不良八幡の学校生活   作:雨雪 東吾

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週一更新目標なのだが、忘れそう・・・


奉仕部

「比企谷、今から職員室に来なさい」

 

 帰りのホームルームの後に平塚先生から呼び出しをくらう。もう帰る準備は万端なのに。初日くらいさっさと帰らせてほしかったぜ。

 

 職員室に着くと、今朝と同じように進路指導室に連れていかれる。

 

「あの、何すか?」

 

「まあそこに座りたまえ」

 

 荷物をおろし、皮のソファに腰掛ける。平塚先生も体面に座り、顔の前で手を組む。

 

「いきなり来て早々悪いが、部活はどうする?」

 

「部活は入る気ないです」

 

 因みに俺は生まれてこの方部活というものに入ったことが無い。これからも入る気はない。

 

「ふむ・・・。登校初日から金髪に染めてくるあたり、君は所謂リア充的な存在かと思ったが、自己紹介も適当、部活にも入らないか」

 

 リア充とか今の時代先生も使っちゃうのかよ。教師は聖職とか呼ばれた時代が懐かしいな。いや、俺その時代知らないけど。

 

「まあ入りたい部がないならちょうどいい。君に是非入って欲しい部があるんだ」

 

 ・・・この人話聞いてた?

 

「あの、僕入るつもりないですけど」

 

「目つきも悪いし、二週間学校来れなかったからな。既にグループは形成されていて入りにくかろう。しかし君が今から入る部は今のところ一人しかいないから大丈夫だ」

 

「あの」

 

「ついてきなさい。案内してやろう」

 

 ホントこの人話聞かねえな・・・。まあでも俺は教師に逆らえない。見た目がこんなだからな。退学とか勘弁。

 

~~

 

 ガラリと勢いよくドアが開け放たれる。

 

「・・・平塚先生、ノックはしてくださいといつも」

 

「すまない。しかしお前も返事をしないからな」

 

「返事をする前に・・・はあ、もういいです」

 

「そうか。そうだ雪ノ下。今日は入部者をつれてきた」

 

「・・・どうも」

 

 入室し、挨拶をする。室内のその存在を認めた瞬間、ただ単純に美しいと感じた。しかし同時に面倒だとも感じた。何せこいつは恐らく・・・。

 

「・・・犯罪者更生施設ではないのですが」

 

 ・・・っれーおかしいな。俺犯罪者じゃないんだけど。まあそう見えても仕方ないような見た目はしているがな。つうかこいつも俺に恐怖抱いて無さそうなんだが。どうなってんの、この学校。

 

「安心しろ。こいつはまだ犯罪者じゃない」

 

 まだとか今後俺が罪を犯す前提?

 

「だからお前にこいつが犯罪を犯さないように指導してやってくれ」

 

「ここは犯罪者予備軍更生施設でもないのですが・・・まあ先生からの依頼ならば無碍にもできませんし、お引き受けします」

 

 俺に怯えて入部拒否してくれれば助かったかもしれんが、まあ恐怖なんてしないわな。むしろ興味を抱いて関わってくることも想定していたが、それはなさそうだ。よかった。

 

「そうか、それは助かる。それじゃああとはよろしく頼んだ」

 

 そう言い残し、平塚先生は去って行った。

 

「・・・はあ」

 

 俺はため息をつき、ドアから一番近い椅子に座る。俺がいても何ら興味を示さず、本を読みふけっている雪ノ下にじろりとした目を向ける。これでたいていの奴は震え上がるが、

 

「・・・何かしら。その下卑た視線を向けられると不快なのだけれど」

 

 ・・・八幡自信なくしちゃうな。

 

「お前・・・俺が怖くないのか?」

 

 雪ノ下は本をパタリと閉じ、顔をこちらに向けた。

 

「あなたのような小悪党を絵にかいたような存在、恐れるわけないでしょう? 例え襲われたとしても撃退する自信があるわ」

 

 こいつあれだな。やっぱ面倒くさいな。

 

「・・・お前友達いないだろ」

 

「まずは友達の定義から教えてもらおうかしら。どこからどこまでが・・・」

 

「ああもういい。その発言は友達いない奴の発言だ。・・・で、ここは何部なんだ?」

 

「・・・あなた何も聞かされてないのね。いいわ、少しゲームをしましょう」

 

「ゲーム?」

 

「ええ。この部は何部なのかを当てるゲームよ。ヒントは私が今こうしてることが既に部活動よ」

 

 今こうしてる? さっきまでは本を読んでいたが今は閉じられている。つまり本は関係ない。今やってることと言えば椅子に座り、俺と会話をしている・・・。

 

「・・・心理カウンセラー的なものか? 生憎俺はそんなものを必要としてないんだが」

 

「違うわ。まああなたに対しては似たような事かしら」

 

 雪ノ下は本を置き、夕日を背景に立ちあがる。

 

「餓えている者には食べ物の取り方を、冴えない男子には女子との会話を。依頼者の自立を促すことを目標とする奉仕部へようこそ、比企谷君。歓迎するわ」

 

 歓迎って言葉、こいつ本当に知ってるか? おもっくそ見下されてる気がするんだが。物理的にも精神的にも。

 

 ただ、悪くない理念だ。やる気のない人間は嫌いだからな。でも引っかかるところが一点。

 

「俺、お前に自分の名前言ったっけ?」

 

「・・・あなたのことは一年で噂になってるわ。二週間不登校だった不良が今日いきなり来たって」

 

「お前友達いないのに何でそんな情報知ってんだよ」

 

「あら、私に友達がいないって何で知ってるのかしら? もしかして、ストーカー?」

 

「ちげえよ。さっきの会話で類推してるくらいわかるだろ? もう忘れたか? 鳥頭なのか?」

 

「必要のない記憶は消去してるの。それに新入生代表の挨拶をした私に向かって鳥頭と言うなんておろかにもほどがあるわねまあ、不登校かつ友達もいないあなたには知り得ない情報かもしれないけれど」

 

 ああ、こいつだったか。まあ納得だな。

 

「そうですか。まあ今日はもう日も傾いてるし、帰っていいか?」

 

「ええ、そうね。お疲れ様。くれぐれも警察のお世話にならないように気を付けて帰ってね」

 

「心配のされ方がおかしいんだが。・・・じゃあな」

 

 返事を待たずに部屋を出る。・・・明日からはバッくれよう。


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