僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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まさかの連投
さて、最終章の始まりです


幕開け

「……招待状ね」

 

と言ったのは、その手に便箋を持った明恵である。

便箋には吉井明久様へ、と書かれており、差し出し人の名前が

 

「松永久秀……」

 

その名前を見て、明恵は目を細めた。

松永家。

それは代々、策謀を練ることを得意とする家柄だ。

そして、久秀。

これは、当主が名乗る名前である。

 

「……それで上杉や武田、真田にも招待状が?」

 

「はい、間違いありません」

 

明恵からの問い掛けに、一人の老人が答えた。

その老人は、第十八代目天城颯馬だ。

第十九代目は、貴久を狙った凶弾から貴久を守り死亡。

それにより、第十八代目が現在の天城家を動かし、颯馬の教育をした。

そういう意味でも、そして何より、その情報収集能力でも、明恵が最も信頼する人物である。

 

「それと、時間が掛かりましたが、判明しましたことがあります」

 

十八代目はそう言うと、懐から封筒を出して明恵に渡した。

明恵は中から紙を出すと、一読し

 

「……間違いないのね?」

 

と十八代目に問い掛けた。

その問い掛けに、十八代目は頷いて

 

「は……間違いありません」

 

と答えた。

それを聞いた明恵は

 

「……彼等に、何時でも動けるように伝えてくれる?」

 

と十八代目に告げた。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

所は変わり、文月市。

朝から明久は、自室で夏休みの宿題を済ませていた。

そして終わったらしく、ノートを閉じて背伸びした。

そのタイミングでドアが開いて

 

「明久、お茶が入りましたよ」

 

と謙信が入ってきた。

 

「ん、ありがとう」

 

明久は湯飲みを受け取り、一口啜ると

 

「謙信、宿題は?」

 

と問い掛けた。

すると謙信は、自信満々といった様子で

 

「既に終わってます」

 

と答えた。

そして、明久を見て

 

「明久は、それで?」

 

と言いながら、首を傾げた。

すると明久は、頷いて

 

「うん。これで終わりだね」

 

と答えた。

八月上旬、明久と謙信は既に夏休みの宿題を終えた。

一応、自由研究がまだ残ってはいるが、そちらも終わりの目処は着いていた。

そして二人でお茶を飲んでいた時だった。

 

「ん? 雄二?」

 

明久の携帯に、雄二から電話が掛かってきた。

明久は携帯を取ると

 

「もしもし、どったの?」

 

と雄二に問い掛けた。

 

『明久、今暇か?』

 

「うん、宿題も終わったしね。どったの?」

 

明久は雄二の問い掛けに、そう返した。

すると

 

『いや、なにな。さっき翔子の親父さんから、招待券貰ったんだよ。遊園地の』

 

と言ってきた。

それを聞いて明久は

 

「つまり、お誘いってこと?」

 

『そうだな。今、連絡付いた奴等(一部無視)は全員誘った。どうする?』

 

明久からの問い掛けに、雄二はそう言ってきた。

それを聞いて、明久は

 

「少し待ってね」

 

と断り、謙信に視線を向けた。

 

「謙信、今日の予定は?」

 

と問い掛けると、謙信は微笑みを浮かべ

 

「大丈夫ですよ。準備しますね」

 

と言って、部屋から出た。

それを見送ると、明久は

 

「謙信も大丈夫だって。何処に行けばいい?」

 

と雄二に問い掛けた。

すると、雄二は

 

『そんじゃあ、翔子の家に三十分後に集合だ』

 

と言った。

 

「分かった、じゃあね」

 

明久はそう言うと、通話を切って着替え始めた。

そして、三十分後

 

「これで、全員だな」

 

霧島家前に、何時ものメンバーが集まっていた。

 

「……車に乗って」

 

と翔子が指し示したのは、バスだった。

しかも、リムジンバス。

 

「まさか、また乗ることになるなんてね」

 

「何が起きるか、分からないもんだね」

 

と優子と愛子は言いながら、リムジンバスに乗った。

そして全員が乗ると、リムジンバスは静かに走り出した。

その時になって、ようやく

 

「何処に行くのさ?」

 

と明久は問い掛けた。

すると、翔子が

 

「……霧島財閥グループが建てた、埋め立て地式遊園地。ファンタジア」

 

と言った。

そして、約一時間後

 

「皆様、お気をつけてお下りくださいませ」

 

と添乗員に言われながら、一行は下りた。

そして翔子に先導される形で見たのは、中世ヨーロッパを彷彿させる巨大な門だった。

すると、翔子が

 

「……今日は、プレオープン。中に入れるのは招待された人達だけだから、ゆっくり回れる」

 

と言った。

確かに、駐車場には車が少ない。

 

「いいのですか?」

 

「……寧ろ、呼ばないほうが問題」

 

信玄が問い掛けると、翔子はそう答えた。

そして、翔子が先頭になって中に入った。

すると入口で、小型端末を渡された。

それは、遊園地のマップが見れるようになっていた。

更に、行きたい場所をタップすると最適なルートな行列具合が表示されるようになっていた。

 

「人数分渡されるんだね……」

 

「流石は、霧島財閥グループ……」

 

「……規模が半端じゃない」

 

と一同は口にした。

その端末ですら霧島財閥グループ製なのだから、末恐ろしい。

 

「……一応、泊まれるようにホテルもある」

 

と翔子は言いながら、端末を操作した。

すると、そのホテルの宿泊状況も表示された。

一体、幾ら注ぎ込んだのか。

それを考えて、金銭感覚一般人の明久は身震いした。

 

「それじゃあ、自由行動な。昼になったら、このレストランに集合だ」

 

雄二はそう言って、端末を全員に見せた。

こうして、ファンタジア巡りが始まった。


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