僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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更新が遅くってすいません

頑張って書きますので、ご了承ください

6月6日 加筆修正


驚愕の帰宅 道しるべ

FクラスがDクラスを制した日の放課後

 

「なるほど、あんたが明久の幼馴染みか」

 

「はい、上杉謙信と言います。よろしくお願いします」

 

「おう。俺は坂本雄二だ。好きに呼んでくれ」

 

雄二達は帰り道で自己紹介していた。

 

雄二と謙信はお互いに握手すると

 

「そういやぁ、明久。昼間はすまなかったな。俺のクラスの島田が迷惑をかけた」

 

と雄二は、明久に頭を下げた。

 

「え? なにがあったの?」

 

明久は雄二の突然の謝罪に、困惑した。

 

「……吉井は寝てたから、知らないのも仕方ない」

 

「私が教えます」

 

謙信は明久に昼にあったことを説明した。

 

すると明久は、顔を青くして

 

「よ、よりによって…あの船越先生なんて……」

 

と震えた。

 

「本当に悪かった! 島田には厳しく言っといたし、次に同じようなことをしたら、厳罰をするって言っといたから、それで勘弁してくれ」

 

雄二はそう言いながら、両手を合わせて頭を下げた。

 

「ああ、大丈夫だよ……それにしても僕、島田さんになにかしたかな?」

 

と明久は頭を抱えた。

 

すると、十字路に差し掛かり

 

「んじゃあ、俺と翔子はこっちだ」

 

と雄二は、右の方を指差した。

 

「……吉井、上杉。また明日」

 

「またね」

 

「また明日」

 

「じゃあな」

 

挨拶をすると、雄二と翔子は右に明久と謙信はまっすぐ進んだ。

 

そして、若干気まずいのか二人は黙ったまま歩いていた。

 

すると、明久が

 

「そういえば、謙信の家はどこなの?」

 

と問い掛けた。

 

すると謙信は顔を赤くして

 

「え、えっと………」

 

と下を向いた。

 

「謙信?」

 

「…………です」

 

「うん? ゴメン、よく聞こえなかったから、もう一回言ってくれる?」

 

明久が催促すると、謙信は深呼吸して

 

「あ……明久の部屋……です……」

 

と呟いた。

 

それを聞いた明久は、しばらく固まった。

 

そして、数回瞬きをすると

 

「謙信、ごめんね? なんか聞き間違いしたから、もう一回教えてくれる?」

 

と明久が再度聞くと、謙信は顔を赤くして

 

「だから、明久の部屋です……」

 

「リアリィ?」

 

「なんで英語なのかわかりませんが、本当です」

 

明久が呆然としていると、突如、明久の携帯が鳴った。

 

明久は携帯を開くと、画面を見た。

 

そこには

 

<母>

 

の文字。

 

「……もしもし?」

 

『あ、明久? 謙信ちゃんには会えたわよね? ってわけで、今日から一緒に住みなさい』

 

「なんでさぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

母親、吉井明恵(よしいあきえ)の言葉に、明久は叫んだ。

 

『なによ、うるさいわよ?』

 

「なんで、そんなことになったの!?」

 

『ふむ、綺麗事で固めた言い訳と本音、どっちを先に聞きたい?』

 

「じゃあ、まずは綺麗事で」

 

『じゃあ、言うわね? あんた、いい加減<あの事>に決着をつけなさい』

 

「…………」

 

母親の言葉に、明久は口を閉じた。

 

『別に、全部を忘れろとは言わないわ。けど、いい加減に乗り越えなさい。あれが理由であんたと謙信ちゃんが不幸になるのは、吉井家(うち)上杉家(あっち)も容認出来ないの。あんた達には幸せになってほしいから』

 

「そう………」

 

母親の言葉を聞いた明久は、そこで深呼吸をすると

 

「で、本音は?」

 

と問いかけた。

 

『いやぁ、早く孫が見たいなぁ~って』

 

「そんなんだと思ったよ! こんちきしょう!!」

 

シリアスが台無しである。

 

『あ、でも、学生のうちに産むのは無しね? 避妊はきちんとしなさいね?』

 

「とんだ母親だよ!」

 

『なによ~、何時ものことでしょ? あ、それと』

 

「今度はなに!?」

 

『玲は縄で縛って、鎖で雁字搦めにしたから。安心しなさい』

 

「それは、心の底からありがとう」

 

母親の言葉に、明久は思わず頭を下げた。

 

明久の姉、吉井玲(よしいあきら)

 

彼女は頭脳明晰でスタイルもいい。

 

だが

 

一般常識がまったくと言っていいほど、無いのだ。

 

しかも、実の弟の明久を

 

家族としてではなく、一人の異性として愛している。

 

と公言しているのだ。

 

それが理由で、明久は何度も彼女に襲われて(比喩に非ず)

 

そして玲は、謙信に何度も襲撃をかけているのだ。

 

しかも、料理の腕はある意味

 

必殺仕事人レベルなのである。

 

明久は以前、それを食べさせられて、一週間の間、生死の境を彷徨ったのを覚えている。

 

閑話休題

 

『まぁ、謙信ちゃんの荷物はあんたの部屋に送っといたし、仲良くしなさいね~』

 

とそこで通話が切れた。

 

通話が切れたのを確認した明久は、携帯を閉じて

 

「……それじゃあ……行こうか…」

 

と、謙信に手を差し出した。

 

「はい……」

 

謙信は明久の手を、顔を赤くしながら掴んだ。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

そして、明久の住んでアパートに到着。

 

「うわぁ……いつの間にか、荷物が」

 

どうやら、親が一回来て鍵を開けたらしく、居間には大量の荷物が置かれていた。

 

それらは全て、謙信の荷物だった。

 

ダンボールで10箱ほどだろう。

 

明久はそれを確認すると

 

「それじゃあ、空いてる部屋に案内するね」

 

明久は廊下に出て、右側のドアを開けた。

 

「ここを使ってね。僕の部屋は目の前のドアだから」

 

と、明久が指差した先に、もう一つドアがあった。

 

「わかりました」

 

謙信が頷いたのを確認すると、明久は居間に戻って、ダンボールを持ち上げた。

 

「あ、いいですよ! 自分で運べます!」

 

謙信は慌てて近寄るが

 

「ううん、大丈夫だよ。それに、女の子に重い荷物を運ばせるわけにいかないでしょ」

 

と明久は、微笑みながら拒否した。

 

「あ、ありがとうございます………」

 

「どういたしまして」

 

明久は返事をすると、一気にダンボールを運んだ。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

そして、数時間後。

 

「それじゃあ、そろそろ、ご飯にしようか」

 

と明久は、水色のエプロンを着た。

 

その時だった。

 

「あ、私も手伝います」

 

と、謙信が手を挙げた。

 

「え? でも………」

 

「さすがに、明久程ではないですが、私も料理は得意ですよ」

 

と微笑みながら、蒼いエプロンをつけた。

 

「それじゃあ、一緒に作ろうか」

 

「はい」

 

明久の言葉に謙信は、微笑みながら台所に立った。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

そして、夕食。

 

机の上には、肉じゃが、鮭の塩焼き、みそ汁に白米と純和風な食事。

 

「うん。謙信の肉じゃが、美味しそうだね」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

明久に褒められて、謙信は顔を赤くした。

 

「いただきます」

 

そう言うと二人は、料理を食べ始めた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

で夕食後。

 

「それじゃあ、僕が片付けるから、謙信は先にお風呂に入って」

 

「いえ、明久が先にどうぞ。ここの本来の家主は明久なんですから」

 

「え? でも……」

 

「大丈夫ですよ。それに、急に来たのは私ですから」

 

と謙信は微笑みながら、明久の背中を押した。

 

「う、うん……それじゃあ、お言葉に甘えて」

 

と明久は、居間を出た。

 

「…………」

 

謙信はそれを見送ると、急いで自分の部屋に向かった。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

風呂場

 

明久は湯船に浸かっていた。

 

そして、気付けば左目の眼帯も外れており、その左目は閉じられていて、(まぶた)の上には縦に傷が走っていた。

 

「はあ………」

 

明久はため息を吐くと、湯船から出た。

 

そして、体を洗っていた。

 

その時だった。

 

ガラッ

 

突如、ドアが開いた。

 

「し、失礼します………」

 

まぁ、開けられるのは彼女しかいない。

 

「なんでさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

風呂場から、某赤い弓兵風の明久の悲鳴が轟いた。

 

明久は慌てながら、タオルで股間を隠した。

 

「なにをそんなに慌てるのですか? これ以上も経験しているとというのに」

 

謙信は微笑みながら、明久に近づいた。

 

「い、いや…そうだけどさ! ってか、謙信がこう来るなんて予想外デスヨ!?」

 

「え、えっと………明恵さんから、こうしたほうがいいと聞きまして……」

 

「あ、あのバカ母親は……!」

 

謙信の言葉に明久は、頭を抱えた。

 

明久の脳内では、母親が笑いながら親指を立てている絵が浮かんだ。

 

「と、とりあえずは、背中を洗いますね」

 

謙信はスポンジで、明久の背中を洗い始めた。

 

「明久の背中……大きいですね…」

 

「そりゃ、男の子ですから」

 

謙信の言葉に、明久は苦笑いしながら答えた。

 

すると、謙信が明久の背中に額を当てた。

 

「謙信?」

 

不思議に思った明久が声をかけると

 

「明久……あの時は、ありがとうございました」

 

謙信はポツリと呟いた。

 

「え?」

 

明久はなんのことか分からず、首をかしげた。

 

「あの時、明久が居なければ、私は今ここに居ませんでした……」

 

<あの時>で分かった明久は、うなずきながら

 

「ああ……あれは当然だよ。好きな女の子を護るのが、男の子の勤めなんだからね」

 

「でも……そのせいで……明久は左目を……それに……心にまで傷を負わせてしまった……」

 

そう言っている謙信の言葉は、震えていた。

 

「謙信……」

 

「それになにより……<あれ>以来……明久は剣を振るってないと聞きました………」

 

「…………」

 

謙信の言葉に、明久はなにも喋れなかった。

 

「明久の太刀筋は綺麗だったのに……私のせいで、あなたから剣を奪ってしまった!」

 

それは謙信の心からの慟哭だった。

 

「違うよ謙信! あれは僕が護りたかったから!」

 

明久が否定しようとするが

 

「そもそもの原因は、私が作ったんじゃありませんか!」

 

謙信の言葉に遮られた。

 

気付けば、謙信の目から涙が流れていた。

 

「謙信……」

 

「明久は! 私のために、本来、傷つく必要はなかったんです……それなのに……私が愚かだったから……明久に剣を振るわせてしまい……その手を……血に濡れさせてしまった……」

 

謙信は泣きながら、明久の背中を叩いていた。

 

明久は少し考えると、体を謙信に向けて

 

「違うよ、謙信………」

 

「あ、明久……?」

 

謙信を優しく抱きしめた。

 

「僕はね…護るために、剣を振るうって決めてたんだ」

 

「明久………」

 

「だから、あの行動自体に悔いは無いさ」

 

明久は微笑みながら、そう告げた。

 

すると、謙信は明久の胸に顔を当てて

 

「明久………」

 

「ごめんね、謙信……心配させてたね……」

 

明久はそう言いながら、謙信の頭を撫でた。

 

「明久……明久……」

 

明久は、謙信が泣いてる間

 

ずっと、頭を撫でていた。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

場所 明久の部屋

 

そこには、明久の他に謙信も居た。

 

謙信の寝巻きは浴衣らしく、淡い水色の浴衣に蒼の帯が栄えて見える。

 

今回は謙信たっての願いで、一緒に寝ることになったのだ。

 

「え、えっと……どうぞ……」

 

「お、お邪魔します……」

 

明久が先に入って、布団を持ち上げながら言うと、謙信は緊張しながら入った。

 

そして、謙信が入ると、明久は持ち上げていた布団を下ろした。

 

「明久は暖かいですね……」

 

「謙信だって」

 

二人は布団の中で抱きしめあっていた。

 

「謙信……僕、頑張るよ……」

 

「明久……」

 

「まだ剣も握れないけど……それでも、少しずつ頑張るよ」

 

「はい……」

 

「僕の剣が……謙信を……皆を護るから……」

 

「はい……」

 

「だから………一緒に居てくれる?」

 

「愚問ですよ、明久」

 

「謙信……」

 

「私は常に、明久とともに居ます。それが私の誓いなんです」

 

謙信は微笑みながら、明久を見つめた。

 

「ありがとう……」

 

明久は謙信を強く抱きしめた。

 

謙信もそんな明久を抱きしめた。

 

 

 

これから二人にどんな試練が待ち受けているのか

 

それは、誰にも判らない。


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