不良八幡の学校生活   作:雨雪 東吾

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今日初めて誤字機能について理解する。
今まで修正してくれた方、ありがとうございました。そしてこれからもお願いします()


夏の球技大会 10

 暑い暑い暑い!

 

 本当に干からびる。比喩じゃなくてマジで。雪ノ下の言うことはいつだって正しかったじゃないか。だから俺は太陽に焼かれて死ぬ運命なのだろう。犯人は・・・ヤ、ス・・・かゆ うま。

 

 冗談はさておき、俺の出番はまだ先だ。俺は日陰者らしく、太陽を避けながらぼーっとしているとしよう。クーラーのついている教室を開放してくれるのが最善だが、それは望めないだろう。だからお天道様、この際日を遮ってくれるだけでも・・・。

 

「ししょおおおおおおお!」

 

 オーイェイェイェイェふざけんなこんなのありかよ。ただでさえ暑いってのに、お天道様ときたらこんな暑苦しい野郎よこしやがった。ピザのトッピングにカナディアンベーコン頼んだらジャーマンソーセージ乗っけてきたようなもんさ。詐欺だよ詐欺!

 

「もう嫌だ! 我はこんな祭事は早急に廃止すべきだと思いまする!」

 

「落ち着け。そして俺に近づくな」

 

 こんな呼び方をするのは材木座しかいない。相変わらずテニスでは一緒だが、こんなところでも一緒に行動するのは御免被りたい。

 

「お前のクラスのやつらはあそこに居るぞ。ほら、仲良くなるチャンスだ。あいつらもこっちを見ている」

 

「ま、真か!?」

 

 実際は俺と材木座の絡みが物珍しくて眺めているだけだろうが。一対一だと間違いなく俺を見ることはないが、集団だと怖いもんなしだからな、人間って。

 

「では行ってくる。朗報を待たれよ」

 

「ああ、健闘を祈る」

 

 さて、泣きつかれないうちにこの場を離れるとしよう。人気の無い場所はどこだろうか。

 

 渡り歩くこと数分、やっとこさ誰もおらず、日陰のできている場所についた。自転車置き場だ。リア充どもはクラスの仲間()の応援だろうし、間違ってもこんなところには来ないだろう。

 

 しかし離れてみると静かなもんだなあ。ここならゆっくりできそうだ。歩くだけであせびっしょりだし、タオルタオル・・・。

 

「ヒッキー」

 

「・・・お前、さっきから後つけてきてたけど、暇なの? 実は友達いないんじゃねえのか?」

 

「ち、違うし! たまたまだし!」

 

「何でもいいが、一人にしてくれ。お前もクラスの応援してこいよ」

 

「うん、すぐ戻るよ。あたし、ヒッキーの目を見に来ただけだし」

 

「・・・は?」

 

 目を見に来た? こいつは何言ってんだ。

 

「ヒッキーさ、最初会った時は睨んできて、すっごい怖かったけど、やっぱり優しいよね」

 

「それはお前の考え方次第だろ」

 

「そうかな? 私はヒッキーに助けられてるし、他にもそういう子は居ると思うけど」

 

 人の気なんかわからない俺にそんなことそうそうできるわけ・・・。

 

「やっぱり、そっちの方がいいよ」

 

「何がだ。主語を言え主語を」

 

「目。暗いし、どろっとしてるし、腐ってるかもしれないけど、睨んでるよりずっといいよ」

 

 酷い言われようだ。小町と同じ事を言ってきやがる。でもそれはおかしくないか?

 

「鋭い目つきはくら~いヒッキーには似合わないよって言いたかっただけ。じゃあ、あたしはクラスの応援に行ってくるから! またね!」

 

 嵐のように大きな爪痕を残しながら由比ヶ浜は去って行った。それは俺の根底を覆すような・・・。

 

「酷い面だな。さっきの女にでも振られたのか?」

 

 告白もせずに振られた経験は大いにあるが、それだったらどんなによかったか。

 

「まあいい。ちょっと用があるから付き合えよ」

 

 くいっとあごを敷地外テニスコートを指し示した彼は、ニヤリと口角を上げた。

 

「神庭・・・」

 

 ちょうどいい。今は何も考えたくない。テニスだろうが何だろうが付き合ってやろう。

 


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