僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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推参

久秀は明久と謙信にトドメを刺す指示を出そうと、手を振り下ろそうとした。

その時だった。

窓ガラスが割れて、数人の人影が突入してきた。

その人影を見て、久秀は舌打ちした。

 

「七聖剣っ!」

 

突入してきたのは、吉井家・上杉家両家最強武闘家集団

七聖剣だった。

その後に、更に数人入ってきた。

それは

 

「よう、明久。俺達の力はいるか?」

 

雄二達だった。

 

「ゆ、雄二!?」

 

雄二達が来たのが予想外で、明久は目を見開いた。

すると、久秀が

 

「彼等もヤりなさい!」

 

と言った。

それを聞いて、十人程が雄二達に飛び掛かった。

しかしその時、飛び掛かった相手に窓の外から次々と矢が直撃

倒れた。

すると、久秀は外に視線を向けて

 

「あの杉の木か!?」

 

と50m程先の大木に、その射手が居ると推測した。

そして、久秀の推測は正解だった。

高さ20mはある杉の木のある枝に、優子が立って構えていたのだ。

 

『第二射、行くわ』

 

優子はそう言うと、矢を立て続けに放った。

その数は5本。

そして優子が放った矢は、全て命中した。

しかし、どうやって狙っているのか。

実は、一緒に突入した颯馬が通信で、何番目の窓からどれくらい離れてるかを伝えていたのだ。

それを聞いて優子が、狙いを修正、放ったのだ。

すると、颯馬が

 

「明久様! 謙信様! これを!」

 

と二人に向けて、細長い物を投げた。

それを見た二人は、近くに居た相手をそれぞれ蹴り飛ばして道を切り開いてそれを取りに行った。

途中で何人かが邪魔しに動いたが、それは

 

「おらぁっ!」

 

「……はっ!」

 

雄二と康太によって、阻止された。

そして明久と謙信は、颯馬が投げた物。

ヘッドセットを掴み、耳に装着した。

すると

 

『はぁい。明久、謙信ちゃん。無事よね』

 

と明恵の声が聞こえた。

 

『今、二人の位置も確認したわ。二人とも、お届けものがあるわ。ちゃんと、取ってね?』

 

明恵がそう言った数秒後、割れた窓の所を何かが通った。

それを見た二人は、明久は高く飛び、謙信は一歩前に出て、それを掴んだ。

それは、二人の刀だった。

 

「真打ち・明光(あけみつ)!」

 

永影泉宮(ながかげいずみや)!」

 

なんとその二本は、松永家屋敷の外

塀の外側から、空気圧を使って飛ばしたのである。

そして気付けば、久秀の部下は半分近くまで減っていた。

特に、七聖剣の撃破速度が凄まじい。

次々と、相手を無力化していっている。

そして気付けば、三割にまで減っていた。

 

「松永さん……確かに、僕は君の義兄を殺してしまった……だけど、この命……失う訳にはいかないんだ」

 

明久がそう言うと、久秀は音が鳴る程歯を食い縛り

 

「そんなこと、許す訳にはいかないのよ!!」

 

と言って、懐からそれを抜いた。

黒く塗られた小さい凶器

拳銃だった。

 

「そんな物まで!?」

 

「貴方を殺すために、闇ルートで入手したのよ」

 

明久が驚愕すると、久秀はそう言った。

そして、照準を定めた。

謙信に

 

「謙信!」

 

久秀の狙いに気付いて、明久は謙信の前に出た。

その瞬間、鈍い炸裂音が鳴り響いて、明久が押し飛ばされるように倒れた。

それを見て、誰もが明久が死んだと思った。

だが

 

「成功した……」

 

と、明久が起き上がった。

そして明久は、刀を掲げた。

よく見ると、明久の持ってる刀の鍔

そこに、銃弾がめり込んでいた。

 

「へ、変則防御っ!」

 

それは、吉井家が得意とする防御方法だった。

過去には、柄尻で槍の突きを受け止めたとする記述が文献にあったらしい。

それを明久は、土壇場で成功させたのである。

すると、久秀が

 

「だったら、当たるまで撃つまでっ!」

 

と言って、狙いを定めた。

その時

 

「させません!」

 

と颯馬が、小刀を投げた。

颯馬が投げた小刀は、久秀の持っていた拳銃の銃口に突き刺さった。

それを見て、久秀は引こうとしていた人指し指を止めた。

もし撃てば、銃口爆発が起きるからだ。

そうなれば、大怪我は必至だ。

確かに久秀は、復讐に全てを賭けた。

しかし、明久を殺すことなく重傷を負ったら目的を成すことが出来ない。

その躊躇が、久秀の行動を鈍らせた。

その隙を突く形で、明久達が動いた。

七聖剣や明久達は移動歩法の奥義、縮地で相手に肉薄。

雄二達は、手近な相手に掛かった。

僅か数秒で、七聖剣により残っていた久秀の部下は全滅。

明久は久秀に肉薄。

久秀が持っていた拳銃の上半分を、切り飛ばした。

 

「終わりだよ、松永さん……君の復讐は、ここまでだ……」

 

明久はそう言いながら、刀を突きつけた。

そして久秀は、諦めたように俯いた。

そうして、一人の復讐劇は終わりを告げた。

 


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