僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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短い
許せ


出陣

明久達は入浴時間になるまで、自室に居た。

しかし、ただ待っていただけではない。

覗きの真犯人を情報面から探していた。

とは言え、作業は難航していた。

理由は単純。

余りにも、犯人に繋がる情報が少なすぎたのだ。

今のところ分かっているのは、見つけた小型カメラのメーカーとその小型カメラに残っていた指紋くらいである。

しかしその指紋の該当は、FにもAにも居なかった。

その時、康太が

 

「……一人だけ、心当たりがある」

 

と告げた。

明久達の視線が集中するなか、康太は懐から一枚の写真を取り出した。

その写真に写っていたのは、一人の女子生徒だった。

 

「……名前は清水美春……Dクラスの女子だ」

 

「Dクラスの?」

 

康太の説明を聞いて、信繁が首を傾げた。

何よりも、女子というのが気になった。

 

「なんで女子なんだ?」

 

雄二が首を傾げると、康太は写真を指差しながら

 

「……こいつは、盗撮した写真や映像の売買。更に、盗聴した音声を使って脅迫なんかもしている」

 

と語った。

それを聞いて、明久達は目をしかめた。

ぶっちゃけ言えば、康太も似た事をしている。

しかし、康太は脅迫まではしない。

 

「しかし、なんで女子が女子風呂に?」

 

颯馬が問い掛けると、康太が写真の清水を指差しながら

 

「……こいつは、百合だそうだ」

 

と端的に告げた。

明久達はそれを聞いて、全てを察した。

清水は自身の欲望を満たすためにカメラを仕掛け、その罪を擦り付けたのだ。

思い出してみれば、突撃してきたメンバーの中にも確かに居た。

あの時は西村の介入があったから、退いたのだろう。

しかし、今後はどう動くか分からないし、まだ彼女が犯人と決まった訳ではない。

彼女が真犯人なのかは、吉井家からの報告を待っているところである。

だがそれまでは、バカな騒ぎを起こす男子達を止める必要があった。

康太の情報収集では、今日も動くと聞いている。

だったら、今はそれを止めるのが最優先事項。

その男子確かにだが、康太の調べによると、他のクラスにも協力を要請していることがわかった。

その総数、約八十人

二年生男子の約八割である。

それに対するは、約二十名。

数の差は歴然だ。

だが、防衛側の士気は非常に高かった。

理由は単純。

人というのは守るためならば、実力を越えるものだ。

邪な輩に、防人は負けない。

それは遥か昔から変わらない。

特に、吉井家は守るための刃だ。

明久の目には、強い光が宿っていた。

愛しい少女(謙信)を守るために、刃を振るう。

それが、明久の信念だった。

そして、時計を見た明久は、ゆっくりと立ち上がった。

もうすぐ、女子の入浴時間だからだ。

明久は立ち上がると、周囲のメンバーを見渡して

 

「それじゃあ、行こうか」

 

と告げた。

明久の言葉を聞いて、雄二達は頷いた。

そして、守るための戦いが始まる。

己が信念に従い、少年達は戦場へと向かう。


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