初戦はあの名投手のいるそよ風高校。
果たして勝敗は?
俺らは今球場にいる。今日はパワフル高校の初戦だ。さすがの先輩達もいつも以上に顔が引き締まっている。
大波「レギュラー陣集合。今日はいよいよ待ちに待った夏の大会だ。一つでも負けたら3年は即終了だ。気を引き締めていけよ。いいな。」
レギュラー陣『はい‼︎!』
大波「レギュラーになれならかったやつもしっかり応援頼むぞ。まだ時間があるからそれまでレギュラー陣は各自でアップしとけ。それ以外はスタンドで他校の試合を観戦すること。以上解散。」
矢部「亮君おいら達も行こうでやんす。」
亮「そうだね。行こうか。」
スタンドに行こうとした時だった。
石原「杉村。少し待ってくれ。」
矢部「亮君、おいら先に行ってるでやんす。」
杉村「わかった。」
そして俺は先輩のところにいった。
杉村「先輩なんですか?」
石原「杉村。キャッチボールの相手をしてくれないか?」
杉村「えっ‼︎俺なんとかでいいんですか?」
石原「あぁ。お前と1度してみたかったんだよ。だから頼む。」
杉村「わかりました。ちょっと待ってください。グローブを持ってくるんで。」
俺はスタンドに置いてある荷物を取りにいった。
矢部君はもう席についていた。
矢部「石原キャプテンの用事ってなんだったんでやんすか?」
杉村「キャッチボールの相手をしてほしいらしいんだよ。」
矢部「なんで亮君なんでやんすか?」
杉村「俺だって知らないよ。でも頼まれたから俺行くね。」
俺は先輩のところにグローブを持って戻って来た。
石原「よしやろうか。」
杉村「はい。」
俺と石原キャプテンは黙々キャッチボールをした。
しかし途中で石原キャプテンが口を開いた。
石原「杉村。お前は甲子園に行きたいか?」
杉村「それは行きたいです。自分の力で猪狩を倒して行きたいです。」
石原(やっぱりこいつだな。)「杉村。もういいよ。ありがとう。そろそろ球場入りするから。しっかり応援頼むぞ。」
杉村「はい。先輩頑張ってくださいよ。」
石原キャプテンは笑って返事をくれた。
俺は先輩達の準備を手伝ってからスタンドにいった。
本来ならベンチの準備をするのはレギュラーになれなかった2年だけなのだが近くに俺もいたので手伝った。
スタンドに戻るとスタンドはパワフル高校の生徒でたくさんになっていた。
矢部「亮君どうしたでやんすか?遅かったでやんすね。」
杉村「ベンチの準備も手伝ったからね。にしてもすごい人の量だね。」
矢部「そりゃ今日は休みだからでやんすよ。先輩達に勝ってほしいでやんすね。」
杉村「そうだね。あっもうすぐ試合が始まるね。立とうか」
俺らは両軍の選手がベンチ前に出てきたのがわかったため立ち上がった。そして両軍の選手がホームベースの前に走って整列をした。
我が校パワフル高校は後攻だった。
相手のそよ風高校はそこまで強い高校というわけでもないが変な投手がいるらしくその投手のおかけで秋大はなんとベスト16までいったそうだ。
エースの金沢さんは初回を見事に3人で抑えた。そして1回の裏相手の投手が出てきた。相手の投手の名前は阿畑やすしらしい。見た目は普通の高校生。変な投手にはあんまり見えなかったがすぐに変な理由がわかった。
それは投球練習が終わったあとだった。
阿畑「ほな、バックの皆さんよろしゅう頼みまっせ」
なんとバリバリの関西弁だったのだ。しかし彼が変な投手と言われてる理由は彼の決め球のことなのだ。
1番、2番を打たせてかるくツーアウトをとった。続く3番の尾崎先輩の時になんと彼は山なりのボールを投げた。しかし尾崎先輩はその山なりのボールにかすりもしなかった。
矢部「あれはナックルでやんす。」
杉村「ナックルってあの揺れながら落ちる変化球のだよね。」
矢部「そうでやんす。しかもあれだけの落差はプロでもいないでやんすよ。」
そう、阿畑は日本屈指のナックルボーラーだのだ。しかも普通のナックルより落差があるためこれをアバタボール10号というらしい。
パワフル高校はこのアバタボールを攻略することができなかった。
対するそよ風高校もエースの金沢さんから三塁ベースすら踏ませてもらえないピッチングをされて回は八回まで進んだ。
そして最終回。エースの金沢はスタミナが限界に近づきながらもこの回先頭の7番を三振をとった。そして8番バッターもフルカウントからにしたものも内野フライに打ちとった。しかし9番バッターにライト前ヒットをあび、さらに1番バッターの時にワイルドピッチでランナーを得点圏に進めてしまった。
だが、金沢さんはここも冷静なピッチングをして1番バッターもキャッチャーフライに打ち取った。
そして9回裏、ランナーが一人でも帰ってきたらサヨナラ勝ちというとこまできたが1番から始まるこの回も阿畑のオリジナル変化球であるアバタボールを打つことができずに1番、2番ともに凡退をした。
ここで3番の尾崎先輩だ。尾崎先輩は今日ノーヒットながらも四球を1つ選んでいる。
しかし阿畑は四球を恐れずにアバタボールを連投してきた。しかし尾崎先輩も粘ってフルカウントまでにしたが最後はアバタボールではなく138キロのインハイのストレートだった。尾崎先輩は完全に振り遅れて三振となった。
そして延長戦に突入。
10回の表。相手の攻撃は2番からだった。この2番を四球で出すと3番に送りバントを決められて、ワンアウトニ塁のピンチを迎えた。ここで相手の4番田中を迎えた。この田中は今日3安打猛打賞と1番怖いバッターを迎えた。ここは1点勝負のためにもちろん田中は敬遠をした。ワンアウト一二塁で今日ノーヒットの5番。
しかし初球に汗でボールがスベりデッドボールでワンアウトフルベースにしてしまった。バッターは6番の阿畑。
パワフル高校はここで伝令を向かわせた。一つのミスで大量点につながるピンチをどう抑えるかについてだろうと思う。
そして最後にマウンドで『パワ高勝つぞ』という掛け声を石原キャプテンが声をかけて内野に集まっていた内野陣が各ボジションにちらばった。
エースの金沢さんは最後の最後まで味方の援護を信じて投げた。しかしツーストライクワンボールからの4球目だった。阿畑はインコースのボール球を打った。打球は完全にどん詰まりのボテボテのサードゴロだった。サードは素早く打球を処理してホームに送球をした。しかし、送球したボールはなんとキャッチャーの石原キャプテンの横を抜けてしまった。悪送球だったのだ。この悪送球で三塁ランナーだけではなく二塁ランナーまでが生還した。
この後、なんとか後続を打ち取った。
10回裏は4番からの好打順だった。阿畑もさすがに疲れが見えていた。アバタボールの落差がなくなってきたのだ。これを見逃さずに4番、5番が連続ヒットでノーアウト一二塁のチャンスを作ったものも6番、7番と後続が続かずにツーアウト。そして8番の石原キャプテンの打順。今日は1安打を放っている。
ここでアウトなら先輩たちの夏は終わりだ。
杉村「キャプテンかっとばせー」
矢部「そうでやんす。ここからでやんす。」
俺らは精一杯応援をした。
そしてツーストライクと追い込まれた時だった。阿畑が投じた球はアバタボールだったが変化しなかった。これを石原キャプテンは見逃さずに振り抜いた。打球は外野の間を抜けていった。
二塁ランナーは悠々とホームイン。そして一塁ランナーもホームをめがけて三塁をけった。しかしボールは中継のショートに返ってきていた。ショートはホームにすかさず返球する。ランナーは回り込んでスライディングをしてきた。相手のキャッチャーもしっかりショートから返球されたボールを捕球して回り込んできたランナーにタッチした。判定は…
アウトなら先輩の夏は終わり。セーフならまだチャンスが続く。
あと、今までは打球などの表現があやふやだったが秋の大会からは全試合に効果音を表現します。
今日試合に登場した主なメンバーの選手能力は次回に持ち越しです。
誠にすみません。