艦これ Side.S   作:藍川 悠山

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 艦隊を先導しながら、旗艦である那智は鎮守府の司令部へと無線を飛ばす。極力の無線封鎖を命じられていたが、この状況は預かっている人員の命が脅かされかねない為、上の指示を窺った。

 

「こちらAL方面陽動部隊! 棲地MIへ向けて南下中に敵の大戦力と会敵した! 合流に支障が出る可能性がある!」

 

『鎮守府の大淀です。敵の戦力を述べてください』

 

「戦艦級が十隻。既に数体へ損害を与えているが、精々小破程度だ。撃ち合いになれば、こちらが先に果てる」

 

『十隻も……。長門秘書艦!』

 

『──聞いていた。那智、長門だ。まずは現場の判断を聞こう』

 

「余裕もないので手短に。我が艦隊は打撃力において劣っているが、速力と小回りに関しては戦艦のみの相手より勝っている。その為、敵の横をすり抜ける事ができれば、棲地MIへの航路を外れずに逃げおおせられるはずだ」

 

『だが、一定時間は正面から敵と撃ち合わなければならない。勝算はあるのか?』

 

「上手くいく確率は高くない。しかし、貴方がやれと言うのなら──そのリスクを冒してでも私達がMIへ行く意義があるのならば、その指示に従おう。だがもし、我々を重要な要素でないと考えているなら、このまま退却させてほしい。艦隊を率いている以上、彼女達の命を賭けた安いギャンブルはできない」

 

『もっともな意見だな。──ならば命じる。陽動部隊は敵戦力の側面を抜けて棲地MIへ向かえ。お前達はこの作戦において重大な意味を持っている。必ず棲地MIまで合流して欲しい。……それから急ぎ支援部隊を編成し向かわせる。もし不測の事態が起こっても最後まで諦めずに生存を優先してくれ』

 

「了解した。安心してくれ、上手くやるさ」

 

『ああ、頼む』

 

 通信は途切れ、那智は自分がすべきことを認識する。

 小さく深呼吸をして、前方に展開する深海棲艦を見つめた。最初に出現したル級は既に沈み、その沈没地点を中心にして敵はまばらに広がっている。それは先程加えた自分達の砲撃によって相手が散り散りに逃げたからであるが、どうも隊形を組み直す様子はない。統率が取れていないのではなく、敵はそれよりも攻撃の一手を優先していた。敵の砲撃は休む事無く降ってくるが、まだ距離が遠い為、そうそう命中する事はない。しかし、進行速度は抑制される。砲弾で波立つ海と、せざるを得ない回避運動で思うようには進めていない。まるでこちらの足止めをするように敵は攻撃の手を緩めなかった。

 

 ──このまま我々が進行に手間取るか、断念するのを期待しているようだな。敵の狙いはわかり易い。これは脅しという訳だ。

 

「そうはいかん」

 

 両肩と右腕に装着された砲塔を稼働させる。姿勢は低く、スケートをするような前傾姿勢。それを後ろに続く艦娘達は見ていた。

 

「全艦、私に倣え! 砲塔を敵に向け、低姿勢に努めろ! これより我等は敵の左側面を抜ける!」

 

「そんなの無茶クマ!」

 

「突破するにはそれしかない。長門司令官代理からの命令でもある。……不安はわかるが、それだけ私達が棲地MIへ辿り着く事に意義があるという事だ。この作戦の成否の大きさは貴様達も薄々感じているだろう?」

 

 那智の問い掛けに全員が小さく頷く。

 彼女達もわかっている。薄々だが、それでも確かにこの一戦で何かが変わるのだろうと察している。艦娘であるが故に、その運命から感じ取れるものがあった。

 

「……はぁ。なんだか貧乏くじを引いた気分クマ」

 

「でも、みんなの為なら頑張れるにゃ」

 

「しょうがないわね。ここで逃げたらレディがすたるわ」

 

「暁、足が震えているよ」

 

「し、知らないの響。これは武者震いっていうのよ!」

 

「また強がっちゃって。いざとなったらわたしを頼ってもいいのよ」

 

「電の本気を見せちゃうのです!」

 

 これから挑む難行の危険性を理解しながら、各々自分を奮い立たせる。それは那智とて同じ。そんな彼女達を見て、やり抜かねばと自らの士気を上げる。

 

「弾幕を潜り抜ける強行軍となるだろう! こちらも弾幕を張り、敵の攻撃は避け続けろ! 貴様達なら出来る筈だ!」

 

 那智は号令をかける。その返答の代わりに他の艦娘達は砲塔を構え、姿勢を低くした。機関を燃焼させ、動力を全身に巡らせる。

 

「ゆくぞ!!」

 

 その声と共に陽動部隊は進行を早める。那智を先頭に単縦陣を組む彼女達は一本の槍のように、まばらに展開する敵戦艦の左側へと直進した。同時に応戦を開始する。先程までは回避に専念していたが、これよりは相手の妨害の為にも砲撃を敢行する。回避行動をしながら、最低限の狙いを定めて彼女達は砲撃を放つ。直撃を望まぬ弾幕は海面を穿ち、飛沫を上げ、波を立たせる。それで敵の照準は揺さぶられた。深海棲艦とて海上に立っている者。自然の働きには影響を受けざるを得ない。

 

 しかして、深海棲艦も新たな動きを見せる。

 那智達の進行を観測し、後退を始めた。速力では那智達には及ばないが、それでも彼我の距離は離されにくくなる。簡単には通させまいと、最大戦速で那智達に喰らい付く。移動を始めた事で深海棲艦達の命中精度は低下したものの、十隻からなる戦艦群の砲撃は圧巻の一言。その物量を以て陽動部隊は脅威に曝された。

 

「きゃあああっ!!」

 

 暁の悲鳴が上がる。彼女だけではない。声には出さなかったが、その場の全員が恐怖を覚えた。

 

 近くに落ちる巨大な砲弾。それは先程よりもずっと近く、轟く爆音は身体を波及して精神に伝わる。死の恐怖を心身に感じ、一人は堪らず叫び、一人は顔を青ざめさせ、一人は手を震わせた。そのどれもが、まだ幼い第六駆逐隊のものだった。唯一、響だけが平静を保っていたが、その表情は決して余裕のあるものではなかった。

 

 それを那智に始まる巡洋艦の艦娘達は見ずとも感じ取る。

 第六駆逐隊はこれまでは主に遠征任務で活躍していた艦娘。このような激戦──ましてや、ここまでの脅威に曝された事などないだろう。無論、十隻の戦艦に攻撃される経験など那智達にもなかったが、それは年の功というべきか、恐怖に対してある程度の耐性は出来ていた。故に行動に支障はない。死の恐怖は感じるが、だからといって、否、だからこそ生存する為に正しい行動を自身に課す。

 

「大丈夫だ、そう簡単に当たりはしない! 落ち着いて私の後に付いてこい! 苦しければ回避に専念してもいい!」

 

 那智の声がこだまする。砲撃音に重なって聞き取り辛かったが、第六駆逐隊の耳には届いた。自分達を慮る言葉に少し落ち着きを取り戻す。暁は涙ぐんだ目を拭って那智の後に続く。隊形を乱さず、砲撃もやめない。残りのメンバーも暁に倣った。それでも動きは固かったが、それ以上を望むのは酷だと那智には思えた。

 

 双方の砲弾が飛び交う中、両陣営は目立った被害もないまま進み続ける。移動を続ける内にまばらに配置されていた深海棲艦達も纏まり始め、やがて速力の優れたタ級を先頭にした単縦陣が形成された。とはいえ、三隻のタ級は後続のル級を考慮せずに全速力で移動している為、タ級とル級の間にかなりの距離が空いた単縦陣であった。

 

 那智達は未だ深海棲艦を追い抜けてはいない。現状、最後尾のル級と同じ位置に先頭の那智が並んでいる。単縦陣同士で並行しての撃ち合い──同航戦を繰り広げながら、じわじわと進んでいく。同航戦にも拘らず、ここまで被害を受けずに済んだのは、ひとえに先手を打って相手に被害を与えていた事が功を奏していた。

 

 出現と同時に放った砲撃はタ級一隻、ル級五隻に損害を与えた。そのどれもが重傷には至らなかったが、幸運な事に敵の砲塔や砲身に対してダメージを与えられていたのだ。破壊こそはなかったものの、砲塔や砲身が衝撃で歪み、装填速度や照準精度に影響を及ぼしていた。特に砲身の歪みは致命的。正確に狙えば狙うほど、標的からは逸れていく。その助けもあって、那智達は事なきを得ていた。

 

 そして更に事態は好転する。

 援護として向かわされた隼鷹の艦載機が那智達に追い付き、戦艦群へと攻撃を行ったのである。その数、四十機余りの攻撃機と爆撃機が魚雷と爆弾を投下し、二十機の戦闘機が制空権を確保しつつ機銃の雨を降らせた。

 

 攻撃一辺倒だった敵戦艦群に対空戦闘の用意はなく、艦載機の攻撃は無防備な頭上と足元に突き刺さる。最後尾のル級から順に攻撃は加えられ、編隊が深海棲艦の頭上を去った頃には、ル級とタ級が一隻ずつ撃沈、一隻のル級が大破、加えてル級二隻を中破という大損害を与える事に成功した。

 

 これにより、敵戦力は大きく弱体化する。

 頭数は二つ減り、健在なのはタ級二隻とル級が一隻。残りのル級は大破一隻と中破二隻、小破が二隻。大破したル級は航行不能となり、その場で落伍。実質的に那智達を追走できるのは七隻となった。

 

「航空支援か! ありがたい!」

 

 その姿を確認した那智は思わず声を零し、他の者達も攻撃を受ける敵の姿を見て、安堵の息を漏らす。張り詰めていた緊張の糸が緩む。約半数の敵がいなくなったのだ。無理もない。

 

 しかし、だからこその油断がそこにはあった。

 

「──あ」

 

 それは狙った攻撃ではなかった。

 艦載機に攻撃を受けながら苦し紛れに放たれたタ級の一撃。不運にも、それは歓声をあげる那智の眼前へと着弾した。直撃ではない至近弾。だが、自身の進行方向に落ちた砲弾は大きな飛沫と波紋を生み、那智の足をすくい取った。至近弾の衝撃にも曝される彼女に体勢を立て直す余裕はなく、そのまま海上へと転倒し、転がった。

 

「ぐっ……!」

 

 先頭に立つ那智が停止した以上、後続の艦娘達も立ち止まらざるを得ない。球磨・多摩・暁・響・雷・電の六人は転倒した那智を庇うように周囲に展開し、足を止めた。

 

「大丈夫クマ!?」

 

「……ああ、損害はない。すまん、恥ずかしい所を見せた。すぐに立て直す」

 

 自らの油断を悔いるような苦渋に満ちた顔で那智は素早く立ち上がる。停止していた時間は短い。失敗はしたが、そこからの切り替えも早かった。

 

 だがしかし、その短い停止時間は明確な隙となる。

 艦載機からの攻撃を幸運にも受けなかったタ級二隻とル級一隻は、既に砲撃態勢を整えていた。足を止めた那智達と同じく足を止めた深海棲艦はしっかりと狙いを定め、戦艦三隻からなる十四基二十八門の巨砲を今まさに発射せんとする。放たれれば、今度こそ無事では済まない。その事を正しく認識できたのは二人。視力の優れた軽巡 多摩と感覚で危険を察した駆逐艦 響だけであった。

 

 多摩は姉の球磨と那智の手を引き、響は姉妹三人を押し倒す事で、その砲撃から逃れさせようとしたが──そのどちらも間に合わない。それよりも先に深海棲艦の砲撃は躊躇なく放たれる。その事を二人は正しく認識した。

 

 故に、実際に行動を起こす事は出来なかった。抱いたのは観念。これはどうにもならないという諦めが先に来た。後に来たのは祈り。願わくば敵の砲撃が外れる事を祈った。二人に出来たのはそれだけだった。

 

「────」

 

 そして、結果が示される。

 結論から言えば、二人の祈りは届かず、願いは叶わなかった。目の前に広がるのは、ただただ無慈悲な現実だけ。好機を得たと思えば、一瞬の油断によって次の瞬間には瓦解する。そんなよくある現実だけが結果として残った。

 

「あれは……あのちっさい空母の人の……」

 

 炎上する戦艦達を見つめながら暁が呟く。

 那智以下陽動部隊の面々は無事だった。結局として敵戦艦の砲撃は放たれる事無く、砲撃体勢にあった三隻の深海棲艦は刹那の内に炎に包まれた。それは味方である艦娘達にも悟られず、敵の直上より現れた艦載機の成果。隼鷹の艦載機より僅かに遅れて到着した龍驤の艦載機──その二十機ほどからなる熟練艦載機群は、発射間近となっていたタ級とル級の砲塔を的確に攻撃する事で誘爆を招き、少ない手数で三隻の戦艦を沈黙させたのだ。

 

 龍驤の艦載機と隼鷹の艦載機とでは動きがまるで違う。それは空母ではない艦娘から見ても明らかだった。それもそのはず。艦載機の錬度はそれを運用する空母によって鍛えられる。その中でも龍驤は艦載機の鍛錬において特別秀でていた。彼女が鍛えた艦載機に宿る妖精はその優秀さから数多くの空母へと配属され、現一航戦・二航戦にも引き抜かれるほどだった。言わば彼女は多くの熟練艦載機を輩出する名門なのである。

 

 その証明は今の現実が雄弁に語っている。

 仲間の窮地を救い、一瞬にして敵を沈黙させた。これ以上にわかりやすい証明はないだろう。

 

「暁……、あの人に今度会ったらありがとうを言おう」

 

 先の状況が如何に危険なものだったかを正しく認識していた響が暁に告げる。満潮の言った通り、自分達が笑った人は、笑った事を恥ずかしく思うほどにすごい人物であったのだと嫌というほど思い知った。

 

 状況を察せなかった暁も、三隻もの戦艦を一度に黙らせる手腕を見て、そのすごさだけは理解できたのか、響の言葉に真剣な面持ちで頷いた。

 

「すまない、待たせたな。龍驤達のおかげで活路が見えた。急ぐぞ!」

 

 立て直した那智が再び先頭に立つ。その言葉を待っていた六人も進み出した彼女に続いた。

 

 敵の砲撃が一時的に止んだ海を進む。

 だがしかし、空母二人が援護に出した航空支援は既に攻撃を終え、雷装と爆装を消費した事で龍驤達の下へ帰っていった。僅かな戦闘機だけが制空権の維持の為に残り、断続的な機銃掃射をしてくれているが、戦艦相手では嫌がらせ程度の効果しか有していない。時間的に考えて、第二次支援は見込めない。ここからが正念場である──と那智は一考した。

 

 敵戦力を再度確認する。

 龍驤の熟練艦載機の攻撃により、健在であった三隻の戦艦も損害を受けた。タ級の一隻は大破し、既に沈没が進んでいる。これはまもなく沈むだろう。最後となったタ級は中破。同じくル級も中破といった様相。纏めると、中破のタ級が一隻、中破のル級が三隻、小破のル級が二隻となり、敵総数は六隻になった。会敵した当初を考えれば、信じられないほど現状は好転している。

 

 那智達の動きを察知し、深海棲艦も移動し始めたが、航空支援で受けた損害からまだ復旧してはいない。砲撃はなく、ただ離されまいと陽動部隊と同じ進路を取る。

 

「逃げ切るならば今か。……全艦、砲撃準備! 準備出来た者から撃ちまくれ!」

 

 未だ右斜め前方に位置している深海棲艦を睨みながら那智が号令をかける。反撃はないと見た強気な姿勢。ここで一方的に殴り、追走を許さぬ算段であった。

 

 その多くが黒煙をあげる深海棲艦へと向けられる。

 反撃がない故に、じっくりと狙いを付けて、各員は砲撃を撃ち放つ。

 

「敵は右舷だ! しっかり狙え!」

 

「なめるなクマー!」

 

「そこにゃ!」

 

「攻撃するからね!」

 

「さて、やりますか」

 

「逃げるなら今のうちだよ!」

 

「命中させちゃいます!」

 

 砲弾が弧を描き、海面或いは敵へと着弾する。砲撃音。着水音。そして爆発音。それが幾重にも重なり、不格好な音楽を奏でていく。

 

 彼女達の砲撃の多くは命中したが、中~小口径砲では戦艦の装甲を抜くのは難しい。しかし、それでも衝撃は波及し、既に損傷を受けていた箇所ならば有効打にもなり得た。砲弾の雨を受け、深海棲艦の傷付いた身体は更に消耗していく。

 

 やがて、那智率いる陽動部隊は戦艦群の真横を抜け、ついに追い抜いた。

 

「今だ! 全力で進め!」

 

 那智の声が飛ぶ。

 攻撃をやめ、全速力で前進を始めた。これよりは敵が後方に位置する為、砲撃がし辛くなる。後ろを向いて応戦する事も出来たが、それでは航行速度が低下する為、那智達は棲地MIへ辿り着く事を優先し、逃げに徹した。

 

 陽動部隊と深海棲艦との距離は明確に開いていく。損害を受けた戦艦達の速力は低下していたが、推力機関を限界稼働させ続ける事により那智達に喰らい付いていた。それでも足りずに差は着々と開いていった。

 

「■■■■■■■■!!」

 

 タ級が咆える。呼応するようにル級も咆えた。それは断末魔に似ていた。

 

 口から。鼻から。耳から。砲弾によって身体に空いた無数の穴から、青い体液を零して、深海棲艦は艦娘を追う。生命を燃焼させてでも行かせまいとする執念。その一念は壊れた部位を稼働させる。破壊された砲塔が軋みを上げ、砲口が艦娘を狙った。

 

 砲弾は発射される。歪んだ砲身から放たれたそれは、大きく狙いを逸れて海に落ちた。けれど、攻撃してきたという事実が艦娘達にプレッシャーとして圧し掛かる。

 

「こいつら、まだ!」

 

 追ってくる深海棲艦を横目で確認した那智は忌々しそうに吐き捨てた。

 敵の照準はズレており、およそこちらに命中する事はない。それは那智達にもわかっている。しかし、後を追われ、背後から撃たれ続ける事は大きな緊張だった。万が一の事を考えると、安心など出来はしない。

 

「────ッ!」

 

 その緊張を切り裂くように爆音は響き渡った。

 

 誰かに砲撃が命中して爆発する音が確かに聞こえた。それを聞いて、先頭にいた那智は思わず振り返る。脳裏には落伍した仲間の姿を思い描きながら、絶望を確認する為に振り返る。──だが、そこには誰一人欠ける事無く、自分の後に付いてくる仲間の姿があった。被害を受けた様子など微塵もない。

 

 不可解に思い、そのまま敵を見る。敵の数は変わらずに六。──違う。数え終わってから、それに気付いた。敵の数は六ではなく、五。ではなぜ、最初は六だと思ったのか。それは先程まで六隻目の敵がいた場所である最後尾に、深海棲艦ではない存在の姿があったからだった。

 

 深海棲艦以外で海上を進める人型など、他には一つしか存在しない。

 

「そうか。来てくれたのか」

 

 唯一深海棲艦を打倒出来得る存在、艦娘──駆逐艦 満潮の姿がそこにあった。

 

 


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