僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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今月は一回だけです
筆が進まん


いざこざの始まり

「要するに、貴様らはその小型カメラだけで、吉井達を犯人扱いしているわけか……」

 

明久達の部屋にやってきた西村は、女子達から聞いた話を聞いて、深々と溜め息を吐いた。

 

すると、島田と姫路の二人が息巻いて

 

「犯人扱いじゃなくて、そいつらが犯人よ!」

 

「明久君達しかありえません!」

 

と断言した。

 

すると、西村がそんな二人に視線を向けて

 

「言っておくが、吉井達には不可能だ」

 

と告げた。

 

「な、なんですって!?」

 

「そんな訳ありません! 絶対に明久君達です!」

 

西村の言葉に二人は反論すると、明久に飛びかかろうとした。

 

だが、それは西村が二人の襟首を掴んだことで阻止された。

 

そして、そんな二人を投げるように放すと

 

「人の話は最後まで聞け!」

 

と怒鳴った。

 

そして、二人が大人しくなったのを確認すると

 

「まず、吉井と天城の二人が所属するAクラスは、バスが渋滞に巻き込まれて、到着が大幅に遅れた」

 

と説明を始めた。

 

「それにより、到着したのは開会式が始まる約十分前に到達。その後、すぐに開会式に出席して、終わった後は夕食。そして、それからはここにいる」

 

西村がそう説明すると、颯馬が頷いた。

 

なお、明久は背中を壁に預けて寝ていた。

 

そして、西村は続いて康太や雄二に視線を向けて

 

「そして、土屋は来る途中で乗り物酔いになり、開会式直前までは医務室に居た。これは、医務室の先生が証人だ。そして坂本。坂本は到着してから、小腹が空いたらしく食堂で軽食を開会式直前まで食べていた。食堂の人達が証言してくれた」

 

と説明すると、康太と雄二は頷いた。

 

最後に、信繁に視線を向けて

 

「まあ、こいつに関しては開会式直前まで高橋先生と会話していた。俺が証人だ」

 

と言った。

 

そう明久達全員には、犯行は不可能なのだ。

 

それに気づいて、島田と姫路以外の女子達は顔を蒼白にした。

 

しかし、島田と姫路は

 

「それがなによ! こいつらしか居ないわよ!」

 

「そうです! だから、お仕置きです!」

 

と叫ぶように言うと、二人はどこからともなくバットを取り出して飛びかかった。

 

しかし、次の瞬間

 

「やめんか!」

 

と西村が、二人を床に叩き付けた。

 

「ちょっと! 教師が生徒に手を出していいの!?」

 

「訴えますよ!?」

 

二人がそう言うと、西村は腕組みして

 

「貴様らがやろうとしたのは、不当な暴力だろうが! 俺には、生徒を守る義務がある!」

 

と宣言した。

 

その時、それまで寝ていた明久が目を覚ました。

 

「五月蝿いなぁ……何事?」

 

明久がそう言うと、島田と姫路が

 

「吉井! どうせあんたが犯人何でしょ!」

 

「白状してください!」

 

と喚いた。

 

だが、明久は目を細めて

 

「何が言いたいのか分からないけど、自分がやってないことを認める訳ないでしょ? 何言ってるの?」

 

と告げた。

 

すると、西村が二人の襟首を掴んで

 

「貴様ら……貴様らは、特別補習室に連行してくれるわ」

 

と告げた。

 

「と、特別補習室!?」

 

「なんで!?」

 

二人が驚愕していると、西村は二人を睨んで

 

「貴様らは犯人では無いと言ったのに、吉井達を犯人と決めつけた! しかも、反省の色がまったく無い! よって、普通の補習では無理と判断した!」

 

と言った。

 

そして、他の女子達に視線を向けると

 

「お前達は反省しているようだから、反省文で許してやる。後で補習室に来るように」

 

と言うと、なおも喚いている二人を引きずって部屋から出ていった。

 

そして、女子達は明久達に謝罪すると、ゾロゾロと部屋から去った。

 

雄二達は女子達を見送ると、明久に視線を向けて

 

「よく、あんな状況で寝られたな」

 

と問いかけた。

 

すると明久は、遠い目をして

 

「母さんのジャイアンリサイタルに比べたら、静かさ……」

 

と言った。

 

明久の母、明恵は家事全般、武道、趣味などはほとんどそつなくこなすが、ただ一つだけ壊滅的にダメなのがあった。

 

それが、歌である。

 

それも筋金入りの音痴であり、聞く人は耳栓をしないと、頭が痛くなるほどだ。

 

明恵も頑張って克服しようとしているが、如何せん上達しない。

 

そして、明恵は父である貴久に願い、離れの一室を完全防音に改装して、暇があればその部屋にこもって練習するようになったのだ。

 

しかし、上達する気配は微塵もない。

 

最近では、貴久が玲へのお仕置きに使えないか画策中とか何とか。

 

「本当にね……あそこまで下手だと、むしろ一種の才能だよ……聞いて、耳が痛くなるだけじゃなくって、頭が痛くなるってどんだけさ……」

 

「もういい、思い出さなくていい。すまんかった!」

 

喋っている内に、明久の目が段々と虚ろになっていったのを見て、雄二は慌てて頭を下げた。


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