僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

57 / 82
待たせたな(蛇並感)


解決

明久達が到着した時、既にAクラス男子対B~Fクラス男子連合の戦いは始まっていた。

数では劣勢だが、Aクラス男子達は防衛線を維持していた。

それは、連携を重視しているからだ。

Aクラス男子達はやはりAクラスなだけあり、点数が非常に高い。

だからと言うべきか、個人で戦い勝つのが多かった。

しかし、数の差で押されて負けるというデータがあった。

そしてそれは、Cクラス戦で実証されている。

対Cクラスの時、一人の男子が突出し過ぎて孤立。

結果、数人の集中攻撃を受けて負けたのである。

たった一つの敗北。

しかし、この敗北がAクラスの生徒達に一つの事実を教えた。

それは、連携の重要性。

一人では無理でも、二人なら出きることがある。

だからAクラス男子達は、暇さえあれば勉強だけではなく連携の訓練もしてきた。

その結果が、今ここに実った。

Aクラス男子達は、四倍の差に耐えていた。

戦闘が始まって、約三十分

その間、Aクラスは誰一人欠けることなく戦えていた。

しかし、数の差は如何ともしがたい。

四倍の差

それにより、徐々に後退を余儀なくされていた。

明久達が到着したのは、正にそのタイミングだった。

 

「皆、いくよ!」

 

「おうよっ!」

 

試獣召喚(サモン)!」

 

明久の言葉を皮切りに、後ろに続いていた雄二達は一斉にキーワードを唱えて、召喚獣を召喚した。

 

数学

Fクラス代表、坂本雄二 556点

古典

Fクラス、武田信繁 499点

Aクラス、上杉謙信 487点

保健体育

Fクラス、土屋康太 705点

家庭科

Aクラス、吉井明久 587点

 

明久達は召喚獣が現れたのを確認すると、一気に突入した。

まさか増援が現れるとは予想してなかった連合部隊は、慌てた。

その隙を突いて、Aクラス男子達は一気に攻勢に出た。

元々が地力の高いAクラスだ。

攻勢に出れば、その攻撃力の高さで押しきれる。

それにより、男子連合部隊は勢いを削がれて、防戦一方になっていった。

その光景に防衛側は勝てると確信し、鬨の声を上げながら攻勢を強めた。

もはや、防衛側が勝つのは時間の問題かと思われた。

その時、不審な人影が動いていた。

その不審人物達は、戦場を大きく回って、明久へと近づいていた。

戦闘に集中している明久の背後へ。

そして、明久が一人を倒して、もう一人と交戦を始めた。

その瞬間、不審者達は明久目掛けて飛び掛かった。

さて、読者の皆さんはお気付きだろうか?(メタいが、気にするな)

防衛側に参加した人数が少ないことに。

何よりも、彼らが明久に降り掛かる悪意に気づかないわけがない。

明久に不審者達の攻撃が当たる直前、隠れていた颯馬、幸村、秀吉の三人が不審者達を取り押さえた。

その取り抑えた人物達を見て、颯馬は

 

「やはり来ましたね……島田さん、姫路さん、清水さん」

 

と言った。

そう、明久を襲おうとしたのは、本来は入浴中の筈の三人だった。

 

「離してください!」

 

「あんた達、離しなさいよ!」

 

「この豚野郎! お姉さまを離しなさい!」

 

三人はそう喚きながら、脱出しようと暴れた。

しかし颯馬達はそれを抑えたまま、戦いの邪魔にならないようにと、近くの別の部屋へと引きずった。

そして簡易的に拘束すると、壁際に座らせた。

 

「今すぐに、解きなさいよ!」

 

「そうです! 吉井君を攻撃出来ません!」

 

「どうせ、あの豚野郎が真犯人に決まってます!」

 

三人はそう喚くが、颯馬はそれを無視して

 

「清水さん……全部、分かってるんですよ」

 

と告げた。

次の瞬間、清水の表情が変わった。

 

「どういう……ことですの?」

 

清水が問い掛けると、颯馬は自分の右耳部分を指差した。

そこにあったのは、小さな機械だった。

清水が眉を潜めていると、颯馬は機械を操作した。

すると、颯馬のメガネに映像が投影された。

 

「最新のインターフェイスです……首尾は?」

 

『ビンゴです。軍師颯馬……清水美春のノートパソコンから、盗撮映像と盗聴音声が見つかりました』

 

敢えて聞こえるようにしていたのだろう。

そこに居た六人の耳に、男の声が聞こえた。

颯馬が頷くと、秀吉が部屋に据え付けられていたノートパソコンを持ってきた。

颯馬がそのノートパソコンとインターフェイスをコードで繋ぐと、画面に清水の物らしきノートパソコンが映った。

それを見て、清水は息を飲むがすぐに

 

「人の物を勝手に触るなっ! プライバシーの侵害ですわ!」

 

と叫んだ。

しかし、颯馬は冷静に

 

「その前に、貴女は盗撮ならびに盗聴。更には脅迫をしてますよね? 今回の合宿、小型カメラを設置する時に、一人脅迫してますよね? 見られたから黙るようにと」

 

と目に冷酷な光を宿しながら、そう言った。

それは幸村と謙信、翔子、優子達が極秘裏に聞き込み調査をした結果だった。

脅されたのは、清水と同じDクラスの女子だった。

その女子は浴場に入ったが、専用の薬用シャンプーを籠に忘れたことに気づいて、取りに戻った。

その時に、見てしまったのだ。

清水が小型カメラを仕掛けていたのを。

もちろん、その女子は最初は清水を諫めようとした。

しかし、そこで清水はその女子が学校に密かにバイトをしていることで脅迫したのだ。

文月学園では、無届けでバイトをした場合、最悪では停学すら有り得るのだ。

清水はそれで女子を脅迫し、むしろカメラの設置を手伝わせたのだ。

それにより、清水が設置したカメラの個数と場所が判明。

調べていたのである。

用心深い清水のことだから、手元に記録端末を持っているはずだと。

そもそも無線小型カメラだと、データを送られる範囲は非常に限られる。

最大で、半径百m程だ。

だから、持ってくる必要があるのだ。

データを記録するための端末が。

そしてそれは、吉井家から来た調査班が電波探知機を使って見つけた。

これで、証拠は全て揃った。

 

「美春……あんた……」

 

島田が驚いた様子で清水を見るが、清水は歯を噛み砕かんばかりに噛み締めて、颯馬を睨んでいる。

 

「さて……貴女方は一旦、ここから離れてもらいますよ……特に清水さん……貴女には、全て話してもらいます」

 

颯馬がそう言うと、窓から黒い装備を身に付けた一団が入って来た。

颯馬はその一団を見ると、三人を指し示して

 

「連れていけ」

 

と命じた。

それを聞いて、一団は無言で頷くと、三人が騒げないようにと猿轡を噛ませてから、また窓から去っていった。

颯馬はそれを見送ると、深々と溜め息を吐いて

 

「やれやれ……ようやく、静かになりそうですね……向こうはどうなってますか?」

 

「どうやら、防衛側が勝ったようじゃな。覗き側は全員、西村先生によって補習室に送られたようじゃ」

 

颯馬の問い掛けに答えたのは、秀吉だった。

秀吉の話しを聞いて、颯馬と幸村は安堵した。

こうして、覗き事件は一応の解決を見たのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。