僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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短いが許してくだせえ
代わりに………フフフ………


一日目、後

「食材を回せ、料理長! メインディッシュだ!」

 

「は、はい!」

 

とキッチンに立っているのは、明久と今居る別荘の料理長だ。

とはいえ、明久の素早い調理に料理長が気圧されていた。

その光景を見て、明恵が

 

「この体は、レシピで出来ている……血潮は鉄で心は料理人……幾多の調理を越えてメシマズは無く、お残しも無し……彼の者は常に研究し、新しい料理を覚えていく……故にその体は……無限のレシピで出来ていた」

 

と言って、それを聞いた信繁達が吹いた。

 

「くっそ……ぶっほっ」

 

「卑怯な………ぶふっ」

 

吹いている信繁と雄二を尻目に、明恵は拳を握り締めて

 

「明久のクラスは、コックね!」

 

と断言した。

その直後

 

「誰がサーヴァントか」

 

「あ痛っ!?」

 

調理を終えた明久が、その手に持っていた皿の底で、明恵の頭を叩いた。

そして、持っていた皿を机の上に置くと

 

「というわけで、沖縄料理です! いやぁ、やっぱり新しい料理は楽しいね!」

 

と満足そうに頷いた。

それを見て、何人かは

 

(そんなんだから、コックと呼ばれるんだよ)

 

と内心で突っ込んだ。

 

「明久様の料理への意気込みは凄まじいですね……気圧されましたよ」

 

と言ったのは、明久と同じように皿を持った女性だった。

その女性が、今居る別荘の本来の料理長だ。

 

「ごめんなさいね、明久が」

 

「いえいえ、教えてるこちらが楽しいくらいですよ」

 

明恵の謝罪の言葉に、その女性は朗らかに笑いながら返答した。

そして、持っていた皿を机に置くと

 

「皆様、私はこの別荘の料理長を勤めます。朝田明日菜と申します。短い期間ですが、皆様のお食事を御用意させてもらいます」

 

と挨拶した。

それに各々挨拶すると、他に使用人達により次々と料理が運ばれてきた。

その料理は全て、先ほどの明久が言った通りに沖縄料理だった。

 

「どうぞ、お召し上がりくださいませ」

 

と明日菜が頭を下げると、食事が始まった。 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

食事から時が経ち、明久は入浴していた。

明久が眺めている夜空には、満月が浮かんでいる。

そんな明久の隣には

 

「月が、綺麗ですね……」

 

謙信が居た。

 

「そうだね……あ、夏目漱石が本当にそう言ってたのかは、諸説あるからね」

 

「明久、誰に説明しているのですか」

 

明久の説明に謙信は突っ込みを入れて、明久の背中に背を預けた。

今の時間は、午前0時。

もう殆どのメンバーは寝静まり、別荘は静かだった。

他に起きているのは、明恵くらいだ。

そしてその明恵は、ベランダで月見酒と洒落混んでいる。

二人もとっくに入浴は済ませ、後は寝るだけだった。

しかし、どうにも目が冴えていた。

だから二人は、一緒に露天風呂に入ることにした。

ただただ、ゆっくりと時の流れに身を任せて入浴していた。

ふとその時、謙信が付けていた背を離した。

それに気が付いた明久は、謙信が上がるのかと思って振り向いた。

その直後、明久の首筋にスルリと謙信の腕が絡み付いて

 

「ん……」

 

「ん……」

 

二人の唇が、重なった。

予想外だったからか、最初こそ驚いていた明久だったが、すぐに謙信とのキスに意識を傾けた。

 

「ん、はむ……」

 

「はむ、ん……」

 

気付けば、明久は謙信を抱き締めていた。

優しく

しかし、力強く。

愛しい人だから

最愛の恋人だから、離したくない。

その思いが、二人の中にあった。

そして、短くも長いキスは終わった。

二人はゆっくりと唇を離すと、ある種の熱に浮かされた表情で互いを見つめた。

そして、少しすると

 

「部屋に、行く?」

 

と、明久が問い掛けた。

その問い掛けに対して、謙信は蕩けた表情で

 

「はい……」

 

と答えた。

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「ん……」

 

今、明久の腕の中で、裸身の謙信が眠っていた。

そんな謙信を、明久は優しく撫でた。

 

「謙信……血に濡れた僕を愛してくれて、ありがとうね……」

 

謙信が寝ているのを知っていたが、明久は語り掛けた。

 

「だから、もう少し……もう少しだけ待っててね、謙信……必ず、蒼き剣聖として、帰るからね……」

 

明久はそう言うと、寝ている謙信の額に優しくキスをした。

そして、寝ている謙信を優しく抱き締めながら眠りについたのだった。


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