僕と戦極姫と召喚獣   作:京勇樹

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強化合宿編です


強化合宿編
始まりとトラブル


「強化合宿かぁ……」

 

そう呟いたのは、高橋女史から配られたしおりを見た明久だ。

 

二日後、文月学園が所有する合宿所に行って、三日間の学力強化合宿をやるらしい。

 

とは言っても、一日中勉強する訳ではなく、それなりにイベントもあるらしいが。

 

その時

 

『案内すら無いのかよ!?』

 

という悲鳴が聞こえてきた。

 

「今のは一体?」

 

謙信が首を傾げていると、しおりを見ていた明久が

 

「多分、Fクラスじゃないかな?」

 

と言いながら、自身が持っていたしおりの一カ所を指差した。

 

そこには、各クラスの移動方法が書かれてあったのだが、そのFクラスの欄には

 

《Fクラス 現地集合》

 

と書かれてあった。

 

それを見て、謙信は苦笑いを浮かべながら

 

「行くのが大変そうですね……」

 

と呟いた。

 

そして二日後、明久達Aクラスは学園が用意したリムジンバスに乗って移動していた。

 

「こんなの用意する位なら、Fクラスにも用意してあげなよ……」

 

というのは、リムジンバスを見た明久の談である。

 

途中渋滞にハマって遅れたが、明久達は無事に合宿所に到着した。

 

そして、学園長からの挨拶も終わり、割り振られた部屋へと向かった。

 

その部屋というのが……

 

「まさか、雄二達と同じなんてね」

 

そう、雄二達と同じだったのだ。

 

「まあ、一応問題児ってレッテルは残ってるしな」

 

明久の言葉を聞いて、雄二は肩をすくめた。

 

そして、雄二の言葉を聞いて、明久は

 

「まあ、一年生の時に色々やってたもんね」

 

と苦笑いしながら言った。

 

一年生の頃、雄二達は何かとトラブルを引き起こしては、それを明久が諫めていた。

 

それを教師達も知っているので、明久を監視役にしたのだろう。

 

「俺も同じなのは、明久の友人だからか?」

 

「多分、僕もかと」

 

そう言ったのは、壁に背中を預けている信繁と、明久の隣に座っている颯馬である。

 

この部屋に居るのは、明久、雄二、信繁、颯馬、秀吉、康太の六人だ。

 

他の部屋割りより人数が多いからか、少し広めの部屋である。

 

ちなみに、この合宿所。

 

何でも、倒産した旅館を学園が安く買い取り、召喚獣に対応させる改修工事を行ったらしい。

 

だから、合宿所は全部で四階建てで、地下に大浴場が二つある。

 

なお、明久達は三階の部屋に居る。

 

もちろんだが、男子と女子とで部屋は別だ。

 

そして謙信は、翔子、愛子、優子の三人と同じ部屋になっている。

 

そして明久達は夕食も終わり、今は入浴の時間を待っているところだった。

 

そして入浴が終わったら、後は寝るだけとなっている。

 

だがその時、廊下が騒がしくなっていることに、明久達は気付いた。

 

その直後、部屋のドアが乱暴に開け放たれて

 

「吉井ぃ!」

 

「明久君!」

 

「大人しくしなさい、バカ達!」

 

島田と姫路を筆頭に、十数人の女子達が雪崩れ込んできた。

 

それを見て、明久はキョトンとしながら

 

「何々、何の用かな?」

 

と女子達に問い掛けた。

 

すると、姫路と島田が怒り心頭という様子で一歩前に出て

 

「しらばっくれるつもり!?」

 

「犯人は明久君達しか居ません!」

 

と怒鳴った。

 

すると、雄二が立ち上がって

 

「いきなり現れて、明久を犯人扱いとは、どういう了見だ?」

 

と女子達を睨んだ。

 

すると大多数の女子達は怯えたが、それを掻き分けるようにC組代表の小山が現れて

 

「これが、女子大浴場の更衣室に仕掛けられてたのよ!」

 

と右手を出した。

 

その手の中に有ったのは、小さい機械

 

小型カメラだった。

 

それを見て、康太が

 

「……A&K社の小型監視カメラ」

 

と呟いた。

 

それを聞いて、信繁が

 

「まさか、お前……」

 

と視線を向けると、康太は手を振り

 

「……俺じゃない。こんな安物、俺は使わない」

 

と言った。

 

それを信繁はジト目で見るが、すぐに肩をすくめた。

 

しかし、小山は話を聞かずに

 

「これを仕掛けたのが、あんた達だって分かってるのよ!」

 

と怒鳴ると、明久達に迫った。

 

しかし、それを許す颯馬ではない。

 

颯馬は素早く明久の前に立つと、袖の中から小太刀サイズの木刀を二本出して構えた。

 

「それ以上近付けば、護衛役として無力化させてもらいます」

 

颯馬がそう言うと、島田と姫路が

 

「何よ! そんなバカの肩を持つって言うの!?」

 

「そうです! どうせ、明久君しか犯人は居ません!」

 

と怒鳴ると、颯馬を睨んだ。

 

その時、明久が何故か窓を開けた。

 

その直後、その窓から人が入ってきた。

 

その人物はなぜか、忍者のような格好をしていて、口元を覆っている布には

 

《補習》と書かれてある。

 

すると、その忍者は両手を合わせて

 

「ドウモ、ミナ=サン。テツジンデス」

 

と名乗った。

 

その事に女子達は驚愕の声を上げたが、雄二達は明久に顔を向けて

 

「よく、鉄人が来るって分かったな?」

 

と質問していた。

 

それに対して、明久は

 

「なんとなく、直感だよ」

 

と答えた。

 

こうして、波乱まみれの学力強化合宿は始まった。


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