不良八幡の学校生活   作:雨雪 東吾

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遠足

 来てしまった。とうとうこの日が来てしまったか。

 

 空は快晴。体調も万全。周りには出来上がったばかりの息の合ってないグループが多数。そう、今日は遠足の日だ。トップカーストのやつらは待ちに待った、逆にクラスでぼっちな奴らには地獄のあの遠足だ。

 

 まあ来てしまったか、とは思いつつも、俺は別に気にしていない。並のぼっちならこの雰囲気で友達を作れるかも、と奮起するのだろうが、生憎と俺レベルのぼっちになると普段の学校とあまり変わらない。ただ非日常な日常だ。なにこれ我ながら言ってることかっこいい。

 

 未だに中二病の患いを感じつつも、俺は班員の集まるところに移動する。と言っても戸塚以外知り得ないのだが。

 

「あ、比企谷君。おはよう」

 

「・・・ああ」

 

 他の班員らしき二人との会話を止め、俺に挨拶をしてくる。まあ他の二人は怯えて挨拶なんてしてこないけどな。それが普通の反応のはずだ。戸塚がおかしい。そもそも俺と初めて話した時も自然な様子だったしな。

 

 班員は一クラス四人が十組で、男女別である。つまりこの間まで勘違いしていたが戸塚は男である。見た目はそこらの女子よりよっぽど女らしいのにな。今のジャージ姿とかまじで見分けがつかねえぞ。まあ俺には関係ないか。

 

 時間になり、先生の有難い話を終えバスに乗り込む。我らがC組は三号車だ。まあその我らに俺が入っているかは怪しいがな。

 

 後方で、班員の二人が戸塚に謝る様子が聞こえてくる。どうやら俺の隣に座るのを押し付けたことに対してらしい。小声で話してるみたいだが普通に聞こえてんだよな・・・。まあそれに対し何かアクションを起こすつもりはないが。

 

 戸塚は余り物の俺を入れてしまったことに対する罪悪感でも感じているのだろう。それか班長であることの責任感か。まあ特に関わる気もないし、寝てればいいだろう。

 

「比企谷君、隣失礼するね」

 

 話が終わったのか、戸塚が俺に隣に滑り込んでくる。その際、甘いにおいがふわりと充満する。何コイツ、まじで性別偽ってんじゃねえの? 戸塚はいろんな意味でおかしい。

 

 窓側に座ったので、適当に外を眺める。ボーっとしてれば勝手に眠れるだろう。添乗員さんの号令を皮切りにバスが発信し、車内が喧騒に包まれるが、イヤホンに音楽機器を持ってきた俺は無敵だ。

 

 カラオケ大会で、リア充どもがはっちゃける最中、俺はチョイスする歌を決めようと、ボタンを操る。

 

「比企谷君も何か歌うの?」

 

 戸塚が身を乗り出し、画面をのぞき込んでくる。おいやめろ。何かいけない気分になってきちゃうだろ。

 

「歌わない。寝る」

 

 体の向きを変え、戸塚に背を向ける。これで拒絶することは伝わるだろう。お前は隣に座ってる義務感から話さなきゃと思うだろうが、それは有難迷惑だ。それを伝えれば戸塚も無理に話そうとは思わないだろう。

 

「僕と話すの嫌なのかな・・・?」

 

 ・・・だからこの残念そうな声は幻聴に違いない。

 

 俺は音楽をスタートさせ、それを子守唄に眠りについた。




19時だと予約投稿面倒なので、0時投稿にしたいと思います。こっちのが数字綺麗だし。

話的に八幡が戸塚にでれるのは大分先になりそうなのでご了承を。

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