦を考える。更に俺より一人前の経営者としての腕もある。その辺りを考慮すれば全体的にはオーキスが上だろうな」
『は・・は⁈』
「自分から成長を止めたお前など不要!その感情を今直ぐこの場で消し去る!騎士は徒手にて死せず!”ナイト・オブ・オーナー”!」
立ち上がったナヴィスはどこからともなく取り出した回転式機関銃で彼に大量のAE弾の雨を浴びせる。その勢いは止まることなく砂煙を上げていた。しかしそんな中でナイフを振るい銃弾を切断して少しずつナヴィスに近づいていく影があった。その体は穴だらけで常人ならば死んでいてもおかしくはない。黄昏の間の効果もあっての事だとしても消えていくのが普通だった。彼を突き動かしているのは執念と恨み。それは自らのような中途半端な存在に対して能力を上回る人物に向けてのもの。だがその刃は中途半端な自分へのあてつけに過ぎなかった。
「安らかに眠れ。もう・・・お前の幕は閉じた」
機関銃を地面に落として構えをとりとナイフを捨てた彼の渾身の一撃が飛んできた。しかしギリギリで回避されて最後の手向けにナヴィスが放った拳は股間に命中し彼はそのままうずくまると光となって消えていった。ナヴィスは近くの岩に座ると胸ポケットに入っていたガムを一つ食べて深呼吸をした。そして現れた扉を開ける前に後ろを振り向くとガムを一個置いて呟いた。
「すまない。いくら俺でも股間は痛い」
続く!