不良八幡の学校生活   作:雨雪 東吾

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夏の球技大会 14

 さて、格好良い啖呵を心の中で切ったはいいものの・・・何これすごく強い。雪ノ下は確かに強力なスパイクを放てるが、それは女子のなかではという注釈が入る。

 

 現在相対している奴との違う点を述べるとすれば、それは威力と制度。雪ノ下に比べ、彼は身長と筋力に任せ雑に狙ってくるようだ。それ故、コース外に出ることもしばしばあるが、一度ジャストミートすれば、素人の俺は弾くのが精一杯。上手く戸塚に返せず、セッター役である彼の負担が増加してしまう。それ即ち俺がスパイクを打ちづらくなるということだ。

 

 だが一先ずの目論見通り、挑発には乗ってくれたみたいだ。さっきから俺目掛けてバンバン強烈なスパイク打ってくることが証明している。

 

「・・・つっ!」

 

朱に染まった両腕に鈍い痛みがじんわりと広がる。俺ばかりが受け続けているわけだから、当たり前と言えば当たり前だが。

 

現状こちらはトス役の戸塚、レシーブ兼アタック役の俺。相手もトス役の経験者っぽいヤツとの二人体制だ。サーブは勿論交代するが、他の奴らはそれしかやらない、それしかできない。ただボールの移動を見ているだけだ。かといって俺がまともにやり合えてるという訳では決してない。段々と練習量の差が出てきているのか点差が開き始めた。

 

 勿論こんなことが球技大会で罷り通るのも1セットが限度だろう。次のセットは楽しくやってもらおう。ある程度のやりづらさ仕方ないが、こちらも望んでやっているわけでもないので許して欲しい。

 

戸塚にも無理を言って手伝ってもらっているからな。彼は、自分の実力が上がったから嬉しいと言っていたが、果たして・・・人を疑う悪い癖が出た。別にどうでもいいだろうに。

 

 というかそろそろ炎天下と激しい運動の連続で体力の限界を感じる。汗だってダラダラだ。雪ノ下の言うとおり、本当に干からびそう。一刻も早く試合を終了させ、日陰で休みたい。水筒空になっちまうかもな。テニスの後にも大分飲んだし、そもそも何もせずとものどは渇く。今だって大分・・・

 

「うおっ!?」

 

 ・・・みっともない。肩で息をして、フラフラになって、おまけにこけやがった。

 

「大丈夫!? 比企谷君!?」

 

「ああ・・・」

 

 こりゃまた笑いのタネにでもされそうだな、全く。

 

 今のでお相手マッチポイント。こちらがこのセットとるには連続5ポイントか・・・まず無理だな。しかもサーブは・・・例のヤツだ。参った、降参だよ。

 

 これで留めと言わんばかりに高く放り上げられたボール目掛け、最高のタイミングでジャンプサーブを決める。

 

 終わった、俺たちの夏は。なんて高校球児じみた事を考えながら、空を仰いだ。

 

 でも・・・俺の目的は勝つことじゃあないんだよな。

 




この間一話一話が短すぎるのではないかというご指摘を受けましたが、モチベ低下の著しい現状、今のやり方を変える予定はありません。

ご了承ください。

回転率はあげたい。

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