気が付けば期末テスト。五日間に分けて行い、今回は副教科もあるので、前回より勉強量が要る。俺には人付き合いやどこかに遊びに行ったり、食事に行くこともないので、時間には事欠かなかったが、それでもやはり雪ノ下には敵わなかった。
前回は度重なる偶然と、運よく解ける問題ばかりが出題されたため勝てたに過ぎない。つまりは当然の結果である。俺とは違い、彼女は天才なのだから。
「うっす」
普段通りに部室に行くと、普段通り読書をする雪ノ下の姿が。しかし、こちらに向いたその表情はどことなく嬉しそうだ。
「こんにちは、比企谷君」
言葉にも嬉しさが滲み出ている。そんなに勝てて嬉しいですかね? 負けず嫌いだからというよりも、人より優位に立って、見下したいと思ってるんじゃないかという説はある。なんて性格の悪いやつだろうか。
「・・・比企谷君、いきなり薄ら笑いを浮かべて気色悪いわよ」
「お前が俺のことを気色悪いと思わなかった日はあるのか?」
「そうね・・・ないわね」
断定しちゃうのかよ。だからこいつは友達いないんだろうな・・・。
「それより比企谷君。テストの結果はどうだったのかしら?」
さらりと髪をかき上げる。口角が少々上がってますね。どれだけだよ。
「ほらよ」
特に惜しげもなく俺は自分の結果を渡す。今更隠す必要もないだろう。
「・・・あとは現文だけね」
おいやめろよ。現文まで負けたくはないぞ。しかし・・・あれだな。雪ノ下は何しても絵になるな。こうやって何かを一心に見ているだけでも・・・。
「やっはろー!」
うおおっ! びっくりした。何かいけないことをしていたつもりはないが、あまり褒められたことでもないしな。俺の場合それが命取りだろうけど。
「こんにちは由比ヶ浜さん」
「うっす」
「何見てるのー?」
「比企谷君のテスト結果よ」
「うわ見たい! ・・・何か本当にできるんだねヒッキー」
できて悪いかよ。見た目とのギャップはあるかもしれんが・・・。それを認めたくないのも経験からわかっているが、こいつも露骨に顔に出すよな・・・。
「あ、そうだゆきのん。球技大会はどっちの種目で出る?」
そういや今日決めてたな。俺は確かバレーだったな。寝てたら勝手に決まってたが、どっちでもよかったし、まあいいか。
「私はバレーね」
「私も! ヒッキーは?」
「あ? 俺もバレーだよ」
「奉仕部全員お揃いじゃん!」
こういう時大抵俺ははぶかれるもんだが、珍しいな。
「皆で特訓しようよ!」
「? 私は別に特訓しなくても勝てるのだけれど」
「大体三人でどうやってやるんだよ」
「えっと、あ、む~」
由比ヶ浜が案を出しつつもそれを俺か雪ノ下が否定し、俺に暴言が投げかけられ部活が終了する。いつになればこの部のしっかりとした活動ができるのだろうか。しなくても俺は一向に構わないけどな。何ならしない方がいいまである。