不良八幡の学校生活   作:雨雪 東吾

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遠足 4

「お腹もすいたし、ご飯にしようか」

 

 ここに到着してしてから既に三時間が経過し、時刻は午後十二時半を過ぎる頃。全く動いていない俺でも空腹感を感じているのに、あれほど動いた戸塚だ、それも一入だろう。

 

 ここには数々の食事処が並んでいる。潮風に混じった匂いに誘われ、入ったところはラーメン屋だった。近くの港でとれた新鮮な魚介を使ったスープが売りの様で、俺は迷わず魚介ラーメンを選んだ。班全員分を戸塚に頼んでもらい、待っている間、手持無沙汰になった俺は、スマホを取り出す。俺がいると他の奴らの肩身が狭いだろう? ぼっちは他人に迷惑をかけないものだ。存在を消せ!

 

「ラーメン、楽しみだね、比企谷君」

 

「・・・そうだな」

 

 ・・・おい、俺の折角の気づかいを不意にするつもりか! 他の二人を見てみろよ、凍り付いてるぞ。やっぱりこいつは要警戒だ。ある意味平塚先生以上に厄介だな。具体的に言うと二人きりじゃない時に普通に話しかけてくるあたり。迷うことなくAランク認定でいいだろう。・・・割とアイドルになってもAランクくらいならすんなりいきそうだが。

 

 ・・・しかし、ここ来てまだ一か月だぞ。既にA級厄介人物が二人とはどうなっているこの学校。B級の雪ノ下やC級の由比ヶ浜はまだいい。あいつらは人目を気にしてか、奉仕部での関わりしかないし、まあ割といなすことも可能だ。自虐ネタ使えば離れてくれるしな・・・え? 引いてるだけだって? 知ってた。平塚先生は先生だから、周りに生徒がいる状態で二人で話していても別に不自然じゃない。少々厄介ではあるものの、ネタも通じるし。しかしこいつは周りの雰囲気ぶち壊してでも俺に話しかけてくるからな。責任感もそこまで行くと称賛に値するな、全く。S級・・・はないな。ないない。まあ俺の悠々自適なぼっちライフを邪魔されないためにも、戸塚を理解し、対策を練らねば。

 

 戸塚の意識は既に他の班員の方へと向いており、戸塚と俺に対する席の彼らも、俺にびくつきながらも戸塚との話に花を咲かせている。

 

 取りあえずイヤホンしておけば話しかけては来ないだろう。話しかけられたとしても聞こえないふりをすればいい。スマホにウォークマン用のイヤホンをさし、モバマスを起動する。そして、戸塚を盗み見する。人間観察は得意なんだ。彼を知り己を知れば百戦殆うからず。・・・戸塚と目が合い、微笑みかけてくる。・・・見た目に騙されてはいけない。こいつは別に俺のことはただの班員にしか思っていない。中学の時どうだった? あの確信はなんだった? 感情を・・・殺せ。・・・ふぅ、落ち着いた。大丈夫、もう勘違いはしない。

 

 出てきたラーメンに舌鼓を打ちながら、俺は戸塚の観察を続けるのだった。




遅れながらの連絡。
前回、戸部と葉山の1年の時のクラスを一緒にしましたが、原作には書かれれていないと思うのでご了承を。

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