僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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予定変更して、一人追加します


沖縄旅行 二日目 1

翌日

 

「ごちそうさまでした」

 

「お粗末様でした」

 

朝食を食べ終わった全員が一斉に言うと、明日菜は微笑みながら軽く頭を下げた。

そして、明日菜は旦那さんと食器を片付けていった。

その後、一行はペンションから出た。

そして、車に乗ると

 

「今日は一旦、沖縄島に行くわよ」

 

と明恵が言った。

 

「沖縄に来たのなら、やっぱり行かないといけない場所があるからね」

 

明恵の言いたいことを、全員は理解した。

日本人であり、学生ならば知らないといけないだろう。

第二次世界大戦時、空爆以外で数多くの民間人が亡くなった日本唯一の地。

それが、沖縄だ。

故に、沖縄には戦史に関する施設が多数ある。

船で移動した後、さらに車で移動。

そして、到着したのはひめゆりの塔だ。

ここは、第二次世界大戦時に数多くの女学生が亡くなった場所に建てられた施設だ。

博物館となっている区画には、当時に使われた物品や地下防空壕の中から発見された物品が飾られている。

それを学生一同は、神妙な表情で見ている。

 

「私達と大差ない歳の女学生達が、ここで……」

 

「今の世も、決して平和とは言えませんからね……無関係ではいられませんね……」

 

「これ……懐中時計かな?」

 

「だね……熱で変形しちゃってる……」

 

「……これ……」

 

「御守り……か? 半分以上燃えて、分からないな」

 

展示を見て、一同は口々にそう言いながら進んだ。

先に進むと、少し開けたフロアに出た。

そこでは、ビデオが流されている。

白黒のビデオで、内容は第二次世界大戦末期の沖縄上陸戦だった。

アメリカ軍兵士が、火炎放射機を洞窟に向けて放ち、隠れていたらしい人が火だるまになって出てきて、次々と倒れていく。

それを辛そうに見ていると、映像が切り替わった。

次に映ったのは、川原で一人の女学生が両手を上げており、それをアメリカ軍兵士が受け入れてるシーンだった。

そのビデオを、学生一同は真剣に見ていた。

ふとその時、明久は右前方に座っている人物に気が付いた。

黒に近い紺色の髪をショートカットにした少女だ。

明久は首を傾げながらも

 

「虎綱さん?」

 

と呼んだ。

 

「はい? ……あ、明久さん?」

 

「あ、やっぱり虎綱さんだった」

 

明久に呼ばれて振り向いたのは、明久の予想通りの人物

虎綱春日(とらつなはるひ)だった。

小柄な体躯に、右目を隠す髪型

気弱そうな表情だが、そこからは予想出来なさそうな弓の腕を誇る少女だ。

もちろんだが、謙信達の知り合いでもある。

彼女の家は武田家を主家に仰ぐ家系で、もちろん昔からの付き合いだ。

だから、幼なじみメンバーを見て春日は笑みを浮かべた。

だが、雄二達の姿を見ると僅かに体を震わせた。

それを見て、幼なじみメンバー達は春日が人見知りだということを思い出した。

 

「大丈夫ですよ、春日」

 

「こいつらは、俺達が今行ってる学校の級友だ」

 

「人柄は、保証します」

 

と信玄達が言うと、まだオドオドしていたが

 

「と、虎綱春日です。よろしくお願いいたします」

 

と自己紹介した。

すると、雄二達は順番に

 

「俺は坂本雄二だ」

 

「……霧島翔子」

 

「木下優子よ」

 

「木下秀吉じゃ」

 

「……土屋康太」

 

と名乗りながら、握手した。

すると、信玄が

 

「一応言っておきますと、春日は二十一歳ですよ」

 

と言った。

それを聞いて、雄二達は目を見開いた。

小柄な体躯と可愛らしい服装と幼い顔立ちから、まさか年上とは思っていなかったからだ。

すると、春日は微笑みながら

 

「昔から、年下に見られてましたから、大丈夫ですよ」

 

と言った。

彼女、虎綱春日は武田家を主家と仰ぐ現虎綱家の当主だ。

現在は武田家守備の総責任者である。

 

「虎綱さんは、旅行?」

 

「はい、一泊二日の沖縄旅行です」

 

明久が問い掛けると、春日はそう答えた。

よく見ると、彼女の座っている席の右横には大きめのボストンバッグが置いてある。

恐らく、それが荷物なのだろう。

だが、春日の顔は僅かに悩んでるように見えた。

それに気付いて、信玄が

 

「春日、何かあったのですか?」

 

と問い掛けた。

その問い掛けに、春日は僅かに体を震わせてから

 

「あ、あの……実は……」

 

と語りだした。

なんでも、彼女は沖縄では民宿に宿泊する予定だったらしい。

しかし、今朝がたにその民宿でガス漏れが発覚したようだ。

その影響で、その民宿は緊急点検をしなければなくなり、泊まれなくなってしまったのだ。

それを知ったのは、那覇空港に着いた時だった。

那覇空港の待ち合わせ指定場所に向かい、迎えと思った人に話し掛けた時に説明されたのである。

それから春日は、取り敢えず事前の予定通りに観光しながらホテルを探していたのだが、中々見付からないでいて、途方にくれていたらしい。

その時に、明久達と偶然(作者によって)出会ったのだ。

その話を聞いて、信玄は少し考えてから

 

「明恵さん」

 

と明恵に視線を向けた。

そして明恵も、頷くと電話を始めた。

数分後

 

「春日ちゃん、私達が泊まってるペンションに来なさいな」

 

と明恵が言った。

それを聞いて、春日は

 

「え、よろしいんですか!?」

 

と声を上げた。

すると明恵は、微笑みながら

 

「ペンションの方々も良いと言ってくれたし、何よりも、困ってる知り合いを放置するのは寝覚めが悪いしね」

 

と言った。

それを聞いても、春日はまだ悩んでる様子だった。

だが、信玄が

 

「春日、吉井家当主の奥方がああ言ってくださったのです。御厚意を示してくれたのです。甘えなさい」

 

と言った。

それを聞いて、春日は

 

「わかりました。明恵様の御厚意に甘えさせていただきます」

 

と頭を下げた。

こうして、同行者が一人増えた瞬間だった。/


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