不良八幡の学校生活   作:雨雪 東吾

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夏の球技大会 2

「佐伯」

 

 運よく一人の時に、わざわざ人目のつかないところにて声をかける。別に俺とて話しかけることができないわけじゃない。話しかける理由がないからそうしないだけだ。

 

「な、なんでしょう」

 

 じりじりと後退すんなよ。俺がいじめてるみたいじゃないか。

 

「昨日の依頼について何だが、最終的には先輩の勧誘をなくせばいいってことだよな?」

 

「そういうわけじゃないんですが・・・」

 

 ん? どういう意味だ。

 

「次移動教室何で行っちゃいますね!」

 

 ・・・そりゃ逃げるわな。俺でも逃げるわこんな見た目の奴。仕方ねえが由比ヶ浜経由で話を聞いてもらおう。あまりしたくはないが。ただ、奉仕部として受けた依頼だから最善は尽くさなきゃな。

 

「やべえ俺も移動教室じゃなかったっけ」

 

「あ、比企谷君。急いで! もう時間ないよ!」

 

「お、おう」

 

 何であいつは律儀に待ってんだよ。鍵なんて俺に任せて先行ってればいいのに。・・・俺が閉めていかないとか、物取りしないかの見張りとかそういうのか!?

 

「比企谷君早く!」

 

 ・・・んなことは考えてなさそうだな。

 

~~

 

「そうね。それでいいと思うわ」

 

「ああ。だからそれでいいかの確認を由比ヶ浜に任せたいんだが」

 

「任せて任せて!」

 

 場所は変わって奉仕部部室。先ほど失敗した確認を由比ヶ浜にさせようとしているのだが・・・ものすごく不安だ。進め方的には雪ノ下のお墨付きだからいいとは思うが。

 

「お前、本当に理解してるか?」

 

「ばかにするなし! 球技大会で目立たないんじゃなくて、バレー部からの勧誘を失くすようにすればいいよねってことでしょ?」

 

「お、おお。合ってる」

 

「あなた・・・この程度のことはさすがに由比ヶ浜さんといえどもできるでしょう」

 

「そうだし!」

 

 由比ヶ浜よ・・・雪ノ下は決してお前を褒めている訳じゃないんだぞ。

 

「じゃあ行ってくるね!」

 

 嵐のような奴だな。由比ヶ浜が戻ってくるまで本でも読んでおくか。

 

「・・・やっぱり人助けには尽力するのね」

 

「は?」

 

「・・・由比ヶ浜さんのときもそうだったけれど、協力的よね。そんなに私たちに言うことを聞かせたいのかしら。いやらしい」

 

「お前らに任せると碌なことになりそうにないってのはあるな」

 

 由比ヶ浜なんぞどんなとんちんかんな命令下されるともわからんし、雪ノ下なんて・・・想像もつかんほど恐ろしいこと言われそうだ。何せ・・・。

 

「その不快な視線を向けるの、止めてもらえるかしら」

 

「はいはい。俺が悪かったよ」

 

 これから雪ノ下のことを見るのはよそう。俺がダメージ受けるだけだ。ふぇぇ、まだこっち睨んでれぅ。

 

 本を開いて数分、由比ヶ浜が現れる。その表情は何故か暗く、明るさだけが取り柄の由比ヶ浜には似つかわしくない。

 

「どうした?」

 

「何かね、断られちゃった」

 

「は?」

 

 どういうことだ? 元を断つことが目的ならこれでいいはずなんだが。よくよく考えてみれば、それを依頼しなかった理由がわからん。わざわざ球技大会を経由した理由があるはずだ。

 

「どういうことかしら。断ることは想定外だったのだけれど」

 

 考えろ。言葉の裏を読むのは俺の得意技だろ。

 

 ・・・とは言うものの、元手が少なくちゃわかるものもわからん。情報を集める必要があるな。


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