コードギアス反逆のルルーシュ Children in succession to will   作:ラムネ便

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まだ、、まだですよ。東京租界戦は。


全てが繋がる

青い海の中に沈むスカアハの中でクラシックを奏でていたのはデンファレ。ヴァイオリンの演奏を一人だけしていないパッヘルベルを音源で代用し綺麗な音を立てていた。デンファレ自身はロロとして生きていた部分を忘れ去るには丁度いいという。オーキスはそれを聞きながら寝ている。それをシャーリーのいる集中医療室にもかけて安心感を出した。

 

「兄さん兄さん」

 

「オンシジューム?どうしたんだい?」

 

「ほら見て、、くくっ、、」

 

「オ、オンシジューム!ダメだってこれ、、ちょ、、まじやめて、、あはははは!」

 

「んだよ煩いな」

 

「はい!鏡!」

 

「なんだ?なんかついて、、んじゃこりゃぁぁー!」

 

「寝ているオーキス兄さんが悪い!」

 

オーキスは寝起きの寝癖を直しながら顔を洗いにいった。オンシジュームとデンファレは笑い転げて止める事が出来なくなっていた。ナヴィスは途中でオーキスに会い逆に驚いてグロックを構えたりと悪い目にしかあっていない。

 

「次は私がやるよ。曲は”主よ、人の望みの喜びよ”で!」

 

少し小規模なオルガンを使い曲を演奏するオンシジューム。彼女とデンファレはクラシックが得意だが何故かオーキスだけはドラムなどの近代楽器しか奏でる事ができない。顔を洗い元に戻したオーキスは依頼を確認する為に操縦室に戻った。寝ているナヴィスに上着をかけて司令席ではなくモニターの席に座る。何故か隣では当直であるはずのキシが寝ていた。確かに緊急時には自動迎撃や警報が鳴る。しかしだからといって当直が寝ていては元も子もない。

 

「おいキシ。起きろ。昨日ナナリーとお楽しみしていたのは知っているんだぞ」

 

「んー、、親父にもぶたれた事ないのにぃ、、」

 

「はあ?早く起きろ」

 

今日はルーファス、ユウ、ニムバスが休暇でありナナリーは寝ているしE.Eとクレアは患者の様子を見なきゃならない。ユフィと黒金、ブレーンは夕食の準備に追われナオト、ベイリンはVR訓練。タキセはピークォードの整備をしなければならないのだ。

 

「俺はぁ、、ナナリーと添い遂げ、、る」

 

「はよ起きろ!減給するぞ」

 

「うぇい⁈」

 

変な声を出しながら起きたキシは一瞬辺りを見回し目をこすりオーキスを見るとじっと見て言った。

 

「ん、、?ミスター・ブシドー?」

 

「誰がミスター・ブシドーだ。変な名前つけずに早く仕事しろ!」

 

「へ?、、あ、あああ!すまん!何時間寝た⁈」

 

「一時間くらいか」

 

「仕事に戻りますっ!」

 

キシは今まで見た事がない早さで事務処理を終わらせていく。よく見ると印刷してまとめるのを何故かスタンドがこなしていた。二時間後夕食を済ませて司令席でレーダー警戒をしていたオーキス。するとブリタニアから秘匿回線で再びシュナイゼルから連絡がきた。少し面倒くささを感じながら回線を開くとそこには酔ったシュナイゼルがいた。

 

「殿下⁈」

 

『おお。オーキス君じゃないかぁ。聞いてくれよ。ルルーシュがまたやらかしてざぁー!もう嫌になっちまうよチクショーめ!』

 

「落ち着きましょう殿下。とにかくその酒瓶を置いて、、」

 

シュナイゼルはオーキスの話を聞かずに酒瓶を一升丸呑みしてしまう。完全に出来上がった酔っ払いほど対応が面倒なものはない。

 

『もうさぁ!予算もギリギリなんだよ!んだよあのクソジジィ!変な研究に時間と金使うなら俺を即位させろよ!』

 

「あ、、えっと、、」

 

『こっちだってなぁ!忙しいんだよ!書類は溜まるわ始末書は書かされるわウンザリなんじゃボケェ!』

 

「、、、」

 

『ただでさえ事後処理に大量の予算をつぎ込まなきゃならん!そもそもエリア11なんかに侵攻する意味がわかんねぇよ!俺がやったんじゃないのになんで弟から責められなきゃならん訳⁈コーネリアに至ってはユフィに負けるとは、、しかも婿はナイトオブセブン!これ以上ない相手だ。だが彼女は既に婚期は過ぎたも同然!ついでに言えばヨーロッパと喧嘩する暇があるなら租界に拘る必要なんか皆無だ!もう冷静を装ったイケメン皇子は疲れきった!明日は一切仕事しない!』

 

シュナイゼルは通信を乱暴に切った。オーキスはいつもは見ないシュナイゼルの心の闇を見て放心状態にあった。数分後再び通信がきて回線を開く。しかしそこには誰もいない。誤作動だったようだ。すぐに切ろうとすると声が聞こえて来た。

 

『おらぁ!これから夜の街に繰り出すぜぃ!ナイトメアとナイトオブラウンズを呼べぇ!』

 

『殿下!落ち着いて下さい!』

 

『あああ!酒造からどれだけ取り出してきたんですか⁈もう五本目に入ってますよ⁈酒保の隊員から様子がおかしいと聞いて来てみれば、、』

 

オーキスは静かに通信を切ってヘッドホンをつけて別の曲を聴き始めた。脳内ではシュナイゼルのギャップを消す為に必死になっている。そして夜が明ける頃、シュナイゼルから秘匿回線で昨日の事はなかった事にしてくれと頼まれた。勿論データは削除。シュナイゼルの酒乱状態動画はスカアハには残っていない。そう。スカアハの本体サーバーは。

 

「俺だって商いをする人間だ。弱みは握らないとやってられないからあいつには悪いけどコピーさせてもらったぜ」

 

オーキスはコピーしたディスクを保管ボックスに移送させ司令席から降りると朝食を済ませにいった。操縦室で仕事を終わらせ何とかやってのけたキシはオーキスが出て行く音に気付いて起きた。伸びをしながら欠伸してボサボサの髪の毛を掻いて朝食を取りに行こうとした時、ある写真が目に入った。オーキスの昇降式司令席に貼ってある写真で学生服を着たオーキスやクレアがいる。だがそこにはキシが見覚えのある人物も写っていた。

 

「ん?オーキスの横で仏頂面してるコイツ、、どっかで見た気がすんな、、誰だっけ?」

 

長い髪を後ろに縛り眼鏡をかけて如何にも生徒会にいそうな人物だ。

 

「誰だっけ〜⁈首あたりまで答えが来ているんだけどなぁ、、」

 

その時操縦室に入って来たユフィがキシに気付いて近寄る。キシが見ている写真を後ろから見ているとユフィはある男の事を思い出した。

 

「あー!この人ギルフォード卿ですよ!オーキスさんと同じ写真にいるなんて奇遇ですね」

 

「そうだ。こいつギルフォードだった。ん?ギルフォード?」

 

一瞬でキシの顔は青くなり血の気が引いていく。ナナリーが死にかけた時と同じスザクがルルーシュのギアス”生きろ!”をかけられた故に起こしてしまった最大最悪の事態。スザクがフレイヤを放ち東京租界の中央を丸々削り出してしまった時。このフレイヤはニーナが作成した”クリーン核兵器”とも呼ばれた代物だが正直まともとは思えない。急造品であるアンチフレイヤシステムをルルーシュとスザクがデータ入力に19秒、プログラム実行にコンマ04で成功させた奇跡。あれがこちらでも成功するとは限らない。

 

「租界中央部が壊滅、、ナナリーは何とか助かったが今回はどうなるか分からない。オマケに今のランスロットにフレイヤが搭載されてるかどうかすら不明だ。下手に近づけば蒸発は必須。もしフレイヤの一撃を耐えられるとすれば、、アレしかないか」

 

戦略級核兵器にまで匹敵しているフレイヤだがランスロットに試験搭載として装備されたフレイヤはリミッターがかかっており直径十キロ以内が爆発の範囲。いわゆる戦術核兵器だ。あくまでも脅しでありリミッターがある時点では敵を完全に捻りつぶす事は考えられていない。少なくとも東京租界のど真ん中で戦略級核兵器、、つまりリミッター無しのフレイヤなど放てば発射した機体はもちろん、敵味方関係なく葬り去る事になり内戦どころではない。このようにフレイヤを未然に防ぐ方法はアンチフレイヤシステムが開発されるまでないが機体保護ができない事はない。戦術級ならば片腕を代償に守る強固なシールドが存在する。サイサリスに装備されたガンダムに存在する唯一の超冷却ラジエーターを導入した大型ラジエーター・シールド。

 

「あのシールドがあればギルフォードを守る事ができるはずだ。だがエクストリームの推力にそんな余裕があるかどうか、、」

 

「キシさん?」

 

「いや、そもそもラジエーターシールドを運ぶことすら出来ない可能性もある。なんなら幻月Xで輸送するか?」

 

「おーい?」

 

「待てよ?幻月Xの絶対領域、、無理だな。と、なると残る方法は一つか。サイサリスを作成してもらうしかない」

 

「キシさん?先程から貴方の愛妻が凄い睨んでくるのでなんとかして下さいな」

 

ユフィがとやかく言うので文句を言おうとした瞬間後ろからナナリーに殴られて気絶したキシ。そのまま彼女に引きずられ操縦室から出て行った。取り残されたユフィは暇になったので一人モニターに向かって将棋を始めた。食堂ではオーキスは食事をとりながら計画書を見つめE.Eに作成してもらう機体やシュナイゼルの提示してきた依頼を確認。ついでにキシにこれからの助言を頼む事にして書類を机に置いた。E.Eは相変わらず常人とは思えない程の量を食べている。HI-νの部品にピークォードの消耗品などを連続で生成しているので疲労も相当溜まっている筈だ。

 

「E.E。今日含めて四日休暇を渡す。部品の生成は暫く休んでいいぞ」

 

「え?マジ?よっしゃァァ!」

 

そう言うと更に食べるE.E。だがいつもより空元気を出しているような感じだ。食器洗浄機に入れて片付けたオーキスは操縦室に戻りキシは探しに来たが何故かいない。各機体が格納庫から発進した様子はないのでどこかで休んでいるのは間違いない。格納庫に一応向かったがいたのは朝の訓練を終えたナオトやユウ達しかいない。ベイリンは戦術予報士として別の部屋でシンフォニー本拠地とのテレビ会議をしているのでいなくてもおかしくない。タキセは近くで弁当を食べてゆっくりとしている。だがやはりキシはいない。

 

「どこいったんだ?あいつ・・」

 

「ホントねぇ」

 

「クレア⁈脅かさないでくれ・・・」

 

「んー?最近構ってくれないから私から行こうかなぁって」

 

「で?どうしたんだ?」

 

「足むくんじゃって。揉んでくれる?あと運んで。だ・ん・な・さ・ま?」

 

「はいはい。それじゃウチの可愛い嫁さんを連れていきますか」

 

オーキスは本来の目的を達成する前にクレアを個室に運び足のマッサージをした。操縦室ではモニターを見つめて肘をつくE.E。そこに来たのはナヴィス。

 

「おいE.E。何してるんだ?オーキスから業務連絡が来てお前を休ませるよう頼まれた。個室で寝てきたらどうだ?」

 

「ん〜・・そだね」

 

そのまま沈黙が続く操縦室。ナヴィスは隣の座席に座り紅茶を渡した。気づいたE.Eは紅茶を受け取りゆっくりと飲んでいく。暫く何も話さない二人だったがE.Eが話し始めた。

 

「ねぇナヴィス。多分君のお父さんから聞いた事があると思うんだけどさ、、なんでお父さんがギアスをなくしたか知ってる?」

 

「あー、、誰かとの契約を強制的に切ったとか」

 

「実は違うの。アレは契約を切った訳じゃなくてそういうギアス。自分のギアスとその目を犠牲に人を生かす能力。その力は、、私に行使された」

 

「は?」

 

「君のお父さんに生かされた罪深き契約執行者。それが私なんだよ」

 

一瞬ナヴィスは声が出なくなった。不老不死の呪いを持つ女が自分の親によりなんらかの理由で助けられ親の目とギアスを犠牲に生きた人間。普通はありえない。だがギアス自体が常軌を逸している能力。何も言えない。

 

「昔皇帝の懐まで潜入した私だけどヘマしちゃってね。死にかけた時ナヴィスのお父さんに助けられたんだ。今まで黙っててごめん」

 

「ちょっと理解が足りてないかもしれないが、、取り敢えず言える事は無理はしないでほしい。親父に救われた命なら尚更だ。アレはオーキスの親父と同様に家族を守る為に家族を置いていった。それでも俺達がこうしてアーカーシャの剣を破壊する行動に移せるのは親父達とタキセ、E.Eだ。過去が無ければ今はない。艦長命令だ。頼むから今すぐ休め。過去は振り返れても変えられない。今出来るのは未来を変える事だ。以上」

 

ナヴィスは上着をE.Eの頭の上に置いてオーキスを探しにいった。彼女は上着の中で大量の涙を流しそこで泣き続けた。操縦室に入ろうとしたナオト達は廊下を引き返して各々の個室へと帰り休憩に入る。数十分泣いたE.Eはナヴィスの上着を羽織って涙の跡を消し個室に入って寝た。二時間ほど経った頃、演奏室のカメラをオンにしていたE.Eの部屋に大きな音がなり始めた。それは徐々に楽器が増えて更に大きくなっていく。そしてオーキスの大声がスピーカーから大音量で流れた。

 

『dynamite explosion!』

 

『イェェェアァァァ!』

 

キシの大声もでてきたせいで完全に眠気が吹っ飛んでしまったE.E。ちょっとイラつきながら音量を下げて演奏室の映像を見るとそこには少しお腹が膨れたクレアも電子ドラムを使って演奏している。そしてシンフォニー三兄妹。誰もが昔の事など忘れたかの様に歌っている。実はキシ自身過去の事をあまり話したがらない。彼の過去を知るものはこの世界にはいない。それでも歌い楽しむ。

 

「過去は引きずるものではない、、か。師匠は医者だったから患者が死ぬ度に言ってたなぁ」

 

『それでは陰気で現在伏せている根暗女E.Eちゃんにプレゼントがあります!』

 

「キシは見かけたら死刑決定」

 

『シンフォニーの科学力と追跡力、更に各国の大使館の力を結集しぃぃ!手に入れたのはグラハム・リード、、おっと失礼!本名グラハム・シンフォニーの肉声とE.Eちゃんに向けられた遺言をここで公開致します!』

 

「へ?シンフォニー、、?はあああ⁈」

 

E.Eが驚くのも無理はない。不老不死で暇だった彼女は医術を知るべく半ば強行的に弟子入りした訳だがグラハム・リードと名乗っていた師匠がシンフォニーであったのだから。そもそもオーキスを気まぐれで助けた訳だがここまで繋がっていると逆に怖くなってくる。ナヴィスの父親もシンフォニーとは名乗っていなくナヴィスを見つけたのは腐れ縁で頼まれたから。彼女はオーキスを除き何の他意もなく他人を助けてきた。それが今ここで全て繋がった。もはやただの偶然ではない。

 

『読むから耳をかっぽじってよく聞けよ!原本と肉声デジタルデータはE.Eに渡しておくけどな!』

 

オーキスはE.Eに向けられた遺言をゆっくりと読み始めた。

 

【E.E。この手紙を書いている時、俺は肺癌でやばくなっている。時間がないから簡潔に示す。医師たるもの、患者を全力で助けろ。 手段がなかったら新しい手段を探れ。もしそれでもなかったら最後まで患者を看取る事。そして患者を絶対に助けるという思いと悲しむ心を忘れるな。その思いと心を忘れた時、お前は医師失格だ。息子のロッドにも伝えておくが次にお前がシンフォニーの家に来る時は茶菓子位は出してやる。最後に、、お前の不老不死を俺にもくれたら良かった。あと冷蔵庫のロールケーキ食っただろ。絶対に許さん。未来永劫呪ってやる。じゃあな。元気で。グラハム・シンフォニーより】

 

『と、いう訳だ。ちなみにロッドってのは俺の祖父にあたる人だな。初めてシンフォニー傭兵師団を立ち上げた人。顔は見た事がないがな』

 

続く!

 

 


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