悪の秘密結社と一緒ぅ   作:C-K

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少し好き嫌いが分かれるアンチヒーローもの。
以前書いたもののリメイクのような感じです。


1話 黒山羊さんと一緒

Q,目が覚めたら、黒山羊の顔がドアップで迫っています。どうしますか?

 

 ①:悲鳴を上げる。

 ②:気絶する。

 ③:殴る。

 

 彼女が選択したのは①と③だった。

 

 「いやあああああっ!!」

 

 裂帛の気合いに近い悲鳴と共に繰り出されたメガトンパンチ(比喩にあらず)が、黒山羊を車田正美画ばりに吹き飛ばす。

 一拍を置いて地面へドチャリと落下した黒山羊は、逆さまのまま彼女へサムズアップを送り、

 

『い……良い、……拳じゃ、嬢、ちゃ……ん』

 

 とだけ言ってパタリと倒れた。

 

 彼女が我に返ったのは周囲で固まっていた猫頭や犬頭の戦闘員が『にゃにゃー!?』『わぉーっ!?』と黒山羊に駆け寄り、山猫怪人が『しゅ、首領さまーっ!!?』と悲鳴を上げた後であった。

 

「あれ?」

 

 

 

「咄嗟の事とはいえ、誠に申し訳ありませんでした」

 

 場が落ち着いて彼女がしたことは誠心誠意の籠もった土下座である。

 未だ警戒心バリバリに彼女を威嚇する山猫怪人以下戦闘員とは裏腹に、サバトで崇められる黒山羊の姿そのものの首領は困惑していた。

 

「のう、嬢ちゃん。ワシ等が怖くないのかい?」

 

 普通の人間がこの異様な集団と対面すれば恐怖で錯乱するか、悲鳴を上げて逃げまどうか。はたまた涙と鼻水を流しながら泣き叫んで命乞いをするかだろう。正にそのような経験を持つ彼等は、平然と、気にせずに相対する茶色いブレザー姿の彼女に困惑するしかない。

 

「言葉が通じるなら姿形に偏見はないですね。今までの経験から言って」

「ずいぶん波乱万丈な人生を送っとるんじゃのう……」

 

 自分たちの経緯さえも受け入れるとも捉えられ、苦笑するしかない黒山羊首領であった。

 

「自己紹介がまだでした。私は椿・櫻(ツバキサクラ)と言います。助けて頂いてありがとうございました」

 

 戦闘員や怪人に臆することなく、それでいてきちんと礼を尽くす姿に戸惑いを隠せない悪の秘密結社サイド。

 

 たまたま周囲を哨戒していた怪人が近くの砂浜に倒れていた彼女を拾い、今更だと思いつつも介抱することを選択し、隠れ家へ連れ帰っただけだ。彼等も風前の灯なので、彼女を利用するほど潤沢な物資があるわけでもない。

 

「……ところでここは何処でしょう?」

「なんの変哲もない寂れた岩山の隠れ家じゃな」

 

 岩山をくり抜き、かつては何かの施設があったような跡があちこちに見える。時折、遠くからかすかな潮騒の音が聞こえてくる以外は静かなものだ。

 

「ええと、首領さまたち? はここで何を生業にしているんですか?」

「ミューガスという悪の秘密結社を率いておったのじゃがな……」

 

 黒山羊首領が口惜しやと歯を食いしばる姿に、「悪の……?」と首を傾げる椿・櫻。悪の組織が倒れていた17歳位の女性を人質や改造人間にせず、ただ介抱するだけとは普通に疑問を持つだろう。

 

 まあ、彼女の疑問をよそに説明は続く。

 

 彼等ミューガスは太古の昔から星(地球)に君臨してきたらしいのだが、ある時二千年程の休眠期を経たら地上は人間で溢れかえっていたのだそうな。星を自然破壊や公害から護るため人類を根絶やしにし始めたところ、人類の中から五人の戦士が現れ反撃してきた、とか。一進一退の攻防を一年ぐらい続けて来たが、ついにその均衡は破られ、悪の秘密結社ミューガスは劣勢に立たされたところである。

 

「ぐぅっ、し、神官さまがたはお倒れになりっ、ぐすっ。わ、わたしはっ……、しょ、将軍さまと首領さまを、お守りしながらっ……」

(……うわぁ……)

 

 途中から説明が涙と鼻水まみれの山猫怪人に変わり、黒山羊首領さまが「泣くのではない。お前はよくやってくれておるぞ」と頭を撫でながら慰めてる図が展開されていた。どう読めば分からない空気に顔を引きつらせ、口を挟まないように心掛けるしかない。

 

 

「なんだいなんだい、またやってるのかい山猫の。いい加減腹を括りなよ」

 

 ふと他とは別の気配を感じて振り返ると、戦闘員が背筋を伸ばして迎えるオレンジ色の怪人がやって来ていた。

 この人が将軍さまかなと、姿と貫禄に納得する。頭と両肩と胸に獅子の顔を持つ怪人は、椿・櫻が平然と佇んでいるのを見て、目を丸くしていた。

 

「どうも」

「おや、豪胆な嬢ちゃんだねえ。忠告しとくとここはもう直ぐ戦場になる。とっとと逃げな」

 

 その発言で首領以下、山猫怪人と戦闘員たちに緊張が走る。

 

「……来たか」

「はい」

 

 首領の前で膝をつく獅子将軍は今まで偵察に出ていたようで、すぐ近くまで戦隊の者たちが迫ってること、完全にこちらの居場所を掴んでいるらしいことを告げる。

 

「くくくくクソガアアァァァッ!!」

「あ……」

 

 いきなり激昂し、飛び出し始て行く山猫怪人。子を愛おしむ母のような目でそれを見送る首領。その後に続いて戦闘員たちも雄叫びを上げながら走っていく。

 

「行っちまいましたね」

「ここで我等の命運も終わりなのかもしれぬな……」

 

 悲壮感を呟きながら立ち上がる黒山羊首領と獅子将軍。

 しかし、その表情には晴れ晴れしたものも混じっている。

 

「嬢ちゃんは素早くここを離れよ。関係者と思われると厄介じゃぞ」

「あっち側をずっと行くと山の方に出るさ。南に行けば街がある。迷うんじゃないよ」

 

 それを別れの挨拶とし、背中を向けて去って行く2人。

 

「うわ、なんかカッコイイ」

 

 何かの映画のラストシーンのような印象につい感動する椿・櫻。ヒーローに最後の戦いを挑む悪の組織の立場という注釈が付くが。

 

 

 ひとりその場に残された彼女は立ち上がり、入り口? に向けて思案する。

 

『どうなさいますか?』

「分かってて訊いてるでしょ」

 

 ここには居ない第三者の声が響く。ゆっくりと彼等が去った方に歩きながら、彼女は楽しそうにその声に返した。

 

「どうやらここも地球(・・・・・)らしいけど。最初に会ったんだ、これも何かの縁でしょう。それに……」

『それに?』

「この私を助けた礼をまだ受け取って貰ってないわ」

『たしかに。この借りは大きいですね』

 

 囁くような笑い声が空洞に木霊する。微かな光に彼女の影が岩肌に長く伸びていく。その影からは無数の空虚な瞳が輝いていた。

 

 

 

 彼女が周囲を見渡せる海岸に辿り着いた時、初期戦闘はほぼ終了していた。

 

 戦闘員たちは砂浜や波打ち際に倒れ伏し、山猫怪人も弱々しく片膝を付いている。その後方に獅子将軍と黒山羊首領がいて、胸を張り山猫怪人の最期を見届けようとしていた。

 

 彼等に対するヒーロー側は、赤・青・黄・白・桃・金色のスーツを身に纏った6人の戦士。剣呑な光をそれぞれが持った銃口に集め、声を合わせて必殺技を山猫怪人に向かって発射した。

 

 直撃のちに大爆発となるはずが、6つの光は山猫怪人の直前で何かに阻まれ停止した。

 

「「「「「「なにいィッッ!?!?」」」」」」

 

「なんじゃと!?」

「嬢ちゃんっ!?」

「お、お前っ!?」

 

 割り込んだのは椿・櫻。

 彼女は空中に停止した6つの光を、指先でペンの如くクルクル回しながら呆れたように呟いた。

 

「困るんだよねえ。人の恩人を勝手に殺したりしたら。こちとらまだ恩も返してないんだから」

 

 ヒーローと悪の組織の戦いに割り込むブレザー姿の女子高生。例えるなら特撮撮影現場に迷い込んだシチュエーション。ものスゴい場違い感である。

 

「な、なんなんだキミは!?」

 

 赤のヒーローが泡食ったように叫ぶが、それを完全無視。「返すよ」とだけ告げて、指先にあった6色の光弾を戦隊ヒーローに投擲。6色の爆発が海岸を彩り、それぞれが宙を飛び、地面へ叩きつけられる。

 

「うわあああぁ――っ!」

 

 痛みにのた打ち回る戦隊ヒーローを視線から外し、後ろを振り返る椿・櫻。

 

 

「……お前、なんで……?」

 

 そこへ駆け寄る黒山羊首領と獅子将軍。将軍に肩を貸してもらい立ち上がった山猫怪人が真っ先に疑問を投げかけた。

 

「えー、今言ったじゃないですか。助けて貰った恩を返してないって」

「お前さん分かってるんだろうね。相手はここの正義の味方なんだよ。他の人類に後ろ指指されるのはアンタなんだよ」

 

「ご忠告どーも。でも私、反逆者っていうのも嫌いじゃないです、よっと!」

「なぐあっ!?」

 

 椿・櫻が何もない空中を回し蹴った途端に姿を現しながら吹き飛ぶ金のヒーロー。そこに至るまで獅子将軍も黒山羊首領も山猫怪人も存在に気付かなかったため、目を白黒させている。

 一番驚愕しているのは、迎撃された金のヒーローだろう。

 

「甘い甘い。私の不意を付きたいなら、心音を止め体温を無くし質量をゼロにした挙げ句、空気の流れを起こさないで忍び寄りなさい」

 

 顔の前でチッチッチッと指先を振りながら不敵に笑う椿・櫻。実際彼女へ近付くには音や温度や動態センサーに引っかかってしまえばアウトである。人の身でそんなものは不可能な訳で。

 

 白と青のヒーローが体を起こしながら銃口を椿・櫻へと向けるが、トリガーをカチカチ鳴らす音が虚しく響くだけ。

 

「なっ、なんでえっ!!?」

「何故撃てない!?」

「うふふふ」

 

 簡単に種明かしはしてやらない。

 無様な姿を笑ってやるだけである。

 

「お三方共少々下がっててください。後は私が仇をとってあげます」

「なに者なんじゃお嬢さん……」

 

 黒山羊首領たちに下がってもらい、笑みを浮かべたまま進み出る。目の前にいるにも関わらず、彼女の得体のしれなさを感じ取った戦隊ヒーローたちは一歩下がった。

 

「ふむ」

「「なっ!?」」「「ええっ!?」」「「なんでっ!?」」

 

 ついーと彼女が上げた片手へ、ヒーローたちの手元から武装が勝手に離れて飛んで行く。呆然とする敵味方を尻目に、彼女は銃形態や剣形態となった武装を弄くり回す。

 

「なるほど、これなら使えるかな」

 

 呟きと同時に彼女を中心とした地面に巨大な魔法陣が展開された。何だか判らないため、慌ててその範囲内から飛び退くヒーローたちと悪の三人。範囲内にいるのは椿・櫻と倒れ伏した戦闘員たちになる。

 

 空中に浮いたままの6個の武装から光る帯、エネルギーとなるべきものが陣へ流れ込み、魔法陣とその上に横たわる戦闘員たちが7色の光に彩られる。数秒ののち光が収まると、倒れ伏していた戦闘員たちがフラフラっと起き上がった。

 

「あなたたちはあっち」

 

 椿・櫻が幽鬼のような戦闘員たちに告げると、フラフラしながら後ろで固まっていた首領の下へと向かう。

 

「お……おお、お、お前たち……」

 

 目尻に光るものを溜めながら黒山羊首領と獅子将軍が彼等を迎え入れる。

 山猫怪人は後ろを振り返っていた椿・櫻の向こう側、ヒーローたちの動向を見るや否や彼女に叫んだ。

 

「おい前を見ろ! 油断すんなっ!」

「?」

 

 ヒーローたちは劣勢もなんのそのといった態度で立ち上がり、赤のヒーローが口元に上げていた左腕を下ろしたところだった。

 

「クソっ! 姿形に惑わされたぜ!」

「まさか奴らの奥の手だったなんて……」

「だがもうお前たちの勝手にはさせん!」

「俺たちの力を見るがいい!」

 

 奥の手どころかまったくの赤の他人なのだが、好き勝手に悪態を吐くヒーローたち。

 

 やがて空の向こうから全長40mはあろうかという飛行機が飛来した。空中で3機に分離して再び合体した飛行機は、巨大ロボットへと姿を変え地上に着地した。

 

「自分の首を自分で絞めてるとしか思えないなぁ」

 

 『搭乗!』と叫んでロボットの足元へ走っていく6人を呆れた表情で見送る。その際には背後から聞こえてくる「もうダメだー!」とか「どどどーすんだいあれ!」とか「騒ぐんでない!」とか言ってる3人は放置だ。

 

 

 

 巨大ロボットの胸のコクピット乗り込んだヒーローたち。

 すし詰め状態の6人は手早く起動チェックを済ませ、コクピットの中央で円陣に手を合わせた。

 

「最後の一戦だぞ」

「「「「「おお(ええ)!」」」」」

 

「最後のあの女が気になるけど」

「これでやっと平和が訪れる!」

「これも今までの皆の協力があってこそだ」

 

「最後だからといって気を抜くなよ。行くぞ!」

 

 操縦桿を握り締めた赤ヒーローが勢いよく前に押し込む。直後、高揚感に沸き立っていた彼等に冷水が浴びせられた。

 

「い、行くぞ!」

 

 ガチャンコガチャンコ操縦桿を押し込むが彼等の最後の希望はうんともすんとも反応しない。

 モニターで見下ろせる砂浜に立つだけのあの女は、腕を組み不遜な笑みを浮かべているだけだ。それが更なる不気味さを醸し出している。

 

『あー、あー。テステス、テステス。マイクのマイクのテストちゅー』

「!?!?」

 

 突然コクピット内部に外部音声が響き渡った。通信担当の桃色に全員の視線が集中するが、彼女は「何もやってないわ!」と首を振って疑惑を否定する。

 

『ハイハイそこの往生際の悪いヒーローさんたち、仲間割れはみっともないよー』

 

 脇から割り込んだ青色が通信スイッチをOFFにするが、機械はONから表示が変わることはない。

 

「なんだこりゃどーなってやがる!」

「判らないわよっ!」

 

 各自が手元のコンソールを操作するが、何ひとつ彼等の指示を受け入れてはくれない。たちまちコクピット内部は怒号と悲鳴に満たされる。

 

『あなたたちには弁護士を呼ぶ権利はありません。そこから出てなぶり殺しにされるか、その中でなぶり殺しにされるか選んで下さい。まあこの場合は定番で、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋、じゃなくてコクピットの隅でガタガタ震えてする命乞いの準備はオーケー? って言っても命乞いをするだけ無駄だけどね~。アハハハハハッ』

 

 外部からの声は勝手なことをのたまうばかりだが、彼等の絶望感を煽るには丁度いい。焦燥感に駆られ、狭い中で機器類を操作し、どれも反応しないという現実を突き付けられて悲鳴をあげるのを繰り返す。

 

「なんでっ! なんでなのよっ! あなたも人間でしょう、奴らに酷い目にあわせられた経験だってあるはずでしょう!」

「そうだ! なんで奴らに協力するんだ! この人類の面汚しめ!」

 

 白と青の血を吐くような訴えにスピーカーの向こう側は一瞬沈黙する、が。

 

『うふ、うふふふふふふふ。人類の面汚し? 人間のくせに? それは私がこの世界の人間であればの話よねぇ~』

 

 あっさり告げられた衝撃の告白。

 しかしスピーカー越しだというのにその声は、背中に針を突き入れるようなおぞましさに満ちていた。

 

『右も左も分からぬ世界で山猫怪人さんに助けられ、首領さまたちに優しくされて、恩義を感じないなんてあるものですか』

 

 だからお前たちと敵対する。

 

 彼女はあっけらかんとそう告げた。

 

「クソクソクソオオオッ! お前みたいな小娘が正当性を主張すんじゃねえええっ!」

「他人の世界に手を出さないでよ! とっとと帰って!」

 

 いまだに操縦桿を握り締めながら赤が絶叫する。半泣きになりながら桃も悲鳴のような感情を吐露するが、相手には馬耳東風だ。ついでとばかりに右手を上げて指を鳴らす。

 

 いったい何の真似かという疑問は、突如コクピットを襲った振動で更なる驚愕にかき消された。

 

「な、ななななん、なんだこの揺れはっ!?」

「あ、あああ、あれっ! あれあれアレッ!!?」

 

 椅子から投げ出されそうになったため手短なコンソールにしがみつく金。同じく椅子の背にしがみついた黄色が金切り声をあげてモニターを指差した。

 

 コクピット内部のヒーローたちが縦揺れ横揺れに翻弄されながら見たものは、搭乗している巨大ロボットの腕が自身の胸部を強打している光景であった。 モニターがノイズで一瞬のブラックアウトを繰り返しつつ、垣間見える腕がコクピット周辺に膨大な圧力を加えていく。

 

 警告音を発しない機体環境モニターがその異常を表示するだけである。

 

『あー、言い忘れてたけど。私、機械に対して君臨する側なんだー。科学技術が発展すれば発展するほどその世界は私の王国な訳。だから私に対して銃で攻撃すら出来ないしー。巨大ロボットなんか私の前に出た時点でもう下僕確定ね~。私に危害を加えようと考えたらもう、自分のコクピットの中だろーが、製作者だろーがプチッとされるだけなのよねえ』

 

 コクピット内部が絶望で満たされる。

 

「なんで、なんでなんだよおオオオ!」

「私たちが何をしたって言うのよ!」

 

『なにをしたってアンタ(笑)』

 

「私たちはただみんなの笑顔を守りたかっただけなのよぅ!」

「なんでお前なんかが現れるんだよっ!? 俺たちの幸せを返せよ!」

 

 6人がスーツのヘルメット内で顔色を無くし、ただ無様に泣き叫ぶだけ。脱出装置も働かないので彼等が出来る自由はそれだけしかないから。

 

 巨大ロボットを呼び出した時点で彼等は自分たちの死刑執行書にサインを入れたのも当然だと言うのだから。しかも現在進行形で彼等の死刑執行を行っているのは搭乗しているロボットである。

 

 

 椿・櫻の手にある携帯電話から聞こえてくる声が悲鳴からすすり泣く声に変わり、やがて内部機構の破損する音と共に断末魔もすらも断ち切れた。

 

 携帯電話をポケットにしまい、自分の胸を叩くのを止めた巨大ロボットを見る。

 大きくヘコんだ胸部中央付近は装甲に亀裂が入り、一部内装機関が見えている。コクピットがあった場所からは白い煙が立ち上ってはいるが、動くのに支障は無いようだ。大人しく主の命令を待っている。

 

「状況終了。こんなもんでどう、で……す?」

 

 後ろを振り返った彼女が見たものは、上下関係などを感じさせぬ秘密結社の首領将軍怪人戦闘員が固まって震えている図であった。

 

 




主人公設定とか後書きに乗せてもいいものか思案中……。

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