コードギアス反逆のルルーシュ Children in succession to will 作:ラムネ便
数々のデマが存在する情報戦では真実を見極める事が重要な事である。マリアンヌ皇妃暗殺事件にはあまりにも大量の説がある。有力過ぎる説もあるがどれも説得性に欠ける。
「どれを見ても納得は出来ませんね。特に、、貴方の計画に関しては」
『情報については仕方ない事だよ。それより私の示した計画になんの無理があるというのだね?』
「貴方は自分の命が惜しくないんですか⁈」
シュナイゼルが示した計画は予想であるが、これから先にルルーシュが何らかの方法により皇帝を亡きものにした後、自分に戦いを仕掛けてくるというもの。恐らくシュナイゼルとルルーシュを消し邪魔物を排除すべく皇帝が持つ直属の親衛隊が動き出し皆殺しにする。ここを狙うというのだ。ダモクレスのデータは渡されたがシュナイゼル自身はハリボテを使うつもりだ。そしてシンフォニーに供与された新型KMFで親衛隊を迎え撃つ。しかし一機で相手出来るかどうか分からない。
『命とは安いものだよ。特に私のはね』
「なら最初からルルーシュと共闘すれば、、!」
『もし私とルルーシュとシンフォニーが組んだところで発見される。分かるかね』
「敵を騙すには味方から、、とでも?」
『その通りだ。では。よろしく頼んだよ』
通信はそれで終わった。依頼されたからには受けるのが商いだがこれに関してはキシに聞かなければならない。運命を知る彼なら何かが分かるかもしれない。オーキスはキシに連絡をかけて操縦室に来るよう招集した。数分後キシは歩きながら来た。
「キシ、、この依頼を受けるか教えて貰いたい。シュナイゼルだからこその計画らしい。助言が欲しいんだが」
「ん、、ちょっと見せてくれぃ」
六枚ほどに纏められた計画書を見ていくキシ。だがその顔はページ数を増やすごとに険しくなっていった。
「悪いが、、助言は無理だ。俺が辿った運命とはまるで違う。それにまさかシュナイゼルがルルーシュと組んで皇帝の親衛隊を迎え撃つなんてな、、。俺はシュナイゼルとルルーシュが戦った時、双方共に甚大な被害を出して戦闘を強制的に終了させたんだが」
「物騒なやり方だな」
「あん時はその位やらんと終わらなかったからな」
ルルーシュにしろシュナイゼルにしろ共通する点はただ一つ。”自らの命を捧げて人民を導く”という事だ。キシの世界ではシュナイゼルはよく分からない人物らしいがこちらではどちらも自分を軽視しすぎている。だがそんなことは許されない。二人共最後まで残しマリアンヌ皇妃暗殺事件の真相を教えなければならない。
「二人共死なせない。いや。死なせるかよ」
「そうだ。あの馬鹿兄弟二人を止めるぞ。それと忘れてた事がある。ジェレミア卿って知ってるか?」
「ああ。そいつがどうした?」
「シンフォニーの情報部門で知ったんだがな。ナリタ連山での作戦覚えてるか?俺の世界ではカレンが輻射波動をぶち込んで死にかけた訳だ。だがどうやらその運命からジェレミアは逃げきれないみたいだ。俺達が知らない間に輻射波動を市街戦で紅蓮にぶち込まれてた。ここで重要になってくるんだ。ジェレミアは義体化してルルーシュの元に行くんだが彼の身体はサクラダイトを使っていた。ゲフィオンディスターバーで壊れなきゃいいんだが、、」
「分かった。取り敢えず今日は遅い。寝よう」
スカアハは海中に沈んでいく。深海八百で固定してシンフォニーはそこで夜を明かした。ルルーシュは昼になりスザク、シャーリーと共にデパートで買い物をしていた。何ら変化がないように見えるがシャーリーは解けかけていくルルーシュのギアスで何が本当で何が嘘なのか、、だんだん分からなくなっていた。
「何なの、、ルルーシュもスザクもナナちゃんも、、誰が本当なの?誰が嘘なの⁈」
シャーリーはいつの間にか二人から逃げるように屋上の端に歩いていく。彼女には恋人であるルルーシュでさえ仮面をした人物にしか見えない。スザクにも同様だ。
「シャーリー⁈」
「いや!来ないで!」
「落ち着け!シャーリー!」
ルルーシュが落ちそうになるシャーリーを引っ張り助けたが逆にルルーシュが落ちそうになってしまった。
「!ルルーシュ!」
スザクが間一髪で手を掴み取り助かったルルーシュ。スザクとしてはルルーシュが死んで貰っては色々と困る。
「ははは、、死ぬっていうのはこういう事だな」
「洒落にならないよルルーシュ、、」
「ご、ごめんルル。私どうかしてて、、」
「最近疲れたのか?そろそろ帰ろうか」
笑いながら帰ろうとするルルーシュ。しかし途中で連絡が来た。ヴィレッタから咲世子が倒され治療中だという事と更にあのジェレミアが復活してルルーシュを殺しにかかっているという情報がきた。ルルーシュは急いでシンフォニーに連絡を取った。
『はい。こちらシンフォニー。クレア司令補佐』
「シンフォニー!急いで渋谷まで来い!緊急だ!」
『了解しました。急いで向かいます』
クレアは連絡を切ると格納庫に向かった。しかしそこには通信を聞いたE.Eがナイト・オブ・ミラージュのコックピットに乗り待っていた。
「E.Eさん、、」
「行くんでしょ?早く!」
「ありがとう!」
スカアハが急速に海上に浮かぶ。カタパルトデッキが展開されてE.Eとクレアの搭乗したナイト・オブ・ミラージュがカタパルトから発進。急いで渋谷まで向かった。ルルーシュはジェレミアを鉄道ホームにまで誘導。シャーリーはスザクから離れて銃を持ちルルーシュを探す。
「ルル、、どこにいるの?」
ミラージュがルルーシュの位置を逆探してショッピングモールの大きな屋上に置いてクレアはE.Eとルルーシュを探しに行った。停止したエスカレーターを降りるとそこには銃を持った少女がいた。
「貴方がシャーリー?銃を降ろして。私は敵じゃないわ」
「ルルから何か言われたの?私を隔離するため?」
「いい?落ち着いて銃を地面に置いて」
「貴方は、、ルルの味方?敵?」
シャーリーは銃口を向けたまま微動だにしない。トリガーに手をかけてクレアに撃つ準備は整った。
「クレア。離れて。ここは私が」
「E.Eちゃんが離れていて。私が何とかする」
クレアは隊服の裏に隠していた大量のシリンダーを出すと注射針を装着。投げる準備をした。
「見てなさい。赤ちゃん、、レックス。これがお母さんの力よ」
シャーリーが銃を撃つ。弾丸はクレアの真横を通り過ぎシリンダーはシャーリーの腹部に刺さる。クレアは素早い動きでシャーリーの懐に入り込み銃を落としてシリンダーの薬品を撃ち込んだ。
「大丈夫よ。中身は鎮静剤。死にはしないわ」
E.Eにシャーリーを任せてクレアはルルーシュの位置情報をもとに鉄道ホームへ駆けこむとそこにはゲフィオンディスターバーで動けないジェレミアとルルーシュがいた。
「なぜ、、何故貴様はゼロとして君臨し実の父親である皇帝に刃を向ける⁈」
「俺がルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだからだ!」
倒れこむジェレミア。血のオイルを流しながらジェレミアは語り始めた。
「やはり、、そういう事でしたか、、。分かります、、私はあそこにいました」
「まさか!」
「はい、、初任務でした、、。敬愛するマリアンヌ皇妃の護衛、、しかし私は体を張る事すら出来なかった!忠義を果たせなかったのです!」
「お前は俺を殺しに来た訳ではない⁈」
「私の主人はV.Vではない、、私の主人はただ一人、、マリアンヌ様、、」
「ジェレミア!」
ゲフィオンディスターバーを解除してジェレミアに駆け寄るルルーシュ。その時ギアスキャンセラーが失われると同時にV.Vの呪縛から解き放たれた。
「殿、、下」
「ジェレミア・ゴットバルト。貴殿の忠義はまだ終わっていない筈だな?」
「yes...your majesty!」
しかしジェレミアの身体はゲフィオンディスターバーのせいで完全に稼働出来るかと言えばせいぜい走るのが限界だ。クレアはジェレミアに駆け寄り端末を接続した。
「私はクレア・シンフォニー。助けに来たわ」
「ああ、、助かった。ジェレミアはどうだ?」
「ゲフィオンディスターバーで義体にガタが来てるわ。後少しだけ発動状態で稼働していたらジェレミアの電脳ごと吹き飛んでいたところよ」
「何故わかる?」
「この人間を義体化する術式は私がプロトタイプを開発したのよ。開発者が分からないなんて情けないわ」
端末で調べた結果クレアが開発したプロトタイプを少し改良しただけみたいだ。その分痛覚などの神経系統はサクラダイトに依存しているので血液は専用のオイルでなければいけない。しかもサクラダイトのエネルギーが不安定過ぎる。クレアはジェレミアを立たせるとミラージュのいる方向に向かわせた。
「ルルーシュさん。ジェレミアさんはかなり重症よ。ウチで治すから後はやれるわね?」
「ああ。ありがとう」
ジェレミアはクレアに担がれながらミラージュに向かった。E.Eは動けないシャーリーを病院に送りミラージュに戻る。ジェレミアがいるので少々狭いが問題なくスカアハに帰還した。
「さあ、、やっとついた」
『聞こえるかね?クレア?』
「あ、あなた、、」
『今回は俺が悪い。怒らないから早く来な』
ミラージュが格納庫に入りジェレミアはE.Eに連れられて医務室へ。クレアはオーキスのもとに行って抱き締められた。その結果顔が真っ赤になり挙句にはキスまでされて倒れた。オンシジュームが支えていたので問題はなかったが彼女がいなければジェレミアを治療出来ない。急いで正気に戻すとジェレミアのいる医務室に向かった。
「サクラダイトを使用している状態だから義体に下手に触れない。でもサクラダイトを抜いたらジェレミアさんの電脳に後遺症を残す可能性がある。どうするか迷いどころね」
「スカアハの動力源から取れば?ただでさえ核融合炉と大型GNドライヴ二機積んでるんだからスカアハのエネルギーに影響はないと思うけど」
「そうねぇ、、どうかしら?あなた?」
『エネルギー消費は移動にしか使われていない。三割程度なら大丈夫だろう。なあ?タキセ整備長?』
『問題はありません。ですがエネルギーチューブは積んでいないかと』
「それは、、ジェレミアさんの体内に埋め込まれているは、、ずっ!」
ジェレミアの体内からエネルギーチューブが出されてスカアハの動力源に直結された医務室の電源に繋ぐ。ジェレミアは義体用の麻酔で寝ているので早めにすませる必要がある。サクラダイトの塊を抜き出して後は義体を変える。ただクレアが開発した新たな義体は本拠地にあり輸送機で運んでもらうには時間がかかる。
「どうすれば、、」
「ねえクレア。その義体ってどんなの?」
「私が新しく開発した義体はアメリカの大学で開発されたものを実用可能にまで仕上げたCNT筋繊維。それと眼を失った人の為に開発した人工マルチ義眼。筋繊維と接続すれば大量に流れてくる情報を瞬時に処理できるわ。ただ後は動力源よね。サクラダイトはゲフィオンディスターバーでエネルギーが封じられてしまうから、、燃料電池かGNのどちらかね」
「ま、まるで雷電、、」
「とにかく筋繊維が届かない事には始まらないわ。仕方ないから新しいサクラダイトを埋め込んで今は応急処置を施すしかないわね」
「まったクレア!CNT筋繊維の量は?」
「んー、、ジェレミアさんの型に合わせなきゃいけないから正確な数字は分からないわね。あ!でも私の術式がそのまま使われてるのなら外れるかも!」
そういったクレアはジェレミアの右腕部と左脚部を丸ごと外してしまった。整備をしなければならない身体なのですぐに外せるようになっており以外とシンプルな構造だ。どこぞのドイツ人と違いジェレミアは整備を必要とする義体なのだ。
「この量を二つずつ。それと胴体に燃料電池ね」
「了解!ちょっと待っててね、、」
ジェレミアの腕と似たような少し金属光沢を持つ腕と脚を生成していくE.E。その間にクレアはジェレミアの体内金属部品を取り外した。電脳は問題ないので変える必要はない。
「後は義眼だよね。ライジングと同じ物なら代用出来る」
「さ、、ジェレミアさん。生まれ変わる準備は終わりましたよ。あとはやるだけ」
義眼と生体部品を生成したE.Eは部品をクレアに渡して慣れた手つきでクレアはジェレミアに部品を組み込んでいく。基本胴体は金属だけなので骨となるフレームにはチタン・セラミック製の強化フレームを導入してある。基本的に食べる事も出来るが排泄される事はない。心臓部に燃料電池を設置してそれらを全てのCNT筋繊維と電脳に接続。脊髄の神経はそのまま流用。E.Eのオマケでクレアには知らされずにナノペーストによる自己修復機能を追加。三十分程度で全ての修理が完了してエネルギーチューブをコネクターから取り外すとジェレミアが再起動した。
「ジェレミアさん?分かりますか?義眼も駄目になりかけていたので義眼と身体全体を変えました」
ジェレミアの義眼にあらゆるデータ情報が出されるが意識的に消せるので問題はない。ジェレミアは立ち上がると自分の身体を鏡で見た。
「とても動きやすいですね。あの義体のような不安定な身体ではない、、筋繊維タイプですか」
「ご名答。ですが貴方の腕に付けられていた剣は使えないです。代わりにコレを」
ジェレミアがE.Eに手渡されたのは使っていた両刃タイプの剣ではなく御約束の高周波ブレードだ。赤く変色はしないが殆どはこれで切り裂く事が可能でもちろんゲーム通りに燃料を吸収出来る。ただ少しだけ違うのはジェレミアの手だ。そこだけが何故か特殊加工されており超高熱に耐えうる金属になっている。特別目立つほどゴツゴツしているわけでもないので武器を確認したジェレミアはスカアハからオーキスにヘリを飛ばしてもらいブリタニアへと戻っていった。ヘリが飛んで行く時にE.Eはちょっとだけ笑った。
「ジェレミア君!頑張りたまえ!君の手で敵を倒しヒート・エンドに持ち込むんだよー!」
そう叫んでE.Eは艦内に戻った。
続く!
ジェレミア・ゴットバルト(シンフォニー仕様)
クレアのプロトタイプの術式から新タイプの術式により壁走りや斬撃モードが追加されその他諸々の性能が飛躍的に上昇した。義眼が変更されてギアス・キャンセラーが使えなくなった代わりにレーダーモードやサーモグラフィーが使用出来る。プロトタイプよりも滑らかな動きになり動力源や義体がサクラダイトから解放された為、ゲフィオンディスターバーの影響を受けなくなった。ちなみに両手からはゴット・フィンガーが撃てる(⁈)