僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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軍師と弓使い

優子は、颯馬が起きるまで膝枕し続けていた。

どれほど時が経っただろうか。

ある時、颯馬が目を覚ました。

 

「ん……眼鏡……」

 

やはりマトモに見えないのか、颯馬は眼鏡を探そうと右手を伸ばした。

その直後、優子も大分油断していたから反応が遅れた。

その結果、颯馬が伸ばした右手は優子の慎ましい胸に当たった。

 

「ひゃあ!?」

 

「え」

 

颯馬も寝ぼけていたのだろう。

それが最初はわからなかったらしい。

数秒間は触っていた。

すると颯馬は、素早く右手を動かして優子が仕舞った眼鏡ケースを取り出した。

そして、眼鏡を掛けると

 

「ゆ、優子さん!?」

 

と驚きながらも、一気に離れた。

この時、二人は互いに顔が真っ赤だった。

互いに、羞恥からだ。

優子は胸元を両手で隠し、颯馬はアワアワと両手を動かしていた。

そして、どれ程時間が経ったか。

優子が深々と溜め息を吐いて

 

「完全に油断してたわ……」

 

と呟いた。

その直後、颯馬は深々と頭を下げて

 

「すいませんでした!」

 

と謝罪した。

すると優子は

 

「天城くんは寝ぼけてたんだし、いいわよ」

 

と言った。

だが颯馬は、納得出来ないらしく

 

「ですが……」

 

と言い淀んだ。

すると、優子が右手の人差し指を立てて

 

「だったら、私のお願いを一つ聞く。で、どう?」

 

と提案した。

それを聞いた颯馬は、頷きながら

 

「分かりました。僕に出来ることなら、最善を尽くします」

 

と言った。

それを聞いた優子は

 

「だったら、今日は一日付き合いなさい。それでどう?」

 

と言った。

それを聞いた颯馬は、軽く目を見開いてから

 

「僕でよければ、最後まで」

 

と返した。

それを聞いた優子は、満足そうにしながら立ち上がろうとした。

だが、ガクンと膝が曲がって倒れそうになった。

だがそれは、素早く颯馬が抱き止めて阻止された。

 

「足、痺れてるんですね?」

 

「ええ……」

 

颯馬の問い掛けに、優子は端的に答えた。

それを聞いた颯馬は、少し考えると

 

「よっ」

 

と気合いを入れて、優子をお姫様抱っこで持ち上げた。

 

「あ、天城くん!?」

 

「そこのベンチに行きましょうか」

 

優子が顔を向けると、颯馬は微笑みながらそう言った。

そして颯馬は、優子が返事をする前に歩き出した。

この時、優子は

 

(わっわっわっ! 初めてのお姫様抱っこだ! 恥ずかしい!! というか、天城くんが予想以上に力がある!?)

 

とパニック状態だった。

そしてもし知り合いに見られたら、彼女は暫く立ち直れないかもしれない。

そうこうしている間に、颯馬は近くのベンチに優子をゆっくりと座らせた。

 

「ありがとう……」

 

「いえ、大丈夫ですよ」

 

優子がお礼を言うと、颯馬は軽く首を振った。

そして、周囲を見て

 

「少し、待っててください」

 

と言って、離れた。

そして、少しすると

 

「どうぞ」

 

と優子にソフトクリームを差し出した。

どうやら、近くの売店で買ってきたらしい。

 

「あ、ありがとう」

 

「いえ。僕も、お茶を買ってもらいましたからね」

 

優子がお礼を言うと、颯馬はそう返した。

しかも気づけば、颯馬は優子が買ったお茶を持っていた。

恐らく、ソフトクリームを買いに行った時に回収したのだろう。

そして颯馬は、優子の隣に座るとお茶を飲み始めた。

優子は優子で、ソフトクリームを食べ始めた。

そして、優子がソフトクリームを食べ終わると二人は移動を始めた。

次の場所に向けて。


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